呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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第7章 親友と重なりし王女とのパヴァーヌ
81 ミレニアム式お出迎え


 ガラガラと揺れる電車。ゲヘナの街並みから片田舎、次第に現代風の街並みへと変わっていく。電車旅としては上々の景色を楽しめるものだった。

 

「浩介……?ずっと喋らないけど酔った?」

「? 大丈夫ですよ」

 

 先生は俺が黙って景色を楽しんでいるのを酔ったのかと勘違いして話しかけてきた。電車に乗ってから殆ど何も言ってなかったからだろうか。

 大丈夫ですとだけ伝えて再び景色を眺める。ミレニアムの街並みは元いた世界の現代社会にそっくりだ。SF映画で見るような派手な街並みではないが、現代日本には近い方かもしれない。特に東京とか。

 

「浩介、少しミレニアムについて話しておきたいことがあるんだ」

「注意事項があるんです?」

「そうだね。知らないと大事故に巻き込まれたり、騒動の元になるかもしれないからさ」

 

 先生はミレニアムで活動する上で注意事項があると言ってきた。他校で呪術師として活動するのだから当然の話ではある。

 今思うとトリニティでの活動は迂闊すぎた。結果的に問題なくやれてるがゲヘナとトリニティの関係性を考えれば奇跡そのものだ。今後は気をつけなくてはいけない。この話は重要だ。

 

「まずはサイエンススクール、というだけあってかなり理系肌の子達が多いこと」

「まあ、そりゃそうでしょうね。俺の中でミレニアムは各部活で自身の研究テーマを日夜研究したり、ひたすら物作りに励む子達もいるといったふわっとしたイメージですよ」

「うんうん、そうだね。……基本的にはそうなんだ」

「……なんか含みのある言い方をしますね」

 

 なんだその疲れた顔。先生の顔は乾いた笑みで満たされてる。散々振り回されたであろうことが窺える。

 そういえば晄輪大祭はミレニアム主導だ。そこから推測できることはないだろうか。

 

 

 

 早瀬さんの懸命な運営、生塩さんの丁寧な対応、応援団衣装を身につけて応援、応援ロボと言う名の戦車の暴走……。

 

 

 

 

 

 なんとなく先生が言いたいことがわかった気がする。

 

 

 

 

「察しがよくて助かるよ。ミレニアムの子達はいい子達ではあるけど、自身の分野になると物凄いバイタリティを発揮するんだけどそれがしばしばあらぬ方向へ……」

「先生、俺はキヴォトスの中でも特に騒々しいゲヘナの生徒ですよ。多少のことなら驚きませんよ」

 

 先生が言いたいことはミレニアムの子達はいい子達でも、自身の研究や作品に対して謎のこだわりを発揮したりしてトラブルが起こりうることだろう。無駄な装甲が硬い球形戦車型応援ロボットなどという単語の大渋滞を引き起こすトンチキが出てきたこともこれで説明はつく。

 だが、こちらは日夜騒動が起こるゲヘナだ。鬼怒川先輩や黒舘先輩と比べれば可愛いものだろう。家の近くで温泉を掘るために爆弾を使おうとする温泉開発部を殴り倒したり、10回を超えたあたりから怒りより呆れが勝る愛清先輩誘拐を実行する美食研究会を追いかけたりとかに比べれば誤差に違いない。

 

「前にあった戦車に謎の改造を施して暴走させたり、それが校舎壊したり、はたまた爆破事故でお出迎えとかされたりとかぐらいなら想定内ですよ」

「あ、あはは……」

 

 それからは雑談ばかりだ。天童さんが所属するゲーム開発部という部活が他の部活やセミナーまで襲撃する蛮族エピソードや、エンジニア部が色んな発明品を作っては何かと自爆機能やBluetoothを搭載したりすると言った訳のわからない話がいっぱい聞けた。

 因みにトリニティで備品の戦車を強奪して校舎を半壊させたトリニティ生がいるといったエピソードまで聞けた。トリニティもなんだかんだ言ってキヴォトスらしくかっ飛んでるらしい。阿慈谷さんに負けないぐらいやべえのがいるんだな。

 

 

 

 ……え?それも阿慈谷さん?白洲さんと一緒に正義実現委員会相手に大立ち回り?海に行くのに戦車は欠かせないとか言ってた?

 

 

 ……聞かなかったことにしよう!

 

 

 

 

 

 

 

****************

 

 

 長い電車旅も終わり、ミレニアムに着いた。実際に歩いてみると学園に近いところは確かに近未来風な街並みだが、案外自然も残っている。山脈なんかもあってキャンプも出来そうだ。ここに行ってみるのもいいかもしれない。

 学園に着けばお出迎えが二人見えた。俺にとっても顔馴染みのメンバーである。

 

「魔法使い浩介よ!勇者アリスと共に悪霊退治へいざ行かん!」

「勇者アリスよ……俺、火の魔法しか使えませんがな」

「なんと!ではあれが出来るのですか!◯ラゾーマではない。◯ラだって名セリフ!」

「おいおいそれ大魔王じゃん」

「浩介って回復できるから賢者では?」

「王様(先生)、賢い者なんて仰々しいからな。そうだな……呪術師と呼んでくれ」

「あう……それもそれでドスが効いてます……」

 

 お出迎え早々天童さんと何故かゲームの話になっていた。一応呪霊の存在を知っているらしいからか、俺が退治の専門家であることは把握しているようである。能力を聞いて魔法使い扱いである。まあ強ち間違ってはいない。

 

「ふふっ……仲がいいのね。でも、アリスちゃん。今日は遊びじゃなくてお仕事なのでまた後にしてね」

「はいっ!浩介、終わったらゲーム開発部に遊びに来てください!」

 

 ゲーム談義に華を咲かせるのもいいが、今回は呪霊の調査及び祓除が目的なのでこれぐらいが潮時である。早瀬さんが微笑みながらさりげなく会話を中断させる。天童さんはお気に入りのようですっごくニコニコしてる。

 

「では、早速ミーティングルームへ────」

 

 

 ドカン!!

