「いきなり何しやがる。殺す気か?」
煙を吹き出しながら腕を治療して聖園さんを睨む。予定外の人物の登場に困惑するだけならともかく強いと来たものだ。ベアトリーチェのために呪力は極力温存したいというのに。
元々は傷の多いスクワッドを後から追わせて合流して土地勘のある彼女達と組んで最速ベアトリーチェ討伐をする腹積りだった。それが音を立てて崩れてしまっている。
「へえ?面白い力を持ってるんだね?まるで汚いゾンビみたい」
変わらずヘラヘラと聖園さんは笑う。反転術式で治してるのをゾンビと言われてムッとなるがよくよく考えれば絵面はそうとしか言えないので黙るしかない。
「まあ、邪魔をしなければいいかな⭐︎。用があるのは……サオリ。あなただから」
「……復讐しに来たのか?」
聖園さんは俺への興味は薄れたのか錠前さんを睨む。目付きが明らかに違う。俺に向けた殺意も相当だが錠前さんに対しては並大抵ではない。
錠前さんも心当たりがあるようで彼女の目的が復讐だと言っている。見るからにそれで正解だろうが、一体何があったというのか。
『……ホムラ。補習授業部の話を覚えていますか?』
「確か白洲さんがアリウスを裏切った件だな」
状況が飲み込めない俺に助け舟を出すように黒服の通信が入る。補習授業部の話が関係あるようだが、俺は黒服から聞いた話は今言った程度しか知らない。白洲さんがアリウスを裏切り、今もトリニティの生徒として生きていると聞いて手掛かりを求めて接触した時の事だ。詳細は知らない。
『その時にアズサさんとは別でアリウスを手引きしてしまったのは聖園ミカさんでしてね』
黒服が続ける言葉はあまりにも衝撃的だった。白洲さんとは別に手引きするものがいたのもそうだがそれをやった張本人が聖園さんなんて言われれば度肝を抜く。
しかし、黒服は気になる言い方をしていた。
「してしまった?」
まるで本意ではなかったと言わんばかりの言葉だ。騙された、というのだろうか。それなら激しく憎むのはわかる。
『どうも初めはミカさんとしてはアリウスとトリニティの和解を目指していたそうですが……アリウス側はミカさんの意向を踏み躙りセイアさんの暗殺を敢行』
「……」
俺の疑問に答えるように黒服は説明を続ける。あまりにも酷い話だ。
セイアさん、と言えば反転術式を覚えた時に見た夢に出た少女だろうか。あの時はミメシスの事を話しててすぐに引き戻されたが、今思えば彼女もあの時は危険な状態だったに違いない。その原因が黒服の言っている事だろう。
『セイアさんは死亡を偽装することで逃げ仰せましたが、聖園さんの目線では自分が殺してしまったと思ったようですねえ』
「それでヤケになって……」
『アリウス側の手引きをしてしまった、と言ったところでしょうか。私も詳細を把握してるわけではないので詳しくは当人に聞いてみては?』
「怖いからやだよ。アホピータン」
黒服の説明が終わり、最後にふざけた事を吐かしながら締めくくる。あのピータン次会ったら黒閃がでるまで殴ってやろうか。目指せ4連発。
「「「「……」」」」
「……余計な事を知ってる人がいるみたいだね。やっぱり君も後で仕留めちゃおうか⭐︎」
「くっ!?やばいぜ、アホピータン」
『今、殺してやるぞって言われてるのは貴方なんですけど……』
俺と黒服の会話を全員が聞いていたのか女性陣はあまりいい顔をせずに俺を見る。滅茶苦茶怖いんだけど。俺をそんな目で見るな。
「リ、リーダー……」
「まずい事になったね。私達を恨む相手と以前敵対した相手……どっちも強いし……逃げるしかないよ」
槌永さんと戒野さんは錠前さんを見ながら不安そうな顔をしていた。彼女達からすれば仲間を助けに決死の覚悟で来たと思えば、強敵が突然湧いて来たのだ。嫌な事この上ない。何気に俺まで敵の可能性を視野に入れてるし。
