呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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マリーちゃんを引きます
これは性能の問題ではない
脇を拝ませてくれ


33 正義実現委員会との共闘

「……」

「……」

 

 空崎委員長とハスミと呼ばれた正義実現委員会の生徒が沈黙し合う。空崎委員長が助けに来たのはいいものの、ゲヘナとトリニティの溝の深さが問題だった。呪術総監のお偉いさんの利権や派閥争いほどではないが、見てて良いものではない。

 空崎委員長も緊張した顔つきだ。返答次第では余計な争いになりかねないと気がしているのだろう。

 

「……よろしくお願いします」

「!……ありがとう!」

 

 返答は素直に了承だった。頭を軽く会釈程度だが下げてお願いする。表情が微妙だが状況をキチンと見れているようである。

 空崎委員長は少し面食らったようだが、すぐさまお礼を言って先生の元へ駆けつける。これで先生はキヴォトスでもトップクラスの戦闘力を誇る空崎ヒナの護衛を得た。

 

「先生!行ってください!後は風紀委員長が先生の退路をこじ開けます!」

「私達は先生の退路を守ります」

「どうかお気をつけて……!」

 

 トリニティの面々は自分達のやることを固めたらしい。短い間で作戦を練ったわけでもないのに合わせられるのは中々優秀だった。大事なことを見逃してはいないらしい。

 

「なら俺も参戦して隙を見て、伊落さん達と一緒に逃げようかね」

 

 俺は自分の拳銃を持ち、呪力を練り上げていく。久しぶりに来た命のやり取りに心が騒つく。渋谷以来の極限状況。あの夏油傑の偽物とやり合ったことを思えばこの状況は大したものじゃない。

 

 比較対象が酷すぎるだけのような気もするが……。

 

「あなたは……?」

「俺か?ゲヘナの火野浩介。そこのお二人は服装からして正義実現委員会だよな?下江さんの先輩かな?」

「コハルと知り合いか?」

「ええ」

 

 俺がやる気満々でいるのを見てか正義実現委員会のお二人は困惑した表情でこっちを見ていた。取り敢えず下江さんの名前出しておこう。

 ツルギと呼ばれていた猫背気味の人が反応してくれた。この様子だと関わりが深いらしい。この様子からかなり可愛がられているようなのでこれならば……。

 

「ああ。いい腕をしてるよ。それに凄く良い子だよな」

「っ! ええっ!自慢の後輩です」

 

 よし、良い感じに乗せれたな。ハスミと呼ばれた人は下江さんが褒められているのが嬉しいのか笑顔だった。実際、あのカーチェイスの時は狙撃の腕の高さに苦戦してはいた。

 

 話しているうちに先生のいたところからこれまで感じたことのない神秘の力の高まりを感じる。見てみれば空崎委員長がリロードしながら敵の数を数えていた。銃からは彼女の紫色の神秘が溢れ、銃身に駆け巡っていることが見てとれた。

 

 

「先生!私が打ち終えた後に走って!!」

「わかった!」

 

 ズガガガガッ!!

 

 物凄い勢いで銃声が響く。空崎委員長が敵を薙ぎ払っていた。彼女の神秘によって強化された弾丸は紫色の輝きを放ち、鋭角ハイレグをあっという間に消滅させた。あれもうビームじゃん。ゴジラかこの人。

 それに先生が離れるなら遠慮なく術式が使える。広範囲攻撃は得意だから今の状況であれば俺の天下よ。

 

「……先生は離れたな?よしっ!」

 

 俺は拳銃はしまい、両手に呪力を込める。これなら先生は巻き込まない。俺がホムラだとバレるとか今は後回しにしよう。バレなければ運が良かったと言うことにしよう。そうしよう。

 

「はあっ!!」

 

 術式を使い、広範囲に炎を振り撒く。戦闘力は2級呪霊よりかは強いだろうが、耐久が並程度ならこれで火力に不足はない。

 

「……ハァ……、やってらんない」

 

 アリウスの子はため息をついてその光景を見てた。あの兵力が一瞬にしてかなりの数を減らされたのだから気が滅入っているのだろう。

 

「い、今のは……!?」

「ハスミ、詮索は後だ。今はアリウス生達を倒すぞ。確実に減らせるからな」

「えぇーと、マリーさん!とりあえずサクラコ様と一緒に私の後ろに!」

「は、はい……」

 

 各々がやることを決めて行動を始める。正義実現委員会はアリウス生の掃討、シスターフッドは自分達の上司を守る方針のようだ。

 そうなれば俺のやるべきことは以前変わらず術式による怨霊もどきを撃滅すること。彼女達は厄介な事に倒してもキリなく湧いてくるが、少ない呪力消費で充分。

 

 

 

「キヒヒ……暴れる時間だあ!!!」

 

 だから後は彼女達にアリウスを倒してもらえればなんとかなる、と思っていたが突如として今まで落ち着いて相方を諌めていた子が発狂したかのような声を出した。確かツルギと呼ばれていた子だ。

 顔が怖い。目、口ともに大きく開いており、今にも噛み付かんと言わんばかりだ。スイッチが入ったのか物凄い速度で敵の目の前に向かっていた。

 

「くっくっ……くっくっくっ……

 

 

 ……ちゃーん!!

