呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

新年一発目に呪霊をお出しします


45 砂漠の呪霊①

 結局俺は後日になって小鳥遊さんによってアビドスのゴーストタウンに半強制的に連行されることとなった。呪霊退治なのでそんなことしなくても行くつもりだが、小鳥遊さん曰く逃がさないためとのこと。

 正直アビドス行きは問題じゃない。問題なのは他のアビドスの視線や言葉である。お陰で道中はだんまりだ。

 

「信じられない……!」

 

 気まずいことこの上ない。黒見さんは毛が逆だった猫が激しく威嚇するように怒っていた。俺のようなアビドスの敵に頼み事するだけでなく、小鳥遊さんは自分達を省こうとしてたのだから無理はない。

 

「セリカ。落ち着こう。今は怒っても仕方ない」

「シロコ先輩は落ち着いていられるの!?」

 

 気まずい……。

 

「セリカちゃん。文句なら後で一緒に言おう。ね?」

「さり気なく怒ってますね。アヤネちゃん」

 

 助けて先生。俺が責められるのはともかくこの気まずさは耐えられそうにない。

 

「ごめんね。セリカちゃん。でも今からやる相手はおじさんも手こずっててさ〜。シロコちゃんでも出来れば連れていきたくないんだ」

 

 おい、なんで爆弾を投下してんだ。この先輩は。やめてくれ、小鳥遊さん。この状況でその言葉はアカン。

 

「えっ!?ホシノ先輩が手こずるって……」

「ん。気になる」

「あ、そこに食らいつくのね……」

 

 獣耳の子達は小鳥遊さんが手こずるとハッキリ言ったことに食いついていた。喧嘩になりそうだと思っていたので思わず沈黙を破って突っ込んでしまう。

 砂狼さんは寧ろやる気に満ちた目をしている。意外と戦闘狂なのね。

 

「あ!浩介くんがようやく喋ってくれましたね。アビドスに連れて行くってなってからダンマリですから体調が優れないのかと思っちゃいましたよ〜」

「正直気まずさでいっぱいです……」

「あはは……」

 

 十六夜さんは口ぶりが皮肉か本当に心配してるのか判断がつかない。思わず適当な返しをするしかない。奥空さんはきっとなんとも言えない気持ちで苦笑いしている。

 

「はいはい。浩介やおじさんへの文句は後にしてくれるかな。後ならいくらでもいいからさ。……今回は本当に危ないから私の話を聞いてくれる?」

 

 悪い意味でわちゃわちゃしてる俺達をこの中でも年長者である小鳥遊さんは手をわざとらしく叩いて黙らせる。いつものように昼行燈な口調から少しずつ彼女の本音のようなものが漏れていき全員沈黙する。

 恐らくはこれが彼女の素なのだろう。本来の彼女はもう少し鋭い。そんな感じがする。対策委員会の面々の前では気の抜けた先輩を演じているのか、そういられるのかはわからないが。

 

「静かになったね。じゃあ、話すよ。これを聞いて自分じゃ手に負えないと思えば帰ってもいい。私は皆んなの無事が最優先だからさ」

 

 この人はきっと後輩に見せたくなかったのだろう。対策委員会のことも頼れる後輩としてではなく守りたい後輩として見ているのだ。本人的には親鳥が雛鳥を必死に守るように大事にしていることが見て取れる。

 俺も出来れば他のアビドスメンバーは帰った方がいいと思っている。先生の指揮込みでも俺が倒せそうだったのだ。今からやりあうのは少なく見積もっても1級以上、もしかしたら特急(級)だってあり得る。態々死体を増やす理由はない。

 

「今回の相手は化け物みたいなやつだよ。銃は効くから倒せると思うけどしぶといし不思議な攻撃をしてくるんだ」

「不思議な攻撃ですか?」

「そんな魔法みたいなのがあるの?……ここに出来る男がいるけどさ」

 

 少しずつ特徴を明かし始めた。化け物みたいなやつ、不思議な攻撃をしてくる……取り敢えず準一級以上はここで確定だ。しぶといとなると一級もあり得る。

 一年組はきょとんとした顔でそれを聞いている。黒見さんの言うように俺みたいな前例があるとはいえそう何度も超能力とぽんぽんと出会うとは思うまい。だが今のキヴォトスは近いうちにそうなる可能性を秘めている。

 

「魔法……確かにそんな感じだね。このアビドスらしい魔法かも」

 

 アビドスらしい魔法。このワードが気になる。アビドスと言えば砂漠だ。抽象的な表現は範囲が広く特定が難しい。そしてそういう時に出会う呪霊はより身近で大きい恐怖からくるものが多く強いイメージだ。

 

「砂を操るんだよ。蟻地獄や固めた砂を弾丸みたいに撃ってきたりさ。浩介の砂版って感じかな」

 

 続けて小鳥遊さんが言った内容を聞いて緊張が走る。つい最近ゲマトリアのマエストロが作ったヒエロニムスという特級相当と戦ったが、本物の特級呪霊はキヴォトスでは初だ。

 

