呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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水着キリノがすんごいエッッッッッッッッッ!!!


6 呪霊と窮状

ピピッ!!

 

「ここが例の場所か」

『ええ、何やら虫のようなものがうじゃうじゃと……うぇ』

「おい!良い歳したおっさんがこれしきで吐きそうになるなよ。通信越しでも嫌になるわ!」

 

 現地に到着後、黒服より渡された仮面についている通信機を起動して確認する。黒服は通信越しにこちらを見ているのか内心気持ち悪そうにしているのが声に出ている。

 それも無理はない。俺は慣れているが普通はこんなものを見たら気分が悪くなるのは当然かもしれない。

 

 何せ、目の前で広げられている光景は絵に描くような地獄に近い。

 

「虫みたいな弱い呪霊がすっげえいるな。ハエや蚊系統か?蝿頭にしちゃ強そうだから4か3ぐらいかな…」

『人の手でがっしりと掴めそうなぐらいデカいハエや蚊は普通にグロテスクでは?』

「そう?数が鬱陶しいぐらいしか思わんな。ある意味では職業病かもね」

 

 空を埋め尽くすように呪霊の群れが飛び交っているのである。人一人に向かって飛び掛かれば見るも無惨な死体が出来上がるであろう量だ。

 それなりの術師なら問題なく処理できるものではある。時間がかかりそうなのが嫌になるだろうが。

 

バァン!バァン!

 

 どうしようか、なんて考えていると銃声が響く。半ばゴーストタウンと化した場所の夜だからかすごく鮮明に聞こえてきた。

 誰かが戦っているのだろう、そう想像がつくのはいいのだが気掛かりが出来る。

 

「……一般人が呪霊を見つけられている?」

『ふむ……。霊、という言葉がつくあたり本来は一般人には見えないのですか?』

「そのはずなんだけど……、一般で言う所謂霊感が強いとか霊媒体質の子とか、ターゲットにされた極限状態の子ぐらいしか見えようがないはず。どれにしてもマズイな。……ここからは通信を切るぞ」

『了解しました。健闘を祈っております』

 

 考えがつくのは一般人が呪霊を知覚して抗っていること。抵抗に銃声が響くのは如何にもキヴォトスらしいがそれも無意味だろう。俺のように弾丸に呪力を込めたりしない限りは当てようが無いのだから。

 そう思って救出するためにも走り出す。銃を打つ体力があるなら粗方祓えば逃げてもらえるだろう。幸いにも守る側が強いので犠牲は少なそうである。

 

 などと思っていたのだが……次に見た光景はその考えを遥か彼方へと吹き飛ばす。

 

「ぐえぇ……」

「きゅー……」

 

 見えたのは呪霊が仰向けに倒れている光景だった。死んだ虫のように仰向けになり丸まりながら霧散していく。どう見ても祓われていることがわかるものだった。

 そうなるとさっきの銃声はきっちりと当たっていたのだろう。聞こえた銃声は2つ。ピッタリ2体倒れている。

 

「こりゃあ……、どういうこっちゃ」

 

 俺はぼやくしかなかった。見たものからわかるのはキヴォトスの人でも自力で呪霊を祓えるという喜ばしい事実なのだが、何が原因なのかさっぱりわからない。

 

「あれ?君は……昼間の子?」

 

 そんな事を考えているとどこかから聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声の主はゆっくりとこちらに歩いてきていた。道中襲ってくる呪霊をノールックで撃ち抜いており、その姿はどことなく規格の違いを感じさせる。

 

「小鳥遊ホシノ……さん」

「そっちだけ一方的に知ってるのはちょっと不公平かな〜。おじさんに名乗ってくれる?」

 

 思わず緊張が走る。下手な1級術師よりも強いかもしれない存在が睨みを効かせているのはどうも心臓に悪い。

 

「……失礼しました。ホムラっていうものです」

「ふーん……?よろしくね、ホムラ君」

 

 今は一応仮面をしているので火野浩介という名前は控えておく。大分失礼な行動ではあるが顔を隠して活動しているのだから仕方ない。

 一方で小鳥遊ホシノは睨むほどキツくはないがどこか警戒を感じさせる目線でこちらを見ている。正体不明の怪物と戦っている最中に自分の学校を襲ったやつが来たんだから当然と言うべきか。なんなら問答無用で撃たれてもおかしくない。

 

「つかぬことをお聞きしますが……、さっき倒れてた2匹は貴女が?」

「うん、そうだよ。いや〜、数が多くて鬱陶しくて困ってたところだよ〜」バァン!

「ノールックで撃退しながら言っても説得力ないですよ……」

 

 一先ず他愛のない話から振ることにした。どんな感じになるか見ようと思って話しかけたが、小鳥遊ホシノは余裕綽々としていた。

 襲ってくる呪霊をまたもやノールック撃破。困ってるなんて言いながらそんなことを微塵も感じさせない。それでも鬱陶しいのは事実だろうが。

 

「俺はああいう奴等専門の手合いでしてね。引き継ぎましょうか?」

「へぇ、そうなんだ?うーん……、任せきりはちょっと気が引けるかな……。こいつらの事も知りたいしおじさんに手伝わせて欲しいな」

「そうくるか……ハァ。でしたら、敵をなるべく一箇所に集めていただきたい。この数なので纏めて倒したい」

「オッケー」

 

 それでも非術師であることに変わりは無いので代わりを買って出る。実力的に任せ切ってもよさそうだが、呪術師としてはその手の人じゃない誰かに押しつけるのはプライドが許せない。

 だが、小鳥遊ホシノはその提案を良しとせず、なんならこちらの手伝いまで申し出てくれた。本来なら突っぱねるところだが言い合いになりそうと思い提案を飲む事にする。

 

「「……」」

 

 話がついたら2人揃って戦闘態勢をとる。小鳥遊ホシノは変わらず盾とショットガンを構え、俺は銃は抜かずに両手に呪力を込める。

 最低限整えたら揃って敵に向かって走り出す。スタートは同時だったのに前を走っていたのは小鳥遊ホシノであった。

 

(速ぇ!俺は結構全力なんだけど!?)

