呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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ビナーくんカチカチスギィ!

更新遅くなってすまぬ。
ビナーくんの大決戦がある内に出したかったんや……
え?総力戦に間に合わせろって?
ハイ……オッシャルトオリデス……


42 先生の指揮

「今回は待機するように言ったよね?」

「先生、俺への指示は回復だろ?そこの生徒達の回復に来たよ」

 

 先生は何としてでも俺を遠ざけたいようだが、俺は適当な返事する。回復役として来た、なんておかしな言い分である。

 俺の言い訳に呆れたのかハァ、と大きなため息を吐き自身が召喚した生徒達に目を向ける。今は俺よりも優先すべきものがあるのは確かである。

 

「先生の了承も得たことだし……」

「得てない。得てないって」

 

 手から炎を出し、目の前の巨人に向ける。俺は早速言い訳と矛盾する先制攻撃をするつもりでいる。先生の声がするがここは聞こえないフリをしよう。

 

「まずは……"火柱"!」

 

 両手を地面に叩きつけ呪力を流す。呪力は瞬く間に巨人の足元に辿り着き、炎となりて登っていく。直接触れて内側から燃やしてやりたいところだが、迂闊に近付いていいものかわからないのでまずは様子見である。

 火柱は聖堂の天井まで辿り着き、巨人を焼き尽くす。とは言ったものの正直手応えを感じない。最低でも特級想定なのだ。これで終わるとは思えなかった。

 

「嘘でしょ……」

 

 手応えがないどころではなかった。巨人は俺の炎を振り払い、ちょっとだけ焦げた感じで問題なさそうにしていたのだ。かなり耐久性の高い化け物らしい。

 

「ゲマトリアめ……厄介な事をする」

「……全くだね」

 

 俺が一人愚痴をこぼし、先生はそれに同意する。お互いにうんざりした顔をして目の前の巨人を見つめる。個人的に今まで戦った中で渋谷での夏油さんの偽物の次に強いと思う。俺の世界なら間違いなく五条先生案件だ。

 

 恐らくは単独での勝利は不可能。何かしらのギミックを見切ったらいけるなんて生優しいものではない。純粋な地力の低さが露呈した形となる。

 

「浩介、HGで応戦してもらえる?あの……えーと……あれだ。ほなんとかって技を撃つタイミングはこっちで指定するからさ」

「"焔"のこと?……只今残弾が三発しかありません」

「充分だよ。ていうか専用の弾丸があるんだ?」

「事前に儀式で弾丸に呪力を込めてるんだよ。大怪我もあって時間がないまま来たから在庫が尽きそう」

「儀式?今度見てもいい?」

「燃やすぞ妖怪イオリ脚舐め。……来るぞ!」

 

 先生は俺に指揮下に加わるように言ってきた。どうも"焔"を当てにしているらしい。火力自体は"火柱"の方が高いから大して効くとは思えないが今は先生に頼る他ない。先生と言い合っているうちに敵は痺れを切らしたのか力の起こりを発する。

 巨人は自身の錫杖で地面に突き刺すように叩き、呪力に近いエネルギーを俺たちの頭上から降らす。見た感じ俺たちの近くで爆発する攻撃だろうか。

 

「浩介は走って巨人の後ろに回り込んで!挟み撃ちにするよ!」

「おい!あの攻撃は!?」

「大丈夫、あの子達なら受けられる!」

 

 先生から出た指示は挟み撃ち。敵が普通の奴ならいいが、今回の相手はそんなの関係ないほどのデカブツだ。意味があるとは思えなかったが取り敢えず従う事にする。

 全力で巨人に向かって走り、後ろに回り込む。他の生徒達は受け切れるというが本当だろうか。特級の攻撃をもろに喰らって無事なんて普通はおかしい。

 

 

 いや、そもそもあの生徒達の存在自体がおかしい。何故ここに空崎委員長がいる?下江さんに鷲見さん、恐らくはゲヘナでもトリニティでもない残りの子達は何者だ。空崎委員長、下江さんと鷲見さんに至っては物理的な意味でここにいるのがおかしい。

