呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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モンハンも上位が最低限の区切りがついたので書き上げ
クロカゲもトーメント1凸を通すだけで今回を書き上げたらまあまあ太くなってる


第5章 アリウス決戦
54 ベアトリーチェの目的


 黒服の研究室、そこで自身の術式と積み上げてきた技術に対して再度向き合い始めた。晄輪大祭が終わったあと約束通り黒服は準備を間に合わせていた。

 

「ふむ……試し撃ち相手の呪霊とそれ用の場所、おまけに新しい武器に刀剣と用意しましたがどうです?」

「いいね。刀剣の方はまさか本当に用意してくれるとは思わなかったよ」

 

 黒服は計測機と実際に戦う俺を比べて睨めっこしながら満足そうにしている。未だに神秘を完全に掌握こそしてないが恐怖の方は随分と手慣れたらしい。マエストロに技術提供までしていたので場合によっては先生にチクって止めたほうがいいかもしれない。

 とはいえ用意をしてくれた黒服にその仕打ちは流石に違う。誰かに危害を加えない限りはスルーするのがベストだろう。向こうもそれはわかっているはずだ。

 

 それに今は少しでも技の方に意識を割きたい。

 

 

「シン陰流簡易領域──"居合"」

 

 元々俺はシン陰の門下生だ。銃の方が得意だからとそっちばかり使っているが刀だって使えないわけではない。正直、銃よりも苦手だけども。

 "焔"は専用の弾丸だ。当然ながら弾切れはある。雑魚相手に一々使ってなどいたら強い相手に残せない。殴ってもいいが2級になると流石に処理速度が遅い。術式だとコントロールできるが万が一の被害はデカい。ならば刀はどうだろうか。

 

「きしゃあああっ!!!」

 

 呪霊は俺の簡易領域に突っ込んでいく。等級は2級を用意してもらっている。こいつが楽に倒せるなら刀は十分使える。

 呪霊が範囲内に入った瞬間、脊髄反射で抜刀し振るう。呪力を纏った高速の太刀筋は呪霊をあっという間に真っ二つにする。勢いよく突っ込んだ呪霊は2つに分かれたままその勢いで俺を通り過ぎて倒れる。

 

「お見事!いやはや例の奥義が"上手くいかなかった"時は何とも言い難かったですが、刀の"方は"順調ですね」

「そりゃどーも」

 

 黒服はわざとらしく拍手しながら煽ってくる。アレが上手くいかなかったのは黒服も残念そうにしていた。煽りは無視することにする。

 

「さて、キリもいいのでこの話もしておきましょうか」

「ん?何かあるのか?」

 

 煽った後は真面目な表情で俺を見ながら何かを話すつもりでいるようで声色が変わる。最近こいつの表情が読めるような気がしてきて嫌気がさす。

 

「ベアトリーチェのことなのですが……」

「うわっ」

 

 出してきたのは俺の嫌いなベアトリーチェのことだった。結局エデン条約で俺のやった事は彼女にとって大きな損害だろう。ハッキリ言ってゲマトリア全体で見ても不利益な事なのに黒服は今でも俺と組んでいるのは不思議だ。

 

「ああ、先に言っておきますと我々は崇高を目指す事こそ同じですがアプローチは違います。マダムの為す崇高がどのようなものかは興味はありますがね」

 

 まるで俺の心を読んだかのように黒服は言葉を紡ぐ。俺が黒服の表情が読めるように、こいつは俺が何を考えているのかそれなりに当ててるような気がする。

 

「……と、言いたいのですが私の研究のデータに不正アクセスをしエデン条約で出した呪霊捕獲装置なるものを開発しております」

「結局、アイツが不正アクセスしてたで合ってたのかよ。いいの?」

「まあ、私の研究を邪魔したわけでもないですし……それよりも黙って持っていく事の方が気に食わないですね。貴方がいる手前引き出しづらいと踏んだのかもしれませんが」

「そりゃそうだろ。あのババアが欲してるのを知ったら俺は全力で殺しにかかるよ。ゲマトリアの中で一番他者に被害を出しそうなやつだしな」

「なるほど」

 

