呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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デカグラマトン編完結お疲れ様でした
心にぽっかり穴が空いたし、あの流れで次の総力戦はビナーなのね……
月面着陸目指します


90 C&C、浩介VSトキ、リオ

「おらおらぁ!!どうした後輩!?まだやれんだろ!!」

 

 エリドゥにてネルの二丁のSMGが火を噴く。相手は自分を一度は負かした後輩、飛鳥馬トキ。彼女は前と同様の装備でネルを迎え撃っていた。

 前ならこれで美甘ネルを倒せた。だが今は違う。

 

「くっ……!」

 

 押されているのはトキ。装備の性能を遺憾無く発揮してもなお防戦一方となっていた。

 

「やぁぁぁ!!」

「遅いんだよ!まだ身体は温まらないのか?」

 

 それでも何とか攻勢に出るトキ。愛用のARから弾丸が放たれる……が、ネルは回避しており無情にも返される。

 

(これが……ミレニアム最強!一級術師レベルは余裕であるな)

 

 浩介は特に手を出すことなく二人の戦いを見ていた。初めはC&Cのメンバーと一緒に袋叩きにする算段だったが蓋を開ければ美甘ネル1人で事足りている。

 ネルが優勢だがまだ勝敗はわからない。いくらでもひっくり返る可能性はある。トキの闘志は揺らがず、むしろ燃え上がっていた。

 

「部長、独り占めはダメですよ」

 

 だが、トキの敵は美甘ネルだけではない。

 

「あ?────ちょっ!?アカネぇぇ!!!」

 

 トキがいた場所はドカン、と大きな音を立てて爆発する。爆弾を投げた後にネルに声をかけたのである。爆発から逃れるために2人は距離を取る。

 

「アカネ先輩……!ですが、ネル先輩と距離が取れた!このまま──」

 

 ズガンっ!!

 

「ぐっ!?狙撃!?これは……カリン先輩!?もうあんなところに……」

 

 トキに鋭い一撃が撃ち込まれる。攻撃したのはネルとトキが戦闘している間にエリドゥのビルの一つの屋上に登ったカリンだ。上からトキの位置は丸見えになっている。

 

「まだだ」

 

 カリンは次の一発を放つ。着実にトキを追い詰めていく。一方的な攻撃は無慈悲に続けられる。

 トキはすぐに射線を切るために路地裏に入る。広いところにいても一方的に嬲られるだけ。一息つき策を練り直すためにも飛び込む他なかった。

 

「こんな流れるような連携……流石に……」

 

 厳しい、と言いそうになりながら何気なく反対の方に向く。少し落ち着こうと何気なくやった行動だ。

 

「あ、きたきた!やっほー!!」

「……!」

 

 トキを待っていたのかアスナがニコニコしながら出てきた。トキがここに来るとなんとなく思った、彼女ならそう言うであろう。トキからしたら勘弁してほしいと言いたくもなる状況だ。

 

「そこを退いてください!アスナ先輩!」

「えー?ダメ〜」

 

 まずはアスナを倒そうとトキは発砲する。アスナは笑みを崩さずひょいひょい弾丸を避けていく。

 思い通りにならない戦況にトキも焦りが出る。1対1なら勝てる自信はある。しかし、自分の想定よりも先輩達の連携が強く劣勢を強いられている。

 

「アカネは後で問い詰めるとして……まずはお前だな。後輩」

 

 そして一人一人を倒すのに時間はかけられない。理由は今みたいに挟み撃ちにされるからだ。フレンドリーファイアを考えれば発砲こそないだろうが、狭い通路で挟まれてしまうのはまずい。

 

「トキです。ネル先輩」

「なんだ?名前で呼んで欲しいのか?それは……お前を拘束して全て終わってからやらせてもらう」

「ハイハイ〜トキちゃん。捕まえちゃおうね」

 

