呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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更新はできるときにどんどんしていくぞー!
水着コハルの文字集め頑張るぞー!


24 釜中之魚①

「駄目だ。先生も戦わせてもらうよ」

 

 戦いの幕がいざ舞い降りん、としているときに先生が待ったをかけた。片手には例のタブレットを持ち、指揮をしようとしているのがよくわかった。

 だが俺としては先生と一緒に戦うのは困る。俺はまだ先生にホムラとしての正体を明かしていない。便利屋は黙っててくれるからいいが、先生とはまだ敵同士。ここで呪霊を倒すために術式を使えば自分がホムラですと言っているようなものだ。

 

「断る。先生は大人しく補習授業部を送り届けるんだ」

「何を言ってるの!?あれはなんだかわからないけど……ヤバいやつでしょ?生徒を放って逃げるなんて出来ない」

 

 キッパリと断りを入れるがそれを先生は断固拒否。性格上わかりきっていた事だが戦う前に無駄な時間が流れていく。

 実際のところ術式を使用しながら先生の指揮に入れば簡単に終わるだろう。バレたところで先生は俺を取って喰いはしないし、なんならゲマトリアから抜け出すために協力までしてくれるだろう。そんなことはわかっている。

 

 だが、それをすれば呪霊を感知するシステムを持つ黒服との繋がりは無くなる。毎回全てを見られるわけではないにしろあれがあれば自分が被害が大きくなる前に祓える。その利点を捨てることが惜しい。

 ゲマトリアがやばいことをやる前に止めることだって出来るかもしれない。ベアトリーチェのような輩なんかは特に見張っておかないと危険だ。

 

「ナにをベラベラとっ!!いぃっているぅ!?」

 

 そうこうしているうちに呪霊は上体を仰け反らせて力を貯めていた。当然ながら黙って見ているわけではない。すぐに殴り掛からず何かしらのモーションをするということは1つやばいケースが浮かび上がる。

 

 

 それは相手が術式持ちの準一級以上の呪霊であるということ。この溜めは術式を使うためのものということだ。

 

 

「っ!!総員退避!!遮蔽に隠れろ!!」

 

 明らかな呪力の起こりを感じた俺は叫ぶ。この場には呪霊のことなど1ミリも知らない人が多い。恐らく知っているのは火宮さんただ1人。それも俺が空崎委員長に言った断片的な情報ぐらいだ。

 因みに美食研究会は風紀委員の子が縄を切ってあげて一緒に隠れていた。

 

「ゔっ、お゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛!」

 

 呪霊は汚らしい嗚咽をあげながら、口から魚のような何かを吐き出した。鋭そうな牙が見え、トゲトゲとした鱗を持ち凡そこの世のものとは思えないデザインをしている。

 

「式神かっ!」

 

 その正体は呪霊の使役する式神。デザインからして対象をズタズタにしてから本体が食べやすくするためのものだろう。問題は式神を操る術式か呪霊が従える外付けのものかどうかだ。

 

 そして、式神は真っ直ぐに俺たちに目掛けて飛び掛かってきた。口を大きく開けて今にも食いちぎらんと言わんばかりだ。呪力を全開にしてガード態勢に入る。

 

「浩介!あなたも隠れて!」

「フウカさん!遮蔽から顔を出さないでください!」

 

 俺がガードしている間に愛清先輩が心配してくれたのか車から顔を出して避難の催促をしてくれた。そういう気持ちは非常にありがたい。こういう人ほど守ってあげたいものだ。

 たが、今は火宮さんのいう通り隠れることに徹してもらいたい。あまりにも危険だ。

 

 魚の呪霊は物凄い速度で飛び掛かり車だろうと関係なく突き刺さる。ガガガっと硬いものが当たるような音を立てており、威力を推し量るのに充分だった。当たればやられる、ということだけはよくわかる。

 

 

 

 

「あ゛っ……ぐっ、く゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛っ!!??

 

 数が多過ぎるからか俺が盾になってもカバーしきれない箇所があった。風紀委員の子の1人の耳の先に式神が噛みついてしまったのだ。その子は火宮さんと同様に長い耳、所謂エルフ耳をした子だった。

 

「今とってあげ……」

 

 それに気づいた先生が式神を外してあげようと手を伸ばそうとしていた。あまりにも危険な行為。相手は自然の魚ではなく、呪いの魚だ。先生では被害者を1人増やすだけだ。

 

 

 

「誰も触るな!!!指を持っていかれるぞ!!」

 

 

 

 先生が触ろうとする寸前のところで精一杯の大声を出して止める。全員がビクッとして動きを静止させる。全員助けるつもりだったのだろうか。

 

「ケヒヒっ!」

 

 次第に飛んでくる魚式神もなくなり、敵の攻撃は落ち着いた。半魚人呪霊は満足気にこちらを見ており、苦しんでいる風紀委員の子を嘲笑っていた。俺もそれなりに皮膚が突き破られておりダメージは軽微とはいかない。

 

(舐めやがって……っ!)

