呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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ちょっと時間が取れたのでなんと〜二日連続で投稿しちゃいます!

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29 補習授業部との邂逅②

「いい香りだ……」

 

 現在、俺は補習授業部の子達とティータイム中だ。そうなった経緯は浦和さんが俺を驚かしたお詫びという名目でスイーツの店に入ったことから始まる。今はお出しされた紅茶の香りを楽しんでいる。

 浦和さんは懇切丁寧に謝罪してくれた。流石はトリニティ生といったところだろう。所作が完璧だった。尚、悪戯心が過ぎるようではある。

 

「ですよね!?ここは私のお気に入りでして、スイーツも紅茶も店主のこだわりに満ちてて……特にショートケーキが……うぇえへへ……」

「ヒフミ!?か、顔!凄いことになってるってば!」

「ふふ、いいじゃないですか。今は友達や知人とお食事を楽しむ場なんですから」

「私も何度もヒフミとここに来てるけど本当に美味しい。ヒフミの言う通りショートケーキがおすすめだ。中にたっぷりデザートが詰まってて満足感が堪らない……!」

 

 補習授業部の面々はそれぞれに個性ある反応をしていた。友達にお勧めを布教したり、その布教中に蕩けた顔になったことを指摘する者もいれば、それを宥める者もいる。白洲さんに至っては目を輝かせ注文した品に心躍らせている。

 

 これが女子会か。俺の場違い感やばいって。

 

「そう言えば浩介さんはなんでトリニティに?その……ゲヘナの方が来るなんてめずらしいなって」

「ん?あー……観光と個人的な調べ物かな」

「観光はまだわかるけど……」

「個人的な調べ物、ですか?」

 

 ある程度区切りがついたところで阿慈谷さんが気になっていたのか俺がトリニティに来ている理由を聞いてきた。その質問も無理はない。ゲヘナとトリニティの関係は犬猿の仲を通り越してガソリンに火がつくのを待ってる状態だ。

 俺が観光と調べ物と答えると、観光の方には"まだわかる"なんて言葉がついている。調べ物は言い過ぎたかもしれない。

 

「調べ物の方は前に出てきた異形の化け物関連で来たんだ。トリニティに出そうかどうか確認したくてさ」

 

 幸いにも俺が呪霊を祓ったことを化け物退治と捉えてくれている。ならそれ関連を匂わせてお茶を濁す。多分嘘は言ってない。言葉は足りないかもしれないが。

 今日のところはいきなり白洲さんにアリウス自治区への行き方を聞くのは無理だろう。まずは交流を深めることから始めたい。時間がかかりそうだ。

 

「その……一ついいか?」

「アズサちゃん?」

 

 だが、白洲さんは先程のほんわかした顔から一転してキリッとして顔つきになる。やはり4人の中で一番修羅場を知っているのは彼女だろう。切り替えが早い。今はトリニティ生でもアリウスで培った経験は彼女の奥に根付いている。

 

「俺も白洲さんに聞きたいことがあるけど……どっちから言おうか?」

「私から言わせてもらう」

「どうぞ」

 

 多分白洲さんは呪霊や俺の事を聞いているはずだ。ベアトリーチェかそれを通じた元同僚から、あのクソババアが知っている限りのことを。

 

「その化け物……いや、呪霊と言ったか……。あれは私がトリニティに行った後──」

「アリウスで発生したことか?」

 

 白洲さんはまた呪霊という単語を出して俺に何かを聞こうとした。明らかに彼女の話し方は俺が彼女を元アリウス生だと知っているのを見越したようなセリフだ。恐らく想定してないとこんなセリフはない。

 俺が食い気味にアリウスの名前を出すと、白洲さんは特に驚くことはなく頷く。もう彼女からしても隠すつもりはないのだろう。

 

「え?……ちょっ、ちょっと待って!なんでいきなりアリウスの話なんかに!?」

 

 急な話の転換に下江さんは困惑している。さっきの穏やかな女子会の空気から小難しい話になってしまったのだから無理はない。

 阿慈谷さんはひどく驚いているのかあわあわしており、浦和さんは黙って俺を見ていた。お友達と楽しくする日を壊してしまったことを申し訳なく思う。

 

「話が早くて助かる。取り敢えずアリウスでの事を結論から言おう。呪霊はスクワッドが退治したそうだ。犠牲は少なからず出たらしいが……」

「っ……!そうか……」

 

 こちらも知っている情報はぼかさないことにした。今の彼女は自分が裏切ったアリウスの事が気掛かりになっているようだ。それぐらいアリウスを思えるのなら何故裏切ったのかという疑問は尽きないが、それはこの3人を見れば何となく察しがつく。

 今はそのことを蒸し返すべきではない。こちらは余すことなく教えるが、向こうから引き出すのはアリウス自治区への行き方のみに絞ったほうがいいだろう。

 

「……少し良いですか?浩介さん」

「浦和さん、何でしょうか?」

 

 ここで沈黙していた浦和さんが質問をしたいと挙手する。中々刺激的な内容もあってか気になることも多いだろう。あまり答えにくい質問が来なければいいのだが。

 

「沢山聞きたいのがありますが……今はアズサちゃんが一番あなたに聞くべき時でしょうから一つだけ聞きますね」

 

 浦和さんは明確に聞くことを一つに絞るらしい。この一つからあれもこれもと聞かれないように気をつけねば。

 

「まず浩介さんはアリウス自治区のことをよくご存知なようですね。その"呪霊"という存在が発生しこれを対処したという内情まで把握出来るほどに」

「直接行ったことはないけどな」

「……ならば余計に気になりますね。貴方とアリウス自治区の繋がりが」

 

 まあ当然の疑問ではある。アリウスは聞くところによれば最近、トリニティで騒動を起こすまでは歴史の闇に葬られた存在だったのだ。未だにどこにあるのかよくわかってすらいない。

