呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

79 / 100
ペース上げていきたいな


76 お揃いの羽④

 お勘定を済ませて、全員で駅に向かっていた。今日の調査は切り上げである。これ以上踏み込めば戦闘は間違いないし、準備するのであれば今は退くしかない。

 その最中、空崎委員長達が纏めた資料に目を通す。ぴらぴらと音を立てながら紙を捲り、出来の良さに感嘆としていた。

 

「すげえな……呪術師じゃなくてもここまで調査出来るもんなんだな」

 

 空崎委員長達が纏めた資料に目を通しながら感心していた。確かに被害者情報を元に詰めていって確度の高いものに辿り着くのは調査の基本だ。短時間で現れやすいポイントを絞り、正義実現委員会と風紀委員会で合同作戦まで建てようとしたのは素晴らしいと言うほかない。委員長は格が違う。

 

「そういう貴方はどこまで調べ上げたのですか?」

 

 チナツは俺が感心していたのを見て、更に情報がないか要求してきた。まるで俺の方が調べられてるんじゃないか、と言わんばかりだ。量は大した事はないが違う情報を集めてはいるので役には立つだろうが。

 

「まず現れやすいポイントなんだけど、これは何となくそうかもってなるやつなんだけど近くにマンホールがあるんだ」

「そんなの範囲が広がればそうなるんじゃないの?」

 

 俺の集めた情報でまずはポイントになりそうなものを掲示する。空崎委員長は何言ってんだこいつと言わんばかりだ。

 

「被害があった現場を回ってたら大体マンホールから痕跡があってさ」

「痕跡?私達が見たものといえば切断面と被害者の角や羽の破片ばかりだ」

 

 痕跡があったと言えば、そんなものは無かったはずだと言わんばかりに剣先さんが突っかかる。気になっているのだろう。

 

「呪術師の特殊技能ってやつかな。"残穢"という呪力行使後に残るものを見ることが出来るのよ」

「それってつまり、貴方は私達とは見るもの自体が違うって事になりますね。色々と前提が変わりそうですわ。あの憎たらしい顔をした呪霊に一発ぶち込んでやりたいのに……」

「ヒロコちゃん……。……残穢、か。所謂霊感が高い人とかが見れるのかな。呪霊の方は見えるのに私達には見えないなんてなあ……」

 

 一つ一つポイントを出していくと各々が反応してくれる。このチームはかなり優秀なのだろう。全員が自分なりに考えて行動している。

 2人が言うように見えないものがあるとなれば、話はだいぶ違う。呪霊は呪力の塊のようなもの。それ故にキヴォトスの環境ではハッキリと見えているのだろう。残穢の場合は神秘持ちでも術師に近い超能力持ちの子でないと見つけられないのかもしれない。

 

「話を続けるぞ。実際にマンホールを開けて入ってみればそこら中に同じ残穢があってな。ここで例の呪霊は下水道で普段を過ごしていると確信した」

「……待ってください。そうなると大変なことになりませんか?マンホールなんてそこら中にあります。下手すると今回の呪霊はD.U.ほぼ全部を活動範囲に出来るのでは?」

「そうだ。このままだとチナツの懸念通りになるだろう。急ぎたいところだが最悪の懸念点がある」

 

 俺の推測を話していけば、チナツは最悪のケースにすぐにたどり着く。マンホールから出てきて襲っているとすれば極端な話、近辺のマンホール全てが呪霊の餌場である。

 なんとかしたいところだがある疑問点から簡単に踏み切れずにいるのだ。それは共有すべきだ。

 

「結論から言えば呪霊が2体以上いて徒党を組んでいる可能性がある」

「……続けろ」

 

 俺の言葉を聞いて全員緊迫感を醸し出す。想像以上の危険を孕む事態になっているのが嫌でもわかったらしい。

 

「俺は最初、犯人は斬撃とかそういう術式を持った呪霊だと思ったんだけどさ……羽や角を持つ子だけを狙って襲うのはそいつの嗜好とかでわかるけど……なんでマンホールから出てきてピンポイントで羽や角持ちだけ狙えるんだろうなって。マンホールからひょっこりはんしてお目当てがいたら辻斬り?にしては短期間で数が多過ぎだ」

「斬撃の特殊能力持ちがサーチまでしてないか、ってこと?」

「そう。そんだけ。気にしすぎならいいけどさ。外れてて欲しいね」

「全くだ」

 

 喋ってて我ながら可能性の低いものを言っている自覚はある。だが、元いた世界で特級呪霊が徒党を組んでいた事例を見てしまった以上想定せずにはいられない。五条先生を襲ったと言う火山頭、その火山頭を五条先生から救出しつつ交流会で猛威を振るった精霊に近い呪霊、ツギハギの人型呪霊……どれも特級レベルだ。あれほどのレベルでなくても脅威には違いないのだ。あったら遺書書くしかねえぞ。

