The Last of Us 〜 plus One   作:wakaba1890

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旅の始まり。

ある日。世界は一変した。

 

新種の菌類がインドネシアで発見され、世界保健機関が公式にパンデミック認定した際には、既に感染は世界に拡大しており、資本家も労働者も、政治家も、有名人も皆平等にキノコ頭の化け物になった。

 

だが、幸い、幸か不幸か、政府の中枢を構成する政治家や官僚は真っ先に化け物になり、各国の核保有国に共通する核ミサイルの発射システムは、機械的に凍結され、北半球が死の大地になることはなかった。

 

それでも、歴史を辿れば幾分マシであった文化的で秩序の取れた社会は、まるで初めからなかったかのように崩壊してしまった。

 

今では辛うじて機能している政府組織と、ファイアフライと言われるテロリス。西海岸にあるとされるワシントン解放戦線と言われる民兵組織や、カルテル崩れの組織が混沌のアメリカ大陸にて陽気に踊っている。

 

ちなみに、俺がいるのは政府組織が管理する、そこそこの安全が担保された隔離エリアに住んでいて、意外にもここでは油と銃、薬、食料、電力の安定供給が実現している。

 

そして、俺は毎日、裏でコソコソと点滴の精製、薬や漢方薬の調合、怪我人の手当て、酒の醸造、エンジンパーツの精製とか色々とやっていて、案外毎日楽しく過ごしている。

 

とはいえ、正直言って、人類はどの道滅ぶであろうと思う。

 

コミュニティーの自壊か、他勢力からの侵略戦争か、はたまた急激に進化した感染者に食い尽くされるかはわからないが、ほぼ確定的であろう。

 

やはり、俺が10歳まで居た日本ならともかく、アメリカにおける人々の分断や、溝は根深い。

 

とても人々が分かり合って平和に暮らすというのは考えにくく、どのみち争い合って滅ぶ国なのは変わらなかった。

 

はぁ...もうこっちの方が長くなってしまったが、出来ることなら....

 

 

日本に帰りたい.....

 

 

ーーーーー ps. arata shidou

 

丁度、日課の日記を書き終えた新太は、止まったきりの腕時計をした白人の男に急かされていた。

 

「ーー・・おい、書き終わったか?早く、荷物の確認をしてくれ。」

 

「ちょっと、そんな急かさなくても」

 

「構わない、今終わった。さてと...」

 

バディらしき隣の女が嗜めており、それを傍目に新太は早速ジェラルミンケースの中身を確認した。

 

「....確認した。いつもありがとな...これ漢方薬と、新しいやつだけどワイン。」

 

「あぁ...また何かあったら言ってくれ。じゃあな」

 

「あぁ。」

 

彼らは薬の精製に必要な物資や外の物をよく持ってきてくれ、その見返りとして、副作用の少ない薬、良質な酒、改造銃などを取引している。

 

そして、今のところ依頼の成功率は80%に近く、気づけば10年近い付き合いになる。

 

「...今度、お茶でもいかがしら?」

 

「おい、行くぞ。」

 

隣の女はもう少し弾んで欲しいらしく、個人的に頼もうとしていたが、白人の男が食い気味に連れて行ってしまった。

 

 

 

 

いつものように、地下のシェルターでなんちゃってポテトチップスを食べながら、パンデミックが起きる前に運よくインストールしてあった世界的なアニメを鑑賞していた。

 

「ーー・・やっぱ、強えな。ブロンリー....」

 

ドンドンっ!!

 

この世界にそぐわないのんびりとした時間を過ごしていた彼だったが、突然ドアが叩かれ、タレットが無効化されたのを察し、すぐさま隠し通路から逃げようとしたが、その声の主は見知った人だった。

 

「新太っ!!」

 

「あぁ....って、誰その女。は?....子供?」

 

その声がわかったところで急いでドアを解除すると、脇腹から出血している黒人の女を支えたテスと、気まずそうに目を逸らしているジョエルと、15歳くらいの女の子が居た。

 

「あー、話は後。とにかく治療を!」

 

「わかった。」

 

事情はよくわからないが、緊急なのは違いないためすぐに治療にあたる中、テスは子供と言われて抗議していた女の子と一緒に俺のポテチを食べていた。

 

 

 

 

「ーー・・とりあえず、傷の縫合と止血剤は行った。しばらくは点滴で安静だ。」

 

「...本当にありがとう。あなたは命の恩人よ。」

 

「...あぁ。」

 

黒人の女から感謝の言葉は貰うが、それよりも諸々説明しろ。とテスに視線を送った。

 

「あー....彼女はファイアフライのメンバーで、この子を議事堂にいるメンバーらの元まで運ばないとならないの。」

 

「...正気か?ジョエル。」

 

前ほど勢いがあるわけではないが、そもそも、今の世界における問題の本質を見失っているテロリストに加担するのは理解できなかった。そして、弟の件もあって真っ先に拒否しそうなジョエルに話を振った。

 

「....あぁ、じゃないとコンテナ一個分の武器が戻ってこない。」

 

