呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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今回でアリウス編は終わりです


65 近づいた距離

「……ホムラ。君はどうしたいんだ?」

 

 先生はベアトリーチェの手を刀で刺し貫いた浩介を見て眉間に皺を寄せながら尋ねる。流石に生徒がやってるのを見ていい気分はしない。

 前から危険だとは先生は思っていた。でも、どこか彼は優しさを捨てきれず結局一線を越えてはいなかった。

 

 アビドスの時は背中の傷があったからセリカにトドメをさせず敗北。あれは浩介がホムラだと分かった時に行動を調べたら救急医学部で治療履歴があるのを確認した。聞けば初等部の子を守るために負った傷だと判明。

 エデン条約の時はサオリの攻撃に対処すれば身を守れていたが、マリーを襲う呪霊退治を優先して敗北。その結果ゲマトリアに回収され、下手すると死体を弄ばれた可能性すらある。

 

 結局、ホムラは……浩介は誰かを守るために自分の身を危険に晒してしまうほど他人を守ろうとする気持ちが強い。そんな子がいくら外道とは言え、誰かを殺そうとしてるのが信じられなかった。

 

「……そろそろハッキリとさせておこうか。俺はキヴォトスの学生である前に呪術師だ」

 

 ホムラは仮面を外し、ベアトリーチェを刺していた刀を抜く。血を振り払い、拭き取った後にバツが悪そうに先生を見ながら喋り出す。

 学生である前に、という言葉に先生は違和感を覚える。まるで呪術師としての本分が先だと言わんばかりだ。

 

「呪術師は非術師を呪霊の脅威から守る。それが最大の使命で最も優先されるべきことだ。小さい頃からそう教わり、俺の中でその通りだと確信を持っている」

 

 語気を強め、先生を突き放すように言い切る。アリウスのように小さい頃から教わり、そう刷り込まれた事を理解して尚守るべき使命だと浩介は言い切ったのだ。

 

「ベアトリーチェはあまりにも恐怖をばら撒きすぎた。アリウス中に呪霊が湧く原因を作ってしまったんだ。その根本は除去しなくてはならない」

「その為に……彼女を殺すの?」

「……今回は黒服の希望もあってそこまではしない」

 

 2人は沈黙する。先生は浩介の"今回は"という言い方からして殺意があったであろう事を確信する。

 確かにベアトリーチェはそういった処分をするしかないかもしれない。でも、先生としては出来ればやりたくないしましてや子供にはさせたくなかった。

 

「ごめんなさい。先生。俺も出来ればこれ以上誰かの命を奪うのは控えたい。正直言ってホッとしてる」

 

 沈んだ顔で浩介はそう言った。紛れもなく彼の本音であることは窺えるが、どこか諦めを感じる。

 

「やらないと信じてるからね。それと……言いたいことが一つ」

 

 浩介がこれ以上過ちを犯す前に先生は釘を刺しつつ、言いたい事を一つだけに絞る。

 

「私は浩介のやりたい事を否定はしないよ。だから……私にも手伝わせて欲しいな」

 

 先生はせめてもの思いを込めてそう告げる。生徒として出来れば繋ぎ止めておいた方がいい。彼をゲマトリアの好きにさせてはいけないと先生の直感が告げていた。

 

 

 

 

「お話は終わりですか?」

 

 2人の会話の終わり時に響く声。絵画を持った首の無い男がベアトリーチェを縛っていた。先生と浩介の会話中に仕上げたことが窺える。

 

「……あなたは?」

「少々故あって、このような形で貴下に挨拶することとなりましたが……背を向けた状態での挨拶となるご無礼、どうかお許しくださいませ。わたくしにはこれ以外の方法がありませんもので……。ゴルコンダと申します。私を持っているのはデカルコマニーです」

「そういうこった!」

 

 明らかに異様な風貌。先生は新たなゲマトリアと確信していた。自身の切り札たる大人のカードを取り出せるようにしながら情報を探る。

 ゲマトリアもといゴルコンダとデカルコマニーはあっさりと自己紹介する。絵画の方が流暢に喋ってるので一瞬どこから声がしてるかわからなくなる。黒服、マエストロ、ベアトリーチェ、ゴルコンダ、デカルコマニー……いずれも先生にとって厄介な大人達である。

 

 

「自己紹介で終わりにしとこう。今日はひとまず退こうぜ。ゴルコンダ、デカルコマニー」

「そうですね。彼女の回収を優先するとしましょう」

「そういうこった!」

 

