最後まで楽しませてもらいました
色々と言われていますが、それだけいろんな解釈や感想が出たんだなって思います
それも込みでもうしばらく楽しませていただきます
芥見先生、お疲れ様でした
呪力が発せられた方向へ走る。急いで店長を救出しなくてはならない。血の匂いはまだしていないから、丸呑みされてない限りは無事なはずだ。
バタっ!!
勢いよく調理場に足を踏み入れる。店長が普段から頑張っているのか床は綺麗で、食べ物の脂などは一切ない。味だけでなく清掃にまで気を使うらしい。好感も持てるし、努力を感じられる。今はそんな場所に土足で踏み込むことを申し訳なく思う。
しかし、実際は何か腐った臭いようなものが感じられる。恐らくは呪霊の出す瘴気のようなものだ。呪力である程度カバーできる俺以外は死の部屋と言っていい。
「店長さん!……脈はあるな。まずはここから脱出するぞ」
「う……あ、あなたは?」
「通りすがりのゲヘナ生だ。ついさっきあなたの紅茶が好きになってね」
「そ、それはどうも……ゲヘナにもこんな子が……うっ……」
店長さんは瘴気に当てられたせいか体調が優れない感じだ。外傷がないだけマシだが、このままでは呪霊好みのご飯の出来上がりとなる。いち早く脱出させるのが大事だろう。
店長を抱えながらゆっくりと抜き足差し足で調理場を出ていく。意外にも呪霊は襲ってこない。俺の実力をわかって襲ってこないのだろうか。
調理場を出た後は店の出口付近で補習授業部の面々が警戒していた。他のお客さんも避難が完了しているらしい。
「皆さん。店長さんを頼みます」
「えっ……!?ちょ、何これ!?凄く顔が青いんだけど!?」
「コハル、どうこう言う前にまずは病院だ。救護騎士団を呼ぼう」
「それなら問題ありません。既に連絡はしてあります」
どうやら救護騎士団とやらにも連絡済みらしい。言葉からして医療関係者だろう。氷室部長やチナツさんみたいないい人が来てほしい。
しかし、気になることもある。呪霊を見ないことだ。瘴気だけをばら撒いて静観するなんて非効率を通り越して意味不明だ。
静観してるのではなく何らかの意図があるとしたら?こちらになれば確かになるほど。狙い次第では効率的だ。
パリーン!!!
「ゔぁあ゛あぁ!!!」
突如として出口側から大きめな呪霊が口を開けて襲いかかってきた。逃げる相手を狙っていたのだろう。補習授業部の子が纏まって警戒してたのが裏目に出たらしい。
「だが……」
ガシッ!!!
「俺には通用しない」
問題なく俺は呪霊を受け止める。大した力は感じられない。精々口臭が臭いぐらいだ。というか腐った匂いのする呪力だ。さっきのは瘴気じゃなくて口臭かよ。
「ばいばい」
そのまま俺は"火柱"で呪霊を焼き切った。どぶのような匂いを放ちながら呪霊は散り散りになっていく。結果的にここ最近では一番あっけない幕切れだった。
呪霊が完全に霧散したのを確認したのち、補習授業部の面々を見る。各々驚いているようで、少々居心地が悪い。今日出会った知り合いが化け物を完封して焼き切ったのだから致し方ないのだが。
「……アリウスに行きたいのは呪霊を退治するのが俺の生業だからなんです。俺は負の連鎖が起こる前にアリウスに行って根本を断ちたい。みんなの為にも、アリウスのためにも」
「そうか……ということはアリウスは……」
俺は白洲さんの方を見ながら話しかける。察しのいい彼女ならこの言い分で今のアリウスの状況を悟るだろうと思っての行動だ。厳しい現実を突きつけるようで申し訳ない。
「あらあら……状況は穏やかではないのですね」
「そういうことだ。放置しておけばアリウスを起点に呪霊が溢れかねない」
浦和さんは今までになく神妙な顔つきで呟く。アリウスで呪霊が多く発生していることを理解したのだろう。というか1を聞いて10に辿り着いてそうで怖いんだが。
「え、えーとつまり……そ、そういうことね!」
わかってなさそうな子一名。
「あはは……取り敢えずアリウスが危ないってことはわかりました」
一番大事な点を押さえててよろしい。
「さて、店長さん大丈夫か?」
「ハァ……ハァ……はい。淀んだ空気がなくなった感じで落ち着いてきました。吐き気と腹痛がしますけどなんとか……」
助け出した店長さんも素早く救助できたからか落ち着いてきた様子。とはいえ病院で検査をしてもらわないといけないだろう。呪いは感じないので、普通に内科外科の出番だ。
そうとなれば呼んでいるはずの救護騎士団が来るまで安静にさせるしかないだろう。まだ呼んで数分程度。恐らくは学校にいるであろう彼女達が来るのは早く見積もってもあと10分程度だろう。
「おまたせしました!救護騎士団の鷲見セリナです!」
「はっや!?まだ10分経ってないぞ!?」
なんて思っていたらもう来てた。たまたま近くにいたのだろうか。癖の無さそうな人が来てくれて助かる。