 要約すれば黒服の研究データ欲しさに不正アクセス。理由は俺が妨害しそうだから、ということだ。初めて会った時は呪霊にそこまで興味を持ってなかったのに今になって興味を持つのは何故だろうか。

 

「なあ、なんで呪霊のデータが欲しいのかわかる?」

「……憶測ですがエデン条約での目的を達成出来なかった時に代用できないかだと思いますよ」

 

 思い切って素直に聞いてみれば黒服もあっさりと答えてくれる。憶測、と言ってはいるがこいつの憶測は馬鹿にできない。

 その憶測の内容も本気だったらベアトリーチェがお粗末にも程がある。呪霊操術も無しにやろうなんて馬鹿のやる事だ。呪霊という悪意の塊を大人しく従えされられるのはそれらよりも強い業だけだろうに。

 

「なら今頃必死にその代用手段を実践向きにするために調整中?」

 

 俺の考えはそんなところだ。代用手段として呪霊を使う、何の代用かは想像がつく。明らかに戦力目的だ。下手な生徒より2級呪霊の方が強い。それは間違いない。

 

「いえ、目的は達成されています」

「え?」

 

 だが返ってきたのは思わぬものだった。どう考えてもエデン条約の件は失敗している。ゲヘナとトリニティを滅ぼせてはいない。この両校は今では普通の暮らしをしている。

 となると俺が思ってた目的がそもそも違ってたということになる。思えば両校を潰してベアトリーチェにとって得になるかと言われればノーだ。先生もとい連邦生徒会により警戒されるだけ。それもドンと来いという無敵の人状態なら分からなくはないが。

 

「……まさか!?あの──」

「ほう……気が付きましたか。あの──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイレグシスターの亡霊共か!?」

「複製もといミメシスのことです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……ん?」」

 

 

 しばし、沈黙が流れる。黒服は何を言ってんだコイツと言いたげな表情だ。仕方ないだろ、見た目はマジでそうなんだから。固有名詞知らねえぞ。あんなやべえファッションの亡霊は初めてだよ。

 

「フッフフッ……ちょっ、ちょっと待ってくださいね……ブフッ!?」

「やめろ。ツボに入るな。俺が恥ずかしいじゃねえか」

「アハハ!……ハァ──……、いくら何でもあの流れでハイレグシスターなんて言うのは反則でしょう」

 

 黒服が珍しくツボに入ったのか爆笑していた。やめてくれ、恥ずかしいんだが。ギャグがすべったとかよりも恐ろしいんだけど。

 

「そのハイレグシスターなのですが……、あれは大昔トリニティで生徒会をしていたユスティナ聖徒会を芸術的複製、つまりミメシスという技術で呼び出したものです」

「芸術的複製……、もしかして肝はマエストロ?」

「その通り。マエストロから彼女へ技術提供してそれを実際に活用してみせた結果があれです」

 

 黒服はある程度かい摘んで説明してくれる。その中でも芸術的といったワードが気になり、マエストロの名前を出すとどうやら当たりのようである。

 

「結論を申し上げますとエデン条約におけるベアトリーチェの目的……それはユスティナ聖徒会のミメシスを確立させ戦力の確保をする事です」

「……ハァ……呆れる話だ。しかもその内容じゃトリニティとゲヘナに復讐したいアリウスの願いなんて少しも汲んでないんだな。汲んでしまうと困るっちゃ困るけどさ」

 

 黒服の話を聞いた俺はため息をつく他なかった。やろうとしてることが覇道を行くとかのそれである。欲深く自分という存在をより強固にし、支配したいという考えが透けて見える。

 

 だが、少し疑問が残る。

 

 

「黒服……ミメシスは複製といったように要は品質の良いコピー品なんだよな?なら……コピー元はどうやって用意した?あの時の俺は何かしら術者がいるものかと思ったが、そいつが何か特別なのか?」