 

「今日はここで終わらせましょう。浩介の話が本当なら準備するしかないわ。もし、規模が大したことはなくても奴が仕出かしたことは重いから対応を重くしてもいいと思う」

 

 俺の推論が終わったのを見て空崎委員長が切り上げる。話してる内容も俺達が出来る内容そのものとも言える。俺が言った通りなら準備万端にして挑む。違っていても被害を考えれば徹底的にやるためにも準備万端にする。どんな準備にするべきかはこれから要議論であるし、今日1日では無理だ。持ち帰って揉んでくる必要がある。

 

 

 

 

 

 話をしながら歩いていればハイランダーが運営する駅にたどり着く。今日はここでお別れである。風紀委員会と正義実現委員会が組んでいたのを知った時は驚いたが心強いことこの上ない。少しでも両組織の距離感が近づけば──

 

 

「キャアアアアアッ!!!」

 

 

 ──そんな余裕はなさそうだ。

 

 

「……おいおい!話が違うだろ!」

 

 俺が目にした光景は異常という他ない。町中がパニックになっている。

 

「ね、鼠!?」

「うっ……!?人が鼠に……うっぷっ……」

 

 町中の人が鼠に襲われているのだ。中には肉を噛みちぎられて血だらけになっている人もいる。それを見て逃げ惑う一般人。間違いなくキヴォトスにきて最悪の呪霊被害だ。

 

「ハァッ!!」

 

 術式を使い、1匹1匹焼いていく。小さく素早い鼠を捉えるのは非効率だが、規模を大きくすれば一般人を焼き殺してしまう。幸いにも精密動作は得意な方だ。何とかするしかない。精度を上げていくためにも危険だが鼠の群れに近づくしかない。

 

「私がシャーレに連絡します!ギンコさんとチナツさんは近辺の病院と連携して負傷者の手当てを!」

「「はい!」」

「ツルギ、私達は少しでもこの鼠を減らすわよ」

「了解した……暴れる時間ダァ!!!!」

 

 皆んな自分が何をすべきかわかっているようですぐさま行動に移せていた。出来ればしっかりと準備が出来てからこの光景を見たかったが仕方ない。任せて離れても良さそうだ。

 空崎委員長と剣先さんは物凄い速度で鼠を蹴散らし始める。まずは裏方に徹する3人の付近にいる鼠を倒しており抜け目がない。どうしても無防備になる3人を守ろうとするならばこうする他ない。

 

 

 

「おっ!?この前の撃ち漏らし見っけ!!」

 

 

 

 だが突如として若い男の声が響く。それと同時に強い呪力を感じる。間違いなく特級クラスの呪霊。最悪のタイミングで来たものだ。声がした方を向けば既に物凄い速度で移動していた。向かう先は奴の言う撃ち漏らしである。

 

 

「貴方は!?こ、この間の……!?あ、ぁぁ……」

 

 ヒロコさんは襲ってきているのに気づいたが動けずにいた。完全に脚がすくんでいるのである。

 

「くそっ!今助け────こんのぉ……糞鼠があ!!!」

 

 呪霊を迎撃しようと戻ろうとするが、それが良くなかった。腹に物凄い激痛が走り、鉄の匂いが充満する。

 俺の腹がかなり深く鼠に抉られていたのである。攻撃するために呪力のガードが緩くなった瞬間を狙われたらしい。反転術式で治さねば内臓が出てしまうであろうほど深い。

 

 呪霊は腕を鎌状に変化させ、ニタリと笑う。宿儺のように斬撃を飛ばすわけではなさそうだが、刃渡りはデカく切られればひとたまりもないのは想像に難くない。

 

「こ、来ないで……」

「ふひひ……んん〜〜ハァッ!!!」

 

 怯えるヒロコさんに対して、呪霊は奇声をあげながら腕を振り下ろす。既に恐怖を刻まれたヒロコさんの顔を見てこいつは笑っている。高度な知性を持つとは言え、呪霊は恐ろしく残虐だ。

 

 ズバッ!

 

 呪霊が放つ斬撃は確実に人を斬り、血が空中を舞う。

 

 

 ただし、斬られ血を出したのはヒロコさんではない。

 

 

 

「────ぇ……」

「ヒロコちゃん……にげ……」

 

 ヒロコさんに抱きつき、背中で別の人が攻撃を受けていた。ギンコさんである。

 ギンコさんはゆっくりと地面に伏し、ヘイローは少し点滅したあとじわっと消える。彼女の背中に焼けた翼の跡と、今斬られた傷があるのをこれでもかと見せつける。

 

 

「いやっ……いやっ……

 

 

 

 

 

 

 

 いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!




出来るだけこいつにはヘイトを買って欲しい

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
  • 7時ごろ
  • 19時ごろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。