 極め付けは生徒達から少なからず先生を感じる事だ。あれではまるで式神ではないか。これほど強力で意思疎通も図れる式神はそうはいない。式神といえば伏黒君の十種影法術は影を媒介に式神を召喚している。媒介なしで出す呪霊操術とかもあるが、あれは自身の体内に格納している筈だ。なら先生は何を媒介としているのだろうか。答えは先生が生徒を召喚する場面を見ないとわからない。ただわかることは一つだ。

 

 

 

 これはどう考えても高専だと特級認定だろう。かつての夜蛾学長と同じような理由でだ。高専の先生に対する考え方次第では虎杖君や乙骨先輩と同様に秘匿死刑すら言い渡しかねない。

 

 

 

「皆んな大丈夫!?」

「えぇ、まだ戦えるわ」

 

 耐えれるとは言え心配なのか先生は皆んなに声をかける。生徒達は先生の言うとおり耐えてはいる。そう何発も受けられそうにはないが戦闘続行は可能だ。

 

「……」

 

 巨人はその光景を見てか何か考えている様子だ。そういった機微が存在するのかどうかは疑問が残るが。

 少ししたら解答を得たのかまた錫杖を動かし、呪力に近い力が一人の生徒に襲っていった。あれは呪術師の俺から見ればわかりやすい。

 

「先生!犬耳の子が呪われたぞ!!」

「なんだって!?……なるほど。コハル!ウミカを回復させるよ!」

「は、はい!!」

 

 俺の声を聞いて先生はシッテムの箱に目を通す。手先を動かし何かしらの解析をしているようだ。その解析も手早く、何かしらの解決策を導き出したようである。おそらくは初見のものをものの数秒で理解している。

 

「いや、解呪の方法なんてすぐにわかりっこな──」

「ありがとうございます!」

「い……うそーん!?」

 

 犬耳の子が下江さんの手榴弾の爆発を受けて何故か傷が回復したのだ。おまけに呪いなんて嘘みたいに消え失せてしまっていた。これには俺も二重の意味で驚かされる。

 

「浩介!"焔"は頭上からの攻撃が来た時に弾くために使って貰えるかな?」

「術の相殺に使うのね。だけどよ……四発目以降はどうするんだ!?三回しかないぞ!」

「その心配はないよ」

「え?」

 

 先生は続けて指示を出して来た。内容は俺に巨人の攻撃を残りの"焔"で相殺させるようにとのこと。大したダメージにならないなら確かにいい使い方かもしれないが残り三発しかない。3回しか使えない防御策など不安定に思える。

 

 

「その三回の内にアイツは倒れる」

 

 

 俺の疑問に対しても先生はサラリと答えてみせる。それも自信満々に。まさか先生からこんな台詞を聞けるとは思わなかった。優しい顔してなかなかアグレッシブだ。

 

「……クックッ!これは応えないとなあ!!まず一発だ!」

 

 俺は先生の台詞に痺れてしまった。台詞だけでなくそれを本気でやろうという気概を彼女から感じて仕方ない。黒服が先生に興味を示す理由もよくわかる。俺はいまだに先生を有力な権力者程度の認識でいたようである。

 それもここで終わりだ。全力で任された仕事を確実に遂行する。起こりを早速感じたので"焔"を用意する。ハイレグ集団も妨害に入るがその程度でしくじるつもりはない。

 

 バァン!!

 

 まずは一発目を消費する。先生の目論見通り巨人の攻撃を撃ち抜き相殺させていた。これなら先生の召喚した生徒達の安全も確保出来るし、いい作戦だとは思う。

 

 あとは火力が足りるかどうか、それだけだ。

 

 

「ヒナ!!もう一発いくよ!」

 

 先生は空崎委員長に攻撃の指示を出す。恐らくは彼女の得意とする紫色の神秘が籠った攻撃。ゲヘナにいてよく美食研究会がくらっているのを見たことがあるから知っている。あれは上から見ると扇状に広がっていて敵の殲滅に長けている。

