1週間以上開けてしまい申し訳ございません
お気に入り登録、感想、ここすき、どれも励みになっています
結局、アリウスへの手掛かりはまるで掴めずじまい。白洲さんですら帰れないなら本気で手が出しようがない。お手上げである。
「黒服め……半端な情報を寄越しやがって……」
俺は今はこの場にいないピータン野郎に愚痴をこぼす。とはいえ奴は立場を考えたらかなり協力的な方ではある。愚痴をこぼす程度がいいだろう。
もう一つ手掛かりというかチャンスはなくはない。現在のアリウスはトリニティに襲撃をかますほど意欲的に行動している。スパイを送り込むレベルなんだからその入れ込み様は半端ではない。そうなれば近いうちにまた現れるはずだ。
どのタイミングが一番現れやすいかを思考を巡らせる。ゲヘナとトリニティを憎む集団。今はトリニティに対して襲撃をするほどの余力がある。かなり計画的な犯行。次も計画を練ってくるだろう。最も適切なタイミングは……。
「エデン条約当日……か?」
導き出せるのはこのぐらいだった。しかしこれが最も可能性は高いだろう。なにせ殆ど形だけとはいえ、ゲヘナとトリニティが共同で新組織を立ち上げるという一大イベントだ。アリウスから見ればこれほど襲いたくなる日はないはずだ。
なによりベアトリーチェがこれを見逃すはずがない。いくら自治区を支配してるとは言え、その地域に元々あったものを利用しない手はない。何をするつもりなのかはまるで見当がつかないフワフワ推理でしかないのが歯痒いが。
「取り敢えず会場付近に潜伏するか」
出した結論は
ある程度結論を出したらベッドで横になる。もうこれ以上はどん詰まりだ。今は休んで体力を回復するのみ。今日は診察地獄で疲れた。
非術師を守るためにも頑張っていかないと……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして、エデン条約当日──。
「あぁ〜すげえ人だかりだなあ。おい」
会場の近くは人が多かった。クロノスをはじめとする報道陣、2校の生徒会組織や治安維持組織、この一大事を見逃すまいと潜り込んだ他校の生徒と思しき人物など挙げればキリがない。両校の歴史や規模を考えれば無理もないことだ。
しかし、それ故にアリウスが潜入するにはうってつけの環境が整っている。もしアリウスがテロでも起こせばこの地は血で染まりかねない。
「あれ?浩介?いたんだ?」
そんな中で俺に声をかけてきた生徒がいた。銀髪ツインテールの風紀委員、銀鏡イオリだ。風紀委員に所属する2年生、つまり先輩に当たる人だ。
「銀鏡先輩ですか。俺はエデン条約にかこつけてぶらついてるだけですよ」
「……本当だろうな?」
俺は伸びをしながら適当な答えをなげる。流石にここにアリウスが来るかもしれません、は簡単に言えない。というかどう信じてもらうかわからない。
銀鏡先輩は俺の言い分を疑っているのか冷めた目で見ている。恐らく疑っているのは例の事だろう。
「……銀鏡先輩も聞いたんです?空崎委員長から俺の事?」
「まあな。火を吹いて化け物を退治してる話なんて最初はアコちゃんと一緒に耳を疑ったよ」
「そうか。やはり天雨先輩、銀鏡先輩、チナツさんに話したのか」
今となっては随分前のように感じることだ。空崎委員長に呪霊の事を少し話した時のことだ。あの時はなるべく知っている人を抑えたくて先生含めて4人なんて制限で話した。先生を除けば誰に言うかは想像通りのメンツだ。
「やはり?お前、委員長が誰に話すのかわかってたの?」
「ええ。チナツさんは既に見てるし俺とは同級生だから監視のしやすさも考えて当然として、右腕同然の天雨先輩はマストでしょう。となると残りの一名は必然的に委員長と一緒に対処するであろう銀鏡先輩かと」
「……お前、本当は何がしたいんだ?」
「呪霊の事を知ってる人はなるべく少なくしたい。だけど、それで誰かが犠牲になるなら知るべきだと思った人には教えたい。それだけです」
銀鏡先輩が俺に疑いの目を向けながら尋ねる。俺がぶらついてる理由なんて呪霊関連以外ないんじゃないのかと言いたげだ。実際その通りではある。
答えてる理由も風紀委員としては看過出来るものではない。何故危険な奴らに関する情報を規制したがるのかと思っていることだろう。
「ハァ……胡散臭いぞ。なんでチナツはこんなヤツに……」
俺の説明を聞いて大きくため息をつく。そうやってため息後に出てきた言葉を聞いて俺は耳が痛いと思わされる。