「ハァ……特級かもしれねえ」

 

 思わず俺はため息を吐く。せめて成長途中の特級でありますようにと願う他ない。

 

「特級?」

「なんだか等級のようなものに聞こえますけど……」

 

 俺がボソリと呟いたのを砂狼さんと十六夜さんは見逃さなかった。十六夜さんは雰囲気と文字からやばさを直感しているように見える。砂狼さんはポーカーフェイスだが雰囲気が厳しめでこちらも察しているようだ。

 

「呪霊の中でも最上級の奴らの総称だ。小鳥遊さんの言う通りなら今回のターゲットは砂漠の恐怖からくる呪霊といったところか」

「おじさんの説明よりも重要なこと言いそうだから任せていいかな?ここから先の説明はさ」

「いや、そっちの方が知ってるだろ。口ぶりからして実際に会って戦って生き延びているみたいだしさ」

 

 小鳥遊さんは俺の説明を聞いて途端に昼行灯に立ち戻り、俺に説明を丸投げしようとする。あまり後輩達に本気の自分を見せたくないのだろうか。とはいえそれでは話が進まないので強引に小鳥遊さんに振る。

 

「うへ〜しょうがないなあ……。でも、やってくることは今言ったことぐらいだよ。このアビドスだからこそ生まれた能力?というんだろうね。蟻地獄なんか抜け出すの大変だしさ」

「よく生きてるな……流石は暁のホルス」

「……本当に黒服とつるんでるんだね。その呼び方までするなんてさ」

 

 一応これから一緒に戦うというのに雰囲気は最悪だ。俺が悪いのだが少しはなんとか出来ないだろうか。黒服が使う呼び名を言うのが悪い?そうだね……。

 

 

 

「うわ〜はっはっはっ!!来たな!!我が宿敵!!今日こそ貴様を干からびさせて食ってやる!!」

 

 そんな最悪の雰囲気は意外なやつがぶち壊す。正直に言って呪いとは思えない。食ってやるとか言うだけそれっぽい。

 

「「「「うわ……」」」」

 

 小鳥遊さんを除くアビドスメンバーはドン引きしている。反応がキモいおっさんに出会ったそれだ。

 

「……」

 

 ただ、こいつは間違いなく特級だ。呪力も膨大で馬鹿っぽいが人のような知性まである。最悪の場合は相手の領域展開まで視野に入れるべきだ。小鳥遊さんが他のメンバーを省くのも無理はない。

 

 見た目は一応人型だ。包帯が巻かれたミイラのような感じで身体からは砂が漏れており半砂人間と言った感じだ。多少の打撃は効果が薄そうである。性格はうざそう。

 

「ん?んん〜?今日はなんだか弱そうなのが3匹ほどいるなあ。強そうなのが2匹。うち1匹は我ほどではないが……強い呪いだな」

 

 呪霊は俺達の神秘や呪力を感じ取ったのか吟味するかのように呟く。余裕綽々と言った感じだ。俺を見てか楽しそうに口を緩ませる。どうも俺を格下と見做しているらしい。

 

「どれ……」

「っ!!くそっ!!」

 

 呪霊は楽しそうな顔のまま呪力を昂らせる。構えこそないがわかりやすい起こり。術式を使用したのは間違いない。小鳥遊さんの情報通りならまず警戒すべきはあれだ。

 

「舐めたこと言ってくれるわね……!私が──ひゃっ!?」

「きゃっ!?」

 

 起こりに気付いていない黒見さんと十六夜さんを片手でそれぞれ抱えてその場を離脱する。脚からはジェット噴射させており、少し浮いて"例の攻撃"から2人を守る。

 

「ちょっと!?いきなり抱きつかないでく……、えっ……?」

「これは……」

 

 俺が避難させた後に2人は異変に気づく。自分達が攻撃されたことを理解したのだ。それも普段の戦いと比べれば奇怪な方法で。

 

 

 

 俺たちが居た場所は蟻地獄になっていたのだ。一人一人に丁寧に作られており、発生までが非常に早い。

 

 

「ん。危なかった……」

「アヤネちゃん。怪我はない?」

「は、はい」

 

 残るメンバーもなんとか避けている。小鳥遊さんは初見ではないらしいので何とか奥空さんの救助まで余裕があったのだろう。

 砂狼さんは自力で脱出したらしい。彼女が俺と合わせて強そうな2匹なのだろう。顔つきは険しいが凄いセンスを感じずにはいられない。

 

「やはりな!これは遊べそうだ……!!」

 

 呪霊は思った通りの結果になって満足そうにしている。これから狩る相手が強くて燃えているらしい。俺としては嬉しくない。

 俺は誰よりも前に立ち、手から炎を出して臨戦態勢に入る。久しぶりの呪い合いだ。

 

 

「最高の遊びだぞ。人間をいたぶって自分好みにして食べるのはなあ……」

「呪いが一丁前にえげつない癖を見せつけんじゃねえ。地獄でやってろ」




なんか呪霊ぽくないやつだなこいつ
性質が特殊性壁⚪︎人犯

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