申し訳ございません
俺はトリニティの一件以降、呪霊狩りに勤しみたいと思っていたが黒服が仕事の依頼を持ってきたのだ。だいぶ世話にはなっているので内容を聞いた上で縛りを結び、その仕事に身を投じることとなる。今はホムラの仮面をつけて黒服の隣に座りつつ周りを警戒している。
「1億っ!!!1億だっ!!!」
大男が札束を握りながら数字を宣言する。見るからにお金持ちな雰囲気を醸し出している。恐らくは蒐集家の類だ。
「5億」
俺の隣に座っている黒服は手をあげて高らかに宣言する。因みにこの数字は落札の金額のことを指している。
「闇オークションとはいえ凄え金額だな……。どっから出すんだよ」
「無論、私のポケットマネーです」
「そのポケットマネーの増やし方は聞かない方が幸せそうだ」
「懸命ですね」
俺達がいるのは闇オークションの会場。注目の商品は"ヴォルフスエック鋼鉄"とかいうオーパーツ。どうも研究材料にするとのこと。
生徒相手の実験はしないからまだ許容するが、研究が進めば将来が怖いのも事実。最近はこちらが協力してもらったことがあまりにも多いので仕方ないのだがゆくゆくは対等に交渉していけるようにならなくてはならない。しかし、黒服というやり手相手にそれが出来るだろうか。
そうこう考えているうちに落札したのは黒服になったようで、1億出したお金持ちさんがぐぬぬと悔しがっていた。御愁傷様です。
「ククク……これが……!」
黒服はお目当てのものが手に入りご満悦なようである。意外とこいつも表情豊かだ。目や口らしき部位があり、人の形をしてれば当然の話かもしれない。
オークションの職員から目当てのものを受け取り、確認を終えた後にオークション会場から出るために出口へと向かう。その最中に俺達を睨むものが一名いるのを発見した。先程のお金持ちさんだ。どうやら出番が来るらしい。
「襲撃来るぞ。どうする?」
「会場の外で迎え撃ちましょう。よくあることです」
黒服もそれをわかっているのかいつのまにか興奮はおさまっており、オーパーツをあらかじめ用意していたケースに入れる。ケースを紐で自分に括り付けておりスリぐらいでは取れないようになっていた。なんでそこまで用意いいんだよ。
会場を出る直前、銃に手を伸ばす。これから襲ってくるのは裏社会に関わる人間達だ。呪詛師とはまた違った闇の人間に対してどう対処すべきかここである程度方向性が決まるだろう。
バァン!!
案の定、黒服に向かって銃弾が飛んでくる。すんでのところで黒服を引っ張り、弾を避けさせた後にゴミ箱を遮蔽にして隠れる。
「今回はいつにも増して激しいですね」
「静かにしてくれ。脱出プランを練り上げてる最中だしよ」
黒服は慣れているのか特に慌てた様子はない。俺がどうにでもすると思っているらしい。今回はそれが仕事なのだから当然ではあるが余裕ぶっこいて大丈夫なのかと不安になる。最悪反転術式で治せばいいとはいえだ。
「このっ!うわっ!?……なんかヘソ出ししてる腕のいいヘルメットがいるな……。めっちゃモデル体型……いや鍛えられてるな」
「これは……困りましたね。何か乗り物でもあればいいのですが……」
俺が身体を最小限出して拳銃で反撃しようとするがそれを見逃さずに誰かが撃ってくる。ヒュン、と音を立てて俺のギリギリを弾丸が通り過ぎるので冷や汗が止まらない。お前は追い詰められてるぞ、と警告をしているかのようだ。
その犯人の姿はチラリと見えたがヘソ出しのヘルメット団だ。他の敵も全員がヘルメット団のようで集団で雇われているようだ。恐らくはあのヘソ出しがリーダーだろう。
黒服は俺が簡単にいかないと見るや少し困っていた。乗り物で一気に距離を離すことを提案するが難しいだろう。
「……いいこと思いついた」
打開策はないかと見渡してみればいいものが見つかった。思わず声に出してしまい、黒服も期待するようにこちらを見ていた。
「まずは時間を稼ぐぞ。爆弾いっきま〜す!」
「余裕たっぷりですね。……期待してもいいんですね?」
「もちろん。とびっきりの地獄へご招待だ」
「え?」
俺が爆弾を投げ、賽は投げられた。黒服には軽めの地獄を味わってもらわねばなるまい。大暴れしてるんだからこれぐらいは許してもらわんとなあ。
「伏せろ!」
ヘソ出しヘルメットは俺の爆弾に気づいて全員に伏せるように指示する。ヘルメット団はすかさず伏せて対処しており、中々の手練れであることが窺える。今回は嫌なことこの上ないが。
「走るぞ!あのドラム缶に掴まれ!」
「は?ドラム缶……?」
「セミみたいにドラム缶にくっつけ。飛ぶぞ」
「……仕方ありませんね」
