呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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さりげなく重要な事が起こっちゃいます


40 奥の手と曝露

 結論から言うとあの化け物は呆気なく鎮圧された。流石にあの3人を相手にして持ち堪えるのは無理だったようだ。これではどちらが化け物かわからない。

 

「クソッ……!」

「アンブロジウスも倒れた……手札が無いね。私達の負けだ」

「そんな……これから辛い目に遭うのでしょうか……」

 

 アリウススクワッドと補習授業部の戦いも先生の指揮もあってか、補習授業部が勝ったようである。元から彼女達を知ってる白洲さんの存在も大きいだろう。ていうかあの化け物アンブロジウスっていうのか。

 

「結局、俺の出番は無かったな……」

 

 先生に回復役を任されこそしたがその出番すらない。尤も先生は初めから俺に出番が回らないようにしていたのだろう。俺が病み上がりというのは本当だし、先生からすればリスクのあるかもしれない再生をしてると思われても仕方ない。

 反転術式も目覚めたばかりで完璧ではないので、正直に言うと練習のためにも戦いたかったものだ。とはいえそれは先生のご厚意を無下にするのでなしだ。

 

「いや、まだだ。まだ……あれがあるっ!」

 

 追い詰められても錠前サオリは諦めていなかった。まだ何か策があるらしい。ここまで追い詰められても漸く使うものは一体なんだと言うのか。絶対に碌でもない。策を実行する為にも彼女は走り出す。

 

「サオリ……!?待って!!」

 

 それを見て補習授業部の白洲さんは追跡する。ただならぬものを察知したのか傷だらけでも走る速度を緩めない。

 

「アズサちゃん!そのまま行ってください!今の言い方は何かしらの手段が残っているものです!」

「な、なら私達も一緒に……!」

「そ、そうです!アズサちゃん1人だけで──」

 

 残るメンバーも白洲さんに続いて追撃に向かおうとする。その様子はどこか強い結束力のようなものを感じさせる。前にトリニティで出会った時から思っていたが、本当に仲がいい。

 前の時だって友達と一緒に遊んで、恥知らずにも白洲さんの事情を蒸し返そうとした俺に対しても優しく丁寧に接してくれた。呪霊が出た時も今回も助け支え合っている。なら俺は──。

 

 

「──え?」

「ヒフミ!後ろ!!!何かいる!!」

 

 

 こういった子達を守ろう。呪術師として。

 

「ハァッ!!」

 

 俺は火を放ち、阿慈谷さんの後ろにいた呪霊を焼き払う。アビドスの面々だっているが、そんなことは後回しだ。今はただ、呪術師としての務めを果たせ。

 

「こ、浩介……?」

 

 そんな俺の行動を見て驚愕するものがいた。先生だ。前に彼女は俺がホムラとして動いていた時に術式を使う様子を見ていた。夢の中で百合園さんに曝露こそされたが確定させるのはこれが初めてだ。

 

「……先生。今は色々と目を瞑ってください。話は後にしましょう。特に……そこにいるアビドスの子達にはね。今は白洲さんと一緒に行って決着をつけてください」

 

 後ろにいる小鳥遊さんに向けて指差しながら先生にお願いする。今は黙って目の前のことに集中して欲しいと。

 

「……そうか。やっぱり君があの時の仮面の男なんだね」

 

 小鳥遊さんは俺が炎の術式を使うのを見てどこか残念そうな表情をしていた。かつては一緒に銀行強盗をした仲間が敵の正体なんて知れば無理もない。……銀行強盗の方は無理があるけども。

 

「あの紙袋被ってくればよかったな……覆面No.6ってな」

「ん。私の怒りが頂点に達する前に冗談を言うのはやめて」

「銃口向けながら言わないでよ。一番乗り気だったろ」

 

 砂狼さんが銃口をこちらに向けながら怒りを露わにする。無理もないが今は見逃して欲しいと言いたくなる。それを言ってしまったら彼女は引き金を引きそうだけども。

 

「ちょっ、シロ──んむっ!?」

「先生、今は錠前さんを止めるのが先でしょ。ほら、行った行った」

 

 まずい雰囲気になるのを見てか先生が止めに入ろうとするが、これ以上場が混乱しても良くない。先生の口を塞ぎ、黙らせた後に白洲さんの方に向けて押し出す。

 

「……わかった。後で色々と聞くからね。アズサ、行こう!」

「お気をつけて」

 

 先生は渋々と言った感じで追跡の方に向かう。これから白洲さんと錠前さんの最終決戦だろう。錠前さんとの実力差をひっくり返すためにも先生には行ってもらわないといけない。

 

 

 手を振り見送った後、俺は残る兵力に目を向ける。

 