 

「俺が取り除く。……痛むぞ」

「コク……」

 

 俺はすぐさま耳を齧られた風紀委員の子に駆け寄る。未だに口を離さず、ビチビチと暴れ狂っていた。その動きが更に刃を深く食い込ませていた。

 魚式神を掴み、呪力を込めて握りつぶす。従える数も多く高速で飛ばせる上にヘイロー持ちのキヴォトス人に刃を通せるだけの威力を持つことから特殊能力持ちの可能性は低いと判断してそうした。

 読みは当たり、式神は形を保てず霧散した。しかし傷跡は深い。彼女の耳は大きな穴が空き、かなり血が流れていた。

 

「皆さん、次が来る前にまだ無事な車で脱出してください。待ったも何もなしです。いいですね?先生?」

 

 最早一刻の猶予もない。呪霊が遊んでいるうちに離脱してもらうしかない。あれだけの攻撃範囲と速度、威力を持つ相手に庇いながら戦うのは術式を使っても無理だ。

 

「……わかった。班分けして離脱するね……。チナツは負傷した子をあの車を使って搬送を!残りの風会委員はその護衛を!美食研究会は爆弾で周りに煙を巻き上げたあと非常階段を使って逃走!フウカは残った車を運転して私と補習授業部を運んで!」

 

 俺の言いたいことを理解してくれたのか先生はすぐに各自に指示を飛ばす。あくまで逃げること第一にして指示を出してくれるのは今の俺にとっては嬉しい。

 

「逃すカょお!!」

 

 呪霊はすぐさま両腕を広げて襲いかかる。式神は使わずに自分の身体でやるあたりなんとなくどういう術式かは見当がついた。少なくとも式神はすぐさま出せるわけではない。

 すぐさま割って入り、両手を掴む。呪霊が火宮さん達に近寄らないように組み合うような体勢になる。

 

「逃すさ。俺が全部止めるからな」

 

 呪力でガードしてもそれなりにダメージを受けるのはさっきので証明済み。術式の発動を防ぐように立ち回らないといけない。

 

「つぅカまえたっ!!」

 

 だが、呪霊は俺と組み合っている最中に口を再び大きく開ける。その口からは1匹の魚が顔を覗かせていた。今度はカジキのような形をしている。勢いよく発射され俺の眼前に迫った。

 

「ちっ!」

 

 掴んでいた腕を離し、顔を横にずらすことで目や頭頂部に直撃は避けるが頬に少し掠ってしまう。切れ味が凄いのかかなり深く切り込みが入る。やはり威力だけは驚異的だ。

 

 

 

 カチャ……!

 

 

 

 

 

「……だが、まあまあ欠点があるようだな」

 

 

 

 

「"焔"」

 

 銃口を向けて弾丸を放つ。技の名前を唱え加速させた弾丸は俺と同じ箇所を撃ち抜き破壊する。意趣返しにしては返しが酷いが相手は呪霊なのでノーカンだ。

 

「ぐっ、あっ……がぁ……。餌共めぇぇぇえっ!!!」

 

 呪霊は悶え苦しみこちらを睨む。人を喰らったであろう奴が何を言ってやがる。お前に喰われていい人間など1人もいない。

 

 

 

 

「……浩介。任せていいんだね?」

 

 先生は車に全員が乗っているのを確認してから俺に問い掛けてくる。汗ダラダラで不安な気持ちでいっぱいなのが伝わってきた。どういう胸中かはわからないが心配してくれていることだけはよくわかる。

 

「もーまんたい!補習授業部の皆んなはテスト頑張れよ!応援してるから!」

 

 頬こそ切れているが精一杯の笑顔で送り出す。痛みはするが今はそんなのどうでもいい。

 先生が車に乗ると全車両が一斉に発進し、どんどん戦地から離れていく。ひとまず戦いに巻き込まれることはこれでないだろう。

 

 

「さて、先生達も離れたしやろうか」

 

 誰もいなくなってから俺は呪霊の方に振り向く。手に呪力を込めて構える。

 

 

 

「ここがお前の火葬会場だ」




美食研究会のみんな本当にごめん
キャラが多い時の話の回し方は要改善ですね

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
  • 7時ごろ
  • 19時ごろ
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