「確認したのか?」

 

「まだだが、こいつに請求しないとだろ。」

 

「それもそうか。」

 

この世界では、銃は薬に並ぶほど貴重なもので絶対的な物であり、コンテナ一個分の銃があれば10年は飯に困らない。

 

まぁ、それまで生きてればの話だが。

 

そして、そんなことよりも新太の中で一つ引っかかっていた事があった。

 

「それよりも....その子は何なんだ?」

 

そう、ポテチを貪りながらいつの間にかアニメを見ながら、くつろぎ始めた15歳の女の子であった。

 

「はははっ..何これあり得なーい....え?」

 

いきなり話の対象が自分に映ったその子は年相応の幼さで、キョトンとしていた。

 

「....そういえば、そうね。この際だから聞かせてもらおうかしら。マーリン」

 

運び屋の彼らは基本的に依頼主の荷物に関与せず、知らぬ存ぜぬではあるが、今回のはコンテナ一個分の銃と弾に女の子をそう遠くない議事堂まで運ぶというのは、あまりに破格であった。

 

「....わかったわ・・ーー」

 

おそらく、眼が眩む報酬をちらつかせて、なぁなぁに勢いで依頼を通そうとしたマーリンであったが、命を救ってくれた手前話す他なかった。

 

彼女の話を要約すると、その子改めエリーは免疫を持っているらしく少し前に噛まれた所、一切の感染者特有の症状を発症をしていないらしい。

 

そして、抗体をもった彼女をとりあえずは、ファイアフライ本隊が居る議事堂まで運んで欲しいと。

 

「ーー・・おい、冗談だろ?やめだ。テス行くぞ。」

 

何度もその手の話に踊らされてきたため、ジョエルは真っ先に話を切り上げ帰ろうとした。

 

「少し待って、ジョエル。」フイッ

 

「っ!....スゥ...」

 

意外にも神妙に話を聞いていたテスは彼を引き留め、何を言うでもなくエリーにパッチテストをしている新太の方へと視線を流した。

ピッ

 

「...確かに感染してる。失礼。」

 

陽性と映し出された画面を照らし合わせながら、新太はエリーが噛まれた腕を触診した。

 

「んっ..」

 

聴診器を首にかけていたため、なんとなく医師であることを察していたエリーは大人しく対応していた。

 

「....噛まれたのは?」

 

「3週間前。」

 

「...差異はないな。確度は高い。」

 

曇りのない彼の診断に、彼の経歴を知りきっているジョエルとテスは呆気に取られていた。

 

「おい、冗談だろ...」

 

「嘘....」

 

ここ20年一人たりとも現れることのなかった抗体者が、まさに目の前にいた。

 

「ふぅ...わかったでしょ...私たちは本気よ。」

 

一旦は状況が伝わったマーリンは少し息を吐いて、ファイアフライが本気で世界を救おうとしている事を表明した。

 

「....ジョエル。どうする?」

 

「いや、しかし...」

 

議事堂まで行くのは彼らからすればそう難しくないが、彼には他に断る理由がありそうだった。

 

「...私たち今まで沢山ひどいことをしてきた。」

 

「それは、生き残る...」

 

彼の言う通り、生き残るのに善悪などなかった。

 

「少しは、良い事をすべきじゃない?」

 

「....議事堂までなんだろうな?」

 

どこかテスには甘いジョエルは長いための末、改めてマーリンに確認した。

 

「...えぇ、保障する。」

 

 

 

結局、依頼を受けたジョエルら一行は隔離地域外を闊歩していた。

 

「ーー・・なぁ、なんでアラタまで来たんだ?」

 

ジョエルは自然な流れでついてきていた、彼に今更ながらに聞いた。

 

「あー、エリーの経過を見たくてね。今は発症しなくても、これからはわからないだろう?」

 

「....確かにな。」

 

確かに抗体があるのではなく、ただ単に発症が遅いだけと言うのも一理あり、ジョエルは訝しそうにエリーを見ていた。

 

「ちょっと、脅かさないでくれる?」

 

「怖いこと言わないでよ...」

 

短い間とはいえ突然発症して襲いかかってくるのを想像して、テスと張本人のエリーまで嫌そうにしていた。

 

「まぁ、ないだろうけどな.......多分。」

 

「そこはないって言い切ってよ」

 

「ないことを証明できないだろ?」

 

「...あー、確かに。」

 

「悪魔の証明ってやつだ。」

 

「悪魔?何それ」

 

「....ったく、聖書も読まないのか...」

 

見かねたジョエルは思わずそう呟いた。

 

「軍では読まなかったよ。」

 

エリーがいた軍の学校は肉体以上に過酷そうであり、ここが既にディストピアである事を実感した。

 

「それより、アラタはファイアフライに合流する気?」

 

「あー、場合による。」

 

ファイアフライ自体、昔とは少し違いそうなため、あまり過激でなければついて行くのもありではあった。

 

「それは困るわね...いっそ、一緒について行く?ジョエル」

 

