呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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クロカゲ……
なんとかinsaneは全部倒せますね……
素材がすっからかんだわ


32 アリウス分校、侵攻

 エデン条約会場付近。ここでは両校が睨み合いながらも集まり、条約を締結せんとしていた。上空には万魔殿の飛行船が飛んでいる。

 

 高所でとある少女は見下ろしていた。これから自分達がやる一大事。それが無事に達成されるのかを確認するために。

 少女の名は錠前サオリ。青黒く長い綺麗な髪を靡かせ、険しい目つきで計画のために大事なそれを見つめる。

 

 マダムもとい自分達の生徒会長が齎した巡航ミサイル。これが今回最も肝となるものだ。条約会場をこれで吹き飛ばし、そこにいる戦力を可能な限り戦闘不能に追い込むことが目的である。これから両校を制圧する為に必要だった。

 

 

「今日この日が我々アリウスの悲願達成の記念日だ。ゲヘナ、トリニティ……お前達にも我らと同じ苦しみを、虚しさを思い知るが良い」

 

 サオリは特別緊張もしていなかった。むしろ歓喜の感情が込み上げるほどだ。自然と笑みが溢れていた。

 

 

 だが、その笑みもあるものを見つけて失せてしまう。

 

 

「あれは……火の塊?」

 

 サオリはミサイルに迫る火の塊を見て疑問が浮かぶ。あれはなんだろうか、と。

 しかし、その疑問もすぐにかき消される。何故ならば明らかにミサイルに着弾するようなコースで空中を進んでいたのだ。

 

 火そのものがそんな動きをするなどあり得ない。こんなことが出来るやつは1人しかサオリには心当たりがなかった。しかしここまでの事が出来るなどと思いもしない。

 

「あれでは……いや、会場も爆破に巻き込まれる。少し爆風が和らいだ程度に過ぎん」

 

 もうあの火の塊を止めるすべなどない。それでも最低限会場に爆発が巻き込めることは確信できた。費用対効果に見合わない結果となったが、致し方ない。

 

 

 ドカアァーーンッ!!!

 

 

 火の塊がミサイルに着弾、誘爆させられる。サオリの見立て通り会場にも爆発が襲いかかっている。爆破する位置が悪く、空中で爆破したので仕留められる戦力は激減しただろう。しかし、先制攻撃としては充分に機能する。

 

「やることは変わらない。まずは自分の用事を済ませよう」

 

 そう言ってサオリはスイッチを取り出し、徐ろに押す。すると上空を飛んでいた万魔殿の飛行船が爆破される。これで最低でもゲヘナ側の生徒会組織の機能は麻痺。

 

「トリニティ、そしてゲヘナよ……これまでの長きに渡る我らの憎悪、その負債を払ってもらう時だ。だが、そのためにもまずは──

 

 

 

 

 

 ──火野浩介、貴様には消えてもらう」

 

 

 錠前サオリはマスクを取り出し、戦場へと降り立つ。これから両校に己が手で死を振り撒くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「大丈夫か!?誰か動けるものはいるか!?」

 

 周りはハッキリ言って地獄だった。焦げた匂いと沢山の瓦礫で埋め尽くされている。嗅ぎなれてしまっている人が焼け死んだ匂いをしないのは幸いなのか忘れてしまったのか。

 

「ぁ……あぁ……サ、サクラコ様!!しっかりしてください!!」

「うっ……」

 

 早速負傷者を発見した。シスター服を着た二人組のようで、サクラコ様と呼ばれた子から出血が見られた。泣いて心配しているのは後輩だろうか。種別はウィンプルを被っているので判別は出来ないが獣耳の生徒だった。

 この場にいるシスター服の生徒といえば、トリニティのシスターフッドが真っ先に浮かぶ。ゲヘナ的にはあまり良い印象はない組織だろう。

 

「どうした!?」

 

 だが、俺にとってはそんなことは関係ない。まずは助けることが最優先だ。もしアリウスの手掛かりが来てもどちらかしか選べないなら救助を先にするつもりでいる。

 

「あなたは……?」

「こんな状況ですまないがゲヘナの一年だ。まずはこの人を安全な場所に」

「……は、はいっ!」

 

 獣耳シスターの子は俺がゲヘナと名乗っても素直に応じてくれた。あまり偏見がないのはこの場では凄く助かる。スムーズにいければまず助かるだろう。

 

「まずは会場だった場所から脱出する」

 