 ネルとアスナはじりじりとトキに詰め寄る。逃げ場などどこにもないと圧をかけるようにじっくりと。いくらトキでも2人がかりで組み敷かれてしまえば終わりだ。

 

「まだです」

 

 ここで捕まるわけにはいかないトキはスカートの内側に仕込んだもののピンを抜き、目を瞑る。カン、と音を立ててそれを落とした。

 

「あ」

「ちっ!」

 

 落としたものは手榴弾。それを認識した2人はなおもトキの元へ向かう。拘束を目的としたものではなく、あくまで後輩の自爆を止めるために。

 トキとて無事ではいられない。自分の先輩達はリスクを承知で攻めねば勝てない、そう認識しての行動である。

 

「なんだ!?またアカネか!?……いや違う!逃すか!」

 

 ネルとアスナがいる場所が爆発したのを見て一瞬、自分の同級生の仕業かと疑ったが、爆風から出てくる人物を見て認識を改める。すぐに狙いをつけて狙撃する。

 爆発の煙に紛れて2人を振り切り、少し狙撃に被弾しながらもトキは走る。ネルの怒涛の攻め、カリンの狙撃、自爆……どれもトキの体力を確実に削っている。状況を変えるためにもリオから託された装置を操作して勝負に出る。

 

 

 ゴゴゴゴッ!!

 

 

「地震!?いや、これは!」

「浩介さん!建物が迫っています!早く避難を!」

 

 トキが装置を操作し終えた途端、地響きが起こる。初めは地震を疑ったが、建物がスライドしているのを見てそれは違うと確信する。エリドゥに用意された防衛システムの一種であり、リオがトキに与えた権限でもある。

 轟音を鳴らしながら建物は動き回り、大質量のものが迫ることもあり安全をとって全員が戦闘を中断する。

 

「ちっ!リオのやつ横領までしてなんてもん作ってやがる!?会長の仕事はどうした!?会計から大目玉食らうぞ!」

 

 ネルは地響きがなりながら組み替えをしていく都市を見てつい本音でぼやく。腐れ縁が一人でやるを拗らせてここまで振り切れるなんて想像もつかない。

 ここまでやる目的もわかる。敵戦力の分散だ。連携を防ごうと思えば物理的に引き離すのは当然の思考。万が一トキがC&Cの全員と戦闘となれば流石に厳しいと想像するのは簡単だ。

 

「これで1対1です。ネル先輩」

「それで勝った気か?他に隠し球はないのか?」

 

 地響きが終えた後のネルを待っていたのは覚悟を決めた後輩とのタイマン。念願の展開だ。これで先日の雪辱を果たす事が出来る。

 ネルにとって少々気にくわないのはこれで勝機が見えたと意気込む後輩、飛鳥馬トキの姿である。まだ深手を負わせてすら居ないのに勝ちを確信しているのは未熟というほか無い。いくら前回勝った相手であろうともだ。本物は下から喉笛を掻き切ろうと躍起になっているかもしれないのに。

 

「「……」」

 

 二人は相手の出方を窺う。お互いが得意とする距離、戦法を押しつけられた方が勝つ。そのためにも最適なタイミングは見逃せない。

 

 じりじりとお互いの得意な距離にしようと動く。ネルは近づき、トキはそれを嫌ってなるべく離れる。静寂の中お互いの足音だけが響く。二人はもう相手のことしか考えていない。

 

 ダッ――!

 

 

 

 先に動いたのは……美甘ネル。充分に距離を詰められたと判断して飛び出る。

 

 

「っ!!」

 

 トキはすぐに迎え撃つ。愛銃を構えネルの得意に持ち込ませないように抵抗する。付かず離れず、ネルの好きにさせるつもりなど毛頭無い。

 

 お互いに走り回りながら撃ち合う。ARと2丁のSMG、手数の多さではネルに軍配が上がる。

 

(なんで自分の身長より長い鎖を括り付けた2丁のSMGでそんな動きが出来るんですか!?おかしいでしょう!?)

