呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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フェスの発表が楽しみ
オリキャラが2人出ます


73 お揃いの羽①

「ハナエ!ギンコ!患者はどこですか!?」

 

 ここはトリニティ某所。そこに蒼森ミネの声が響く。焦った様子で駆け寄っている。部下2名が先に辿り着いていたのもあり、彼女達に患者の行方を尋ねる。

 

「ミネ団長……怪我の方は何とかなりそうなのですが……」

「別の問題が発生しそうです……」

 

 先に辿り着いていたハナエとギンコは処置こそ上手くやったが、別の問題に直面していた。2人の顔は浮かないままだ。どうやって助ければいいのかわからないのである。

 

「羽……私の羽は……どこ?」

 

 被害者はトリニティの生徒。自分の背中にあるはずの片方の分な羽の重みを感じられず、苦しんでいた。それは痛みなのか喪失感なのかは本人以外にはわからない。

 本人が座り込むところには真っ赤なカーテンが出来上がっていた。包帯が包まれた羽の根元から血の滴が垂れていたのか、包帯は真っ赤に染まっていた。

 

「ゆっくり息をして……大丈夫……もう大丈夫です……」

 

 ミネは優しく患者を抱擁し声をかける。普段は鬼神の如き暴れる彼女も今宵は母のような優しさを患者に向ける。患者を抱擁する傍ら、患者には見えないところでは涙を流していた。

 

「うっ……ぐっ……わああああああああああああっ!!!!」

 

 患者はひたすら泣くことしか出来なかった。痛みと喪失感、恐怖から助かった安堵が絡み合い精神を擦り減らす。

 

 

 

 そんな彼女の羽の根元では今にも消えそうな呪力の残穢が漂う。

 

 

 

 

 

***********2日後

 

 

 

 

「なんで私なんかを助けてくれたの?」

 

 患者、野口ヒロコは車椅子を押すギンコを見てそう言った。彼女がこう尋ねるのも理由があった。ギンコには助けてもらえないはずだとさえ思っている。

 

「救護騎士団にそれを聞くんですか?ミネ団長が飛んできちゃいます」

「やめて。勇気を出して聞いた私が馬鹿だった」

 

 それに対してギンコは笑顔で答える。救護騎士団として当たり前だ、そんなこと言ってるとミネ団長が怒って飛んでくるかもと暗に答えたらヒロコは嫌そうな顔をして黙る他なかった。勇気を出したのにそれを踏み躙られた気分だ。

 

(まさか……そもそも覚えていない?)

 

 ヒロコはギンコがあまりに屈託なく答えるのでそう考える他ない。覚えているなら少しは恨み募った表情を見せるはずだ。なんだかホッとしたような残念なようなそんな気分に包まれる。

 

「アリウスで火炎放射機の件なら気にしないでください」

「覚えてるじゃないの!……もうっ!」

 

 そんなヒロコの思いはぐちゃぐちゃに踏み荒らされる。ギンコはケロッとした顔でヒロコの懸念事項を言い当ててしまう。あまり気にしていない様子であることが誰から見てもわかるほどにケロッとしている。

 野口ヒロコ、ティーパーティー所属パテル分派の生徒。聖園ミカを一方的に慕っており、エデン条約でのミカの反乱が信じられず調べたら事実に辿り着きアリウスを激しく恨んでいた。その恨みもあってかベアトリーチェの一件でトリニティがアリウスに突撃した際に、怪我人を治療していたアリウス衛生兵と怪我人を焼き払おうとした。

 

 その時にいたのが萩田ギンコ。当時はアリウス衛生兵であり、現在は救護騎士団見習い。ヒロコはギンコには恨まれて当然とさえ思っている。自分がアリウスを見境なく恨んでいたのと同様にと。

 

「私はアリウス衛生兵からトリニティの救護騎士団へと移り変わりましたが、医療者としての誇りを持っていると自負しています。……なんて言ってもアリウスの頃だと大したことは出来ませんけどね」

 

 ギンコは自嘲気味に言葉を紡ぐ。彼女の誇りは今も昔も変わらない。

 