 キヴォトスの生徒なので直ちに命に関わることはないだろうが、万が一があっては困る。戦場になっているここで戦火に晒されればまずい。

 サクラコ様と呼ばれた少女を背中に乗せて周りを確認する。敵影は見つからない。移動するなら今のうちだろう。

 

「こっちの方角で一般市民が避難してるところがある。そこまで行って落ち着こう」

「はい!ありがとうございます!!」

 

 俺が指差して歩き出すと獣耳シスターの子は一際嬉しそうにしていた。獣耳がピクピク動いている。よほどサクラコ様という人を慕っているようだ。

 

「あ、待ってください!あなたも左手が酷い状況じゃないですか!?」

 

 だが、それも一転して曇った表情をしていた。俺の左手を見てしまったらしい。現在俺の左手はぶっつけ本番の極の番によって焼けてしまっている。感覚的には自然治癒で充分治せる範囲だが、そんなことはこの子はわからないだろう。

 

「……それでも腕は使える。支える程度ならなんとかなるよ。俺も避難所で治療してもらうからついでにね」

「は、はい……そういうことでしたら」

 

 大嘘だ。実際は適当なところで戦場に戻るつもりだ。これではチナツさんを始めとする医療関係者に"ゲヘナの病床脱走魔"なんて揶揄されるだろう。

 

 ゆっくりと歩いていけば何やら銃撃戦の音がする。ここは戦場なので仕方ないが、今の状況では避けて通りたい。

 

「シスターさん……戦闘が起こってる。隠れるよ」

「はい。あと、私はマリー。伊落マリーです」

「俺は火野浩介。改めてよろしく。伊落さん」

 

 俺と伊落さんは瓦礫に身を隠し、様子を伺うこととした。どう戦闘を避けるのか算段を立てて効率的に終わらせていきたいが上手くいくだろうか。

 

 チラリと様子を見ると下江さんが着ている服と似たような黒セーラーの生徒に髑髏の校章、青白い肌をしたエグい角度のハイレグシスターが徒党を組んで襲っている。

 襲われているのは正義実現委員会だろう。先生と並ぶぐらいの長身のスナイパー、猫背気味だが戦う姿に覇気を感じさせられるショットガン2丁使いだ。よく見ればこれまた恵体なシスターさんも混じっている。

 3人でかなりの数の生徒を相手取っている。中々の精鋭揃いらしい。よく見れば先生が彼女たちについて行きながら指揮を飛ばしている。恐ろしい数のアリウス生と鋭角ハイレグ軍団にも負けていない。

 

 ……ところでなんだあの服装は!?浦和さんみたいな変態があんなに沢山いるの!?それもおそらくはアリウスに!?

 だが、他にも気になる点はある。鋭角ハイレグちゃん達からは神秘というより恐怖もとい呪力に近い何かを感じる。

 

「あ、あれは……」

「何か知っているのかい?伊落さん」

 

 伊落さんは心当たりがあるのかわなわなと震えている。ハッキリとどういった存在か彼女なりに固まったものはあるらしい。

 

「あれは……"ユスティナ聖徒会"。私達シスターフッドの前身であり、数百年前に消えたはずの存在です……。どうして私達を……?」

 

 何やら気になるワードが出てきた。数百年前に消えたはず、という言葉は重要だろう。

 仮に鋭角ハイレグちゃん達から恐怖を感じなければこれはアリウス側が何かしらの政治もとい歴史的背景をもとにした皮肉混じりな行動と断ずれるだろう。だが、実際は神秘とは真反対な力を感じさせる。

 

 そして、極め付けに先生が指揮する生徒が"ユスティナ聖徒会"を倒すと霧散してこの場から消えていったのだ。呪霊を祓った時に近い消え方だ。

 しかし、ひっきりなしに湧いてくるため困っている様子。精鋭とは言えこれではいつかバテるだろう。

 どうしようかと思案していたところ、鋭角ハイレグちゃんの一体がこちらに気づいて銃口を向けていた。

 

「……やべっ!?伊落さん、ごめん!!」

「ふぇっ!?」

 

 俺はとっさにシスター2人を両手に抱えて飛び上がる。軽めの女性とは言え2人はきつい。虎杖君ならなんなくやるんだろうな。こういう時にフィジカルの強い人は羨ましい。

 

「浩介っ!?どうしてここに!?」

 

 仕方なしに飛び出したので着地先には先生がいる付近となった。俺が上から来たので先生はビックリしていた。

 

「マリーさん!?ご無事でしたか!!……サクラコ様!?酷い怪我を……」

「ヒナタさぁん……。サクラコ様は咄嗟に私を庇ってくれたみたいで……爆発の衝撃を殆ど肩代わりされました……。グスンっ」

 