 

 並走するぐらいの気持ちでいたが気づけば四歩ほど先にいるのだ。既にショットガンを撃ち鳴らし、呪霊の牽制までしている。

 遅れて俺は手から火炎をわざと外すように放射して、同じように牽制する。火が通ったところを避けて呪霊は安全そうな場所へと移動していく。

 

 それでも遠くにいる呪霊は小鳥遊ホシノが逐一落としていく。行動が素早くなるべく最小限の動きで1匹1匹丁寧に処理されていた。

 

「昼間とは闘い方が違うというか、人が出来ることじゃないね〜。君ってサイボーグ?」

「失礼な。俺は純粋な人間だよ。ちょっと身体から火を出せるだけだ。強いて言えばパイロキネシスト」

「……うへ〜、おじさんからすればトリックって言われた方が納得できちゃうな〜。そろそろいいんじゃない?纏めて倒すんでしょ?」

 

 気づけばお互いに負けることはないと確信して小鳥遊ホシノは質問をする始末だ。気持ちとしてはやや警戒が強めと言ったところだろう。

 対する俺は両手に呪力を集中させ目前の敵を見据える。上空に密集しており纏めて吹き飛ばせば気持ちよく終われそうだ。

 

「……"火柱"」

 

 両手を呪霊の真下あたりにつけて呪力を全開にする。呪力は地面を伝わり、やがて円を描く。

 円を描き終えた後は地面が隆起し炎が溢れ出す。普通ならあり得ないその光景を小鳥遊ホシノは真剣な目つきで見ていた。

 

 次の瞬間、巨大な炎が円の範囲内に広がり天高く上昇していった。文字通り巨大な火柱がアビドスで登っていく。

 

「これは……ちょっと笑えないかな」

 

 俺が術式を起動したのを見て先程までの笑みは消え失せていた。冗談じゃない、そう言いたげである。

 しかし、まだ終わりでは無い。少しばかり範囲外の呪霊が散らばっている。

 

「逃さん!」

 

 1匹たりとも逃すわけにはいかない。手に込めた呪力を更に流し込む。いつどこで一般人を襲うかわからない呪霊を見えてる範囲だけでも狩り尽くさないで何が呪術師か。

 

「散れ!」

 

 俺の声と共に火柱からいくつかの炎が噴き出る。行き先は残りの呪霊だ。

 

「ギィぃィィィッ!」

「ピィぁぎゃあぁぁ!」

 

 見えてる範囲の呪霊全てに命中し、断末魔が夜のアビドスに響き渡る。普通の人にその光景はげにも恐ろしき地獄に見えるだろう。

 燃え尽きた呪霊は力つきながら落ちていき、空中で全て霧散する。

 

 

「お疲れ様でした。ご協力感謝いたします」

 

 全てを祓ったのを確認したら、小鳥遊ホシノにお礼を述べ頭を下げる。今回の戦闘はキヴォトスの人でも呪霊を祓えるということがわかったのは大きな収穫だった。

 

「お疲れ様〜。……助けてくれた人にこう言うこと聞くの気が引けるけど遠慮なく言わせてもらうね。

 

 

 

 

 

 ……君は何者なの?」

 

 小鳥遊ホシノは口調こそ気怠げさを感じさせるが、表情は笑っていない。危険人物と相対したそれの表情をしている。

 

「まあ、そう……ですよね。正体は言えませんけど一つだけ言いたいことがあるのでいいですか?」

「何かな?」

 

 危険な雰囲気を感じるのでどうにか注意を逸らして逃げよう、俺の頭は今それしか考えていない。彼女と戦うのは危険だと本能が告げている。

 考えた末、彼女の思考が止まったり混乱しそうなネタを思いつく。これを言ったら後はトンズラするしかない。

 

「……黒服の話に絶対に乗るな」

「……は?」

 

 彼女が今敏感になりそうなネタは黒服だろうという事は予想がついていた。前に奴は小鳥遊ホシノをなんとかする算段は整っていると言っていた。その意味深な発言は既に接触済みである可能性を考えるには十分だった。半分カマかけみたいなものであるが。

 そして案の定小鳥遊ホシノの動きは止まる。クリティカルヒットしたと判断するには十分な反応である。

 

 

「じゃあな!!!!」

「あっ……!?待て!!!!!!!!」

 

 こうなればこっちのものである。足からジェット噴射させ勢いよく飛び出していく。いくら足が早くても先んじてスタートを切ればすぐに射程外に逃れられる。

 段々彼女が小さくなっていき、撒けたことを確認してホッとする。

 

 

(黒服はやはり粗方準備を整えてやがる……。俺は彼女が黒服のところに行った後に残りのアビドスと戦うしか無いだろうな……)

 

 

 

 

「やるせねえ……」

 

 

 

 もう俺は最悪の結末にならないことを祈るしか出来無さそうだ。




お陰様でお気に入り数が50を突破しております
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