 だというのにゲヘナの俺が存在だけなら兎も角内情まで知っているのは明らかにおかしい。しかも直接行ったことすらないなんてあまりにも変だ。

 

「繋がり、といえば俺はそうだな……アリウスを支配してる存在と敵対してることぐらいだ」

「つまり……貴方はアリウスの敵?」

「うーん……あくまで支配者と個人的に確執がある感じかな。向こうは俺の命だって狙ってるだろうし」

 

 俺がある程度答えると浦和さんは衝撃だったのか沈黙した。いや、思考に耽っているのだろう。とても補習授業部に入るような問題児に見えない。かなり地頭がいいのが伺える。

 

「い、命!?」

「な、なによそれ!?」

 

 残る2人は完全に困惑していた。話の内容があまりにも過激だから無理もない。尚更今日という日を乱したのを申し訳なく思う。

 

「まさか……マダムの事を知っているのか!?」

「ああ。あのクソババアの所業が許せなくてな。ぶちのめしたいところだがアリウス自治区の場所を知らなくて困ってる」

「なるほど……あなたの聞きたいことはアリウス自治区への侵入方法……ということですね?」

「その通り。悪いな……今日は皆んなで楽しむ日だったんだろ?いきなりぶち壊すようなことをして申し訳ない」

 

 取り敢えず俺は最低限聞きたいことを投げかけられた。後は白洲さんが答えてくれるかどうかだが、彼女が答えないなら別の方法を探す他ない。どういう事情かわからない以上無理して聞いて彼女を追い詰めるのはナンセンスだ。

 

「……悪いが力になれない。私はもう……」

「そうか……不躾な事を聞いてごめ──」

 

 白洲さんは申し訳なさそうな顔で頭を下げる。教えられない、となれば今はこれ以上蒸し返すまい。謝罪しようと言葉を紡ぐが──、

 

「いや、そういう事じゃない」

 

 どうもなにか違うらしい。思わず、へ?と声が出た。

 

「私も知らないんだ。その……今のアリウスへの行き方そのものがわからない」

「へ?それは一体……」

 

 どうにも不思議な話だ。帰りの方法を知らないとはなんなのか。あるいはこれこそがアリウスが長い歴史の中で存在を隠された理由なのか。

 

「トリニティからアリウスに行くには地下墓地、カタコンベを通らないといけないのだが……あそこは毎回道が変わるんだ」

「道が変わるって不思議のダンジョンみたいに毎回道が変わるってこと?」

「不思議のダンジョン、というものがなんなのかわからないけど……概ねその通りだ。ある程度の周期で変わっていくんだ。私が知っているのは古いものだからもう……」

「あー、なるほど……」

 

 白洲さんの話ではつまり、唯一の通り道であるカタコンベというダンジョンは道がある程度の周期で変わり、もう変わってしまっているから古い情報だけの彼女ではもうわからないということ。確かにこれならトリニティが気づくわけないし、白洲さんが力になれないなんていう訳だ。

 

「え、えーとつまり……どういうこと?」

「あはは……」

 

 もう下江さんと阿慈谷さんはついていけないといった感じだ。安心してくれ俺もざっくりとしかわからん。

 

「……もう一つ聞いてもいいですか?」

 

 ここで浦和さんがまたもや質問をしたいそうだ。多分まだ聞きたいことが沢山あるんだろうけど一つで勘弁してくれるならありがたい。

 もしかして、地頭いいどころか勉学も全然出来るんじゃ……。

 

「結局のところ何がしたいのでしょう?アリウスでそのマダムという人を何とかするとして、何とかしてどうなるのでしょう?呪霊とやらに関係が?」

「鋭いなぁ……実のところアリウスは──」

 

ゾワッ!!!

 

 俺が回答しようとした時、突如として店内に俺のものではない呪力を感じる。明らかに呪霊のものだ。

 

「くっ!?」

「こ、浩介さん!?」

 

 俺が突如として銃を抜いて警戒態勢に入ったのを見て全員が驚いていた。自分達に向けるわけでもなく誰もいないところに銃を向けているから尚不思議に思っていることだろう。

 

「お客様!!逃げて!!正義実現委員会を呼んでくれぇ!!ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?た、たすけ……」

 

 店員の声が店内に響く。勇敢にもお客様に避難を勧告したあと、悲鳴だけを残して声が聞こえなくなる。

 

「この声は……店長さん!?ま、まさか!?」

 

 阿慈谷さんは声に心当たりがあったようである。確かに自分でここの常連だと言っていたから納得だ。そして、今の話の流れから店主を襲ったのが何なのか察してしまった様子。

 

「……全員、銃を抜くんだ。やばいと思ったら窓割ってでも脱出しろ」

 

 俺の言葉を聞いて全員が愛銃を取り出す。緊張感が彼女達に走る。

 

「浩介さんはどうされるのですか?」

「……呪霊を倒す」

「そんな!?危ないですよ!ここにいる全員で相手した方がいいんじゃ……」

「大丈夫さ。サクッと倒して店長を救出してくるよ」

 

 加勢はしてくれるらしい。嬉しいが今回は要らないだろう。感じた呪力は精々2級だ。俺の敵ではない。

 俺が軽く言うからか全員微妙な顔をしている。特に下江さんと阿慈谷さんは一度強めの呪霊に遭遇してるからか目つきが険しい。

 

 それに俺は彼女達に申し訳なく思ってるんだ。折角の友達との交流を邪魔してるのだから。

 

「……取り敢えず見ててくれ。俺の仕事をさ」

 

 だからこそ彼女達の不安や疑念を払拭するためにもすぐに終わらせてやる──。




この作品事あるごとに呪霊湧いてるな……

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