呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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64 領域展開

 

 

 

 

 

熢摩降伏(ほうまごうふく)

 

 俺の呪力がバシリカ内を走る。この空間は丁度よく壁に囲まれている。つまり外殻代わりに使えるという事。伏黒君がやっている手法を使わせて貰えばいい。

 結界を閉じることは出来ないが思惑通り俺の呪力で部屋が満たされる。その後に壁や床の至る所に三角の炉が出現し護摩の火を灯す。不躾にかつ乱雑に出てしまっているのもあってかなり不細工な領域展開となった。

 

「……なんですこれは」

 

 ベアトリーチェは警戒しながら俺に尋ねる。答えられるわけもないと思っているのか、沢山ある目を動かして部屋の変化をくまなく確認しており、どういったものか見極めようとしてた。

 

「なんか……ポカポカする」

「そうですよね。なんというか今にも燃えそうな火の気?のようなものを感じます」

「……浩介から離れた方がよさそうだぞ」

 

 戒野さんはマスクを外して不機嫌そうな顔をしている。俺の領域が発動して室内の温度が上がったのを不愉快に感じているらしい。すまん。

 他のメンバーも違和感を感じているのか、俺から離れるように動き始める。俺としてもその方が助かる。巻き添えを食うかもしれないしな。

 

「さて……やろうか」

「何をするかと思えば虚仮威しとは……すり潰して差し上げます」

 

 全員が先生の元に集まってなるべく遠くに行ったのを確認後、掌をベアトリーチェに向ける。ベアトリーチェは神秘を溜めながら俺に狙いをつける。

 同時に攻撃を放ち、炎とレーザーがぶつかる。炎はいつもよりも大きく強くなっており、普段なら押せないであろうレーザーも難なく押し返していた。

 

「なっ!?」

 

 最終的にレーザーは打ち消され、炎がベアトリーチェに迫る。大きくなった炎はベアトリーチェを余裕を持って飲み込む。普通の人間ならこれでチェックメイトといえる一撃だ。

 だが大き過ぎるので少し火力を抑えないと秤さんに当ててしまいそうになったので、直前に炎を弱めてしまった。

 

「ああぁぁぁぁっ!!!がっ……あぁ……」

「おー、よく燃えるな。よし!まずは……秤さんの救出だ」

 

 ベアトリーチェは無駄に大きな声で悶え苦しんでいた。この様子なら暫く炎に苦しまれるだろうし、人命優先で行こう。抑えてこの火力じゃちょっとした操作ミスによる巻き添えで殺してしまう。

 秤さんが吊るされている十字架のようなものに向かって走る。秤さんは赤い荊のようなもので縛られているのが見えた。恐らくはベアトリーチェの力によるものだろう。となれば消えてない現状はベアトリーチェが最低限力のコントロールを手放してない証拠となる。手早くやった方が良さそうである。

 

「発」

 

 今、この空間は俺の呪力で満ちている。つまり予め呪力を込めなくても"発"による発火が可能。それも領域内ならどこであろうとだ。

 荊の根本が着火し、俺の力に負けたのかどんどん霧散していく。その結果、秤さんに対する拘束は緩む。

 

「よっ……と!今、助けるからな。おらぁ!」

 

 炎の逆噴射による飛翔もいつもより勢いがあり、制御も効きやすい。あっという間に秤さんの元へ辿り着く。後は荊を引き剥がして、スクワッドの元へ届ければいい。

 

「よくもロイヤルブラッドを……っ!!!返せ!!!」

「焦げ臭えよ。加齢臭成分も燃えたのか?」

「小僧ぉっ!!」

 

 秤さんをおんぶしてスクワッドの元に届けようとしたら炎を振り払ったのか焦げ臭いベアトリーチェが襲いかかってきていた。覆い被さるような感じで迫っており相当焦っているようである。

 

「すぅ〜……ふっ!!!」

 

 その行動は態々俺の攻撃に当たりに行くようなものだ。おんぶして両手が塞がっていても口から炎は出せる。大きく息を吸って勢いよく炎を噴き出す。

 噴き出しながら後方へ飛んでいき、先生の元へと辿り着く。ベアトリーチェは焼けようがお構いなしに突っ込んできている。割と耐久お化けらしい。見れば分かることではあるが人間の範疇を大きく逸脱している。

 

「よっと!お姫様は救出したよ〜。さあ、帰った帰った」

「ゆる……」

 

 おんぶしていた秤さんは降ろして先生に預ける。これでベアトリーチェには何もない。後は煮るなり焼くなり好きにできる。

 なんなら先生と一緒にここから逃げてほしい。ベアトリーチェに万が一奪い返されてしまい、万が一儀式を完遂されるのは危険だ。

 

「アツコ!」

「姫ちゃん!」

「姫……起きて……お願いだから」

 

 とはいえすぐにそうはいかない問題もある。秤さんのダメージが深刻なのか起きないのだ。生きているのはわかるのだが、あれでは抱えながらの逃走になる。この場は最低でも本人に目覚めてもらわないと厳しい。

 

「……あいつを先に倒さないと駄目か」

 