俺の指示に嫌々ながら黒服は従う。俺のやりたいことがわかったようである。スーツ着た大人がドラム缶に縋り付いてる絵面が面白いので写真を撮って先生に送りつけたいところだが、今は時間がない。
「よいしょ……Are you ready?」
「ダメで──」
「OK!黒服!ゴーシュートっ!!!」
ドラム缶を持ち上げ、呪力を満たす。俺の術式は自分の呪力が込められたものを遠隔で発火及び操作が可能だ。爆弾や焔はその応用である。
黒服は一応拒否しようとするが有無を言わさず、俺は放り投げる。なんで聞いたんだろうな。
「うああああぁぁぁぁあああぁぁぁっ!!!!??」
黒服は情け無い声をあげながら遙か上空へと駆け上がる。音の大きさは段々と小さくなるが確かに聞こえる。救急車かあいつは。
「……とうっ!」
後から助走をつけてジャンプし、黒服に追いつく。その間にドラム缶からジェット噴射させる。これで火を噴くドラム缶にしがみつく成人男性というバカみたいな絵面の完成である。
因みにスペースの都合上、俺の足は黒服の上に乗っている。なので正確には成人男性が火を噴くドラム缶にしがみつき、挙げ句の果てに男子高校生に踏まれながら飛んでいる。
「た……桃白──」
「あんな馬鹿な方法で逃げられてたまるか!!追うぞ!」
「あんな方法もあるのか……この世界は奥が深いな……」
「誰もあんな方法やらねえよ!?」
下ではヘルメット団の面々が困惑しながらも俺達を追おうと必死になっている。俺もこの方法は馬鹿だと思う。
なんとか逃げ切れたが黒服からガチで怒られたのは言うまでもない。
********
次の日、シャーレに当番として来て欲しいと連絡が来る。俺の当番はまだ先だったはずだが、何かあるのだろうか。俺をわざわざ呼ぶと言うことは呪霊関連と見てもいいだろう。
「うわぁ〜!ここがシャーレなんだ!」
「初めまして!イブキ!今日はアリス達と一緒に頑張りましょう!」
「うん!イブキ頑張るね!」
なんか違った。丹花ちゃんと天童さんという癒し系のコンビとは中々見れないものがそこにはあった。
「イブキ……わからないことがあれば遠慮なく聞いてくださいね」
「アリスちゃんもね」
他には棗先輩と早瀬さんといったゲヘナとミレニアムの生徒会メンバーである。なんなんだろうかこのメンバーは。何をする気か全く読めない。
「ユウカ、イロハ、浩介……こっちに来てね。アリスとイブキはこれをお願いしてもいいかな?」
「「はーい!」」
先生は生徒会2人と俺に何か話があるようで、用意された席に手招いていた。天童さん達にはその間、手持ち無沙汰にならないように仕事を用意していたようだ。
棗先輩と俺、先生と早瀬さんに分かれるように座る。この座り方からしてミレニアムからゲヘナに話があると言うことなのだろう。
「さて……本題に入ろうか。ユウカ、あの資料を出してもらえる?」
「はい、先生。……イロハさん、浩介くん。これを見てもらえるかしら?」
先生は早瀬さんに資料を出すように促す。やっぱりミレニアムからゲヘナに何か要求があるらしい。先生が絡むあたり、ミレニアムが先生を介してお願いしているのだろう。
出された資料を見てみると何かしらのレポートに写真が添えられたものだった。題目として正体不明の怪物によるミレニアム生徒の被害というもの。写真を見れば如何にも呪霊と言わんばかりの存在が写っている。
「これは……確か浩介が狩っている呪霊でしょうか?」
「間違いないよ。棗先輩。……写真に収めてくるとはなあ」
棗先輩は気づいたようで珍しく真剣な顔をしている。ゲヘナで俺が狩っているのだから生徒会である彼女が知らないわけがない。そろそろ俺がやるような情報制限も限界が来ているらしい。
俺としては写真に収めて来てしまった事実の方が恐ろしい。写真を撮って来た人が所謂霊感の強い人なのか、そうでなくても呪霊が写真に写るほど濃く顕現しているのかなど色々考えられる。後者であって欲しくないのだ。
「……中々数が多いの。セミナーの保安部も怪我人が増えている。この状況を放置するのは得策ではないと判断し、その呪霊という存在の専門家である火野浩介くんを数日ミレニアムに貸して欲しいというのが今回の議題です」
「なるほど……勝手にシャーレやミレニアムが浩介個人に許可を取るだけでは混乱を生みかねないので私が呼ばれた、と……」
「ごめんね、イロハ。マコトに確認したらイロハに任せるって言われてさ」
「なんで引き継ぎがないんですか。あの人はいつも……!」
