次はパヴァーヌなんだから早く書くぞー
「スゥ──」
大きく息を吸い、集中する。まずは食らえば確実に即死する先生を優先して守る。空崎委員長と剣先さんは自力でたどり着いてもらうほかない。
「シン陰流、簡易領域」
居合の構えをし、足元から結界を展開する。先生達にはオート迎撃以外見せていないが、本来の使い方は領域から身を守るためのもの。弱者の領域とはよく言ったものである。結局は強者が上手く使うだけなのは言ってはいけない。日下部先生とか日下部先生とか。
「浩介、これって──」
「空崎委員長!剣先さん!!早くこの中に入って!!」
先生は急展開を迎えるこの状況に焦りを感じているようだ。明らかにヤバそうな技を使われてるのだから無理もない。実際、相手に対策がなければ問答無用で勝ちになるクソ技だ。
「「!!」」
俺の声を聞いて二人はすぐに走り出す。俺の慌て様を見て危険度を察してくれたなら嬉しい。二人にはなるべく無事にここまで来てもらわないとまず勝てない。
「逃げられると思うなよ!!」
呪霊は遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。今までと同じ様に飛ぶ斬撃である。変わっているのは腕を振るモーションの後に一発ずつだった斬撃が複数本増えていること。わかりやすく術式が強化されている。
しかもここは呪霊の領域の中である。これが意味するのは最悪の展開。
「ぐっ!?」
「なんで!?」
2人は当然避け切れることなく斬撃に被弾する。2人の頑丈さ故に少しの出血で済んでいるが、中途半端な子だと今ので終わりになりかねない。
「ヒナ!ツルギ!今そっちに──」
「行くな!先生!!即死するぞ!!」
「でも……」
「今、この空間は奴に支配されている。俺の簡易領域から出たら例え箱を持ってる先生でも細切れだ。2人には自力でここに来てもらう。ちょっと呪力を練らせてくれ!」
先生は2人を助けようと俺の領域から飛び出そうとしていた。流石は先生と言いたいところだが、いくらなんでも止めなくてはならない。生徒のために死ぬ気で頑張るのは先生の美点ではあるが、今は無意味と言わざるを得ない。
「大丈夫よ、先生。ツルギ、私を抱えて」
「わかった」
何やら考えがあるのか、空崎委員長は剣先さんに抱えてもらう。体格的にやるならそうなるのはわかるが、走るのに邪魔なはずだ。
そう思っていた。
「ああぁぁぁぁぁっ!!!!」
答えは簡単だった。空崎委員長は今までに見せたことのない威力の弾をばら撒いていた。薙ぎ払い斬撃を可能な限り相殺させていた。もうこれ弾幕じゃ無くてビームじゃん。脳筋じゃん。
「ハァ……ハァ……着いたぞ」
「ここからどうするの?」
あっさりと俺の簡易領域まで辿り着いていた。能力の高さによるゴリ押しもここまで来れば美しいものだ。
「まず、覚えて欲しいことが3つ」
「箇条書きみたいに説明出来る?」
「……一つ目、奴の攻撃は絶対に当たる」
「絶対?避けるのが難しいってこと?」
「ずぇっ〜たい。難しいんじゃ無くてそもそも回避なんて概念が通用しない」
最初の説明で3人は頭にハテナマークを浮かべてそうな顔をしている。ちょっと面白い顔をしているけど、これが一番厄介だから覚えて欲しい。
「二つ目、この中だと奴はパワーアップしている。ゲームでいうバフみたいなものだ」
「さっきの斬撃が増えたり威力が増しているのはそれね?」
「パワーアップしながら必中になるだと?強すぎないか?」
二つ目の方はよくわかったらしい。実際に戦っていたのだから感覚でわかるのだろう。剣先さんがパワーアップの上に必中は強過ぎるなんて言っているが、その通りだと思う。俺も早くここまで使える様になりたい。
「三つ目、この結界は内側から破ることはほぼ不可能。ついでに外側から破れそうな子は1人もいない。だから今は奴にダメージを与えてこの結界を維持できない様にしないといけない」
「……まとめたら全ての攻撃は必中で威力も上がってるうえにこの空間を壊すことも出来ない?どうやって勝つの?どうやって大ダメージを与えるの?」
先生の疑問は尤もだ。本当ならもっと伝えないといけないこともあるが、大事なのはこの3点。改めて整理してもクソみたいな性能だ。今からやろうとしてることも無謀に近い。
「領域にはいくつか対抗手段があります。……俺は必中効果だけなら何とか出来る。回避ができるだけですし、やっちゃうと俺は戦えなくなりますが」
「つまり浩介が必中効果だけを何とかしてる間に奴を倒せばいいんだね?」
先生はそう言って鞄をゴソゴソと物色し始める。恐らくは大人のカードを使用するつもりだ。確かに今は出し時である。俺ならば躊躇なく使うだろう。
「先生、私達はまだやれるわ」
「ご指示を」
だが、空崎委員長と剣先さんが真剣な眼差しで先生に抗議する。大人のカードの力を知っているかはわからないが、それは違うと言わんばかりに。
後輩達があれだけ傷ついたのに黙って先生に全てを委ねるつもりなど毛頭ないようだ。ゲヘナとしては人的被害こそないが、チナツからすれば友人を手にかけられている。空崎委員長はチナツの慟哭をしっかりと感じ取っている様だ。
「……わかった。指示に従ってね」
先生は2人の意思の固さを目の当たりにして、大人のカードを使うのをやめる。本当なら問答無用で使うべきだが、ここまで生徒にやる気を出されたら先生は断れない。
五条先生も同じ状況なら同じ選択をするだろうか。
……いや、ほら頑張れ〜、とか言いながら谷に突き落としそうだな。流石に俺の思い違いであって欲しい。……そうだよな?
