それにしてもケイ実装、マルクト登場と凄いことに……
とある大都市、アリスを処刑するための設備の稼働準備が進められていた。カタカタとキーボードを打つ音が響く。機械の稼働音とキーボードを打ち込む音以外何もない静寂な空間がそこにあった。
ブーブー!
そこにうるさい警報音が鳴り響く。作業を進めていた調月リオは手を止めてエラー文を読む。
"侵入者発見"
シンプルながらもわかりやすい表示。誰が何をしにきたのかは明白だ。
「早かったわね。先に終わらせておきたかったけど……仕方ないわね」
リオとしてはアリスを連れ込んだ以上、準備を早急に整えてアリスのヘイロー破壊を敢行したかった。しかし、流石にそれが許されるほどの猶予は元からなかったらしい。
「トキ……聞こえているかしら?」
『はい、リオ様。出撃準備は整っています。ご指示を』
リオはインカムから自身の従者、飛鳥馬トキへと連絡する。トキの方は何を指示されるかはわかっていたからか、武器のメンテナンスは済ませていつでも出られるとアピールする。
「トキ、C&Cが暴れているわ。こっちを抑えに出撃しなさい」
『イエス、マム』
トキとリオのやり取りはこれで終わりだ。淡々とそれぞれの役割を果たす為の最低限のコミュニケーション。今の2人にとってはそれで充分。
……トキがメイドとしてリオの世話を焼く時は別とするが。
初めから装備をつけてからトキは目的地へと向かう。敵は、いや先輩達は必ずここを目指すために自分と戦うことになる。出来れば向かい合うのではなく隣で闘いたかったがそれは叶わないだろうと割り切り、目的地へと向かう。
*****
「お待ちしておりました。先輩方。C&C所属、コールサイン04。飛鳥馬トキ、ご挨拶申し上げます」
時は流れ、トキはようやく会い見えた先輩達に挨拶する。1人に対してあちらは3人。
「思ったよりも早く現れてくれましたね」
「私達がここに来ることは最初からお見通しだったというわけだ」
「君がトキちゃんだね?初めまして!」
アカネ、カリンは自分たちのリーダーを抑えたトキを見て警戒心を引き上げる。アスナは呑気に挨拶しているが、いつでも戦闘態勢に入れるようにしている。
「リオ様は全てを把握されておいでです。先輩方の判断も、シャーレの先生の狙いも」
トキは決して油断はしない。ほぼ勝てる自信があっても油断や慢心で足元を掬われるような間抜けは犯さない。
「ですので、僭越ながら申しあげます。これ以上の抵抗は無意味です。大人しく投降をお願い致します」
無意味とわかっていても投降するように勧告する。ここに来るぐらいなのだから今更そんなことはしない。もしするようであればトキは先輩達に失望の念を抱くだろう。
「ほう?なるほど」
「うーん……それはちょっと難しいかな」
答えは当然ノー。お前を倒しにきたんだと言わんばかりだ。
「そうですか。では────」
戦いの幕は切って落とされる。そう誰もが思った。
カツン。
そう思った直後にトキの足元に硬い何かが落ちてきた音がする。戦場ではよく聞くことになる嫌な音だ。
既に気づいていたトキは慌ててこの場を離れる。その数秒後、トキのいた場所が爆発する。
「わ!びっくりした」
「ア、アカネ……?そんないきなり……」
「あら、これくらいだと避けられちゃいますか」
爆発の正体はアカネの爆弾。うずうずしていたアカネが話の最中にフライングで投げたのである。目的を考えれば無理もない行動なのだが、焦ってやったのではなく待ちきれなくなってやってしまったのを見て、カリンはちょっと引いていた。
「室笠アカネ先輩。戦闘では爆発物を用いた広域制圧を得意とするC&Cの要注意人物……」
「ふふ、初対面の後輩にそう言われてると照れてしまいますね。先程のはほんの挨拶程度のものですよ」
トキは自分の知るアカネの人物像がその通りだと知り、ジト目でアカネを見つめる。いくらなんでもそれはちょっと……、と言わんばかりだ。
対してアカネはいけしゃあしゃあとしている。なんなら本気で照れている。筋金入りの爆弾魔だ。
「……ネル先輩がいませんね。なるほど皆さんの役割は私の足止め。AMASでは相手にならない以上、皆さんを止められるのは私だけです。最強の戦力であるネル先輩は本命のアリス救出に向かわせる……ええ、実に合理的です」
この状況を見てトキはC&Cの目的は自分の足止めだと判断する。ネルは一度トキに敗れてしまっている以上、最大戦力を活かすためにも自分の相手は他のC&Cがする。