 ただ、扇形の攻撃範囲にも弱点はある。距離が離れている分には巻き込み易いが近づかれると死角が多い。撃ち込む場所は広がる前なので上から見ればかなり鋭角気味だからだ。

 

「っ!!待てよハイレグ集団!!てめえらを前に行かせねえ!!」

 

 今回の敵は巨人だけではない。あの無限湧きもいるのだ。数に物を言わせて突撃すれば発射の阻止あるいは効力半減が見込める。前衛がそれをさせないようにするだろうが、撃ち漏らしは出てしまう。

 なら俺は奴らを前に行かせなければいい。俺の術式は移動先の封鎖にも向いている。

 

「おらおら!そこから前に出てみろ!全員焼き尽くすぞ!」

 

 やることは単純だ。炎で進路を塞げばいい。いくら無限に湧くとはいっても意味もなく犠牲を出すわけがない。当然炎を突破するために先生達に背を向けて俺を倒すか何体かを犠牲にして消火活動をしなくてはならない。

 

 それらの行動を強いる時点で準備時間を充分稼げる。

 

「やっちまえ!!」

「ナイス、浩介!じゃあ……皆んな、一斉射撃用意!!!!……撃て!!!!」

 

 俺の意図を察してか先生はニヒルな笑みを浮かべる。勢いよく生徒達に号令を下す。ここに火力を集中させる判断らしい。俺は巻き添えを避けるべく急いで先生の元へ走る。敵は炎で封鎖され、袋の鼠である。

 

 ズガガガガガガガガガガ!!!!

 

 隊列を組み空崎委員長の得意技に合わせて全員で弾幕をお見舞いしていた。わかりやすく蜂の巣にする光景を見て正直ゾッとする。キヴォトスの住人を相手するときはこれだけは避けるようにしているが目にすると飽和攻撃の恐ろしさを痛感せざるを得ない。

 

「っ────────────!!!!!」

 

 巨人の方もダメージが相当あるのか少しばかり苦しんでいる。これでいけるだろうか。

 

 カチカチ……。

 

 トリガーがスカる音が聖堂に響く。俺の世界なら大事件でしかないこの音も今となってはどこか頼もしく感じる。あれだけの火力を撃ち込めばそれなりのダメージは見込めるはずだ。

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

 

 その答えは巨人から凄まじいエネルギーを発せられることで察してしまった。まだこいつは力を残している。

 周りは不自然に暗くなり、巨人の後ろからそれに反比例するかのように後光が差し込む。どうみても大技を発動する前兆でしかない。

 

 

「……ハハっ!」

 

 俺は笑うしかなかった。目の前の敵の強大さに可笑しくなりそうだ。五条先生なら楽しむのだろうか、とも思ったりしたが彼ならそもそもこうなる前に倒せそうだ。

 

「っ!!!逃げて!!早く!!!!!!!!

 

 先生もやばさを察したのか普段のおちゃらけた雰囲気など微塵も感じさせない焦りを見せる。シッテムの箱で解析するまでもなく、見ればわかるほどの危険だ。先生ならそうなるだろう。俺ですら生徒と見てくれる人なのだから。

 

 

 でも、先生の心配は俺には響かなかった。感じているのだ、予感を。

 

 

「虎杖君と釘崎さんはこんな気分だったのかな?今ならわかりそうだ」

 

 今は会えない友達の名前を呟きながら俺は走り出す。銃はしまい、ひたすら拳に呪力を込めた。俺は感じた予感を逃したくない気持ちで一杯で仕方ない。

 術式を使って巨人の頭上へと飛び上がる。狙うは脳天カチ割り。勝利よりも至れる嬉しさを込めて拳を振り下ろす。

 

 

 

 

黒閃っ!!

 

 

 

 

 黒い火花の女神は漸く俺に微笑んでくれた──。




ヒエロくんもとい巨人くんグロッキーです
今回はこれまで避けていた先生の指揮に挑戦
いきなり多人数を動かそうとするよりも適宜指示するところから始めてみます……
え?もっと早くやれって?ハイ……オッシャルトオリデス……

更新時間はいつが良いでしょうか?

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