「黙れっ!!!!」
ツルギは自身の所業に満足して高笑いする呪霊に怒りの鉄槌を下さんと発砲する。いつものように叫び声をあげる要領でハッキリとした声で呪霊の所業を否定する。
「"焔髪"」
呪霊は鋭く変化させた髪の毛を発射する。薄く鋭い針となりツルギを穴だらけにしようと反撃する。
ツルギはとっさに顔を覆いガード態勢に入る。ツルギを貫通する威力は有していないが弾幕の密度がヒナと同等あるいはそれ以上のものとなっている。ガードしつつ自身の再生能力でゴリ押そうという魂胆である。
「ふひっ!いつまでもつ──」
ズガガガガガッ!!
「かっ!?あぁん!?」
呪霊はツルギのゴリ押しなど意にも介さず、術式を行使し続けていたがそれは複数の銃撃によって阻まれる。大したダメージはないことからこれがヒナによるものではないとわかるが、尚のこと何が起こったのかわからずにいた。
それ故に怒り任せに銃撃があった方へ振り向く。自分の邪魔をするものが誰なのかハッキリとさせるために。
視線の先にいたのは180cmほどの大人の女性とそれに連れられたK.S.P.Dと書かれた装備を抱える生徒達であった。
「……この惨状は君がやったのか?」
「ん?そうだと言ったら?」
大人の女性は静かに冷静になるよう自分に言い聞かせながら、分かりきっている問答を仕掛ける。本当に怒っている彼女を見て生徒達は固唾を飲む。
呪霊の方は怒りの目線など気にもせず、淡々と答える。どういう意図なのか分かりきっているのか煽るようにアホくさ、と言って大袈裟に呆れたふりもしている。
「何とか言ったらどうでちゅか〜?シャーレのせ・ん・せ・い♡」
呪霊は彼女の正体など既に把握している。わかっているからこそ最も先生の神経を逆撫でする行動をすぐにとり始める。
「〜♪いただきまぁす!」
自分が切り落とした羽を足で自分の手元まで蹴り上げて拾う。そうしてわざとらしく音を立てながら食べ始めた。ニヤニヤと笑いながら食し、行儀もクソもない風景にその場にいたものは戦慄する。
「……カンナ。鼠はヴァルキューレに任せてもいいかな?」
「お任せください。我々が必ず奴等を止めてみせます」
『総員!鼠掃討に尽力せよ!』
我慢の限界はとうに越えながらも先生は激昂せずに犬耳の生徒、尾刃カンナに鼠の対処を依頼する。鼠は浩介の術式による広範囲攻撃のおかげで数は減っている。式神ではなくあくまでも実際の動物故のリソースの限界が迫っているのだ。
カンナは先生の指示を承り、自身の部下に目線を向ける。部下は言われるまでもなく武装を展開し、鼠掃討に尽力せんと意思を固める。被害の大きさを見て、たかが鼠と侮るものはいない。
「浩介!鼠はヴァルキューレに任せて二人の治療を!」
「わかった!」
先生は浩介にギンコとヒロコの治療に向かうように指示する。今この場は離脱も難しい戦場である。そうなれば救急車なんて死体を増やすだけだ。
チナツが必死になった治療に取り組むが、突発的なこの状況では装備が足りない。足りなくても脱出が出来るなら希望はあるが鼠によってそれは難しい。浩介の反転術式アウトプットは現状最も有効な医療手段だ。
「あなたの好きにはさせない」
「喰らえええええ!!!!」
ここまでの呪霊の行動から見てそれを執拗に邪魔するのは目に見えている。ヒナとツルギはそれをさせないためにも果敢に攻め立てる。
「ヒナ!ツルギ!先生と一緒に戦ってくれるかい?」
先生はすぐにヒナとツルギのもとへ駆けつける。それぞれゲヘナとトリニティで最強と言われ、象徴とも言える子を先生が指揮する。彼女達を知っている生徒ならばこれほどのドリームチームであれば勝てると確信するだろう。
ヒナとツルギは何も言わずに頷く。先生からその言葉が出るのを待っていたかのようだ。
「いいね。これを越えれば俺は最強じゃん」
呪霊はそれを見て寧ろ気分を高める。これを倒せたら名実共に自分は最強と誇れると確信し、やる気を燃え上がらせていた。
それに比例して呪力が練り上げられる。まだ底は見えずドス黒い呪力によって場を支配される。
「ツルギ、悪いけど奴の注意を惹きつけてほしい。いける?」
「問題ない。キヒヒッ……」
「私がメインアタッカーね。必ず仕留める」
先生が考えた作戦は単純。生存性能が高く足の早いツルギはタンクになって貰う。ヒナは獲物の火力を活かしてダメージ源として働いて貰う。これだけ伝われば3人は各々の役割に集中する。