例えC&Cがトキを倒せなくても時間を稼いでしまえばいい。目的は倒すのではなく救出である以上、最悪トキは留めることさえ出来ればいいのだ。
「おー、言われてますねえ。美甘先輩、ここはビシッと言ってやっては?」
「あ?私に口出ししてんじゃねえ。大体なんでお前もこっちにいんだよ。先生のところに行けよ」
そんなトキの予想とは大きくずれた答え合わせがされる。
軽薄な男の声とそれに対して心底ウザそうにするオレンジ髪の生徒。敵方の最高戦力がこぞってここにいる。不思議でしょうがない。
「いや、確実に飛鳥馬さんを抑えた方がいいかなって思ってさ。わかってるだけでも向こうの戦力は調月会長謹製のドローンやロボットと飛鳥馬さんだけでしょ?」
「あ?だからなんだよ?」
「飛鳥馬さん抑えたらハッキリ言って勝ち確定でしょ。余程の隠し球があれば別だけど」
軽薄な男もとい浩介がC&Cの方へ行った理由、それはトキさえ抑えれば勝ったも同然というもの。
「美甘先輩は先生から聞いたけどウチの空崎委員長に匹敵する存在だって。精鋭に最新の装備をつけて破れるとしてもそもそも最新の装備をフルに使える精鋭がホイホイ出てくるのか?」
浩介はネルの戦闘力がヒナと匹敵すると先生から聞かされていた。それが敗れた、この事実はビビる他ない。
ゲーム開発部曰く装備をつけてからチートのような動きをしたという。呪術に限らず色んな物事でもそうだが、それほどのメリットを得るには何かしらコストや制約がつきもの。複雑な操作を必要とするであろう装備を使いこなしつつ、素の戦闘力も高い人材はミレニアムにいるとは思えない。
「装備を使いこなすのだって一筋縄じゃいかない。訓練しなくちゃいけないし、今回の場合はセミナーの人達にバレずにやらないといけない。それもこのエリドゥなんて巨大都市を隠れて作りながらだ。複数人の人材発掘もしつつ訓練なんてやってられるか?いくらミレニアムが誇るビッグシスターといえどそれは無理でしょ」
浩介の推理は2人目の人材がいたら破綻するもの。決め打ちするには危険だが当たってはいる。
なお、浩介がこの考えに至る理由は五条悟の存在が大きい。最強と謳われあの人一人でいいのではないか、なんて声が出ているのに彼は強く聡い仲間を育てると言う選択を取った。最強でも自分一人だけ強くても意味がないと悟ったのだ。1人で出来ることには限界があるのは間違いない。
……五条悟がその限界に至ることはそうないというのは言わない約束である。
「なるほど、あなたの言いたいことはわかりました。それが叶わぬということも」
「じゃあ、俺は貴女のその台詞が自惚れかどうか確かめさせてもらうよ。シン陰流邪法……赫月」
飛鳥馬さんは浩介の推論を一通り聞き終えた後、話は終わりだと言わんばかりに銃口を向ける。浩介も拳銃に手を伸ばしつつ、簡易領域を展開する。
この簡易領域は侵入したものを迎撃するのではなく、展開時に入れた相手が起こりを出したのを浩介が感知次第反射で焔を撃つというもの。早い話、西部劇の早撃ち勝負だ。ただし、相手に条件を教えることはないため相手によっては理不尽極まりない。
「やっぱりてめえは邪魔だ。あたし一人でやらせろ。そして、あのチビも助けた後はてめえもシバく」
浩介が一人で始めようとしているのを見て気に入らないと感じたネルは不機嫌そうに割り込む。獲物を逃すまいと先にトキを攻撃する。
「っ!」
トキはすぐさまネルの攻撃範囲から逃れるように走る。当然この行為に神秘の起こりは発生しない。簡易領域の範囲から出てしまうのはすぐだった。
「あらら、出られたか」
結果として浩介の簡易領域は失敗に終わる。対象が何もせず脱出してしまうとただ呪力を消費するだけというしょっぱさ。そもそもタイマンでしか使えない。
「乱戦は嫌なんだけど仕方ない。いっちょ派手にやるか」
使うなら戦闘開始時ぐらいで決まればほぼ勝てるので雑に擦った結果がこれである。渋々拳銃を取り出しネルとトキの戦いに他のC&Cと共に乱入するのであった──。
C&Cは後で呪霊との戦いを描写したい
更新時間はいつが良いでしょうか?
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22時〜0時ごろ
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7時ごろ
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19時ごろ