呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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取り敢えずケセドのトマト食いが出来たので急いで執筆
チナトロは無理そう
誤字報告や感想、ここすき、お気に入り励みになっております


60 ミカとサオリ、救いと赦し

「サオリ!右の子を倒すんだ!」

「了解」

 

 現在、アリウススクワッドと先生はミメシスの大群を相手に勝ち進んでいる。ベアトリーチェのふざけた演説が彼女達に火をつけた結果である。何が何でもここを抜けてアツコを救い出す、そんな思いで必死になっていた。

 

 ズガガガッ!!

 

 そんな思いに応えるかのように別の誰かの銃弾がミメシスを蹴散らしていく。スクワッドの誰でもない。そもそも武器からして違う。弾の連射数からしてSMGの類だ。少なくともサオリではない。

 

「これ……まさか……」

「嘘ですよね?あぁ……やっぱり辛い目に遭うんですね……」

 

 ミサキとヒヨリも誰が来たのかは察していた。実際はサオリ達を救うのではなく、横取りされないための凶弾を放ったに過ぎないのだから。

 

「……ミカ」

「やっほー⭐︎また会えたね」

 

 やってきたのは聖園ミカ。天真爛漫な笑みを浮かべながらも殺意は微塵も隠そうとはしない。

 

「ミカ!?浩介はどうしたの!?」

「ん?あぁ……あのゲヘナの男はアリウスの子達や呪霊?っていう存在がたくさん来たからさ……押し付けて来ちゃった⭐︎……今頃物量に押されて死んでるんじゃないかな?」

 

 ミカは浩介が引き付けていたのだ。それを思い出した先生はこの場にいない男の子の心配をしていた。来たのがミカということは敗北してしまったと考えられる。そうなれば死に体になっている可能性は高い。

 ミカの方は明け透けに見捨てて来たと断言していい笑顔を見せる。彼女もよく見れば痣が出来ており、浩介には手酷くやられたことが窺えた。戦いは熾烈を極めたのだと先生に嫌でもわからせてしまう。

 

「浩介って子も馬鹿だよね……。自分に銃口を向けてるアリウスの子達相手でも呪霊に襲われていると知れば即座に助けようとする。……私はアリウスと仲良くしたいと言って裏切られたのにね。だから死ぬんだよ」

「……っ!!」

 

 ミカは浩介の行動を自身と重ねて嘲笑する。その顔は本当に泣き出しそうで、彼女があの件でどれだけ傷ついたのかを語っていた。サオリはどこか複雑そうにそれを見ることしか出来なかった。

 

「ミカ、それ以上は──」

 

 流石の先生もこればかりはライン越えだ。どうにか止めようと身を乗り出す。生徒同士が傷つけ合う光景など繰り広げられてはいけない。

 

 ドカッ!!

 

 先生の行動に合わせるように爆発音が響く。先生の近くの建物が爆破され倒壊する。よりにもよって高い建物であり、下側が爆破されたせいか上側が先生に向けて倒れ込む。まるで計算されたかのように綺麗に先生に向かってだ。

 

「「先生!!」」

 

 ミカとサオリは同時に叫ぶ。先生の身に迫る明らかな殺意。二人は自分の抱える慟哭すら忘れてただひたすらに先生の身を案じる。この時ばかりは二人の気持ちは完全に一致する。

 

「ヒヨリ!!!」

「は、はいっ!」

 

 対してミサキとヒヨリは脚と手を動かしていた。ミカの言葉に気圧されもせずにいられた二人はあくまで冷静だった。すぐに先生を救助する。

 

 ガラガラと音を立てて先生がいたところは瓦礫の山となる。先生はなんとか下敷きにならずに済んでいた。

 

 しかし……。

 

「ま、また!?」

 

 ヒヨリは驚きながらも先生を持ち上げてそそくさと退散する。仕方ないとは言えサオリを置いていく形となる。ミサキもサオリのいる方に向かえば下敷きになるため仕方なくヒヨリと先生の方へと走る。

 何度も爆発が起こり、瓦礫の山がとうとうお互いが見えなくなるほど積まれる。その光景にミカとサオリは唖然とするしかなかった。

 

 この行為は当然ベアトリーチェの策略である。あわよくば先生を抹殺出来ればいいが本命は違う。

 

 

「……先生も無事みたいだし、やろうか」

「……こうなるか」

 

 ミカとサオリが1対1になる、つまり先生からサオリという大きな戦力を引き剥がす事だった。

 

 

 

「先生、頼む先に行って姫を……アツコを……救ってくれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ミカとサオリの弾丸が互いの身体を傷つけ合う。浩介に負わされたダメージがあるミカ、来る前から万全ではないサオリ。どちらも本調子とは言えない。

 だが、それでもこのキヴォトスにおいても上位の実力者なのは間違いない。実際のところ条件は不公平ではあるが。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 息を荒げているのはサオリだった。どちらも消耗しているなら素の力で勝っているミカに軍配が上がるのは必然。

 ミカの方もダメージはあるがサオリより余裕はある。止めをさせる状況になっていた。

 

「まだだ!!」

 

 サオリは尚も抵抗する。サーモバリック手榴弾も尽きた。後は弾とその身一つだけ。それだけでは相手にもならないだろうがまだ動くはずだとサオリは自分に言い聞かせる。

 

「うぐっ……」

「無駄だよ、サオリ。もう動ける状態じゃないでしょ」

 

 だが言い聞かせるのも限界が来ていた。身体の方はもう悲鳴をあげて動くことを許さない。サオリの意思とは関係ない。ミカの銃口はサオリの心臓に向く。

 

