呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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63 罪と詰み

 ベアトリーチェは押されていた。アツコから神秘を奪い力を得たにも関わらず、先生が指揮するボロボロの生徒を倒せずにいた。

 先生の指揮がそれほど強過ぎるのか、儀式が完遂されてない状態が響いているのか。ベアトリーチェは後者だと決めつける。

 

「このぉ……!」

 

 自分は圧倒的強者になれたはずなのに結果としては不甲斐ないことこの上ない。このままでは道化もいいところである。

 ベアトリーチェは歯軋りしながらエネルギーを溜める。当てさえすれば勝てる、そう思い込み愚直に攻め立てようとする。

 

「サオリ、足を狙え。ヒヨリは3カウント後に右手を撃て。3……2……1……撃てぇ!!」

 

 先生は焦ることなく生徒達に指示を出す。ベアトリーチェが右手に力を溜めていることを看破し、サオリに足元を崩させる。ヒヨリはカウント後に的確にベアトリーチェが力を溜めきるまえに命中させる。

 

 

「小娘!!!」

 

 ベアトリーチェは邪魔され攻撃できなかったことに苛立ちを隠さず激昂する。半端に溜まったエネルギーを放出しせめてもの抵抗をする。

 半端といえどもそれなりの威力でスクワッドもダメージは避けられない。身体が重くなるがここまで来た彼女達には関係のないことだ。

 

「ぐっ……まだだ!!」

 

 サオリは血反吐を吐きながらもベアトリーチェに喰らいつく。狙った獲物を離さない猟犬のように執念深く、その牙は確実にベアトリーチェへと食い込んでいく。

 

「姉さん!!前に出過ぎ!!もっと下がって!」

 

 ミサキも珍しく声を張り上げ、先走るサオリを諌めようとする。リーダーと呼ばずに今は家族としてただサオリを心配していた。

 しかしサオリは動きを止めない。ベアトリーチェの近くで攪乱するように動いている。全速力の動きを続けている。

 

「いや、サオリはその位置をキープするんだ!!ベアトリーチェの攻撃は中距離に適したものばかりだ!」

「ああ、この距離にいればベアトリーチェは私に攻撃を振り回しづらいはずだ」

 

 ベアトリーチェの弱点として攻撃のレパートリーの偏りがあった。頭部にエネルギーを溜めて放つ光線、掌に集めたエネルギーを放って爆発させる攻撃、手からレーザー……いずれも中距離や遠距離が適正だ。半端な使い方は自爆を招く。

 そうでなくとも近くで攻撃されるのは鬱陶しいことこの上ない。ベアトリーチェは呪術師のように戦いのために身体を鍛えているわけではなく、大きな力で叩き潰すことしかできない。近い実力の相手と鎬を削る経験がない。

 だから彼女は強い力もあり身体を鍛えてる浩介に勝つことはおろか生徒達に敵うことはない。

 

「こういう手だってあるのです!!」

 

 ベアトリーチェは馬鹿の一つ覚えの力押しに出る。頭部にエネルギーを溜める。多少のダメージは覚悟の上である。

 

「……ミサキ!!」

「了解」

 

 だがこの瞬間を待っていたと言わんばかりに先生は素早くミサキに指示を飛ばす。指差しして狙いを定めた場所はまさにエネルギーチャージ中の頭部だ。

 ミサキはミサイルを真っ直ぐ飛ばし、チャージ中の頭部へと滑り込ませる。チャージし切る前にベアトリーチェへと突き刺さる。

 

「が──なっ!?」

「終わりだよ。ベアトリーチェ」

 

 溜めたエネルギーで誘爆し、ミサイルが爆発する。顔から煙がもくもくとあがっており、ベアトリーチェはぐらつく。

 

 

「火力を集中させろ!!」

 

 先生の号令と共にスクワッドは一斉に攻撃する。ベアトリーチェは手も足も出ずに攻撃を受け続ける。段々と頭の位置が下がっていく。

 

「ハァ……ハァ……このっ!!よくもやってくれましたね先生……っ!!」

「まだ倒れないのか」

 

 弾倉に込められた弾もつきリロードに入ったが、ベアトリーチェはまだ余力があった。ダメージこそ酷いがまだ戦える。

 とはいえ同じ戦い方では先生が指揮するスクワッドに勝てないのは、ベアトリーチェは理解している。儀式の完遂は倒さなければ不可能なのでその手はなし。ならば残された手は一つしかない。

 

「来なさい!バルバラ!!聖園ミカは他のミメシスに任せてこちらへ!!」

 