今回の本題は俺をミレニアムに連れて行くというもの。キヴォトスに来て初の大掛かりな呪霊退治の依頼というわけだ。難易度も不明の危険極まりないものだが受けるほかない。放置する方が恐怖がたまり強い呪霊が生まれるのだから早い方がいい。
ただ、この話も先生と羽沼議長の間で飛び交っていたが何を思ったのか棗先輩に全部なすりつけたようである。それを察した棗先輩は当然大激怒。
「ハァ……浩介はどうしたいですか?」
「行かせて欲しい」
「うわ、即答……わかりました。ゲヘナ学園はミレニアムサイエンススクールの要請を承認します。さっさと仕事を終わらせましょう」
「ありがとう。イロハ、浩介。1週間後にD.U.の駅に集合でお願いね」
結構あっさりと決まった。俺のミレニアム出張がトントン拍子で決まるのは正直ちょっと怖い。下手すると俺が何も関わってないところで呪霊退治の日程を組まされてしまいそうだ。
「話が早くて助かるわ。1週間後にミレニアムの駅で待ってるわ。さて……今日の分のお仕事をやりますから覚悟してくださいね。先生?……先生?」
早瀬さんは二つ返事で了承されたことに安堵してか、サクッとシャーレのお仕事に意識を切り替える。一応、当番としてここに来ているのだから先生のお仕事だって大事だ。人数も多い分、仕事の多さも相応にあるバズだから早めに取り掛からないと厳しいのは確かだ。
先生に釘を刺すように早瀬さんが言葉を紡いだ後、先生の様子がおかしいのか不安そうに先生を見ていた。
先生の手にはテレビのリモコンが握られている。
「まあまあ……息抜きしてからやろうよ。おーい!イブキ、アリス!こっちにおいで」
先生は堂々とサボろうとしていた。いつのまにかお菓子まで用意されており、丹花ちゃん達を呼び寄せる。見た感じが親戚の子達を甘やかすおばちゃんだ。
「せ〜ん〜せ〜い〜っ!!」
早瀬さんはキレた。俺だってキレる。下手すると五条先生と同じくらいのサボりようだ。あの人は大体はきっちり仕事をしてからサボるけども。
『……続いてのニュースです。ブラックマーケットにて正体不明の飛翔物が発見され現地で話題を生んでいます』
先生がつけたテレビはニュースを映していた。内容はブラックマーケットで正体不明の飛翔物というもの。怖い話だ。新型のミサイルとかかもしれない。
『こちらの映像をご覧ください』
そんな認識もニュースの映像で吹き飛ぶ。個人的に頭を抱えたくなるようなものだったのである。
『こちらは……ドラム缶でしょうか?誰かが火を噴いたドラム缶で空中をサーフィンしている……のでしょうか?』
俺じゃねえか!
「浩介……」
「アレなんなんでしょうねぇ!先生!いやー、不思議だなあ!!」
先生は気づいたのか俺に視線を送る。認めたくないので精一杯惚けることにする。知らない人が見ても今の俺は怪しいのだろうが、とにかく認めたくない。
何気に黒服には言及されてないのは服も肌も黒いやつなりに夜に溶け込んでいるらしい。ウケる。
『この件に関してミレニアムに問い合わせてみたところ……"面白そうなのでカットされた分も含めて映像を貰えないだろうか"、と返答が返って来ました。実にミレニアムらしいですね。作る気満々じゃないですか』
何を言ってるんだそのミレニアム生は。そこは物体の正体に関して推測のコメントをするとかじゃないのか。なんで興味持って資料提供をお願いしてるんだよ。クロノスが資料を要求してるんじゃないのか。クロノスも当たり前のように流すな。バラエティじゃねえんだぞ。
「指名されたからってアイツらにクロノスの対応を任せるんじゃなかった……!!エンジニア部めっ!!」
なんか事情を知っているらしい早瀬さんは頭を抱えている。ご愁傷様です。
「こうなったら早く仕事を終わらせて追求しないと!!休みなしですよ!先生!」
「ひえ〜」
「イブキちゃんとアリスちゃんは30分後に戻ってね。待ってるわ」
「「はーい!」」
早瀬さんは怒りのまま仕事に取り掛かる。先生の耳を掴みズルズルと引き摺りながら、先生をデスクに座らせる。完全に早瀬さんに逆らえないのか先生は棒読みの悲鳴をあげる。
「……見なかったことにして仕事しますか」
「ですね」
棗先輩と俺は取り敢えず見なかったことにして自分に割り振られた仕事に取り掛かるのであった。丹花ちゃんと天童さんが癒しでしたまる
前半のドラム缶桃白白のくだりはコロナ陽性の状態で書いたせいか変なことになってます。
なんだよ、黒服をドラム缶にしがみ付かせてロケットみたいにドラム缶を飛ばすって
おかけで書くの大変だったわ
更新時間はいつが良いでしょうか?
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