呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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更新が遅くなってしまい申し訳ございません
限定が来ると思っていたらシュポガキが来て感謝のノゾミ固有3をやってました
ティファレト97をしばいて来たので更新です


62 慈悲を語る曲

 ここはバシリカ。ベアトリーチェが鎮座する場である。そんなバシリカにスクワッドと先生は足を踏み入れる。

 一方でベアトリーチェは正面から迎える。これが強者の余裕だと言わんばかりで、慢心に満ち溢れていた。例え半端であろうと負けることはないと踏んだのだ。

 

「よくここまで辿り着けましたね。生徒を二人犠牲にしてまで秤アツコを助けたいのですか?先生?」

 

 ベアトリーチェは自身に負けに来た先生達を嗤おうと煽る。二人とはミカと浩介のことである。片方はミメシス、片方は呪霊と別口の化け物の相手を単騎でやっている。普通に考えれば命はまずない。

 

「二人はまだ犠牲になんかなってない。それに……」

「それに?」

 

 

 

 

「お前を早く倒してしまえば解決する話でしょ」

「このっ……青二才が!」

 

 先生はベアトリーチェに対して煽り返す。実際のところ有言実行しなくてはならないという辛い立場だがベアトリーチェは考えもしない。

 

「見なさい!これこそが本来の姿、偉大なる大人の姿なのです!!!」

 

 怒りながらもベアトリーチェは先生達を迎え撃つべく、奪った神秘を使い変貌していく。頭身は大きくなり、異様な化け物へと変わっていた。

 脚だったものは植物の名のように枝分かれし、顔も不気味なデザインだが花のようなものへと変わっていた。彼女の頭の後ろには真っ赤なヘイローのようなものが現出し、もう殆ど違う見た目だ。

 

「あれがマダムの……ベアトリーチェの正体……!」

「私達は今まであんなのに……」

「ひぃ……」

 

 スクワッドの面々は気圧されてはいるが、いつでも自慢の愛銃を発砲出来るようにしていた。

 

「私はあなたのように全ての生徒を……いや全ての子達を審判し救済する崇高を手にする。あなたならこの力も理解できるでしょうに」

「それは違う」

 

 ベアトリーチェは化け物の姿のまま自身を神そのもののように振る舞う。奢りに塗れた姿は醜悪だが言うだけの力の大きさを感じさせる。だからこそ先生に誇示するのだが一蹴される。

 

「私は大した存在じゃない」

「!?」

 

 先生はベアトリーチェの主張など全く意に介していない。

 

「私は審判者ではない。誰かを審判する権利は私にはない」

「私は救済者ではない。この世界の苦痛を消し去ることなど出来ない」

「私は絶対者ではない。この世の罪悪を無くすことはできない」

 

 ベアトリーチェのように驕る姿を先生は見せなかった。

 

「では一体なんだというのです!?あなたの能力は、存在価値は何だと言うのですか!?」

「愚問でしょ。生徒達のための先生だよ」

 

 自身のスタンスは決して崩さない。本当に助けを求める生徒には持てる手を尽くすのだと。

 

 

 

「やはりあなたはここで終わりにしておきましょう」

 

 言葉で翻弄されたベアトリーチェは実力行使に出る。スクワッドは全員消耗している。いくら優秀で先生の指揮があってもコンディションの悪さまで覆せはしないとタカを括る。

 

「吹き飛びなさい!!」

 

 ベアトリーチェは頭上に赤いエネルギーを溜め込み、球状にして先生達に振り下ろす。いわゆるエネルギー弾だ。銃火器が主な攻撃手段のキヴォトスでは見かけないものだ。浩介や呪霊と言った例外を除けばだが。

 

「サオリ!狙いはキミだ!!」

「あぁ……わかってる!!」

 

 そんな化け物がやる手段としてお誂えむきなものを前にしても先生とスクワッドは冷静だった。呪霊をチームで討伐したスクワッドと浩介と対峙および共闘の経験もあってか特段驚きはしない。

 

 ベアトリーチェはサオリに対して執着があるのか狙っている。アツコの生贄の取り消しを求めた件や逃亡生活の件やらで何か思うところがあるのかもしれないと先生は推測するが端に捨てる。考える暇はないし、本当なら生徒に悪い大人が粘着しているとも言えるので成敗するだけだ。