(堅物かと思ったが意外とアグレッシブじゃねえか。あたしにとって有効射程を見切ってそのギリギリを攻めてやがる。普通はもっと離すだろ)

 

「あったまってきたか?」

 

 ネルは楽しんでいた。リオの仕込みありとはいえトキは自分を倒している。そんな相手に全力で戦える機会は今後そうないだろう。故に楽しいのだ。

 

 ジャラ……。

 

「鎖を足に!?」

 

 素早いネルの動きに対応していたトキだが、鎖にまで注意が回らなかった。足に鎖を巻きつけられたトキは外そうともがきたくてもネル相手にそれをする時間は取れない。

 

「これであたしの距離だ」

 

 ネルの得意を許すこととなる。こうなると装備の性能など意味を為さない。トキに必要なのはこれを凌ぐ地力。

 残された選択肢はネルの得意分野を上回ること。トキは意を決してネルに挑む。とても合理的ではない選択だが、そうも言ってられない。やらねばやられる、それだけだ。

 

「鎖と銃ばっかり見てんじゃ……ねえ!!」

「がっ!?」

 

 近づけば当然、打撃も選択肢に入る。ネルの素早い動きを追うことは出来ても攻撃の読みを外せば意味がない。

 恐ろしい手数の弾丸、鎖を引っ張ることでバランス崩し、近づき過ぎれば強烈な蹴りをお見舞いする。攻めのペースは完全にネルのものとなる。

 

「ハァ……ハァ……」

「もう終わりにするぞ」

 

 トキは膝をつく。勝負は決した。一度目の勝負から学びを得たネルがトキの強みを封殺する結果となった。得意分野の押し付けが出来た方が勝つ。それだけの勝負となった。

 

 

 

「あ!もう終わってる!」

「部長……私達が浩介さんの案内で迷路を突破する間に終わらせたんですか?」

 

 勝負が決したところに追い討ちをかけるように残るC&Cのメンバーも合流する。思ったよりも早く迷路を突破されたことにトキは驚きを隠せない。

 

「飛鳥馬さん。悪いな。俺は空を飛べるからあの程度の迷路は何の意味もない」

「浩介の炎は自由に動くんだな。ルート案内まで出来るとは……」

 

 浩介が手から炎を出しながら近づく。炎は浩介の術式で"COME ON"と形作っており、自由自在に動かせることを見せつける。

 どのみちトキは詰んでいたのだ。最悪ネルが勝てなくても迷路を実質的に無効化されたとあればいずれ負けるのはトキである。ネル、アスナ、アカネ、浩介に囲まれ、上からはカリンが狙う地獄の盤面の完成である。

 

 だがここはリオが作った要塞都市。地の利ならトキにある。

 

「ん?今更AMAS?」

 

 トキを救うためなのか現れたのは大量のAMAS。C&Cと浩介からすれば大したこともない相手である。

 

 プシュー。

 

 そんなことは百も承知。この場面でAMASがやることはネル達を倒すことではない。トキを逃すことだけだ。

 

「スモーク!?」

「げほっ!ちょっと!?炊き過ぎじゃない?」

「くそっ!上からじゃ何も見えない」

 

 少しでも隙が出来ればいい。トキが脱出するために必要な時間さえ稼げればそれでいいのだ。

 

「ありがとうございます!リオ会長!!」

 

 トキはすかさず鎖を破壊して一直線に走り出す。このまま戦ってもトキに勝機はない。勝つために一時撤退を選択する。

 

 

 

 その目的は──、

 

 

 

 

「リオ会長、アビ・エシュフの使用許可を」

『……いいわ。本当は王女との戦闘に取っておきたかったけど貴女がその前に負けたら意味がない。全力で迎え撃ちなさい」

「イエス、マム」

 

 

 奥の手を解禁するためである。




ネルを盛りに盛った結果トキが可哀想なことになりました

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