「その誇りに従って自分を殺そうとした人まで助けるの?」

「はい。助けを求めているなら誰でも、です」

 

 馬鹿げてる、とヒロコは心の中で毒づく。だが同時に光り輝き眩しく見える。あまりにも綺麗な理想論。ヒロコが思うアリウス生のイメージとは程遠い。

 比べて自分はどうだろうか、とさえ考えてしまう。両翼をもがれ、自分が焼き払おうとした子が一生懸命に支えてくれているのが現状だ。

 

 それを情けない、と思い気を紛らわせるためにギンコ以外を見ようと周りを見渡せば信じられないものを目にする。ギリリと歯軋りをしてしまいそうになっていた。

 

「ギンコさん。お疲れ様です」

「初めまして、ギンコさん。私はゲヘナの救急医学部部長の氷室セナといいます。風紀委員の火宮チナツと共に救護騎士団の蒼森ミネ団長に会いにきました」

 

 見たのはゲヘナの訪問者だった。よりにもよって敵が病院施設に入ってくるなど看過出来ない。普段なら噛み付いているが、今の自分の状況はその行為がより滑稽に見える。

 

「ハナエさんから聞きましたよ。最近、救護騎士団の中でも頭角を表してきていると。素晴らしいですね」

「いえいえ、チナツさんこそ風紀委員の幹部格ではありませんか。負けられません!」

 

 チナツとギンコは仲良くお互いの活躍を讃え合う。それが終えたら楽しそうに笑い、友達のように話している。ゲヘナとアリウスがやっている。それがヒロコには信じられなかった。

 2人は以前浩介がティーパーティーと共に呪霊退治している間に関係を深めている。風紀委員とはいえ元は医療従事者だったチナツにとって救護騎士団との交流はかなり刺激的だった。ハナエの医療知識のなさには流石に呆れているが、為人は認めている。

 

「すいません!チナツさん!セナさん!これからミネ団長のもとにご案内します!」

 

 そこに朝顔ハナエが到着する。彼女は一旦自分の雑用を片付けるためにチナツ達から離れており、それが終わったためチナツ達の元へ戻ってきていた。

 

「長話し過ぎましたかね。では、ヒロコさんもう少し周ってから病室に戻りましょうか」

「……えぇ」

 

 ハナエが来たのであれば自分が引き留めるのも悪いと思い、ギンコは3人に会釈して去ろうとする。ヒロコにとってはそれが少し救いだった。

 

(って!ギンコさんも私にとっては憎き存在でしょ!!……憎い……はずよ……)

 

 頭ではそう考えても心からそうなのだろうか、とは思えなかった。少し治療されただけで絆されてしまった自分を恥じるべきなのかわからずにいた。

 

「……やっぱり間違ってるのかな」

「?どうかされましたか?」

「いえ、何も……。気にしなくていいわ。さっさと周ってしまい────っ!?」

 

 自分の本音がわからず、つい気持ちがこぼれ落ちる。何かあるのかと思ったギンコが尋ねるも、ヒロコはそれをバッサリと切り捨てる。

 その直後、無いはずの羽の感覚が走る。その感覚は分かりやすく痛みであり、平静を保っていられないほどだった。ヒロコは車椅子から転げ落ちてしまう。

 

(い、痛い……なんで?無いはずの羽が痛いの……?なんで……)

 

 無いはずの羽から痛み。ヒロコを襲っているのは幻肢痛と呼ばれるもの。片足や片手を失った人に襲う病気だ。ヒロコの場合は失ったはずの片方の羽が道連れにせんとばかりに痛みに襲われている。

 

「ヒロコさん!?ヒロコさん!?大丈夫ですか!?」

 

 ギンコは慌ててヒロコに駆け寄る。突然のことに驚きこそするが、致命的な焦りはない。冷静に原因を探り始める。

 

「は……っっっつぅ!?」

「っ!! 誰か!!!誰か手伝ってくださいませんか!?」

 