 着地してきた生徒に伊落さんが含まれていたためか、シスターの子も駆け寄ってきた。伊落さんは同僚に会えた喜びか凄惨な状況による恐怖かどちらかをぶり返したのか泣いて抱きついていた。

 

「サクラコさん……後輩を庇って……」

「……ハスミ、何としてでもここを切り抜けるぞ。必ずあいつらを逃すんだ」

「ええ、わかっています。ツルギ。言われなくても」

 

 正義実現委員会の2人は静かに闘志を燃やしているらしい。級友が意地を見せて倒れたとあれば黙ってはいられないのだろう。

 

「先生、状況は?」

 

 俺は銃を取り出し、敵に向けながら先生に尋ねる。俺と先生の持つ情報をすり合わせが出来れば御の字といったところだ。

 

「今は両校の生徒会組織またはそれに準ずる組織のトップが行方不明あるいは重体。現場の混乱が激しくなってるからそれを治め、反撃するためにも……」

「先生はこの場から脱出しないといけない、ってことか」

「その通り」

 

 状況はやはり芳しくないようだ。権力、指揮能力ともに一級品の先生が現在唯一の希望なのにその先生が無数の兵力に囲まれてしまっている。これでは倒れた生徒会長達と同じ運命を辿り、今度こそ現場の混乱が治らない。

 

「こ、浩介さん!?あなたには左手の火傷が」

「なっ!?その傷で戦うつもりかい!?ここは先生達に任せて!」

 

 俺が参戦するつもりであることを察したのか伊落さんと先生は血相を変えて止めようとしてきた。

 彼女たちからすれば当然の事だが、状況はその当然を許してはくれないらしい。

 

「火野浩介!貴様には死んでもらうぞ!」

 

 1人のアリウス生が俺に銃口を向ける。明確に俺を殺すつもりでいるらしい。名前まで言って予告している。ベアトリーチェは俺を殺すつもりだ。

 

「シン陰流簡易領域 邪法"赫月"」

 

 臨戦体勢に入ったとみなし、俺は簡易領域を展開する。足元から結界が伸び、"敢えて"最大範囲に展開させなかった。

 実は俺、門下生なのよね。邪法はなんとなくつけてる。やっぱりシン陰は刀使ってこそだと思うし。

 

「それがどうした!?し──」

 

 バァン!!

 

「がっ、はっ……」

 

 アリウス生が威勢良く発砲しようとしたら、俺の銃弾が頭部に直撃し後ろへと倒れ込む。気分は西洋の早撃ちガンマンだ。意外と居合の技と相性がいい。

 生徒が神秘を無意識に弾丸に込める起こりを察知し、それをプログラムしておいた簡易領域で刈り取る。意外と良い技だ。タイマンでしか使えなさそうだけど。

 脊髄反射で"焔"を撃ち込むのは強いが、銃の種類もリボルバーなどを考えた方が良さそうだったり改良点は多そうだ。起こりの察知もあれだけ小さいものは目の前でやってくれないと出来ないから後ろからは当然カバーは出来ない。

 

「……今の技は聞いてないけどこの数を相手にするのには向いてなさそうだね」

 

 俺の技を見てか、この場にいるアリウス陣営のリーダー格らしきショートボブの子が前に出てきた。持っている武器はロケットランチャー。火力の高さがこれまた恐ろしい銃火器だ。

 

「恨みはないけどここで終わりに────っ!?ちっ!!」

 

 スガガガガっ!!!

 

「っ!今のは……弾数の多さからしてマシンガンか?一体誰が……おっ!」

 

 リーダー格の子がロケットランチャーを放とうとしたら、それを遮るかのように物凄い弾幕が降り注ぐ。紫色の神秘を帯びた無数の弾丸は瓦礫の山に大きな穴を開ける。

 誰がやったのかと思い、撃ってきた方向を見ると嬉しい人物がそこに立っていた。その人物は長くウェーブのかかった白い髪を靡かせ、血を流しこそしているが雄々しく敵を睨んでいた。

 

 

「先生!こっちに来て!私が退路をこじ開ける!!」

 

 

 ──ゲヘナ最強と名高い空崎ヒナ。彼女がそこに立っていた。




浩介くんはシン陰の門下生です
寿命設定前に考えていたのでちょっとどうしようかなって悩みどころではありますが技を出すのはいいかと思いそのまま使用
実は前に使おうとはしています

更新時間はいつが良いでしょうか?

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  • 7時ごろ
  • 19時ごろ
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