 

「ヒヨリ。顔に広がってる花弁みたいなのは狙えそう?」

「チャージしてましたもんね……。やってみます!」

 

 即座に無力化のための指示を飛ばす。ベアトリーチェはエネルギーを溜めるのに頭部付近でやっている。少しでも乱してやれば威力減に繋がる可能性を試す意図である。

 

「先生、じゃあこういうのもいいんじゃない?」

「よし!撃て!!」

 

 指示を聞いていたミサキは徐に自身の相棒から弾を発射する。上空へと打ち上げ、上空で分解された弾はベアトリーチェへと降り注ぐ。

 

「当たってくださいぃ!」

 

 上からはミサキ、下からはヒヨリがベアトリーチェの頭部を狙う。まずは色々と試し、弱点を探っていく。

 

「鬱陶しい!!」

 

 ベアトリーチェは2人の攻撃を鬱陶しく感じたのか掌から神秘を放出する。神秘は二人の近くにいったところで弾ける。

 かなりの衝撃が2人を襲い、堪えることも出来ずに吹き飛ばされる。攻撃はやむを得ず中断される。

 

「ミサキ!ヒヨリ!大丈夫!?」

「大丈夫……」

「私もなんとか……」

「よかった……だが……」

 

 派手にやられた2人は先生の心配する声にもしっかりと返事して戦線へと復帰していく。何とか無事であることにサオリはホッとしているが、焦りも募る。

 2人のスタミナに限界が来ているのか足取りは重い。サオリもここに来るまでにだいぶ消耗している。皆んな限界が近いことを嫌でも思い知らされる。

 

「ククッ……痛快ですねえ……。シャーレの先生、あなたを倒せそうです」

 

 ベアトリーチェは特に追撃することなく余裕を持ってその様子を見ていた。力を得て使ってみれば目の上のたんこぶだった存在を押し切れそうになっている。それが彼女を驕らせる。

 

「まだだよ」

 

 だが先生は決して諦めず状況の分析を続けていた。頭部の花弁に収束する高エネルギー光線、掌から発する爆発性の神秘の放出。これらの能力を発揮する際に必ず大きな予備動作がある。

 まずは頭部の花弁を何とかすることから始める。打てる手は打つだけなのだ。

 

 

「先生、私は2人を守る。指示を」

「うん。頼んだよ、サオリ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 一方でミカはというと……。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 疲労困憊だった。場所はサオリ達の近くでミメシスにジリジリと押されていた。大きな傷こそ今はないが、それが出来るのも時間の問題である。

 フラフラとしており、今にも倒れそうになるがグッと堪えてミメシスを視界に収める。今はどれだけ倒すべきなのか、算段を立てていく。

 

「……まだ大丈夫……まだ、動ける……!」

 

 ミカを奮い立たせるのは背中を守ると決めたサオリ達と先生の存在だ。こんな自分でも最後ぐらいは誰かのために戦えるなら悪くないと思っている。

 

「来たかあ……おいでよ」

 

 ある存在を目にしたミカはげんなりとした表情をしながらも対象を誘い出そうとする。その存在はバルバラ。今回出て来たミメシスの中でも別格であれだけはミカでも簡単に倒せはしなかった。

 

 ミカは走り、バルバラはそれを追いかける。ミカの実力を見て背中を見せれば即座にやられることをバルバラは理解していた。故に今はミカを最優先にしている。

 追いかけているのを確認したミカは速度を上げてどこか隠れられる場所を探し出す。隠れた結果自分を放置する可能性もあるが、そうなれば隙だらけだ。不意をつければ簡単に仕留められる自信がミカにはあった。

 

 装備の差もあってか足はミカの方が早い。隠れる余裕が出来そうであり、ちょうど良い場所を見つける。

 

「あれは……」

 

 ミカが見つけたのは聖歌隊室跡地。トリニティにもあるものだ。オルガンや楽譜、蓄音機までありアリウスが元々一緒になる予定だった名残を感じさせる。

 入れる場所はそこしかないため、ミカは全速力で飛び込む。入ってみれば埃を被っており、かつて使われたであろう楽器達はとてもいい状態ではない。

 

