呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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更新が遅くなりました
結構とっ散らかって来てますね……


35 慟哭、悔恨、凶弾

 マリーは慟哭していた。

 

 何故、浩介さんがここまでやられてしまうのか。何故自分はなんの役にも立ててないのか。そんな思考で一杯だった。

 

 何故……。

 

 

「気に……な。おれが……狙われただけだ……」

 

 彼は自分に微笑んでくれるのか。自分の命が危ないというのに。

 

「浩介さ──」

 

 流石にこのまま放置など出来ない。今度こそ自分が拾い上げてみせるとマリーは駆ける。助けるための行動としては妥当だが、この戦場でそんな余裕はない。

 

「残念だったね」

 

 戒野ミサキは既に次の弾頭を放っていた。サオリが火野浩介を仕留めたのと同時に残りの戦力を掃討するために。

 先程は浩介に全て迎撃され効力を発揮されなかった。しかし今は違う。ここにいるのは耐えることはあっても迎撃して無傷で済む者は1人もいない。剣先ツルギでさえ、自前の再生力で強引に耐える他ない。

 

 ドドドドドドドッ!!!!!

 

 けたたましい爆音が辺りに鳴り響く。ある者は味方を庇い、ある者は耐えるしかなかったり、ある者は……助けようとした人が爆風で吹き飛ばされるのを見ながら爆発に巻き込まれたりしていた。

 

「ぐっ!アリウスっ……!なんてことを!?」

「ハスミ……落ち着け……なんて言ってられないな。あれは流石に許容ラインを超えてる。もう私が暴れるだけでは終わらない」

 

 アリウスが召喚したミメシスの対処の要であった浩介はやられてしまった。おまけに正体不明の化け物に高火力の攻撃、ハッキリ言って押し返すのは厳しい。ツルギ単体が突っ込む方法もあるが、時間もかかるしそれをやってもツルギ以外は戦闘不能になるのが目に見えている。

 徹底抗戦では不利。先生に後追いさせないのはもう不可能に近い。出来るのは誰を通さないようにするかだ。通したくないのは浩介を倒した錠前サオリという生徒が筆頭だろう。

 

「ミサキ、火野浩介を吹っ飛ばしすぎだ。奴の死体を欲しがっている人がいることを忘れるな」

「……大丈夫だよ。四肢は全然繋がってるし、あれだけ攻撃されても綺麗な状態で問題はないでしょ。それにほら、あそこ」

 

 アリウスの2人はミメシス、呪霊と共に残ったトリニティを囲むように移動する。ここから逃す気はないと言わんばかりだ。

 

「サオリさん。火野浩介の遺体を回収しました。こんなこと……」

「余計な口答えはするな。萩田ギンコ衛生兵。……わかるだろ?」

「……うん」

 

 どこかから出てきた少女が浩介を担ぎ、サオリに駆け寄る。表情は暗くやろうとすることに内心納得がいってない様子だった。ただそれもサオリが含みを持たせた言い方をすると静かに頷くだけだった。

 

「ケホッ……ケホッ……か、彼をどうするつもりですか!?」

 

 マリーはダメージが残っていながらも目の前の蛮行を流石に許容出来ず、咳き込みながらも銃を構える。死体を欲しがるだの四肢は繋がってるだの物騒な会話は嫌な想像を彼女の中でぐるぐるさせてしまう。

 

「……さあな。研究の材料にでもされるんだろうな。おっと」

 

 サオリはそんな彼女を一瞥した後撃ち抜こうとするが自身に迫る存在に気づいてその場を離れる。先ほどの衛生兵の近くに立ち、彼女を守るように立っていた。

 サオリを襲ったのは彼女自身が出した呪霊だ。呻き声をあげながらも無差別に襲いかかっているのである。自分達とは相反する力を発する少女は漏れなく殺傷対象だ。

 

「お前達にはミメシスと呪霊の相手がお似合いだ。ミサキ、最後に派手にかましてやれ」

「了解」

 

 ここまでやればもう正義実現委員会とシスターフッドそれぞれのトップの相手など必要ない。サオリはいかに剣先ツルギと言えど負傷者2名という足手纏いを守りながら、無限の兵力と正体不明の化け物を突破してかつ自分たちに勝つのは不可能と判断した。それを察していたのかミサキは既に撃つ準備を整えてサオリの命令と同時に凶弾を放つ。

 

「くっ!?これでは……」

「……」

 

 自身の状況を嫌でも理解し、悔しく歯噛みする正義実現委員会の2人。周りは無限の兵力と呪霊、上空はミサイルの大群。これではあの3人は取り逃してしまう。負けないなら兎も角彼女の足を止めるという目的は失敗に終わる。

 

「ごめんなさい……サクラコ様、ヒナタさん、浩介さん、ツルギさん、ハスミさん。ごめんなさい……」

 

 マリーはただ只管己の不甲斐なさを呪うしかなかった。

 

 

 彼女の悔恨が漏れた後辺り一面は爆炎に包まれる──。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 一方、ヒナと先生はというと……。

 

 

「しつこい……!」

「ヒナ!無理な追撃は止めておくんだ。走るよ!」

 

 ユスティナ聖徒会に追われていた。無限に湧く兵力は最初こそなんとも思わなかったが回数を重ねればその厄介さが身に染みる。

 空崎ヒナは職務や武器の関係上、多数の相手は得意な方だ。自分にとって一番の土俵と言ってもいい。しかしそれも無限が相手では崩れ去る。単純に弾が足りないのだ。故に先生は殲滅よりも要所要所で撃たせるように指示を出していた。