 浩介が縛り上げられたベアトリーチェを担ぎ上げ、2人に帰還を促す。ゲマトリアの内乱もこれで終わりだ。ベアトリーチェの末路は先生も想像したく無いものになるだろう。

 

「先生。……今度は勉強を教えてくれ」

 

 浩介達はベアトリーチェを担ぎながらバシリカを去っていく。その最中、浩介は生徒として先生にかけられる言葉を残す。その顔はとても穏やかで先程の狂気は鳴りを潜めていた。

 

「いつでもおいで。仕事よりも優先するから!」

 

 先生は嬉しそうな声で返事して浩介を見送る。少なくとも学びの意思はあるのはわかっただけでもよしと言える。特に風紀委員や万魔殿以外のゲヘナ生から聞けるのは感涙ものだった。

 

「楽しみにしてる」

 

 浩介は笑ってそう言った後にバシリカから去っていった。バシリカに静寂が訪れ、漸くアリウスに少しだけ灯りが灯される。

 

 秤アツコは目覚め、スクワッドも全員揃った。浩介との距離は少し縮まった。でも、まだ救わないといけない子がいる。

 

 先生は大人のカードを取り出し、救うべき生徒の元へと向かうのだった──。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 先生が大人のカードで生徒を救おうとしているのと同時刻。トリニティはミカが向かったアリウスへと侵入していた。ミカおよび先生の救出、アリウスとの決着とさまざまな思惑で作戦が展開されていた。

 

 

 

 

「トリニティまで……もうアリウスはおしまいだ……」

「こんなことなら貧しいままの方がまだ……」

 

 アリウス某所、ここには負傷者が運び込まれていた。アリウス唯一と言っていい医療現場である。

 とは言っても清潔感のかけらもなく数少ないアリウス救護兵が悲鳴を上げながら現場を回してるだけの限界医療施設だ。少しでも回復するために寝るだけをする場所と言ってもいい。

 

 

「……こんなところにもいたのね。アリウスの残党っ……!」

 

 そんな場所に火炎放射器を持ったトリニティ生徒が乗り込む。目つきは鬼のようで憎しみが見るからに噴き出ていた。激しい怒りを隠そうともしていなかった。

 このままではここは焼き払われる。そうなればここにいる負傷者達の命の保証はない。選択肢など存在しなかった。

 

「お願いです。ここには戦えるものはいません。降伏しますのでどうか……慈悲を……患者達を助けたいのです……どうか……」

 

 アリウス救護兵の子は銃を捨てて両手を上げて降参の意思を示す。いくら限界集落といっても医療従事者のプライドはある。自身が見る患者が助かる道を選ぶ。

 

「慈悲を……ですって?ふざけんじゃないわよ……!」

 

 トリニティ生徒はその命乞いを一蹴するかのように怒りのボルテージを上げていく。下を向いていた火炎放射器も正確に部屋の中に広がるように向けられる。

 

「ミカ様のご意志を捻じ曲げておいて命乞いなんて烏滸がましい!!お前達なんて燃えてしまえばいい!!!」

 

 そして、彼女は弾けた。自身が慕うあの人を魔女に貶めたアリウスなど1人残らず火達磨にすることしか考えてなどいない。

 

「燃え────ごふっ!?」

 

 だが、トリニティ生徒から火炎が放たれることはなかった。背後からライオットシールドを叩きつけられ、気絶させられた。

 トリニティ生徒が倒れたと同時に部屋の中に青白い羽が舞い散る。この場のアリウス生徒達にとっては救いの天使の羽だ。

 天使はライオットシールドを回収して部屋の中に入ってくる。ショットガンをスピンコックした後、敵対の意思は無いと示すようにゆっくりと地面に置く。救護兵の子と同じ行動をしていた。

 

「救護が必要な場に救護を。私は貴女の手を取りましょう。私に────

 

 

 

 

 

 貴女の患者を助けたい想いに応えさせてください」

 

 

 

 

 救護騎士団団長、蒼森ミネは自身の信念に基づき救護兵の願いを聞き入れる。




浩介→先生と少し距離を縮める
先生→危うい面を知りもしたし、生徒として近づいてきてくれたので嬉しくもある。さー!ミカ救うぞ!
スクワッド→原作通りにサオリ1人自分探し
ミカ→お姫様

アリウス救護兵→フルネーム 萩田ギンコ。1年生。スクワッドと面識あり。ミネに脳を焼かれる。
トリニティ生徒→ティーパーティー所属1年。パテル派。ミカがアリウスに行って何をしようとしてるのかを知ってる。ミカ様命。

ミネ→救護





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