呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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そろそろ4周年ですね
石の貯蔵は出来ているか?


48 砂漠の呪霊④

「ホシノ先輩!!」

 

 シロコの悲鳴のような声が響き渡る。あまりにも最悪な光景はアビドスの足を止めてしまう。止まる理由は恐怖か絶望か。

 

「……まだ息があるな。どれ、最後は干からびさせて食ってやろう」

 

 楼閣はケヒヒっと笑いながらホシノに近寄る。一番の獲物を仕留められて満足気だった。彼女には彼なりに敬意を込めて食することを宣言していた。

 浩介を拘束するために片手は彼に向けるのを忘れずにゆっくりと、である。

 

「どいてください」

 

 そんな事を許さないものが1人、正確には動けたのが1人いた。十六夜ノノミである。普段の彼女がしないドスの聞いた声は後輩を震え上がらせる。

 ノノミは込められた弾丸を遠慮なく全弾発射する。淡々としており、彼女の必死さが滲み出ていた。余裕のない気持ちが却って最適な攻撃を叩き出す。

 

 

「アヤネちゃん。弾」

「は、はいっ!!」

 

 普段の彼女ならあり得ない言動。アヤネはそれに気圧されこそしているが言われた通りに弾丸を用意する。普段なら誰よりも穏健で優しいノノミが、ここまで覇気を出すのは初めて見るものである。

 

 それだけ彼女は怒っていた。ホシノを殺めようとする呪霊を許さない。

 

「そういえば……私のドローンの攻撃もよく効いていたよね?」

 

 次に動いたのはシロコだった。先程の戦いから自身の愛用品であるドローンは効き目が強いことを彼女は察していた。銃で撃つよりもダメージの効率がいいと推測し、ノノミのリロード時間を稼ぐのも兼ねて攻撃する。

 シロコの神秘が効率よく込められたドローンから爆弾が射出され、呪霊を襲う。呪霊も喰らうまいと砂の盾を展開する。

 

 が……。

 

「ぐぅ……!」

 

 完璧にシャットアウトできずにいた。盾は粉砕されて爆風が呪霊に届く。黒閃を出してギアは上がっているが、ホシノに削られた体力が戻ったわけではない。

 

「まずは貴様から消してやる!!」

 

 呪霊はノノミに手を向けて呪力を込める。それから少ししてノノミの足元に蟻地獄が形成され始める。ノノミは蟻地獄の攻略に自信がなかった。躱せていたのはホシノ、シロコ、浩介の3名。うち2名を押さえた今となっては出し得技である。

 

「ノノミ先輩!!!」

 

 だが呪霊の思い通りにはならない。ノノミはセリカのタックルで蟻地獄の範囲から抜け出す。

 

「……フフッ、ありがとう。セリカちゃん」

 

 思わぬところから救助が来てノノミは思わず微笑む。短時間で可愛い後輩が成長を見せたのである。自分も負けられない。ノノミにだって先輩の意地はある。

 

「こうなれば……一旦この場を離れます!ホシノ先輩を担いで脱出しましょう!」

「了解。アヤネ、スモーク炊いて。ホシノ先輩は私が担ぐ」

「浩介はどうするの!?あいつ捕まってるじゃない!?」

 

 アヤネは意を決して一時撤退を提案する。シロコは二つ返事で了承するが、セリカの言う通り今は味方の浩介が捕まっている。アヤネのやり方では彼を見捨てると言うことである。

 

「ぐっ、がぁ……」

「いいのか?貴様はこの男に助けられたのだぞ?見捨てるなんて酷い真似が出来るのか?」

 

 彼は砂に圧迫されて苦しみ出す。アヤネの撤退の提案を聞いた楼閣は浩介を人質に使ったのである。この場から逃すつもりなど毛頭ない。

 アヤネの罪悪感を刺激するように言葉を投げることも忘れない。言っていることなど微塵も思っていないのに、スラスラと口が動いている。

 

「……や゛れ゛ぇ゛!!」

「ごめんなさい!必ず助けます!!」

 

 浩介はそれを見てすぐにアヤネに対して大声で張り上げる。問題ない、そう言ってるかのようである。口から血を吐きながら撤退を促す。

 アヤネは浩介の声を聞いてから拳を固く握り締める。必ず助ける、そう告げて必死にドローンを操作する。

 

 

 アヤネのドローンからスモーク弾が投下され、呪霊の周りに白い煙が広がる。先程、ホシノが猛ラッシュするために使った時は完璧に撹乱出来ていた。今は浩介の拘束のために片手は使えない。今ならこれでいけるという算段である。

 

「ふん!全体に砂の弾丸を撃てばいいだけのこと!」

 

 呪霊の方も黙って見逃すわけはない。先程は捕まえようとして見えない相手に手を伸ばしていた。ならば纏めて吹き飛ばせばいいだけのことである。楼閣にはそれが出来る。

 砂の弾丸を可能な限り形成し、全方向へと射出する。これなら少なくともダメージは与えられる。スモークは敵の視界を封じるなら味方の視界だって封じてしまっている。作戦通りに動けても自ら死角を作っていることは間違いない。

 

「纏めて消しとばして──」

「すぅ〜〜…………ふぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

 呪霊が弾丸を放とうとすると同時に浩介は大きく息を吸う。ある程度空気が溜まったら狙いを定めて、吸った分だけの空気を吐き出す。

 

 吐息に合わせて業火が楼閣を襲う。

 

「あつっ!!……このっ!!」

 

 楼閣は再び全身が燃やされ集中力が切れる。先程と同じ要領で炎を吹き飛ばすもその時には全てが手遅れである。

 対して浩介はケラケラと笑っていた。最近出来るようになった口からの炎噴射をお見舞いできて上機嫌である。火遁の術でも使えた気分だ。

 

「おぉ〜怖い。ダセエ手段使っておいて逃げられてるじゃねえか」

 

 浩介は恐ろしい形相をしている楼閣を煽る。少しでもアビドスが距離を取れるようにヘイトを稼いでいた。

 

「ふん!そういう貴様は置いていかれたではないか。哀れよのお」

 

 楼閣も負けじと煽り返す。もうアビドスを追えないのは分かっており、浩介の煽りを返すことにしたのである。

 

「俺に人質の価値はねえよ」

「果たしてそうかな?それは今日一日中貴様を人質にしておけば確かめられることであろう。なければ食えばいい」

「悪知恵は働くんだね」

「叡智と言ってもらおうか」

 

 楼閣は言った通りのことを考えている。アビドスが来れば釣り果の大きさに喜び、来ないのであれば大物を糧にするだけである。

 そう悠長に構え、休もうとした途端強い抵抗を感じる。浩介の拘束が押し返されようとしていた。

 

 

「……俺がこのまま締め殺されると思ってるのか?」

「貴様あ……我と根比するつもりか!?」

 

 浩介もただでやられるつもりはない。助けが来るにしろ来ないにしろ楼閣を消耗させることに専念するつもりである。

 楼閣にとって休めない時間が始まるのであった──。




石の貯蔵?
俺は出来てねえぞ……

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