「じゃあいきますよ……領域展開。"熢魔降伏"」
考えても仕方ないし、もう後は3人を信じるだけだ。
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「これはベアトリーチェを倒した技?」
『先生!皆さんを狙う何かしらの力がなくなるのを感じます!!』
「アロナ?わかるの?」
『はい!なんとか……理屈はわからなかったので浩介さんがいなかったらシッテムの箱の充電がなくなるまで先生だけでも!と思ってましたが今ならいけそうです!』
先生は浩介の領域が足元に展開されているのを見て、少し不安になる。ベアトリーチェと戦った時は凄まじい炎を出していたが、今は違う。
浩介は印を結び続けながら踏ん張っていた。まるで押されまい、とせんばかりに。戦えなくなる、という言葉の真意がこれであると推測するには充分だった。
その証拠にアロナが皆んなを狙う力がなくなったと先生に言ってくれた。この事から先生は浩介が何かしらの押し合いの様なものをしていると推定。
(つまり、ここでダメージを与えて押し合いを浩介有利にすれば良いということか!)
理解できた先生は早速シッテムの箱の画面を見て戦況を分析する。敵は呪霊一人、こちらはキヴォトスの生徒でも5本の指に入るであろう生徒の内2人だ。戦力としては申し分ない。
「戦法はさっきと変わらずに行くよ!回避を最優先!」
ここから先生の指揮が始まる。先程と同様にツルギは陽動、ヒナが火力役だ。
「最終ラウンドだあ!!!!」
ツルギは厳つい顔をしながら呪霊へ突進していく。後一踏ん張り、そう自分に言い聞かせながら鞭を自分に打つ。再生能力があってもこれ以上は流石に厳しい状況だ。
ヒナは無言で狙いを定め、意識を集中させる。浩介の説明を聞いて、この空間が壊せないのであれば遠慮はいらないのではないか。そう思ってあることをやろうとする。
「遠慮はしない……」
極限まで集中し、彼女の周りに紫色の神秘が舞う。まだ完成させてないとっておきで、威力の高さゆえに市街地では扱いづらいのが難点だが隔離されて壊さない空間ならば寧ろ最適と言える。
「「「!」」」
明らかにヒナが奥の手を切ったことを察した3人は視線をヒナに向ける。呪霊は警戒心を、ツルギと先生は期待を。
「ヒナ、私の合図で撃つんだ」
「初めからそのつもりよ」
ヒナも足を止めている。浩介との違いは明確に攻撃の意思を持っていること。今のヒナは固定砲台のようになっている。
「させるか!!」
呪霊はツルギの攻撃をかわしながらヒナの妨害のために斬撃を飛ばす。領域によってパワーアップした斬撃はヒナと先生をズタズタに切り裂こうと向かっていく。
「撃て」
先生とヒナはそれでも怯まなかった。先生は真っ直ぐ指を差してどこを撃ち抜けばいいかをヒナに教えていた。コースは斬撃と呪霊を真っ直ぐ捉えている。
「っ!!」
ヒナは先生の指示に従い、神秘を放出する。いつものように弾を散らばらせるのではなく、一ヶ所を狙ったものだ。まずは斬撃を迎撃しようとヒナの攻撃はものすごい速度で飛んでいく。
「そのまま切られちまい──」
ボコッ!