 そうなればやるべきことは一つ。ベアトリーチェの最短撃破だ。残った呪力は秤さんの回復のために注ぎ込む。そうすれば芽はある。戦力に関しては先生には申し訳ないが大人のカードを切って貰えば何とかなる。

 

 そう考え込んでいるうちにベアトリーチェを燃やしていた炎が勢いよく振り払われる。その衝撃はこちらにもひしひしと伝わってきた。

 

「火野浩介ぇ!!!貴様はここで……死ね!!!」

 

 ベアトリーチェはすでにエネルギーをフルチャージしていた。俺の炎を避けることは出来ないのだから喰らう前提で戦略を組み立てていたようだ。

 俺が秤さんを助けた時点で先生に預けるのは明白。そうなれば傷の深い秤さんの様子を見る時間がかかる。ベアトリーチェにとってはまたとない時間稼ぎのチャンスだ。秤さんさえ無事ならどうとでもなるからだろう。

 

「なるほど……考えたな」

 

 現在、俺は先生達の前に立っている。避けてしまえばスクワッド達に直撃コースだ。俺が避けないことを理解しての立ち回りのようだ。

 

 

 とはいえ避けるつもりはないし、そもそも必要ない。

 

 

「終わりにしよう。ベアトリーチェ」

 

 受けて立つために両手を前に構える。呪力を込めて炎の玉を形成する。普段よりも大きく、力強さも感じる。領域を展開出来たことで俺の術式は確実に1ステップ上に登れていた。

 

「極の番を使おうともしないとは……舐められたものですね!!」

 

 ベアトリーチェはフルチャージした光線を放つ。威力は凄まじく確かに極の番でないと打ち勝てない威力だ。俺が今出そうとする火力では持ち堪えられてもいつか敗北する。

 今のベアトリーチェならばキヴォトスに来たばかりの俺だと敗北してるだろう。事実、奴は目的の達成ついでに俺より強くなろうとしてこうなったのだ。

 

 

 今となっては関係のない話だが。

 

 

 

 

「大口叩いておいて負けそうになってるとは……貴方の悔しがる姿を想像するだけで喜びが溢れそうです」

 

 ベアトリーチェは俺の火球が押し切れることを確認して勝利の余韻に浸る。まだ勝っていないのに勝利への喜びを噛み締めようとするあたり、こいつはやっぱり井の中の蛙だ。俺もアイツも先生も本当の上を理解しきれてないというのに。

 

「やっぱりお前は一生俺に勝てないよ。未完成の領域で充分なんだから」

「何を言って……」

 

 ベアトリーチェが俺の言葉の意図を理解する前に変化が起こる。領域となったバシリカの壁に出てきた護摩の炉から炎が一斉に噴き出る。

 

「は?」

 

 

 その数およそ十数本の"火柱"。

 

 

 普段俺が触れた場所から上に火が燃え上がる技だが、領域内では生成した炉の全てから発することができる。必中効果はまだないところを量で補う運用で誤魔化している。

 全ての火柱はベアトリーチェを火の海に引き摺り込み、奴の光線は維持出来ず霧散する。俺の火球は威力をだいぶ失ったが未だベアトリーチェに向かっていた。最後のダメ押しに火力の足しとなる。

 

 

「あ……た、たすけ……」

 

 

 ベアトリーチェは元のサイズに戻りながら倒れ込む。助けを求めようと手を伸ばしたがその手は誰も取れなかった。奴が少しでもアリウスの生徒が伸ばした助けを求める手を取っていれば結果は違っていただろうに。

 

「黒服、終わったぞ。回収してくれ」

『了解しました。もう既にゴルゴンダとデカルコマニーが近くにいますので引き渡しをお願いします』

「了解した。領域解除後に入らせてくれ」

 

 黒服に通信を繋げ、回収してもらうようにお願いする。黒服も存外甘いらしい。自分の命も危なかったのに殺さないとは意外だった。聞きたいことがあると言ってるからそれが終わったらどうするかは気になるところ。

 

「っ……!!油断しまし──うっ!?」

 

 ベアトリーチェは俺が領域を解除しながら連絡するのを見て隙だらけと判断したのか懲りもせず攻撃しようとした。ボロボロな奴では大した力も残っておらず、呪力を込めた刀で手を刺し貫いて攻撃はキャンセルさせる。

 念の為に呪力を込めた銃弾を数発打ち込んだ後、気力を失うのを確認する。動かなくなったのを見て一息ついて瓦礫に座り込む。

 

「あ〜……疲れたぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

あっっっっっっっつぅっっっ!!!!!

 

 

 

 

 

 かなり熱されていたので尻が焼けそうになってしまい、しまらない結末となった。




浩介の領域
熢摩降伏(ほうまごうふく)

まだ閉じれないため外殻がないと維持出来ない
必中効果はないため攻撃を当てるために出力が上がった炎の飽和攻撃で補っている

領域内は不規則に三角形の炉が出ており、炎が立ち昇っている。
また気温が真夏に近い感じで漏瑚のように入っただけで焼け死ぬような領域ではない
その代わり浩介の呪力で満ちているため小さな発火をノーモーションかつノータッチで発動可能
これにより火の気が常に付き纏っており、浩介のやりようで領域内はどこだろうと燃やせる
勿論方向転換など操作も自由自在

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
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  • 19時ごろ
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