「……」
俺の目的はあくまでベアトリーチェの儀式の阻止だ。その点でスクワッドとは手を取り合える。出来れば俺の手でベアトリーチェを叩きのめしたいが、こうも大きなイレギュラーが入ってはそうもいかない。だから俺の取る手段は一つだ。
「……邪魔なんだけど」
「邪魔しに参った」
聖園さんの相手は俺がすればいい。先生の指揮下にあるスクワッドならベアトリーチェを倒せるかもしれない。なんたってスクワッド4人だけで1級呪霊を倒したという話もある。ベアトリーチェが1級術師の枠を飛び越えない限りは大丈夫な筈だ。
聖園さんの前に立ちはだかり、スクワッドに銃口が向かないようにする。かなりの難敵だが何とかするほかない。
『ハァ……まさかそうするとは……』
「悪いな。黒服。今回はそっちと目的が完全一致してるんだからいいだろ」
黒服は俺の選択を見てため息をつく。多分スクワッドを当てて聖園さんとアリウスへの陽動にでもしたかったのだろう。
「浩介……」
「さあ、先生達は早く秤さんのところへ。聖園さんは俺が足止めします。終わらせたらバシリカに向かいますので先に行ってください」
「だけど……」
俺のやろうとしてることを見て先生は心配そうな顔で見てくれた。なんだかんだ言ってこの人のこういうところは信じられる。俺のようなろくでなしでも気にかけてくれるのは嬉しい。
「先生っ!」
俺を置いていくのを躊躇する先生に対して錠前さんは冷静に動いていた。今回は時間の勝負で道草を食うわけにはいかない筈だ。仲間の生死がかかっているから尚のこと。俺なら置いていく。
「っ〜!!……後で追いついてきてね!」
錠前さんが急かした理由もわかっているからか先生は苦々しい顔をしながら走り出す。それに続けてスクワッドの面々もバシリカへ向かっていく。
「逃すと思う?」
「お前の相手は俺だ」
「チッ……!」
背を向けて走り出したのを確認して聖園さんは銃を構える。錠前さんは一番後ろを走っており、先生を守るような位置取りをしている。隙だらけだ。だからこそやったのだろうがそれを許すつもりはない。
「もぉ〜っ!!なんで邪魔するの?あなたもサオリには恨みがあるんじゃないの?」
「恨み?ナイフで何回も刺されたり、二発ほど腹を撃ち抜かれたことか?」
聖園さんは園児がしそうなむくれた顔をしながら俺を睨む。俺が錠前さんを助けるのを不思議に思っているらしい。反転術式を覚えられなければ確実に死んでいただろうから他所から見ればそう思われるだろう。
「うわっ、祟ってきそう……」
「……実際あり得ただろうな、それ」
俺が淡々とやられた事を列挙していけば流石にドン引きだったのか顰めっ面に変わっていた。偶々だろうが祟られそうなんて言われたものだから否定できない。ナイフ自体は神秘も通ってないし、呪力も当然通ってないから呪霊化する条件は整っている。今思えば怖すぎる。
「なあ……、復讐やめたら?」
「何?そんなことしても〜なんて口先だけ言って泣き落とすつもり?」
「いや、めんどくさいからやめてくんねーかなって……」
「えぇ……?」
先生達も大分離れたタイミングで時間稼ぎも兼ねて話しかける。復讐を止めるつもりもないし、止められもしないとわかってるので本当に口先だけだが。泣き落としを否定したら聖園さんはドン引きしてた。酷い。
「まあいいや。私に勝つつもりでいるみたいだし、その気持ちをへし折ってやらないとね⭐︎」
聖園さんはそう言って無邪気な顔で俺に銃口を向ける。殺意は充分らしい。
「へし折られるのはそっちでしょ」
「驚いた。ゲヘナの男子の脳みそはお花畑だね」
次回、ちょろっとミカ戦
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