「話し合いは終わったか?こっちから行かせてもらう!!」
呪霊は3人が準備を整えたのを確認したら、抑えていた興奮を解き放って全速力で駆ける。狙いは鎌となった腕で全員をぶつ切りにするだけだ。
「キヒヒッ……ヒャ〜ハハハハッ!!」
「まずはお前からだ!剣先ツルギィィィッ!」
ツルギは呪霊を抑えるために真正面から迎え撃つ。それをわかっていたのか呪霊も迷うことなくツルギに攻撃する。
鎌を水平に振る。コンクリートぐらいなら問題なく切断するその攻撃をツルギはジャンプして難なく躱す。
「フハハハッ!!」
乙女な一面もある彼女もこの場面では邪悪な笑みを浮かべながら、空中で2丁のショットガンを勢いよく発砲する。彼女の神秘が小さい扇状に広がり、呪霊の身体全体にダメージを与える。先程の毛針のお返しである。
「このっ!」
「あなたにこれ以上何もさせるわけないでしょ」
すぐに反撃しようとするがヒナが間髪入れずに攻撃する。弾が撃ち尽くされるまで休みなしの弾幕だ。呪霊は何もせずに受け続ける。
ツルギはサラッと呪霊の後ろに立つことでヒナの弾幕を呪霊を盾にすることで避けていた。貫通するようならそれだけ深くダメージを与えられているのでそれはそれでよし、という脳筋思考だ。
「さて……」
今ツルギとヒナで挟み撃ちの状態だ。普通ならフレンドリーファイアが怖くてやるものではないが、相手がなまじ頑丈なため心配せずに攻撃できる。
「この……うざいんだよ!!!」
呪霊はツルギがやろうとしていることを察している。だからその場で受け続けて呪力を練って待っていた。
先生達の作戦はツルギが倒れて仕舞えば厳しくなるのは目に見えている。だから近づいてくるのを待っており、そのタイミングが来たのを見計らって力を解き放つ。
「っ!ツルギ!今から私の言う通りに動いて!指差しもするからそれを見て!ヒナも攻撃を中断!弾装填!!」
先生は呪霊のやろうとしている攻撃をシッテムの箱の表示を見て理解し、ツルギに攻撃の中断を促す。指示に集中するために一旦ヒナの攻撃もやめさせる。
「串刺しだあ!!!」
呪霊は力み、身体をハリネズミのように変形させる。そして、体積的にあり得ない規模で針を一気に伸ばす。宣言通り串刺しにするつもりである。
針は全部が同じように伸びるのではなく時間差をつけて一回の回避で避け切るのを許さない。中にはディレイをかけて騙そうとするものまである。
「……見えたっ!」
先生はシッテムの箱の表示と実際の挙動を見て即座にルートを割り出す。深呼吸してツルギならやり切ってくれると信じて指示を飛ばす。
「右!右!静止!上!壁を蹴って左!着地したらしゃがんで!」
「ヒャハハハハハハハッ!!」
先生は指示を飛ばしてツルギを誘導する。さながら死のツイスターゲームをツルギは先生を信じて難なくこなす。一歩間違えれば自分に風穴が空くことは理解しているが、今までの被害による憤りが彼女に火をつけた。
「なっ!?」
呪霊もまさか全弾かわされるなどとは思ってもいなかった。渾身の一撃は虚しく空を切り、残されたのは硬直する自分だけであった。
弾を装填していたヒナは何も言わずに硬直している呪霊に全弾を注ぎ込む。ここで仕留めてみせると言わんばかりの勢いで攻撃する。ゲヘナの不良達なら顔面を蒼白とさせる光景だ。
「あっ……がっ……」
呪霊はあまりのダメージの大きさに身体が戻った後は倒れ伏す。誰もが倒したと確信するほど呪霊は苦しそうにしている。
勝てる、そう誰もが思っていた。
「まだだ!!!まだ終わってない!!!」
確信していない者が一人。浩介は2人の治療を済ませて3人の近くへ走り出していた。大きな起こりを呪霊から感じ取ってしまったのだ。
「キヒッ!キヒヒッ!!」
呪霊は浩介が来たのに気づいても笑っていた。もう遅い、そう言わんばかりに。
胸の前で手を交差させ、左右の小指をからませ、人差し指を立てて他の指を握り込む形で結ぶ。降三世明王印、三毒から人を救うはずがこの呪霊の救い方は歪だ。
「領域展開──、
断頭金剛戟」
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それはそれとして俺この呪霊嫌い
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