これからもちょくちょく投稿していきます
2 アビドス砂漠と便利屋
「あぁ〜、すっごく暑い……。砂漠舐めてたなあ……」
ジャリ、ジャリ……。
歩くたびに頭の中で砂の音が脳に響く。一面砂まみれで面白味のない景色がずっと続いており、耳・視覚・脳的に非常に辛い。
今すぐ辞めたいのは山々だがこれは縛りによって発生した依頼である。逃げたら縛り違反でもう考えたくも無い事態に陥ってしまう。とはいえ、やる気が出ないものは出ない。気力を振り絞って進むほかない。
(確かこの先の街で今回の共闘相手と落ち合う予定なんだけど……どんな人達なんだろ?キヴォトス人4人組という情報ぐらいしか渡されていない。可愛い子たちならいいんだけどなぁ……。)
せめて可愛い子と一緒にいられたらなんて考えながら歩み続ける。もうそれぐらいしかモチベーションを保つ方法なんてないのだ。
「お、見えてきた!可愛い子ちゃん待っててよ〜!」
虚無な道のりも終わりが見えて来て一気にやる気が湧いて出る。こうなれば後は走るのみ。術式を使って飛んでもいいが、離れた場所に着地して目的地に向かう事になるのであまり変わらない。
そして、走って目的地へとたどり着いた頃には既に今回の共闘相手が雇ったと言う傭兵らしき人達が集まっていた。その先には四人組が並んで立っている。
「ア、アル様!例の人が来ました!」
たどり着いたのに気付いたのか四人組の一人が俺に向けて指を指しながら声をあげる。茨のようなヘイローをしており、おとなしそうな印象を受けた。
残りの三人もその声に続いて視線をこちらへ向ける。三人とも美少女で三者三様の魅力がある。正直眼福ものである。
「来たわね!貴方がクライアントの言ってた助っ人さんよね?……随分と装備を整えてきたのね。防弾チョッキに仮面まで」
恐らくリーダー格と思われる生徒がこちらに話しかける。流れからしてこの生徒がアルという人なのだろう。綺麗で長い赤い髪を靡かせ立派な角が威厳を醸し出していた。
(て……いや、うちの生徒やないかい!!!!!)
思わず心の中で突っ込んでしまう。この特徴はどう見てもゲヘナ学園の生徒だ。悪魔を彷彿とさせる特徴を持ち、自由と混沌を愛する現所属学園は可愛い子も多いが一癖も二癖もある曲者揃いだ。
となると他の子達はどうなのかと見てみると色白の子に角と小さな羽があるぐらいであとは普通の人間の特徴だった。
「……すまない。顔は見せるわけにはいかないので仮面を付けさせてもらっている。俺はホムラというものだよろしく」
一先ずは自己紹介から始める事にした。ただし、名乗るのは……ホムラ、という偽名である。なお、仮面にはボイスチェンジャー機能もついており声による特定を防ぐようにもしてある。
ただし、キヴォトスに人間の男の生徒が現状自分以外確認出来ていないのでいつかはアッサリとバレそうではある。
「ふふ、私は便利屋68の社長である陸八魔アル。いずれはキヴォトス一のアウトローになる者よ!よく覚えておきなさい。さあ、我が社員達も名乗りなさい」
「……私は鬼方カヨコ。便利屋68の課長をしている。よろしく」
「クフフ。私は浅黄ムツキ。便利屋68の室長をしていまーす!よろしく〜」
「あ、あの……伊草ハルカです。よ、よろしくお願いします……」
四人組、もとい便利屋68の皆さんはそれぞれ名乗り自分の役職名も答えていく。社長や課長などといった用語から企業として存在していることは何となく察しがついた。
社長は妖艶な笑みを浮かべながらこちらを品定めするかのように見つめている。役職持ちの二人は一人は悪戯をする子供のような笑みを浮かべ、もう一人は儚げな印象を受けるがどこか警戒するかのような目線だった。唯一役職名のない伊草さんも笑ってこそ居るが、最初のイメージとは裏腹にどこか殺気あるいは狂気のようなものが見え隠れしており、命令があれば今にも噛み付かんと言わんばかりだ。
この一味は、強い。
そう思わせるほどの威圧感をそれだけでひしひしと感じさせられた。全員可愛い顔をしているが立ち振る舞いや目つきは本物のそれだ。
しかし同時に疑問に思う事もあった。自分以外の仕事仲間に傭兵生徒がいることである。不満は特にないが相手を考えると些か過剰かもしれないのだ。