「……トリニティで似たものを見たな。そうだよね。アリウスの子達だって私達と同じ授業を受けるはずだもの」

 

 ミカは不思議とその空間に心惹かれる。普段なら適当に受けたりするものだが、今はどうにも意識がそっちは向かう。少しばかりは信仰心があるからなのか、それとも……これから失う学校の思い出を思い出してしまうからか。

 

「蓄音機は……壊れてるか……残念」

 

 ミカは蓄音機を操作してみるがうんともすんとも言わない。その様子に落胆はするが仕方なしと割り切る。今はこんなことをしている場合ではない。

 

 だというのにこれから失うものをミカは振り返ってしまう。ナギサやセイアといった友達との思い出、アリウスとの騒動、コハルが自分に対してしてくれたこと……いろいろなものがミカの内から溢れて来た。

 

「ナギちゃん……セイアちゃん……ごめん」

 

 友への謝罪。ミカは涙を流す。

 

「コハルちゃん、ありがとう。あの時に割って入ってくれたの本当に嬉しかった。物語の主人公みたいでカッコよかったなあ……」

 

 友とは別で自分を庇ってくれた下江コハルのことも思い出す。あの時の光景はミカも鮮明に覚えていた。

 

 

 ガタッ

 

 そうこうしているうちに追いついて来たバルバラが乗り込んできた。バルバラだけでなく他のミメシスもぞろぞろと入り込んでくる。

 

「あはっ、私を倒すためにこんなに連れて来ちゃったんだ?必死だね〜」

 

 ミカは残る力を振り絞り、戦闘へ備える。これからやるのはきっと負け戦。先生は迎えに行くと言っているが、ミカはそれには期待出来ないとわかっていた。

 自分はもうトリニティには戻れない。戻る資格などない。そう自分に言い聞かせミカは残弾を確認する。数は充分で後はやるだけだ。

 

 

「サオリ……いや、スクワッドの子達も私と同じで救われたかったんだよね。誰だって幸せになりたいもんね」

 

 

「多くの人を騙し、絶望に陥れたりしたあなた達でも最後の最後に誰かを救うことが出来たのなら……苦痛だらけな人生も少しは報われる。きっとそうだよね」

 

 

「わかるよ。私とセイアちゃんがそうだったもの」

 

 

 

「だから、アリウススクワッド……あなた達のために──

 

 

 

 

 

 

 

 ──祈るね」

 

 

 ミカは独白を終え、ミメシスが来た方向へ歩き出す。今思っているのはミメシスを倒すことではない。

 

 いつか、彼女達の苦痛が癒えることを。

 例え茨の道を突き進むことになっても未来があることを。

 ただ願う。

 

 彼女達を赦す。それはきっと互いに不幸であるよりももっと良い結末を迎えるだろうから。

 

 彼女達は例えアツコを救っても苦難の道には違いない。追われることにもなるだろう、理不尽に苛まれるだろう。それでもアツコを救えたなら同時に彼女達自身も救われるとミカは信じている。

 

 

 

 プツッ……。

 

 

 

 ミカがこれからミメシス達を1人でも多く倒そうとした瞬間、何かが急に作動を始めたかのような音が響く。その音にミカだけでなく、ミメシスも注目する。

 音楽が鳴り響いていた。ミカだけでなくミメシスの子達も覚えがあるものだ。この場にいるもの全てを繋げる曲は少しだけ戦闘の開始を遅らせる。

 

「あはっ、なあんだ……動くじゃん」

 

 音楽を鳴らしていたのは先程ミカが動かそうとしても何も反応がなかった蓄音機だ。本来なら動くはずのないものが動いた。それがベアトリーチェを大きく動揺させることになるのをまだ誰も知らない。

 

 鳴っている曲は"kyrie eleison"。ミカはこの曲がそこまで好きなわけではない。でも今はいいタイミングだ。

 

 

「先生、あの子を……スクワッドを救ってあげて。ここは絶対に通さないから」

 

 

 

 ミカはそう言って慈悲を語る曲を口ずさみ死地へと赴くのであった──。




浩介の霊圧?ないよ

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