呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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結構巻いた展開になるなあ
お久しぶりです


56 悪役登場

 多数のアリウス生徒が倒れ、周りには火が広がっていた。壁に打ち付けられぐったりしている者もいれば、銃身が切られて使い物にならず途方に暮れる者もいた。

 

「vanitas vanitatum et omnia vanitas……"全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいものだ"とはよく言った物だな。わかりはするが認めたくないものだ。なあ?そうは思わんか?」

 

 俺はアリウス生徒に根付く教義を口にし、同意を求めるように問いかける。

 

「ば、化け物……」

「あっつっ……うぅっ……」

 

 返ってくる言葉はあまりいいものではない。幸いにも丸焦げになった子はいないのがせめてもの救いか。刀の峰で叩いた結果腫れたものならばいるが気にしている場合ではない。

 

「さて、お前らのマダムを仕留めにいくけど……黙ってそこで待つんだな」

 

 納刀し黒服の指定の場所へと向かう。この戦闘はスクワッドが使う予定のルートを使える状態にするのが目的だ。戦意が残っていては困る。故に火で直接燃やしたり、呪力を纏った刀で切ったりなどの取り返しのつかない方法以外は全て尽くした。あまり人数もいなかったので何とかなったが、本陣に入ればこうはいかない。

 とはいえ効果は上々だ。恐怖は簡単には抜けない。誰も銃を拾って撃とうとしない。忠誠心でもあれば違ったかもしれないが、ベアトリーチェに対してはないだろう。恐怖で従えさせたものは別の恐怖でも足を止めてしまうものだ。

 

 堂々とカタコンベ内を走り、アリウス自治区へと向かう。奥へ進めば進むほど呪力が肌を刺激するのを感じた。濃く人を腐らせてしまいそうな力の奔流はそこが呪霊の巣窟であることをひしひしと感じさせる。

 

『相変わらず凄まじい反応ですねえ……。いつパンクするのか冷や冷やします』

「前も言ったけどマジで呪霊の養殖場だな。1級がうようよいるんだよな?」

『ええ、2級は10は超える数います。マダムは2級以下を例の呪具で捕獲して蓄えているようですね。ですが……、1級以上はアリウスの生徒を襲っていようがスルーしてるようです』

「そりゃあ忠誠心なんかないわな」

 

 現状は魑魅魍魎の巣でしかないアリウス自治区。ベアトリーチェを倒した後が特に問題かもしれない。そもそも彼女の支配を無くさないと動けない案件ではあるが。

 黒服は呪霊の探知機を見ているのかドン引きしている。ベアトリーチェのやり口に辟易としているようだ。

 

 しばらく走ればアリウス自治区が見えてきた。見渡す限り廃墟、廃墟、廃墟。二重の意味でゴーストタウンだ。呪霊が暴れて建物が限界を保っているだけ凄いかもしれない。

 そして、ゾロゾロと走ってくるものが何名かいた。ガスマスクをして顔は見えないがアリウスの生徒だというのはわかる。

 

「撃て」

「うおっ!?あっぶね!流石に待ち伏せはされてるか……」

 

 アリウスの生徒達は指揮官らしき子の一言だけで一斉に発砲してきた。とっさに後ろに戻って岩でやり過ごすハメになる。流石に蜂の巣にされたら反転だと治しづらい。

 

「……仕方ない」

 

 手に呪力を溜めて準備する。多少は致し方なしだろう。せめて死者はいないことを祈るしかない。

 

「最大出力!!!」

 

 洞窟の穴を埋め尽くす程の炎を真っ直ぐ彼女達に放つ。人間に放てば焼死間違いなしだ。キヴォトス人なら死にはしないだろうが火傷は残る。女の子にこれはやりたくないが、躊躇えばやられるのはこちらだ。

 

「た、退避っ───!!!」

 

 幸いなのは距離がある事だ。横に逃げる時間は用意されている。とはいえ炎が迫る速度は遅くない。かなり急がないと避けられないはずだ。そうなれば炎が通り過ぎてすぐに発砲できるものはかなり減らせる。

 

「今だ!!」

 

 一気に呪力を爆発させて駆ける。これで抜けられなければ厳しいが、そんなことを気にしてなどいられない。

 

「このっ!舐めるなぁ!!」

「ちっ!」

 

 退避してすぐさま俺に照準を合わせた子は存在した。SR持ちだ。流石にピンポイントで高出力の呪力ガードをしないと厳しい。タイマンならシン陰で対処出来るが今はそうはいかない。

 

 バァン!!

 

「あっ……がっ……」

 

 だが突如として銃声が鳴り響き、俺を狙ったSRアリウス生は倒れていた。遠距離攻撃で仕留められたであろうことは窺える。心当たりはあれしかない。

 

「来たか」

 

 狙い通りに事が運びそうで思わずニヤけてしまいそうだ。駆けつけてきたのは女性4人組だった。今回の主役とも言えるパーティだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今回はその仮面つけてるんだ?ホムラ」

「今回は黒服と明確に手を組んでるのでね。先生」

 

 来たのは言うまでもなくアリウススクワッドと先生の御一行だ。秤アツコ救出に来たのはもう知っている。狙い通り消耗なくここまで来られたらしい。

 

「あ、あの人は……」

「マダムから暗殺対象にされてたホムラもとい火野浩介……。そっか道中のアリウスは彼が倒したのか」

「お陰で弾に余裕がある。ここを突破するぞ」

 