「アズサちゃんまで送ってトリニティを落とそうとしたけど、裏切られて失敗。虚しい結果になったね。自分達の教え通りの末路なんて皮肉な結果じゃん」

「……確かにそうかもな」

 

 ミカはもう動けない状態のサオリを見て精一杯の皮肉を口にする。殺したい相手を前にして手は引き金を容赦なく引くことなくサオリの言葉を待っていた。

 

「ただ……アズサは本来、トリニティを落とすために送ったのではない」

「……へ?」

 

 返ってきた言葉は意外なもの。白洲アズサはトリニティのスパイとして送ったのではないという回答。これにはミカも面食らう。

 

「アズサは……トリニティとの和解の象徴になる予定だった」

「なっ……」

 

 サオリが続けた言葉にミカは驚愕する。やってきた事を思えば嘘としか思えない内容だ。それもこんな今際の際に発している。

 なんの事だ、とミカは逡巡するがすぐに何かを思い出す。

 

「あれは……先生を騙すた──」

「初めにこの言葉を使ったのはお前がアリウスに来た時だったな。まだトリニティへの復讐もエデン条約での謀略も何も決まっていない時のことだ」

 

 ミカは否定しようとするが、それに被せるようにサオリが当時のことを口にする。否定はさせない、そんな意思を感じさせる。

 

「結果として……トリニティの事をよく知るアリウス生として利用することになったが初めはそのつもりだったんだ」

「なによ……今更……」

「そうだな、今更こんなことを言ったって過去は変わらない」

 

 サオリはぐったりと壁に背をつけながら話す。もう逃げることすら叶わない。だから思いの丈をここで吐き出そうとしていた。ミカが言ったように今更な話だ。

 

「アズサはトリニティで多くのことを学び友達を作っていた。幸せを掴んだんだ。私達と一緒にいた時は心を開かずにいたあの子が……」

 

 サオリはそう言いながら今までを振り返る。スクワッドに引き込んだミサキとヒヨリ、善意を踏み躙りこの地獄に引き摺り込んでしまったミカ、現在ベアトリーチェによって命の危機に晒されているアツコ、そして…………自分から離れて幸せを掴んだアズサ。

 

「私はそれが理解できなかった。……いや、否定したかったんだ。私から離れたことで幸せになったなんて認めたくなかった」

 

 サオリはそう言ってミカの瞳をまっすぐ見つめていた。そして、ミカの銃口を掴み自身の心臓のある位置に正確に押し当てる。

 

「私もあの子のように幸せになれるのだろうか、赦しを欲してもいいのだろうか、救いは……ないのだろうか……そんな思いが今でも燻っている。だけどそれは許されない。ミカ……」

 

 サオリは銃口を掴んだ手を離す。銃口は変わらずサオリの心臓前にあった。後は引き金を引いて心臓を潰すだけだ。ミカの神秘なら十分可能なことだった。

 

「お前を魔女にしてしまったのは私だ。これで幾分かは公平だろう」

 

 サオリはミカに自分へのトドメを催促する。周りを不幸にするだけの疫病神などここで終わらせてほしいと願う。欲を言えばアツコが助かった後であれば何の憂いもないが先生ならばきっと助けてくれるとサオリは信じていた。

 

 

 

 ミカは銃口を──降ろした。

 

 

「私には出来ないよ……。あなたも私も幸せになれない。取り返しのつかなくなった私達にチャンスなんてない。だから……あなたにも公平な痛みを、と思ってたのに……」

 

 ミカは膝をつき涙を流す。彼女の殺意は涙と共に外へと流れていく。もうここは深く絶望した少女二人しかいない。

 

「あなたの結末をこんな風に決めてしまったら……救いを求めるあなたを終わらせてしまったら……私自身にも救いがないと証明することになってしまう」

「ミカ……」

 

 気づけば二人の目線は対等な位置にあった。最後の最後に二人は同じ思いを共有していた。

 

「ヘイロー破壊爆弾……使わないんだね。あれがあれば私を倒せるだろうに。それを使ってくれていれば私は……」

「あ、あれは……」

 

 ミカはサオリが持っているはずのヘイロー破壊爆弾のことを触れる。彼女としてはそれを使ってくれていれば自分を終わらせてくれると思ったのだろう。サオリも自身を終わらせてほしいと思ったから使わないのだろうと思っていた。

 一方でサオリはちょっと複雑そうな顔をしていた。確かにミカ相手に使うかはわからないがそもそも持っていない。先生が女性がしてはいけない声を出しながら壊してしまったなんてこの雰囲気では言えない。

 

 

 

 

 

「そんなもの私が壊した」

 

「「……!!」」

 

 

 

 突如として大きな声で二人の陰惨な雰囲気を吹き飛ばされる。二人ともその声に驚いて振り向く。

 

「二人とも……」

 

 声の主、先生はサオリとミカに近づく。二人の近くに来たら同じように膝をついて抱き寄せる。泣きじゃくる子供をあやす母親のように優しく。

 

 

「チャンスがないなんて言わないで。生徒が先生の前で未来がないなんて言わないで。そんなことはないのだから……」




がっつり書こうか悩みましたがテンポも悪いので圧縮しました
サオリとミカは色んなところで何かと同じように書かれますよね
贈り物が二人とも化粧品関係が入っていたり、最近では読者モデルなど
本編のこのあたりはキャラの独白がのめり込みやすくライターさんの腕前の高さに惚れ惚れとします
その魅力を遺憾無く発揮したいところですが自身の腕の無さ(99%)とテンポの問題から見送ることをお許しください

更新時間はいつが良いでしょうか?

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