 

「さて、残りの雑魚はどうしようかな」

 

 正直数が多くて困ってる。雰囲気からしてこれを倒せば残滅完了だ。とはいえ、それでもかなりの数だ。せめて一箇所に纏まってくれればどうにかなるのだが、難しいだろう。

 前に夜のアビドスで呪霊を倒した時は小鳥遊さんが比較的冷静だったため、こちらの要望を聞いて一箇所に集めてくれた。しかし、今は宿敵と判明したので協力を頼むのが厳しい。風紀委員の方に話をするしかないだろう。

 

 

「確か、一箇所に集めればいいんだよね?浩介?」

「ホシノ先輩……?何を言ってるの?」

『一体何をするつもりですか?』

 

 だが、小鳥遊さんはあくまでも今の状況をなんとかすることを優先するらしい。俺のやりたいことを察して口に出してくれたのだ。あの場にいなかった他のアビドス生は首を傾げている。

 

「小鳥遊ホシノ……何をするつもりかしら?」

 

 俺達のやり取りを見て疑問に思ったのか空崎委員長が小鳥遊さんの元へ来ていた。ぶっちゃけこの人がいれば何とでもなりそうではある。

 

「いやね、そこの浩介くんの力はかなりの火力でいけるみたいだからさ。纏めれば一網打尽でしょ」

「そう……なら私は何をすればいい?」

「話が早くて助かるよ。追い込む場所は……アヤネちゃん上空の写真撮ってくれる?風紀委員長ちゃんと決めるからさ」

『は、はい!』

「決めたらアコにも送ってくれるかしら?」

『りょ、了解しました』

 

 小鳥遊さんと空崎委員長は緩い雰囲気ながらも作戦を決めていく。一応俺はまだ了承してないが、それを言うのは怖いからやめよう。どうせそのつもりだし。

 何気に2人に仕事を任され、奥空さんも緊張しているようだ。下手な生徒だとちびるだろ、アレ。

 

「取り敢えず……これが終わったら覚悟しなさい!勢いで有耶無耶になんかさせないから!」

「まあまあセリカちゃん。気持ちはわかりますけど今は目の前に集中しましょ。先輩達が場所を決める前にある程度敵を止めておかないといけませんから〜⭐︎」

「ふにゃっ!?ノノミ先輩そこは掴まないで!?」

 

 俺に黒見さんが突っ掛かり睨みつける。それを見て十六夜さんは首根っこを掴みながら俺から引き離す。絵面は母猫に首を掴まれた子猫だ。

 

「じゃあ、アヤネちゃん。ゲヘナとトリニティに伝達してね〜」

「頼むわ」

『はい!』

 

 そうこうしている内に場所を決めたのか情報伝達の任を奥空さんに託していた。何気に凄い大役を任されてるな、彼女。

 

 決まってからの行動は早かった。いくらゲヘナとトリニティが犬猿の仲とはいえ目の前の敵を倒す程度なら先生の指揮を一緒に受けたという熱がある内なら出来るらしい。瞬く間に情報は伝わり、呪霊とハイレグ集団を取り囲むように動いていた。

 

 最終的にトリニティは浦和さん、ゲヘナは天雨行政官が指揮をとるらしい。アビドスは当然奥空さんだ。この3人が連携を取りながら進めるらしい。

 

『『『作戦開始!』』』

 

 3人の声が全員に響いた後、一斉に動き出す。先生ほどではないが、即席としては中々のものだ。

 

「"安寧を願う護の火よ"」

 

 俺は皆の期待に応えるためにも全力でやらせてもらう。出し惜しみはなしだ。

 

「"穢れ、邪気を焼いて安らぎを齎し"」

 

 普段は使わない詠唱を唱える。効果よりも願いを込めて。

 

「"天までその猛き火を届け給え"」

 

 両の手が燃え上がる。準備は整った。

 

『準備完了です!お願いします!!』

 

 奥空さんの声が俺に届き、解き放つ時は来た。その声に合わせて全員が全速力でその場を離れる。これだけの数を一度に焼き払う火力を察しているらしい。

 

「"火柱"」

 

 勢いよく両手を地面に叩きつけ術式を起動する。普段はちょっとした柱が立つ程度だが今回は違う。普段の倍以上高く広く燃え上がる。これで敵は全て殲滅される──

 

 

 ──ハズだった。

 

 

 ゴオォォォォォォォォッ!!!

 

 

 同時に先生が向かった方角からとてつもない力の奔流が走る。その奔流は錠前さんの言う奥の手が起動したものだと推測するには充分だった。




次回はアイツが出ます
エデン条約3章24話……
皆さんはどうでした?

俺?ドヒナが居たよ……

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
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