呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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フェスが楽しみ過ぎる

石は……最悪大人のカードかな?


49 砂漠の呪霊⑤

「……ん……ぁ……」

「ホシノ先輩!」

 

 小鳥遊ホシノは目覚める。左腕はぴくりとも動かない。少しばかり血を流してしまっている。ハッキリ言って戦えない状態である。普通であれば命を繋ぐのだって厳しい。

 

「……あの砂野郎は?」

「今はボロボロで、浩介が奴に捕まったまま……」

「この後救出に向かいます」

 

 ホシノは状況を把握しようと問いかける。返ってきた言葉は状況が最悪であると1発でわかるもので彼女の表情は険しくなる。

 しかも無謀な救出に向かうと言っており、ホシノとしてはなんとしてでも止めたい。

 

 だが、止めてしまうと言うことは浩介を見殺しにすることだ。いくら黒服の手下とは言え共に戦ってくれた彼を置いていくのは人としてあり得ない。

 ならばやることは決まっている。銃はしまい、動く右腕で愛用の盾を持つ。

 

「わかった。じゃあ……行こう」

「ホシノ先輩!動かないで!これ以上はもう……」

 

 ホシノは自分も行くと意思表示をしてよろりよろりと歩き出す。それをセリカが泣きながら止めに入る。優しく盾を持っている手を握って懇願していた。他の後輩も同様の思いなのかホシノの前に立って行かせまいとする。

 

「救出して離脱する。もう少しで倒せるかもしれないけど私のドローンも弾が心許ないし、浩介とホシノ先輩はこれ以上の戦闘は出来ない。だから──」

 

 

 

「駄目だよ。私も行く」

 

 シロコが沈んだ表情で言い訳を並べるがそれをホシノは一蹴する。

 

「それはシロコちゃんも分かってるはずだよ。浩介を助けるだけだとしても4人じゃ確実に誰か殺される。だから──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に皆んなを守らせてほしい」

 

 もういつもの緩やかな雰囲気などどこにも感じられない。身体は傷ついているのに瞳は雄弁である。

 

「っ……わかり……ました。私からは何も言いません」

「ノノミ先輩!?」

 

 そして、ここまで沈黙していたノノミは苦虫を噛み潰したような表情で了承する。ホシノが引くつもりはないと理解したのだ。

 

「ありがとう。ノノミちゃん」

 

 ホシノは礼を言って立ち塞がる後輩の間を通って目的地へと歩き出す。小さくて傷ついているというのにその背中は後輩達にはとても大きく見えていた。

 

「ん、こうなれば速攻あるのみ」

「ああもう!こっちの気も知らないで……やるしかないじゃない!」

「私は出来る限りのサポートをします」

「行きましょう!」

 

 後輩達はそれぞれの思いを抱えながらもホシノについていく。出来る限り先輩に負担をかけまいと気合を入れて楼閣の元へ歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「我が宿敵と呪いの男にあの狼以外は何も出来なかったな」

 

 楼閣は拘束している浩介に独り言を呟く。

 

「我はこの地の砂漠の恐怖より生まれしもの。砂漠の恐怖を理解してるものは我の恐ろしさがわかるはずだ」

 

 ボロボロの身体が修復出来ず、腰を下ろして休むことしかできないが気分は良かった。

 

「我が宿敵とその他のものから生まれた我にとって勝利は当たり前。異物たる貴様もその様だ」

 

 そう言って眠りにつく浩介を見つめる。口からは血が流れ、砂は彼の血でほんのりと赤くなっている。後は死を待つのみ、と言わんばかりだ。

 

 

 

 ザッ……。

 

 

 

「来たか……!やはり狼からか!」

 

 そうこう言ってるうちに浩介の救助のためにシロコが楼閣の正面に立つ。残ってる戦力で最も彼と渡り合えるのは彼女だけである。それも長くは持たないだろう。

 

「黙れ」

 

 シロコはノータイムで攻撃を仕掛ける。残りの弾薬を使い切ってでもやり遂げる、そんなペースで撃ちまくる。そんな無謀な特攻は逆に怪しさを醸し出す。

 

「後ろ……!」

 

 楼閣はシロコの攻撃には目もくれず後ろを振り返る。そこにはノノミがもう弾を撃っている姿があった。フレンドリーファイア上等の挟み撃ち戦法である。

 やはり、そう思った楼閣はノノミの方に砂の盾を出して攻撃を塞ぐ。それでもいくつかは直撃しており少なからずダメージを負う。

 

「そのまま撃ち続けてください!弾薬は私が補給します!」

 

 アヤネはドローンを操作して今あるだけの弾薬をシロコとノノミに補給する。なるべく手数を落とさず、楼閣へと負担を強いていく要となる。かなり遠くからドローンを操作している。

 

「だが……リロード中は隙だらけだろう!」

 

 楼閣は最も隙のあるリロードを狙って砂の弾丸を飛ばす。まずはシロコからだ。今恐るべきはシロコのドローンによる爆撃。あれ以外を楼閣は脅威と見做していない。

 

 しかし、シロコ達も無防備でいるわけではない。

 

 

 ガガガッ!