俺は黒服より少しアビドス高等学校の実情を聞いている。なんでも、超のつくトンデモ借金が学校自体にありキヴォトス有数の大企業に多くの土地を奪われているという。おまけと言わんばかりに生徒数は黒服のターゲットである小鳥遊ホシノを含めて5人とのこと。その5人がどこまで強いかわからないが、多くの傭兵を雇って攻め立てるほどなのかは疑問が残る。
「ご丁寧にどうも。それはそれとしてつかぬことをお聞きするが……、相手の規模を考えるとこれだけの傭兵は過剰なのでは?」
「あ、そ、それは相手を舐めてはいないからよ!!やるからには徹底的にやらないと!」
俺は質問してどんな返答が来るかを待つことにした。これから一緒に仕事をする人の考えはある程度図っておく必要がある。これは小さい頃から色んな呪術師と付き合いをする上で身につけた癖のようなものである。
陸八魔社長はこっちが思わぬ事を聞いたからか少ししどろもどろする。それでもハッキリと大きな声で理由を述べ、またあの妖艶な笑みに戻る。
(容赦のない方だな……。ちょっと素が出てたが今は学生四人の集まりだし、社長である陸八魔さんは普段は皆んなの中心にいる陽気な方なのだろうな。それはそれとして仕事は切り替えて臨む。手強いな)
「いらぬ事をお聞きして申し訳ない。容赦無く叩き潰すという事であれば俺も遠慮なくそれに付き従おう。改めてよろしくお願いします」
形だけの謝罪を交えつつ、手を差し出す。この恐ろしい人達が敵でない事に少しホッとしている。
その様子を見て陸八魔社長はニカッと微笑んで喜んで握手をしてくれた。中々顔がいいため男としては少しドキっとする。
「ええ!!こちらこそ!!」
どうやらこの人は人心を揺さぶるのも上手いらしい。
場面は切り替わり、黒服のオフィスでは……。
「さて、どうなるか見物ですね」
自前のオフィスの中で黒服は一人呟く。数日前に確保した火野浩介という少年を送り出して思考を滾らせていた。
彼、火野浩介は黒服が知る限り初めての事例の人間である。何せまさかの力を宿しているからだ。
黒服の所属する組織、ゲマトリアはキヴォトスに存在する神秘を探究する組織である。そしてその神秘が反転したものを恐怖と呼び、こちらはある程度扱えるものである。
という認識だったのだが彼が来て話が変わりそうになる。
何故ならば彼自身が恐怖と酷似した力を宿していたのだ。神秘なんてまるで感じない恐怖の塊のような存在である。
だというのに、普通の人間と同じように喜怒哀楽があり性格もよくあるものなのだ。これが健常と言わんばかりにである。
わからぬものに神や悪魔、精霊とラベルが貼られ神秘に落とし込まれるのではなく、初めから恐怖という力を持ちつつ人間として存在している。
是非解明したい、そう思うのは研究者の性だろう。自分達のやりたい事に活かせるのであれば余す事なく貪り、活かせるものでなく自分達の脅威になりえるものなら消し去るためにも。
そこで治療を施したことをいい事に借金と生活基盤の無さをいい事に、協力を持ちかける事にしたのだ。その際に縛りと称して力のある契約のようなものを結ぶ事になったがこれも大変興味深く感じていた。
「クックックッ……見せてもらいますよ。呪術師とやら。その力の一端を」
そう言って彼のオフィスに不気味な笑い声が響くのであった。
・火野浩介
便利屋68を裏社会の大物もしくはこれからの台頭株と認識
特に陸ハ魔アルを危険と認識
普段は四人の中心にいる少女でありながらも、依頼となれば冷酷でその美貌すら活かすと推測している
・陸ハ魔アル
アビドスの面々とやり合わないといけない事に心を痛めつつも、浩介相手に自慢のアウトローっぷりを発揮できたと思って少しいい気分
でも、アビドスの前に立つと罪悪感を掘り返しちゃう
・他の便利屋
ムツキはアルちゃんの苦し紛れ演説や振る舞いが本気で効いてるのを見て笑いを堪えてる。楽しそう。
カヨコは偽名と思われる名前と仮面もあってバチクソ怪しんでる
ハルカは平常運転
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