 アリウススクワッドの面々は俺を見て状況をある程度理解出来たようで、各々の銃を構える。彼女達から見れば俺が振り切ろうとした子達が自分達を狙うのはわかりきってるから理解してなかろうとやる行動は変わらない。

 

「挟み撃ちにしよう。いいですよね?先生?」

「いいよ。まずは大人しく話をできる場を作ろうか」

 

 俺の提案に先生も頷き、3人に指示を飛ばしていく。錠前さんが突撃して場を荒らし、戒野さんの高火力で荒らされた生徒達を蹴散らしていった。要所で槌永さんに溢した人たちを矢継ぎ早に伝えて行き、一人も逃さないつもりの攻撃を加えていた。

 

「流石!じゃあ俺も派手にやろうか」

 

 先生達の連携を見て俺も負けられない気持ちが出てくる。導火線のついた爆弾を取り出し、着火する事なく敵へと投げ入れる。爆弾には火の代わりに俺の呪力がついている。

 ポトポトとアリウスの子達の足元に導火線のない爆弾が落ちていく。導火線は短すぎて投げ入れる前に自分の場所で爆発してしまいそうな欠陥爆弾であり、俺の意図を読めずにアリウス生徒は首を傾げる。

 

 

「発っ!!」

 

 爆弾に指差しして術式を起動させる。俺の術式は俺の呪力を炎にして操るもの。火炎放射をするわけでもなく着火するだけなら離れていようと関係ない。

 

 

 導火線に火がつき、不発爆弾はいきなり爆発寸前へと変貌する。

 

 

「……は?」

 

 現地にいた人が謎の光景に固まってしまう。普通ならありえない。だが今は間違いなく現実にあるものだ。

 ドカンと爆発し、何人かのアリウス生徒は吹き飛ぶ。陣形も乱れ、爆煙が舞う。お互いに敵が見えない状況にある。

 

 

「後はこの爆弾で……」

 

 ならば広範囲の爆撃で吹き飛ばすのみ。どうせベアトリーチェには術式を使って全力でやるのだから道具は惜しまずに使うべきだ。

 

「っ!?」

 

 呪力を込めて投げようとした時に誰かの神秘の起こりを感じ取ってしまう。明らかに格が高い最高峰の神秘が近くにいる。空崎委員長、小鳥遊さん、剣先さんに匹敵するであろう神秘だ。

 

 ──カツ……、カツ……。

 

 燃え上がる音もあると言うのにそれがまるで聞こえない。俺の意識は例の神秘に向けられてしまう。それだけ危険だ。

 ゆっくりと歩いてきており、俺の耳は靴音が洞窟に響くのだけを拾ってしまう。音が大きくなるにつれて威圧感も大きくなっていく。

 

「邪魔だよ。そこどいて」

 

 神秘の持ち主はそれだけ言って白いSMGを発砲する。どれも高純度の神秘が込められている。色もはっきりとしており、紫と青味のかかったもので夜空の綺麗な流れ星のようだ。

 そんなロマンチックな色合いとは裏腹に威力は高く、アリウス生徒は一人また一人と倒れていく。神秘の持ち主は本当に邪魔な存在を淡々と処理をしているだけのようだ。

 

「……何者?」

 

 アリウス生徒は気付けば全滅しており、背筋に冷や汗が流れる。見た目はピンク色のロングヘアーに白い服、大きく綺麗な白い羽と天使のような風貌だが、何か不吉なものを感じさせる。予定外の強者の登場に正体を知ろうとダメ元で名前を聞いてみる。

 

「あぁ……君は私を知らないんだ?ふふっ、アリウスの暗殺対象に入ってたのをこっちが一方的に知ってるだけだもんね」

 

 強い神秘の持ち主はケラケラと笑いながら俺を見ていた。その表情はどこか空虚で正気のそれではない。あれは呪詛師の連中がよく発していた狂気そのものだ。それをこんな綺麗なトリニティの生徒が何故という疑問は尽きない。

 それに俺のアリウスでの扱いを知っているのも不思議な話だ。一応伊落さん経由でトリニティの上層部に共有はあったかもしれないが、それならこの人はトリニティの上層部の可能性は高い。嫌な予感しかしない。

 

「私は聖園ミカ。そうだね……、何か付け加えるとしたら──

 

 

 

 

 

 

 

 悪役登場、ってところかな?」

 

「──っ!?シン陰流!簡易領域!!」

 

 神秘の持ち主は名乗りをあげて、自らを悪役と称した後に再び愛銃を発砲する。起こりを感じていた俺は慌てて簡易領域を展開する──。

 

「ぐっ!?いきなり何しやがる!?」

 

 ──が腕に痛みが襲う。弾は全て弾き落とすなんて日下部先生並の芸当は俺にはまだ早かったらしい。当たった弾は俺の腕を抉りながら突き抜けていく。

 

 俺にいきなり発砲した聖園さんは今度はアリウスの面々に近づいていく。顔はもう少女のするそれではない。壊れた人そのものだ。呪詛師に近い。

 

 

「なぁーんでここにゲヘナの汚い男がいるのかな?それに……やっぱりいるんだね?サオリ……っ!」

「ミカ……」




浩介(え……俺は何のために撃たれたの?)
反転シュー……

ミサキ(抉れた腕が煙上げながら再生してる……キモ……)

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