 

 

 砂の弾丸が硬いものに当たり鈍い音が鳴り響く。"IRON HORUS"と書かれた盾がシロコを守っていたのだ。その盾を見て楼閣はニヤリと笑う。

 

「片腕が使えなくなってもなお我に向かって来るか!小鳥遊ホシノォォ!!」

「うるさ」

 

 楼閣のテンションは上がり残り少ない呪力を振り絞る。大声で張り上げながらもその実カツカツである。黒閃によるポテンシャルの解放があってギリギリ闘えているのだ。

 

「ハッハァ!!」

 

 そこからの楼閣は行動を切り替えた。狙いをホシノただ1人に定めたのである。もう攻撃も出来ず後輩を守るために盾を構えるしか出来ないホシノを潰すことにしたのだ。

 

 理由は単純。ホシノという強者と戦いたい。それだけなのだ。

 

 楼閣は手を地面につけて呪力を流し込む。その後に辺りから砂が大量に集まり、波のようになってホシノを襲う。

 

「海の波なら大歓迎だけど……砂はちょっとなあ……」

 

 ホシノはそうぼやきながら回避のために走り出す。波は物凄い高さで盾も意味をなさない。盾は仕舞って背おう。ただひたすらに走る。それが今のホシノに出来る闘いだ。

 

「逃がさん!」

 

 楼閣はホシノへの執着が捨てきれなかった。自身の恐怖の源である砂漠の恐怖。それをこの中で誰よりも理解してるのはホシノであると本能が理解していた。それ故にシロコではなくホシノを狙っていた。

 

 

 

 そして、それこそが命取りとなる。

 

 

 

「ホシノ先輩にばかり目を向けて忘れたの?」

「私たちがまだいますよ〜⭐︎」

 

 シロコ達がリロードを終えて攻撃し始める。完全に後ろをとった形であり、楼閣は今の砂の波で多くの砂と呪力を使っていた。

 

「ぐおおおっ!?」

 

 故にガードは間に合わず攻撃が全弾ヒットする。防がれてばかりのなかこれはシロコ達にとっても追い風となる。

 ダメージも今のは大きかったのか砂の波も勢いが衰える。お陰でゴーストタウンに砂の山が出来上がりだ。

 

「ぐっ、……はぁ……はぁ……」

 

 楼閣はフラフラになりながらも立ち上がり、祓えずにいた。祓う直前まで行ったが決定力がない。誰もトドメをさせないのである。

 

「逃がさない……!」

 

 シロコは残りの手持ちから手榴弾を取り出し素早く投擲する。込められた神秘も銃弾と比べれば大したことはないが、爆発の威力も込みで上々である。

 ドカンと爆発して、その衝撃で楼閣は怯み砂の山も飛び散る。両者ギリギリでどっちが倒れてもおかしくはない状況にまでなったのだ。

 

 砂の山から何かがまろび出て絶句することになることを除けばアビドスにとって都合が良い状況である。

 

 

「え……?」

 

 真っ先に気づいたのは遠く離れて上から見ていたアヤネである。あまりにも残酷で恐ろしいものを見てしまったのである。

 

「我の保存食か……流してしまったようだな。だが今は丁度いい」

 

 保存食、そう言って楼閣はそれに近づく。目的は言わずもがな食事のためである。阻止するのが当然なのだが、あまりのものにアビドスは固まってしまう。

 

 

 

 保存食と呼ばれたもの、それはカピカピに乾いた人である。見るからに犬系の住民。服も質素で裕福ではなさそうであることが窺える。恐らくはこの辺りでひっそりと暮らしていた住民だ。

 

 

 

 

「乾き、飢えたものはやはりいい……。我の根源を感じる。あれさえ食べれば……!この地に乾きと飢えが溢れる我が楽園がっ!!!」

 

 アビドスが固まっているのを横目にずるずると身体を引き摺りながら保存食に手を伸ばそうとする。目的は回復である。

 楼閣は自身の術式で乾かした人を喰らうことで若干回復する特性を持っている。ここぞと言うときに使う保険である。

 

「後……少し……」

 

 

 

 ザクっ!

 

 

 

「で……っ!?」

 

 よろよろと保存食に近づいて後一歩のところで何かが楼閣の胸を貫く。突然のことで驚き、目線を下にやれば誰かの右腕の貫手だった。男性の腕であることはわかる。

 

 

「残念だったな……。お前はミスを冒しすぎた」

 

 もう倒したと思っていた男の声が後ろから聞こえてきた。人質として使うために殺すのは後回しにしていたのが裏目に出てしまったのである。

 

 

 火野浩介も血塗れだが復帰したのである。砂の拘束を抜け出してしまったのだ。

 彼の隣にはセリカがいた。彼女は戦闘に参加するのではなく浩介救出のために尽力していた。

 

 

 シロコ達がやっていたことはセリカの行動を悟らせないための囮である。

 

 

「ハァ……っつぅ!!ここまでしたんだから絶対に倒してよ!!」

「勿論だ」

 

 指先が血だらけなセリカが浩介に檄を飛ばし、浩介はそれに応えるように残りの呪力を振り絞る。

 

 

 

「"安寧を願う護の火よ"」

 

 残り少ない呪力を補うために詠唱を始める。

 

「"穢れ、邪気を焼いて安らぎを齎し"」

 

 出せる出力はそれでも普段より低いがボロボロの楼閣には十分。

 

「"天までその猛き火を届け給え"」

 

 

 詠唱を終えた後、腕を引き抜き楼閣の肩を掴む。胸からは青紫の液体が滴れるがそれもすぐに沸騰していく。

 

 

「火柱ぁ!!!」 

 

 

 楼閣を中心にアビドスで大きな火柱が立ち上る。円柱状に広がり、建物よりも高く燃え上がった炎は彼の何もかもを焼き尽くす。

 やがて浩介の残り呪力分が消費され炎は消える。その頃には霧散して消えていく楼閣の姿があった。

 

 

 

 

「楼閣、と言ったな。お前のやりたいことはその通りになったな。砂上のな」

 

 

 

 浩介はそう言って消滅したのを確認してから大の字になって倒れ込むのであった──。




今思うとタイトルは砂漠の呪霊じゃなくて砂上の楼閣の方があってそう
呪術廻戦本編の特級どもはどいつもこいつも強過ぎるわ

更新時間はいつが良いでしょうか?

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