「良いところに着目しましたね。その通りです。実際に貴方でいう術式のような物を行使したのはマエストロですが媒介として特別な生徒にご協力いただいてます」

「特別な生徒……やっぱり血筋関連?」

「正解です。なんとユスティナ聖徒会の会長の血筋の者です」

「うわ……」

 

 疑問というのは複製ならば元が存在するはずということ。当然過去の人物を呼ぶとなれば、その人物の遺体や個人情報物質などがいるはずだ。イタコの降霊術など特殊な呪法なども候補に上がる。

 どれも何の手がかりも無しに出来ない。今回の場合特定の個人ではなく特定の組織を呼ぶとなれば、その組織にとって重要な物を使わないと話にならない。呪術的に個人ならともかく過去の組織を呼ぶなんて聞いたことないが。

 黒服から返ってきた答えはシンプル。その組織の長の血筋の子を使ったというものだ。最低限結びつきはあるのは確かだろう。それでも規格外の力ではある。

 

「まさか……術者でも媒介でもないベアトリーチェが今は掌握してて自由に使えるということ?」

「その通り」

「無法すぎない?」

 

 嫌な予想も当たっているようで悪い気分だ。確かに無限の兵隊を手に出来るのならばあんな無茶苦茶をやるのも頷ける。

 

 

 

 それにこれは呪術的観点から見て特級案件だ。厄介者という意味で指定される特級案件に区分されるだろう。虎杖くんや乙骨先輩のような秘匿死刑宣告が起こるタイプの事態だ。その2人と違うのは対象者が明らかに邪悪であること。

 

「媒介となった生徒ですが、現在は彼女に追われています」

「は?あのババア未成年の女の子をストーカーしてんの?」

「……んっ!んんっ!!」

 

 続け様に投下される情報も濃いものだった。思わずストーカー呼ばわりしてしまい、黒服は笑いを堪えていた。咳払いで誤魔化してるが身体が小刻みに震えている。その様子からして個人的にベアトリーチェをあまり良くは思ってないであろうことは窺える。

 

「あれだけ大規模な戦力を呼ぶことも可能な特別な血筋の少女……利用価値はいっぱいあるだろうな」

「何せマダム謹製の儀式の贄ですから」

「……」

 

 もう大体話が見えてきた。その少女は逃げているのだ。エデン条約で失敗した今アリウスの覇権はまずない。その上命まで狙われるとあれば逃げる他ないだろう。戦力の確保に儀式と自分のやりたいことを押し通し、最後は贄として使い潰すなど許して良いことではない。

 

「少女の名は秤アツコ。貴方が戦ったアリウススクワッドの一員でもあり、今はメンバー全員で逃亡しているようです。いつまで持つのでしょうね?私からは以上です」

「そうか。情報提供ありがとう」

「後はご自由にどうぞ」

 

 黒服は随分と俺に情報を話してくれる。まるでベアトリーチェの儀式を妨害してほしいと言わんばかりだ。他者によるものとはいえ崇高に到達するかもしれない工程を邪魔するというのによく言ってくれたものだ。

 

 礼を言った後部屋を出て帰路につく。この情報をどうするべきか考えなくてはならない。

 

 

「……先生に言ってみるか?あの人なら──」

 

 思いつくのは先生に相談すること。あの人なら生徒の危機となれば動くだろう。そう思い自身のスマホを取り出そうと鞄を漁っていたら驚くべき物を見てしまう。

 

 タッタッタッ……。

 

 黒服でも他のゲマトリアでもない誰かが走っているのを見たのだ。ガスマスクをつけている。あれは紛れもなくアリウスの生徒だ。

 

 

 

 

 

 ピッ……ピッ……ピッ……。

 

 例の子がアリウスだと認識した後に俺の耳に規則的な音が聞こえてきた。この音からくる嫌な予感は俺の生存本能を震え上がらせる。

 

 

 

 

 これは……爆弾だ。

 

 

 

 

 

「逃げろ!!黒服!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 駆け巡り戻って大声を出すが無情にも俺と黒服は眩い光と衝撃に飲み込まれることとなる──。




今回からアリウス編開幕となります。

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