 

 なんだかおどろおどろしい雰囲気を醸し出したら今度は謎の奇声まで発する始末。今なんて言った?発狂したイク⚪︎ちゃん?

 

「正義実現委員会の委員長だな!?ここで討ち取る!!」

「撃て!!」

 

 だが、アリウス生も気迫で負けていない。自ら戦果をもぎ取らんと言わんばかりに攻めかかる。撃ての一言でその場にいたアリウス生がツルギさんに掃射する。

 その掃射をツルギさんはものともせず受け止める。避けようなんて考えを一切感じさせない。お前らの銃弾など怖くない、そう言っているかのように。だが、それでも多少はダメージを受けている。

 

 

「無ぅ駄だぁああっ!!」

 

 結局ものともせず、2丁のショットガンから物凄い数の弾丸が発射される。その銃は一体どんな改造してんの?って言いたくなる。

 一回撃っただけで3人は倒され、ツルギさんはスピンコックでリロードしている。今ので全弾撃ち尽くしたのだろう。どう撃ってるんだろうか。

 

「ひきゃあああ〜〜〜〜〜〜!」

 

 そして今度は奇声をあげながら上の空だ。驚くことに傷がみるみる再生している。キヴォトスにも反転術式使いがいるのだろうか。並のそれではないのが見て取れる。恐らく神秘も大した消費をしていない。化け物かこの人は。

 

「浩介さん……でしたね?まあ……その……驚くのもわかりますが、今はユスティナ聖徒会を殲滅してください」

「アッハイ」

 

 困惑している俺を見て、何かを察したのかハスミさんが声をかけてくれた。淡々とアリウス生徒達をスナイプして倒しており、腕の高さが伺えるが正直それに感心するどころではない。俺の返事もどこか生気のないものになってしまった。

 取り敢えず言われた通り無限湧き兵士を処理することだけを考えよう。あの調子ならアリウスは倒せる。俺が漏らさず倒せば後はイージーゲームだ。なら少し欲をかいてみよう。

 

「……出来ればアリウスの生徒を捕らえて欲しいな。聞きたいこともあるんだけど……だめ?」

「……一応聞きますけど何を聞くおつもりですか?」

「アリウス自治区への侵入方法」

「……そういうことでしたらご自分でお願いします。正義実現委員会としてはゲヘナにそういった情報を渡すのは厳しいので」

「あらら、手厳しいのね」

 

 欲をかいてみたが見事に玉砕。俺の役割はハイレグどもの処理なのにそれだと捕まえられないではないか。ゲヘナの誰かが捕まえることに期待するしかないだろう。

 

「まあ、いいや」

 

 切り替えて俺は術式の操作に集中する。炎を放ち、それを縦横無尽に動かす。ハイレグを焼いては別のハイレグへ炎を移して敵を多く減らす。

 結局こっそり参戦するつもりだったとは言え、伊落さんを先輩さんに任せて放置することになったのは申し訳なく思う。退路に敵がいたとは言え戦う俺を伊落さんは心配そうにみてる。左手の火傷は爆発に巻き込まれたものによるものとか適当抜かした自分が悪いけど。

 

 

 バァン!!

 

 

「……ゔっ、がっ…………」

 

 突如として響く銃声。それと同時に腹に鈍いものが襲いかかる。ここ最近というかキヴォトスに来てからなってなかったが、嫌でも自分に何が起こったのかわかってしまう。

 それに釣られて俺は吐血する。そこまで多くないが嫌でも自分のダメージのデカさを痛感してしまう。生半可な弾丸は通さないぐらい呪力のガードをしていたつもりだが、不覚。

 

「……いい神秘じゃないの。誰だい?貴方は?」

 

 俺は撃たれた方向に振り向く。一番の脅威となりえる存在をしっかりと把握しなくてはならない。誰よりも強い敵がそこにいるのだ。

 敵は青黒い髪を靡かせ、顔の半分を黒いマスクで覆っていた。彼女の手には彼女の神秘を通したと思われるARがあり、それで俺の強化の緩いところを撃ち抜いたらしい。彼女は少しばかり近づき俺に銃口を向ける。

 

 

 

 

 

「……錠前サオリ。お前に死を振り撒くためにここに来た」

「おお、怖い怖い。護摩の炎でも焚いてやろうか?悪霊ならぬマダム降伏を祈願してやるよ」




サオリが浩介の呪力ガードをぶち抜いたというより、薄いところを通した感じです

因みに護摩の降伏(ごうぶく)は決して人を恨んでやるのではありません
本来は、自他の煩悩や悪業の勢力を調伏するのが目的

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