呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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拙作ではベアトリーチェが原作よりも小物感増し増しでお送りします
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59 支配という名の大人の楽園

「気持ち悪いなあ……」

「そう言わずに……おっと」

 

 今、俺と聖園さんは絶賛呪霊の処理に追われていた。ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返すようで聖園さんは嫌気がさしているようだ。

 俺も正直に言うと空気を読まずに割り込んできた呪霊に腹が立っている。折角聖園さんと楽しく戦えてたのに台無しだ。

 

 どうにか聖園さんに押し付けたい。そんな気持ちで一杯だ。見たところ大した呪霊はいない。死にはしないだろう。

 多分聖園さんも同じ事を考えている。目的を考えれば当然の話ではある。ここで足踏みなんてしていられないだろう。

 

 もう一つ手があるとすればバシリカに二人で行ってベアトリーチェを俺が、アリウススクワッドを聖園さんが狙うお互いに目的の獲物を取らせ合うパターンだ。流石にそれは先生達にカッコつけて聖園さんの足止めをしたのだから義理的にあり得ない話だ。

 

「少しだけ引きつけてくれないか?俺がまとめて焼こう。そっちも弾を無駄にはしたく無いだろしさ」

「ふーん……私を囮にするつもりなんだ?」

「いいんじゃないの?まさか錠前さんを素手でヤるつもりか?」

「むう……」

 

 だから呪霊のヘイトが聖園さんに向くようにしたい。囮になってもらって俺がまとめて焼却する事を提案する。聖園さんだって肉体が強いと言っても一番火力があるのはやはり銃だ。弾を無駄にはしたく無いはず。

 呪霊は当然焼く。必要以上に派手な炎を出してそれを目隠しにして駆け抜ける。後は残った呪霊を押し付けると言う寸法よ。

 

「いや、流石にあれを素手で相手する方が嫌だよ。囮になるのだって弾を使うしさ。最悪サオリの銃を奪ったり、仲間の子達を人質にしてもいいんだよ?」

「いや、怖えよ。確かにアリなんだけどさあ」

「そこでアリって言っちゃう君も大概怖いね」

 

 ただ、聖園さんは囮になってまとめて倒すのもめんどくさいと判断したのか断ってきた。にしてもこの子怖いこと言うね。多分年上だけど。

 

「いたぞ!!あの二人を取り囲め!!」

 

 どうしたものかと悩んでいるところにアリウスの生徒達まで集まってきた。俺達はアリウスから見れば敵なのだからもたついてたらこうなるのは必然である。

 俺達との実力差は理解しても数と統制で上回ればいいと判断したのかぞろぞろと取り囲んできた。

 

「いるじゃん、囮」

「いやあ……こいつらじゃ大怪我するやつが出そうだよ」

「お前ら何を……」

 

 囲まれようが聖園さんは冷静なようで、冗談を飛ばす余裕さえある。確かに囮にするならいいかもしれないけどさあ。ほら、アリウスの子達も呆れてるって。ベアトリーチェを倒すのもそうだけど呪霊から守るためにも来てるから流石に気が引けるなあ。

 

「私はいいの?」

「いやいやあ……ここはどうか素晴らしい力をお見せください。お姫様」

「ぶっ飛ばすよ?問題なさそうだからいいよね?」

 

 俺がアリウスを囮にするのを渋ると聖園さんは自分はいいのかと文句を言ってきた。まあ実際問題なさそうだから囮になってと言ったのだから仕方ない。煽ててみるが却って怒らせてしまう。

 そうこうしてるうちにアリウスの生徒達は痺れを切らしたのか、攻撃しようとしてきた。神秘の起こりが感じられる。

 

 バァン!!

 ズガガガッ!!

 

「なっ……!?」

「いない……!?」

「慌てるな!上を見ろ!」

 

 俺と聖園さんが回避行動をするのはほぼ同時だった。すぐに俺達が視界から消えたからかアリウスの生徒達は慌てていた。中には出来る子もいるのか俺達が上にいるのを察知して次の構えを取る子もいた。

 

「"焔"」

 

 ただ気づいた子も所詮は遅れての反応だ。俺の攻撃の方が早い。厄介そうではあるので頭に撃って気絶させる。

 聖園さんも容赦なく遅れて気づいた子を撃っておりバタバタと倒されていた。やっぱり神秘自体が強力なのだろう。

 

「きしゃあああああっ!!!!」

 

 遅れて呪霊も一斉に反応して襲ってくる。乱戦になるとわかって命を刈り取りに来たようだ。彼等から見れば勝手に争う俺達は都合の良い獲物だろう。

 

「く、来るな!!」

 

 真っ先に狙われるのはこの場で一番弱いもの。つまりアリウスの生徒達だ。呪霊の恐怖を知ってか必死に乱射して来るなと祈っていた。

 それにしても明らかに呪霊があるとわかっていただろうに対処法もなく突っ込ませるとは不可解だ。やるなら後で何か来ると思うのだが。

 

「怯むな!呪霊は無視して二人を倒せ!呪霊はマダムがミメシスを呼んで対処してくれる!!」

 

 一人が怯まずに俺に銃弾を放ちながら皆んなに檄を飛ばしていた。ただその内容は呆れるしかない。マダム、つまりベアトリーチェが助けてくれるだと?そんなわけないだろ。

 

 つまりこいつらは特攻兵だ。それも帰還の保証をすると言っておきながら実際は片道切符しかないクソ仕様。

 どうも上手いこと自分の命令は絶対と仕込めているらしい。聞いた話だけでも碌な扱いをしてないのは明白だと言うのに。

 

 