呪霊は自身の斬撃がヒナの攻撃に打ち負けるわけがないと思っていた。煽りの言葉をかまそうとしている最中に腹に不自然な痛みが走る。
「なぁっ!?」
呪霊に綺麗な風穴が開いていた。それに対してヒナと先生は無事だった。元からあった傷だけである。ダメージを負ったのは呪霊だけ。
「ハァ……2射目、ハァ……いけるわ。っ……、先生」
「……それで終わらせるよ」
ヒナは余裕そうに言っているが、息が荒く汗もひどい。慣れないことをして消耗が激しいのは分かりきっている。次撃てば限界を迎えるだろう。
しかし、選択肢はこれしかない。浩介が領域の押し合いをいつまで続けられるかわからない以上、先生達に求められるのは短期決戦のみ。それがわかっている先生はヒナを信じることにした。
「このっ!」
「私を置いてどこにいくつもりだあ!?」
なんとしても妨害したい呪霊はヒナの元へ直接行こうとするが、ツルギがそれを許さない。ツルギはヒナの奥の手を何としてでも通す、それだけを考えていた。
「ひゃーはははぁっ!!!!!!」
ツルギは自分を鼓舞するかの様に大きな声を張り上げ、自身の得意な距離を保ち続ける。ヒナのサポートではあっても自分の攻撃を忘れるつもりはない。なんなら自分で倒すつもりでいる。
「こいつっ!!」
呪霊は傷を再生させながらツルギから離れようとするが、ツルギがすぐに肉薄する。それが鬱陶しくて仕方ない。
単純に背丈のあるツルギによって呪霊の視界からヒナ達を隠されてしまう。そうなればいつアレを撃ってくるかわからない。それがたまらなく鬱陶しい。
「ふざけんな!ここは俺の領域だぞ!!俺に気持ちよくさせろっ!!!」
「知るかっ!!!」
バァン!!
「剣先ツルギィっ!!貴様ああっ!!!」
気づけば危なくなっているのは自分なことに呪霊は焦りを感じる。一刻も早くこいつらを倒さねば負けるのは自分、そんな気持ちが呪霊を支配する。
「くたばれええええええ!!」
「お前がくたばれえええ!!」
追い詰められた呪霊はまずはツルギを始末しようと闇雲に攻撃する。いくつかはかわされるが確かにツルギにダメージを与えている。
しかし、ツルギも負けてはいない。一撃貰えば一撃を返す。まるで殴り合いのような攻撃の応酬が二人の間で繰り広げられる。
血で血を洗う戦い、先に限界を迎えるのは──、
「ぐっ……」
──ツルギだった。
領域の中で攻撃を喰らいすぎた代償はここに来てツルギを蝕む。
「この……首を切り落として……」
ツルギにトドメをさそうと呪霊は腕を鎌に変形させる。最も力のある攻撃で確実に首を切り落とす。領域の名に恥じぬ惨劇を繰り広げようとしていた。
「撃て!!!!」
しかし、それもツルギに構いすぎたことでヒナの2射目を許してしまう。ヒナのスタミナがこれで限界を迎えるのでこれが正真正銘のラストアタック。外したり耐えられたりすれば先生達の命運は尽きる。
「かっ────」
まずはしっかりと命中させる。威力は凄まじく両腕と胸のあたりが綺麗に抉れていた。人間であれば即死してもおかしくないダメージだが、呪霊はそうもいかない。倒せていることをお祈りするほかない。
「この……ハァ……ハァ……餌どもがぁ……っ!!」
先生達の祈りは通じず。辛うじて呪霊は領域を保つ。遅くはなっているが再生も始まっていた。限界は近いがヒナ達を屠るには充分な余力を残している。
「……ふふっ!一時はどうなるかと思ったが……もう終わり?」
先生達が限界を迎えたのに気づいた呪霊は勝ちを確信し、急に饒舌になる。浩介は領域の押し合いで動けず、先生達はもうヘロヘロ。領域は健在となれば勝ったも同然。
ここまでダメージを負えば浩介に押し合いで少し巻き返されるだろうが、逆転することはない。理由は領域の練度の差だ。単純な話で外殻が無ければ領域を展開できない浩介とちゃんと完成させている呪霊では雲泥の差であるということ。
「全員集合!!!」
ここに来て浩介が動く。先生達に俺のところに来いと声を張り上げたのだ。ただ、それだけだが浩介の顔は自信に満ち溢れていた。
「「「っ!」」」
浩介の張り上げた声を聞いて全員が浩介の元へと走る。ツルギも限界を迎えた身体に鞭を再度振るって走り出す。何があるのかはわからないがこの状況を好転させるものであると信じての行動である。
「なるほど!これはいい!」
「あなた、性格悪いわね。私達を囮にこんなことするなんて」
「ハァ……ハァ……何でもいい。これが最適だ」
呪霊の目の前で信じられないことが起こっていた。先生、ヒナ、ツルギの順に領域から消えていったのだ。まるで穴に落ちるかのような消え方をしているのである。
「ま、まさか……」
「おいクソ呪霊」
何が起きているのか気づいた呪霊は青ざめる。自身が追い詰められてしまったが故に、浩介に隙を与えてしまったことに気づいたのだ。
そんな呪霊に追い討ちをかけるように浩介はしたり顔で声をかける。より深く呪霊の心を抉るために精一杯の呪詛を込めるように嫌らしく。
「無駄な領域を展開してお疲れさん。ケケッ!!」
「こんの……クソ術師!!!!」
お揃いの羽組の霊圧が消えてるよ〜
わかってるかもしれませんがギンコも実は昔羽がありました
ない理由?呪霊ではないのは確かです
なんで羽の幻肢痛の処置が早いのかって?
何でやろなあ
更新時間はいつが良いでしょうか?
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22時〜0時ごろ
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7時ごろ
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19時ごろ