服装としてはピンクの十字が入った帽子に、白を基調としてピンクの線が入った制服のようなものを着ている。キヴォトスの医療従事者って意外とナース服は着ないのかな。
「ありがとうございます。この店の店長さんが化け物のようなものに襲われまして……何かを吸ったようです」
「ば、いえそれよりも……吸った?ガスのようなものでしょうか?」
「ええ、かなりの臭いがしました。今は店長さんも落ち着いているようですが念の為に確認した方がいいかと思われます。本人は吐き気と腹痛を訴えています」
「わかりました。少々お待ちください」
鷲見さんは俺の話を聞いて淀みなくメモを取っていく。呪霊のことは取り敢えず化け物と形容して説明していくが無理がありそう。向こうも化け物という単語に反応するが幸いにも臭いの方につられてそちらに話が向かう。
粗方話をし終えたら、鷲見さんはスマホを取り出し、どこかへ連絡する。上司や同僚への報告だろう。
「……もしもし?ハナエちゃん?今はベッドの空きはどのくらいある?……2床ね。丁度いいからそれ確保して。今から"2名"連れて行きます」
どうやら入院が必要と判定したようで病床が足りてるか確認しているようである。入院するのは2名。店長さんと……。
ん?2名?
「店長さんとあなたには今すぐに治療を受けてもらいます」
どうやら俺らしい。何故だろうか。特に怪我や症状なんかはない。今回の事で入院しなくてはならないようはことはない。
「いや、俺は何も……」
「でも、あなたも吸ってるんですよね?」
「あっ……」
弱い呪霊だから呪力ガードのみで凌いではいる。しかし、側から見れば俺はガスマスクも無しに危険地帯に飛び込み臭いを感じるほど吸っているということになる。つまり、彼女から見れば俺も患者だ。
「いや、大丈夫ですよ。ほらこの通り……」
俺は面倒くさいので無事をアピールする。身体つきには自信ありだぞ。マッスルマッスル。
「浩介さん。いけませんよ」
「そうよ!!あんたもがっつり吸ってるじゃない!」
「浩介……そういう強がりはよくない」
「念の為にも簡単な検査だけでもいいから受けた方がいいと思います」
補習授業部の面々は一斉に引き止める。こういう場面を見てると彼女達の優しさがよくわかる。その気持ちは嬉しいのだが……今はちょっと厳しいな。
「皆さんもそう言っていますから早く……あら?浩介?確か……」
鷲見さんは膨れっ面をしながら俺を睨む。可愛い顔だが雰囲気は可愛いなんてものじゃない。怖い。
だが、そんな雰囲気も俺の名前を知って変わる。ここに来るまでにトリニティで流れてる俺の噂は聞いていたが、まさかまだあるというのだろうか。
「っ!!思い出しました!あなたですね?ゲヘナの救急医学部の病室から脱走した"ゲヘナの病床脱走魔"と噂の!!」
「なぁにそれ……」
俺の噂どれだけあるというのか。抑え気味とは言えないけど、派手にはやってないつもりではいる。確かに病院から脱走したが一回だけだ。悪く言われるのは仕方ないが何故トリニティで知られている。
「前に先生が仰っていました。大人しくしていれば傷は治っていたのに抜け出した挙句怪我を広げて帰ったそうですね。当然ながらゲヘナの救急医学部の子が怒っていたと。──あなたのような方には問答無用です。救護が必要な方には救護を。私なりの強度の高い救護をしましょう」
「ひぇっ……」
噂の発信源は先生のようだ。恨むぞ。東堂先輩が好みそうなケツとタッパのでかい先生よ。
おまけに周りの視線が強いので見てみたら、補習授業部の面々が険しい顔つきでこちらを見ている。やめろ!そんな目で俺を見るな!!
その後のことは嫌でも覚えている。まず補習授業部全員で俺を捕獲し、神輿のように担ぎ上げた。といっても手と足で持てるところが4つあるのでそれぞれが丁度よく持って、迎えの救急車へと放り投げられる。
結局検査は問題なしとなり、23時頃に帰宅となる。なんだか今日はどっと疲れた気分だ。
後日、トリニティでは新たに俺のことを"ゲヘナの被救護筆頭"とのたまう噂が流れたようだ。解せぬ。
東堂「どんな女がタイプだ?」
浩介「程よく大きなおっぱいがある子」
東堂「普遍的な男児の好みだな。面白みはないが……恥ずかしげも無く答えたのはよし!!」
浩介「なんだこの先輩……」
伏黒「いや、お前もそうとうだぞ」
更新時間はいつが良いでしょうか?
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22時〜0時ごろ
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7時ごろ
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19時ごろ