 

「ヒナ、あそこの看板に撃って10秒後にあそこの壊れた車を」

「了解」

 

 出せる手は弾を直接当たるのではなく少ない弾数で物を壊したりして進路を妨害するのが関の山だ。ヒナは冷静に構え、指示通りの動きをする。実際こういった手でさっきまでは凌げていた。

 

 ヒナが看板を撃ってその後壊れた車を撃ち抜き、中のガソリンが引火する。先生達は距離を離していたため爆発の影響はなくある程度ミメシスの足止めに成功する。

 

「よし!走るよ!」

「ええ!……ん?……先生!そこに隠れて!」

「え!?わわっ!!」

 

 効果があると見るや否や先生はヒナに逃走を促す。ヒナもそれに従おうとしたが、そうもいかないことに気づき先生を軽く突き飛ばす。危ないが致し方なし。

 先生はヒナに言われるがまま、路地裏に入る。どうしたのかと思い、さっきまで自分がいたところを見るとゾッとするハメになる。

 

「こ、これって……ライフルの弾!?もしかしてスナイパーがいるの!?」

「そうみたい。気付くのが遅れたら……」

「ひぇ〜……ありがとうヒナ。助かったよぉ〜!!」

 

 射線を切るためだとわかったら先生の背中にはヒヤリと汗が流れる。ヒナにお礼を言って、更に奥側へと入っていく。スナイパーから確実に見えないようにしないといけない。

 

「ヒナもこっちに!建物で射線を切りながら進むよ!」

「ええ!」

 

 ここから先はスナイパーに気をつけながら入り組んだ街の路地を駆け抜ける。狭くなった分ミメシスに遭遇した時の危険性は増してしまうが、現状はスナイパーの方が危険だ。

 

「もう少し!もう少しでセナが待っている場所に行けるわ!ゲヘナの救急医学部で先生を保護する!」

「なるほど!そこでヒナも治療して反撃の準備だね!?」

「ええ!だから今は走って!!」

 

 先生とヒナは息を荒くしながら目的の場所に向けて走る。後もう少し、あとほんの少し。そう思いながら。

 

 

 

 もう少しで──

 

 

 

「そこまでだ」

 

 

 

 先生が逃げられる、というのに……。

 

 

 

「先生っ!!!!!!!!」

 

 

 ヒナの行動は早かった。とにかく目の前に現れた青黒いロングヘアの女性が放つ凶弾から先生を何としてでも守らんと前に立つ。

 

「うっ……くっ……ぁぁ……」

「ヒ……ナ……!?」

 

 ヒナは先生を庇うように被弾する。普段ならなんて事ないが蓄積されたダメージがある今だとかなり堪える。もうヒナに余裕などない。せめて十全な弾さえあれば何とでもなる自信があるというのに。

 

「うっ……あああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「ヒナ!?銃を捨て──うわっ!?」

「先生、喋らないで。──舌を噛んで……しまうか……らっ!!!」

 

 故に選択したのは身を軽くして先生を担ぎ逃走することだった。武器は惜しいが先生の命には変えられない。どのみち弾がないなら長物の鈍器になるのが関の山なら今は要らない。重いだけだ。

 

「ちっ!だがその逃走経路だと車が通れるほど視界が開けている!ヒヨリ!ミサキ!姫!行ったぞ!!」

『了解』

 

 アリウスも負けじとすぐさま行動に移す。物凄い速さでヒナが移動しているが、既に重症。限界がすぐに来るのはわかっている。確実に追い込むのみ。

 

 バァン!!!

 

 ヒナが走り出して少しした後、大きな銃声が響く。

 

「うっ……し、しまっ」

 

 それと同時にヒナの脚に銃弾が直撃していた。その衝撃は走る速度を維持する事を困難にする。ここで倒れないのは彼女なりの意地か。

 

「……悪足掻きもここまでだな。空崎ヒナ」

 

 しかし、こうなればアリウスに取り囲まれるのは必然といえよう。先程の女性の他に2名の生徒が一緒に取り囲んでいた。

 

「ハァ……ハァ……あなたがこのテロの首謀者?」

「……そうだ。錠前サオリだ。空崎ヒナ、お前も始末する。あのゲヘナ生のようにな」

 

 アリウスのリーダー格、サオリとヒナは睨み合う。銃もなく満身創痍。勝負をすればどうなるかは火を見るよりも明らかだろう。それでも気迫でヒナは負けていなかった。今にもお前の喉に食いついてやると言わんばかりだ。

 

「──お前も……あのゲヘナ生のようにって……まさか!?」

 

 だが、サオリの言い分から気付いてしまった。最悪の事態に。

 

 周りを囲う生徒を見れば正義実現委員会に先生を任された場にいたボブカットのアリウス生がここにいるのだ。それが正義実現委員会を抜けてここまで追いついている。

 

 

 これが意味するのはつまり……。

 

 

「わかりやすく言っておこうか」

 

 

 

 

 サオリは銃口を向けながら殺意のこもった目でヒナを見る。次に発する言葉はヒナと先生を大きく揺さぶるには充分だった。

 

 

 

 

「──火野浩介は私が殺した」

「なっ──」

 

 バァン!!

 

 サオリが一言、発した後一発に銃声が鳴り響き道路上に真っ赤な血飛沫が舞い散った。




サオリはパパ黒とは違って言った後に発砲してますね
サラッとオリキャラがいます
今後出るかもね

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