 不意に溢れたヒロコの言葉でギンコは何が起こっているのかを察する。異常なほど正確にスピーディーに。懐から迷いなく何十にも折り畳まれたものを取り出す。

 しかし、1人だと大変な作業であるからか救援を求めるために叫ぶ。

 

「どうされましたか!?」

「……これは一体?」

「ギンコちゃん!?ヒロコさんに何があったの!?」

 

 救援に来たのは先程見送った3人だった。まだ声が聞こえる範囲にいたのである。今回の目的も重要であるが3人とも目の前の患者を見逃しはしなかった。

 

「ハナエちゃん!チナツさん!ヒロコさんを車椅子に乗せてあげて!!セナさんはこれを展開してください!こちらのボタンを押せば大きな鏡が出ます!!」

 

 ギンコはすぐに3人へ指示を飛ばす。その指示を3人は何も疑うことはない。サッと行動に移す。

 ハナエとチナツがヒロコを2人がかりで抱えてゆっくり優しく車椅子に乗せる。セナは言われた通り鏡を展開すると思ったよりも大きなものが出てきたので面食らうが倒さないようにがっしりと掴む。鏡の裏にはミレニアムのロゴと何やら通信機器のようなものがある。

 

「セナさんここに置いてもらってもいいですか?」

「……なるほど。了解しました」

 

 ギンコは車椅子に座ったヒロコの真ん中の前を指差してそこに置くように指示する。セナはギンコが何をしようとしているのかを察してその通りに置く。

 

「ヒロコさん……この鏡を見て」

「う、うん……」

 

 ギンコは優しく声をかける。ヒロコも悪態をつくことなくギンコの言う通りに鏡を見る。

 ヒロコから見て鏡に写るのは自分の左手。鏡の前にある左手を動かせば鏡に写る左手も同じように動く。まるで両手同時に同じ動きをさせているかのように見えている。

 

「ヒロコさん、左の羽が写るように動かしてもらえますか?」

「こ、こう……?」

 

 ギンコの指示に恐る恐る従い、ヒロコは羽を動かす。鏡には右側にあるように羽の先端が写っている。

 

「鏡を見ながらゆっくりと両方の羽を動かすように意識してください。先っちょをパタパタ〜パタパタ〜」

 

 ギンコの指示通りに羽を動かしながら鏡を見る。なるべく失った右羽も動いているように意識しながら鏡を見つめる。早く痛みから逃れるために必死に。

 

「ハァ……ハァ……あっ……」

 

 その動きを繰り返しているとやがて痛みは晴れていく。痛みが引いていくにつれて深呼吸も交え、整える。脳を騙して無いはずの痛みをやがて感じなくなる。

 

「大丈夫そうですね!後はこの鏡のBluetooth無線機で……ミネ団長!ヒロ────」

「『状況は!?』」

「ハ、ハウリングしてる……」

 

 ギンコは落ち着いたと判断して鏡にあるBluetooth無線機を起動する。連絡先は勿論ミネである。状況を伝えようとするがドンッと音がした直後にミネがトランシーバー片手に現れる。

 鏡の無線機とトランシーバーがお互いに音を拾うせいか酷いハウリングが起こっていた。これでは通信してる意味がまるで無い。

 

 ミネが到着後、ギンコは起こったことを報告する。ミネはそれを事細かにメモしていく。上司と部下のよくあるやり取り。いい意味で2人の間に上下関係の壁はない。

 

「……」

 

 セナはその光景に感心しながらも別のことも考えていた。セナも幻肢痛であることに途中で気づいてはいた。対処法も用意するのはわかる。

 だが、中々レアな病気であることに間違いはない。知っていても対処するのは少しぐらい淀みがあるものだ。だというのにギンコはその淀みがまるでない。

 

 

(そうか、アリウスでは……)

 

 

 

 

 

 セナは思い当たるものに到達するがそれ以上はやめた。今必要なことではないのだから。




浩介がまるで出てないな!
最近、短くまとめれ無くなってきて焦りを感じるこの頃

更新時間はいつが良いでしょうか?

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