「なんでキヴォトスの外から来たやつは変なやつが多いんだ。先生なんか冗談で言ったとはいえ本当に脚を舐めてくるわ、小学生の卒アルを何故か持ってるし……」
「何それ……こわ……」
そんな暗い気持ちはあっさりと吹き飛ぶ。言ってる事が事実なら先生に対する印象がだいぶ変わってしまう。女子高生の脚舐めにその子の小学生の時の卒アル確保ってどんな変態だよ。
しかも、それを身長180cmのスレンダー美女がやっているのだ。簡易無量空処でも喰らった気分だ。変に先生の見た目が良いせいで余計に怖い。
「先生にまで呪霊のことを教えたのはもしかして不正解だったかな?あの人の所業がある意味気色の悪い呪いなんだけど……」
「……。し、指揮能力の高さと生徒の為に動いてくれるのは事実だから……」
「一瞬同調しかけたでしょ」
「うぐっ……改めて言葉にすると流石に……」
それでも尚、銀鏡先輩は先生を慕っているらしい。言葉にすると酷いな、なんて思い返すレベルで過去の行いも許している。流石に銀鏡先輩の懐の広さが心配になるレベルだが、先生はなんだかんだ言っていい人ではあるので突っ込むのはやめよう。被害者が許しちゃったら外野は何も言えん。
「じゃあ、私はエデン条約の警備に戻るから大人しくしとけよ」
「はい。勿論ですとも」
流石に雑談が長かったので銀鏡先輩は会話を切り上げて持ち場へと戻っていく。今日はゲヘナもトリニティも忙しい1日だ。それも場合によっては自分達の暮らしが大きく変わるレベルのものである。
俺はお勤めに戻る銀鏡先輩を見送り、移動する。大人しく出来るかはこれから次第だ。
「結局大した行動も起こせないんだよな……俺は……」
そんな受け身な状況はとても嘆かわしかった。変な意地を張らずに先生あたりにでも相談してみればよかったかもしれない。呪霊だってそれなりの程度のものしか祓えないのだ。いつかは1人でやるのも限界が来る。
協力者を募るべきかもしれない。
なんて思いながら空を仰ぐ。晴れやかな空は自分の考えや想いに反して透き通っている。呪いと血で這いずり回る自分とは正反対だ。そんな空がとても羨ましい。
だが、そんな透き通った青空にそぐわぬ物を見つけてしまう。
「──は?」
見つけた飛翔体はエデン条約会場に真っ直ぐ向かっている。あまりにも派手なそれは俺の予想を上回っていたのだ。
アリウスがテロを起こすだろうとは思っていた。
確かに起こしてきた。だがそれは奇襲や潜入といったチャチなものではない。戦争というワードを嫌でも思い浮かべるようなものだ。
「弾道……ミサイルっ!?」
もう防げるようなものではない。爆発は決して避けられない。確定事項だ。ならばどうする?
そんな思考が俺の中を堂々巡りする。爆発は避けられないならせめてこちらの望んだタイミングで炸裂させるしかない。
そうと決まればやることはただ一つ。
「迎撃あるのみ……か?」
不安は覚えながらも急いで建物の屋上へと駆け上がる。周りの人は急に凄い勢いで俺が上に駆け上るものだから困惑する者もいた。普段なら迷惑極まりないが今はそんなことなど言ってられない。
両手の小指と薬指を絡める。次に左右の中指と人差し指を交差させる。最後に左右それぞれをピタリと鏡合わせになるように引っ付け合う。
陽炎や除災といったものに所縁のある摩利支天の印。俺の呪術師としての生き方として好きな仏様。そのようになれた気など一切しないが。
この技は今まで成功させたことはない。親父から教えてもらったそこそこの術士家系、火野家の奥義。
「"陽炎"」
だがやるしかない。このままでは確実に自分は死ぬし、住民達も大怪我をする。そこに強襲されればひとたまりも無いのだ。
「"威光"」
一か八か成立させるために掌印と呪詞の相性の掛け合わせ。省略出来るか否かが肝となる呪術師の基本の逆を行く。
「"護法と必勝の火矢"……っう、ぁっ……」
詠唱も終えるころには普段は感じない炎の高熱が左手に走る。それでもやめられない。
左手は燃え盛りながら不自然な形の陽炎を作り出す。その形は弓を模っていた。今度は左手の炎を掴み、自分の胸の前まで引き寄せる。宛ら弓を引くように。ここ一番が勝負所だ。
「護法火操術、極の番──"
左手が少し焦げても決死の一撃を放つ!!!!
浩介くんの術式名が出ましたがあまりにもなんとも言えない名前なので多分今後もそんなに出しません
更新時間はいつが良いでしょうか?
-
22時〜0時ごろ
-
7時ごろ
-
19時ごろ