ジョエルやテスにとって、10年来の彼からの依頼報酬はこの世界では唯一になりつつあったため、いっそのこと彼について行くのもありであった。

 

「....まぁ、場合によるな。」

 

「あ、逃げたわね。」

 

重大な決断を後に持ち越しがちなジョエルは、逃げるように応対した。

 

 

 

 

高層ビル群を抜け、感染者が近寄れない建物の屋上を伝いながら夜明けを迎えたところ、意外にも武闘派のアラタをパフォーマンスを見ていたエリーは、解放されたように興奮気味に彼ににじり寄っていた。

 

「ーー・・すっごいよ!アラタっ!!あんなのどうやって?!スパッって、スパスパって!!」

 

「あ、あぁ。」

 

なかなか褒め慣れていない彼は、反応に困っていた。

 

「相変わらず凄いわね。さすが、本当に重要なものは自ら調達するだけあるわね。」

 

「...アラタはサムライだからな。」

 

彼の経歴を知っているジョエルたちは、ある種ステレオ的な日本人へのイメージのお陰か、彼のイカれた刀捌きにどこか納得していた。

 

「サムライ?あー、コミックで見たことある!ほんとなの?!」

 

「....まぁ、間違いではないな。」

 

実際、10歳までではあるが剣の稽古を一通り受けており、アメリカに来てからも稽古は続けていた。

 

「すごーいっ!今度教えてよ!!」

 

「まぁ、そのうちな。」

 

「やったーっ!」

 

できもしない約束ではあったが、それでもエリーは嬉しそうだった。

 

「ふふっ....」

 

「...ついたぞ、あそこが議事堂だ。」

 

もう久しく見ない無邪気な子供を微笑ましそうに眺めているテスを傍に、ジョエルは長いようで短かった依頼の終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

ここで終わるはずだった仕事が完遂されることは、叶わなかった。

 

「ーー・・ジーザス。くそっ!」

 

やけに感情を露わにしているジョエルは、その辺の箱を蹴り飛ばしていた。

 

「...これは、彼女の想定内かしら...」

 

仮に身請け人に不都合があっても、外に精通している運び屋のジョエルたちであれば遂行してくれる。とマーリンがそこまで想定しているようにも考えられた。

 

「....物資は漁られてない。弾痕は数日前...群衆の感染者にやられたな。」

 

死体の損傷の仕方と、状況証拠からある程度の推測がついていた。

「群衆の感染者?」

 

「あぁ、奴らは太陽の光を求めて動く。規則的な太陽の満ち欠けは感染者の群を形成する。諸説あるがな。」

 

「ふーん。変なの」

 

聞いた割にはそこまで興味なさそうな、エリーはおもむろに物資の中身を漁っていた。

 

「...テス。引き返すか?まだ軍にも見つかってないし、行きよりは安全だろ。」

 

子供は気まぐれなものだと知っていた彼は、切り替えてこの先の事をテスに相談した。

 

「....いえ、行きましょう。」

 

「了解。」

 

少し考える仕草をした彼女は前へ進むことを決断し、エリーの経過を観察したい彼も同意であった。

 

「おい、冗談だろ?テス。」

 

しかし、対照的にはじめっから乗り気でなかったジョエルはまたもやゴネそうであった。

 

「....私は本気よ。ジョエル。この先、私たちはいつ死んでもおかしくないわ。」

 

「.....それは...はぁ...」

 

ジョエルは何かいいタゲではあったが、静かにテスの言葉に耳を傾けていた。

 

「コンテナ一個分の銃を売り捌いて、しばらくの食い扶持を稼いだところで、結局何が残るのよ。」

 

「....スゥ....」

 

彼女の言い分の最もであった。

 

実際こうなる前の世界でも、一財産築いて一生働かなくて良くなるのは一見最高にも見えるが、それ自体が人生を豊かにするわけでも、何かの役にたつ訳でもなく、ただ残る時間を消費するだけであった。

 

「目の前に、正しさがあるなら行うべきよ。」

 

「....ふぅ...わかった。ただ、やばくなったら引き返す。いいな?」

 

ジョエルがキリスト教徒かどうかはわからないが、聖書であるような一文を突きつけられた彼は、前よりも幾分すんなりと受け入れてくれた。

 

「えぇ、勿論よ。」

 

その様子を見たテスはどこか嬉しそうだった。

 

「...嫌なら帰ればいいのに、変なの。」

 

そして、その夫婦漫才を見ていたエリーは痛い正論を呟いていた。

 

「....一人で帰るのが嫌だったんだろ。」

 

アラタはボソリとエリーにそう耳打ちすると、おそらく聞こえていたジョエルはしばらく程、不機嫌になってしまった。

 

 

 




アラタ・シドウ 出身:日本。見た目は、侍ヘアーの早川アキみたいな感じです。
現在、35歳。183cm 83kg
10歳で渡米。飛び級で医学博士を14歳の頃に取得したが、その年に交通事故で両親が他界。
15歳の時に、パンデミックが発生。
フィジカルギフテッドなお陰で、20年間難なく生き残り今に至る。
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