 

 

「行き……なっ!?」

 

 微笑ましいやり取りを終えて仕事に入ろうとした瞬間に爆発音が響く。早瀬さんは驚愕しながら爆発のあった場所に振り向いていた。

 そして惨状を見れば先程の笑顔から一転、怒りを滲ませた表情へ移行していく。よかった、これを楽しむゲヘナマインドじゃ無くて。

 

「うわ……校舎がだいぶ壊れてる。へえ、こういうのミレニアムでもあるんだな」

 

 因みに爆発による被害は校舎が壊れるといったもの。慣れとは恐ろしいもので校舎が壊れても俺は特に焦らないようになっていた。真面目な子が集まる第二校舎に普段はいるので窓から覗いて右側の第一校舎が壊れてるのをよく見るものだ。

 冷静に考えれば校舎が壊れるなんて珍しくないなんておかしいよな。俺もかなりキヴォトスに馴染めたらしい。日本の学校でそれがあったらニュースで取り上げられるだろうな。

 

「ん?あれは……戦車?見たことあるような」

「あ……」

 

 しばらくしたら割と早い速度で球形の戦車らしきものが大砲と機関銃をいかつく構えながら向かってきていた。流石にこれは珍しい。先生は何かに気づいたのか手で顔を覆う。

 

「うわわわっ!!と、止まってください〜〜っ!!!」

「コトリ、危ないよ。怪我しちゃったら大変。……どうしようか、ウタハ先輩」

「コトリ、ヒビキ……こうなったらやることは一つさ」

 

 戦車を追ってきたのか金髪の眼鏡っ娘が慌てて走ってきていた。状況から察するに製作者だろう。名前はコトリというのはそれに続いて追ってきていた犬と思われる獣の垂れ耳生徒の台詞からわかった。

 戦車を追っているのは三人だった。眼鏡っ娘、犬耳生徒、紫の長髪生徒の三人だ。紫の長髪生徒が先輩で恐らくは部長なのだろう。彼女は慌てておらず、何か策があるようだった。すぅ、と息を吸っている。お?音声で緊急停止とか出来るのか?

 

 

 

 

 

「誰かーっ!!助けてください!!」

「またかっ!!!」

 

 ダメだった。なんもなかったようだ。よく考えたらそんな事できたらこんなことになってないな。

 早瀬さんは物凄い声量でまたか、なんて言ってるあたりトラブルはしょっちゅうなのだろう。ご苦労様です。

 

「浩介、早速で悪いんだけどさ。あれ……壊してもらえる?」

「いいの?あの校舎クラッシャーはミレニアムの備品だろ?」

「構いません!寧ろ完膚なきまでに破壊してください!」

「ユ、ユウカ〜!そんな殺生な」

「お黙り!」

 

 先生から破壊するように要請があったが、流石に他校の備品を壊していいのか疑問に思った。が、生徒会の役員である早瀬さんが恨み節全開で許可をしてくれたので遠慮はいらなさそうである。なお、製造者の悲鳴は一言で押さえ付けられるものとする。

 

「魔法使い浩介よ!勇者アリスと共にあのキ◯ーマシンを討伐しましょう!」

「いや、俺一人でや……え?」

 

 天童さんは俺の横に立ってやる気満々な様子。こんな状況でも勇者パーティロールをやめないあたり自信はあるようだ。とはいえ危ないし俺一人でやると言いたかったが、天童さんの武器を見て思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

 天童さんは背負っている巨大な何かを何の苦もなく装備して砲身を戦車に合わせる。どう見ても何十キロもある大砲らしきものを軽々と扱ってみせたのだ。力持ちなのは知っていたが、普段の武器から超重量級とは恐れ入った。

 

「その銃身を振り回せんのかよ……!」

 

 思わずそう言いたくなってしまった。素で恐ろしいほどのパワーを発揮するのは虎杖君みたいだ。単純なパワーなら聖園さん以上かもしれない。

 

「ふっ、じゃあ勇者様はどでかい一撃の用意だけしててくれ」

「わかりました!チャージしてチャンスを待ちます!」

 

 なんだか懐かしい気分だ。よく敵を炎で囲って逃げ場を無くしてから虎杖君用の抜け穴を作って奇襲させたものだ。お膳立ては慣れっこだし、自信はある。

 

「浩介!アリス!いくよ!」

 

 俺達が大まかな立ち回りを決めたのを見て先生はシッテムの箱を取り出し、先の準備を整える。これで難なく終わらせられるだろう。

 

 

 

 

 

 

 結果として、例の校舎クラッシャーは俺がキャタピラを破壊して天童さんのレールガンで悲惨な最後を遂げる。

 何やら先生がまた新しい名前がつけられたな、とか言っている。よくよく見れば晄輪大祭で見た戦車の改造品である。アレに何があったのか少しだけ気になるな。

 そういや、電車の中で言ったこと全部回収してるな……。晄輪大祭で見た戦車の改造品で校舎を破壊して爆破事故でお出迎え、ここまで綺麗にハマるとは思わなんだ。

 

 

 そして、トラブルを起こした三人は早瀬さんに説教されながら正座していた。『私達がやりました』と書かれた紙をぶら下げており、何ともシュールな光景で俺のお出迎えは終了となるのであった。




散々伏せ字してパロってるが某シリーズをやったことがないのである

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