「撃て!撃て!」

「まっ、待ってよ!!た……すけ……」

「撃てぇ!!!」

 

 胸糞が悪い。それに尽きる。その弾丸は俺の命を取るためじゃなく、自分の命を守るために使って欲しいと言うのに。

 

 

 

「聖園さん……あれどう思う……っていねえ!?」

 

 助けよう。そう思って聖園さんに協力を仰げないか聞いてみようとしたら全然見かけない。

 

「聖園ミカは後回しだ!あんな弾を受けながら爆走するやつよりも急所に当てれば死ぬやつが先だ!」

 

 どうもゴリ押しで逃げ仰たらしい。いつの間に……。

 

 

「……チッ」

 

 してやられた分はどうにかして取り戻すほかない。今優先すべきは呪霊の排除だ。アリウスの生徒達を少し焼くことになるかもしれんがもう余裕はない。

 

 

「後で恨むなよ!!」

 

 そうして、俺は炎を出して呪霊の掃討に乗り出すこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

『初めまして、先生』

 

 アリウススクワッドが先生と共にアツコ救出のためにバシリカに向かう最中に不安にもミメシスに取り囲まれてしまう。そして、転がっている通信装置からベアトリーチェの映像が相対していた。

 

「……!!」

 

 先生は立体映像越しに今回の主犯を見て顔を顰める。異形の風貌ながらわかりやすく女性の身体つきをしている。ゲマトリアの一員と見ていいだろう。

 だがそんなことよりもこの女がアツコを、スクワッドを、アリウスを苦しめているのは間違いない。それが先生にとっては不愉快極まりない。

 

『私はベアトリーチェと申します。すでにご存知かもしれませんが"ゲマトリア"の一員です。通信越しでの挨拶になる事をお許しください』

 

 彼女はご丁寧に名乗りをあげる。最低限の礼節だけは重んじるようで、敵意こそ剥き出しではあるがその牙を今は引っ込めていた。

 

「あなたがアリウスを支配してる……ベアトリーチェ?」

『はい。そして、ゲマトリアにおける現在唯一の成功者です』

 

 先生は時間稼ぎのためにも分かりきっていることを尋ねる。今はミメシスに囲まれている。スクワッドとともに突破するための策を練る時間が切実に欲しかった。

 一方、ベアトリーチェは勝利を確信してるのか機嫌よさそうに答える。自分のことを唯一の成功者などと言うあたり、他のメンバーとは不和気味なのだろうと先生は推測立てる。実際に浩介がホムラとして黒服と組んでここにベアトリーチェ襲撃に来ているのが証拠とも言える。

 

『私が来る前から内戦をしていたこの自治区はお互いに対する負の感情が満ちていました。私はそれを利用しただけ……。最近はその負の感情が呪霊という蛆を生んでいますが……ミメシスの制御を手に入れた今は取るに足りません』

 

 ベアトリーチェは続け様に自身がアリウスを支配するに至った経緯を話し始める。興奮しているのかとても饒舌になっており、余程今回のことが悲願であることが先生にもわかった。時間を稼げるのでそのまま死ぬまで喋って欲しいものだと先生は心の中で願う。

 

『あの子は、ロイヤルブラッドは私が丹精を込めて教えた生徒なのです。このまま生贄として使えばきっと私達大人に素晴らしい福音を与えてくれる。気になりませんか?先生?』

「そこまでにして」

 

 時間稼ぎとは言え黙って聞いていれば、碌でもないことしか彼女は口にしなかった。あくまでアツコを自身のための所有物としか思ってない言動や子供を生贄にして福音を得ようなどという悍ましさに吐き気すら催していた。

 

「誰かの犠牲で到達できる真実なんて必要ない」

 

 だからこそ先生はハッキリと拒否する。そして改めてあの巨悪を打ち倒さなくてはならないと決意する。浩介が彼女に対して並々ならぬ憎悪を向けている理由がよくわかる。

 

『そうですか。お互いに違うものを信じているようです。……やはり貴女は私の敵対者です。それにしても……先生は"エデン条約"がお望みだったようですね。みんなの友情で悪を退ける、そんな単純で理解しやすい世界が』

 

 ベアトリーチェの言葉は止まらない。

 

『くくくっ……どうして子供達はなんと純粋で単純なのでしょう。楽園の名前をつけたところで変わることなどありません』

 

 ベアトリーチェの戯言はなおも続く。

 

『むしろ大人ならきちんと真実を教えねば……その楽園こそ原罪が始まった場所だと。真の楽園こそ憎悪、怒り、嫌悪、苦痛、悔恨……そういったもので溢れているのだと』

 

 あまつさえ彼女は先生の前で言ってはならぬことを口にする。

 

 

 その結果──、

 

 

 

「ベアトリーチェ」

 

 怒気を孕んだ声が響く。生徒には絶対に見せないであろう先生の怒りはベアトリーチェが語るのをやめさせる。

 

「貴女は……生徒を、私たちを侮辱した。そして"教え"を"学び"を侮辱した。私は大人として────、

 

 

 

 

 

 

 

 貴女を絶対に許すことはできない」

 

 先生からベアトリーチェへの宣戦布告が届けられる。今からお前の元に向かい、お前の野望を壊してやると宣言したのである。

 

 

 

「望むところです。バシリカでお待ちしております。そこで決着をつけましょう。ただし────、

 

 

 

 

 

 

 

 辿り着ければですが」

 

 ベアトリーチェの最後の言葉を皮切りに通信が切れ、ミメシスが一斉に先生達に牙を剥き始める。




今回3回くらい完成させて書き直した
何やってんの……

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
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  • 19時ごろ
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