 自分に次ぐ最大戦力であるバルバラの召集だ。あれなら自身と組めばスクワッドを蹴散らすのは容易い。最強の聖女に疲弊したスクワッドが勝てる通りはない。

 

 

 来られれば、の話であり、作戦に夢と希望を詰めただけのハリボテであることをベアトリーチェは思い知る。

 

 

 ベアトリーチェの号令に対して返ってきたのは歌声だった。透き通っていて聴きやすく落ち着く歌声だ。教会で流れるに相応しいもので、今のアリウスから奪われてしまったものだ。

 

「これは……Kyre eleison(キリエ)?」

「久しぶりに聞きました。へへ……懐かしいです」

「そうだな。何年振りだろうか……」

 

 スクワッドはこの曲を懐かしみながらリロードを終わらせる。幼き頃に聴いたであろうこの曲は、今でも彼女達に根付いている。トリニティだろうとアリウスだろうと変わらないものだ。

 

「なっ、何故この曲が!?関するものは全て壊した筈です!……なりません!!私の領地で慈悲を聞かせる曲などあってはならない!!子供達に慈悲などなく、ただ大人達に搾取され恐怖で抑えねばならないと言うのに!!」

 

 ベアトリーチェだけは違った。バルバラが来れないのもそうだが、アリウスを憎しみと恐怖で支配するために邪魔な文化がここに来て甦ってくるのが不快でならなかった。

 

 

 

 

 

「黙れ」

 

 

 

 聞くに耐えなかったのか先生はドスの効いた声を出してしまう。拳を固く握り、許されるなら殴っていただろう。先生は怒りの頂点に達していた。

 ベアトリーチェは生徒達から奪い過ぎていた。学びも慈悲も癒しも喜びも。アリウスは荒廃し、支配と呪霊が蔓延る結果となっている。未来を踏み潰してしまっているのだ。これは正しくベアトリーチェの贖いきれない罪だ。許してはいけない。

 

「なっ!?」

「これ以上、私の生徒に喋りかけるな」

 

 先生の覇気にベアトリーチェは気圧され、先生はベアトリーチェ討伐の仕上げに取り掛かることにした。最終決戦は近い。このまま先生はベアトリーチェを押し切り、アリウスを解放するのに王手をかける。

 

 

 

ゾワッ

 

 

「「!!!」」

「これは……」

「ちょっとお腹痛くなってきたかも……」

「ヒヨリ……まあ、かなり手酷くやられてたよね……」

 

 

 それに待ったをかけるように重く暗い何かが伝わり、先生とベアトリーチェの背筋にヒヤリとしたものを感じさせる。神秘のように綺麗なものではない。まるで反対な力がこの場を支配していた。間違いなく恐怖の類である。

 

 

 

 

 

 

「中々言うねえ。先生も。……だけどそいつは俺にやらせてもらおうか」

 

 力の元はゆっくりとこちらに近づいてきていた。全員がそれに注目しており、息を呑む。この場はもう完全にアレに握られたと全員が思っていた。

 

「火野……浩介……!?何故です!?かなりの数のアリウス生と呪霊を襲わせたというのに!?」

 

 ベアトリーチェはワナワナと震えていた。先生達だけで一杯一杯だというのに浩介まで来たらいよいよ勝ち目がない。この状況は彼女にとって完全な詰みを意味していた。

 

「んなもん、必要な分は全部倒したに決まってるだろ」

 

 浩介はさも当然と言わんばかりに倒してきたと答える。激闘だったのか服は血塗れになっている。血が流れていないので反転術式で治してここにきたことが窺えた。かなり消耗しているであろうことは間違いない。

 

「……ふっ、ふははっ!!満身創痍ではないですか!!今のあなたに何が出来るというのですか!!」

「お前を殺せる」

 

 ベアトリーチェは消耗していると確信してから一転し、余裕を見せる。今なら浩介を殺せると思い喜びに溢れる。

 対して浩介は冷静だった。ベアトリーチェが何を知ろうとここで倒せると確信していた。決して慢心などなく呪力を必要な分だけ練り上げる。

 

「大体まだ余裕はあるんだよ。お前さんの身から出た錆のおかげでな」

「ハッタリもいいところですねえ。なら見せてもらいましょうか!!」

 

 浩介は人差し指と中指を交差させ、両手の薬指と小指を交差させる。結ばれた印は摩利支天印。陽炎を神格化し、護身と勝利の神様と言われている。

 

 

「慣らし運転には丁度いい──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──領域展開

 




浩介ログイン
領域展開の名前がダサいって言われそうで震えてる

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