深緑の魔女   作:紅椿_

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第10話:疑わしきは罰せず

「エバンズ」

「マクゴナガル先生。おはようございます」

 

 マクゴナガルの低いヒールが石畳を慌ただしく叩いて、朝食を大広間で摂っていたカトレアの目の前で止まった。

 彼女は常と変わらず黒いローブを身にまとい、白髪混じりの髪をぴっちりと引っ詰めていた。 

 しかしその顔は常よりもずっと疲れているように見えた。

 

「今、少々よろしいですか?」

「ええ、構いません」

 

 マクゴナガルは口を引き結び、カトレアが食後のデザートに食べようと取っていたフルーツをオリビアに渡すのを見ていた。

 オリビアはそれを当然のように受け取り、皿からオレンジを1切れつまみながらカトレアを見送った。 

 マクゴナガルに連れられてきたのは大広間の脇にある、新入生が時間まで待機するための部屋。

たった3ヶ月前に入ったばかりである部屋は以前と変わらず、ただ伽藍とした冷たい空気で満ちている。

 先導するように前を歩いていたマクゴナガルは部屋の扉が閉まるなりカトレアに向き直った。

 

「貴女、何をしたのですか」

「なんの話でしょうか」

「ピーブスです」

 

 珍しいことに、マクゴナガルはカトレアを前に冷静さが保てていないようだった。

 それも仕方の無いことかもしれない。

 今朝方、人気のない場所でピーブスが変わり果てた姿で見つかったのだから。

 別に死んでいた訳ではない。

 ピーブスは人とも、死を拒んだゴーストとも異なる存在で、混沌から生まれた存在だ。

 混沌の存在であるピーブスにはそもそも生も死も存在しない。

 見つけたのは偶然通りかかったゴーストだった。

 縄でぐるぐる巻きにされて宙吊りにされていたピーブスは口や鼻に刺激物を詰め込まれ、顔を真っ赤に腫らして顔中から出るものが全て出ていた。

 見つけてしまったゴーストは絹を割くような悲鳴をあげ、急ぎダンブルドアの元へ行ったのだという。

 今までに見たこともないようなマクゴナガルの様子に、カトレアは動じることも無く凪いだ海のように穏やかであった。

 

「貴女がやったのではないのですか」

 

 容疑をかけられているというのに、カトレアは怒りも、慌てもしなかった。

 ピーブスは混沌の存在であるが故に干渉しにくい存在だ。

 高度な魔法コントロールと混沌と現を繋ぐ想像力がなければ出来ぬ芸当だが、マクゴナガルはカトレアにであればそれは可能だと考えていた。

 そして、彼女ならやりかねないとも思っていた。

 この、いずれダンブルドアにも匹敵するであろう苛烈なグリフィンドールの少女なら。

 マクゴナガルは努めて冷静にカトレアに問いかけていた。

 

「残念ですが、私ではありません」

「しかし、」

「マクゴナガル先生。証拠は、あるのですか?」

 

 カトレアの薄い唇がゆったりと言の葉を紡ぐ。

 マクゴナガルの一字に結ばれていた口が引き攣った。

 それは正しく、昨晩のダンブルドアへの意趣返しであった。

 疑わしきは罰せずと言ったダンブルドアはこの件でカトレアを罰することは出来ない。

 なんせあの場には証言してくれる絵画もなく、人もゴーストも怪しげな人影を見た者はいなかったからだ。

 そのうえ、例えカトレアがやったとピーブスが言ったとしても、だからなんだと言うのだ。

 1度目を覚ましたソフィアはピーブスに花瓶で殴られたと証言したというのに、ダンブルドアは被害者の証言だけでは罰することは出来ないと言ったのだから。

 何よりピーブスの話を信じる者がこの城に存在するわけが無い。

 ピーブスに煮え湯を飲まされている生徒は多い。

 例え万が一にもカトレア達の姿を見ていたとしても、8割以上はソフィアに同情して味方をしてくれるであろう。

 まあ、そんなことはあるわけが無いのだが。

 

「疑わしきは罰せず、ですよね。」

 

 皮肉にも、カトレアは常と変わらぬ笑みに見えた。

 それはカトレアと親しく、常に彼女を見ている者でなければ分からない歪な笑みであった。

 当然、マクゴナガルはその僅かな歪さに気付くことはない。

 カトレアは怒っているのだ。

 元凶は当然ピーブスだ。

 しかしソフィアよりもピーブスを守る姿勢を見せたダンブルドアも許しはしない。

 カトレアはダンブルドアが嫌いだ。

 今後起こりうるあの悲劇も含めて許せないが、世界のためにたった一人を切り捨てるその姿勢が大嫌いだ。

 ダンブルドアは立派なグリフィンドール生であったはずだ。

 騎士道精神を大切にし、何かが起きた時には友と袖を分かつとしても善を選んだ。

 しかし、今や彼はこの素晴らしい学校の校長先生様である。

 どれほど崇高な信念を抱いていようと、どれだけ素晴らしい魔法使いであろうとも、愛する妹を殺しうる存在に、カトレアは決して心を許すことは無い。

 ダンブルドアが世界のために愛を犠牲にするのならば、カトレアは愛のために世界を天秤に乗せて何方も勝ち取ってみせようでは無いか。

 

「エバンズ…」

「ソフィアの様子を見てから授業へ向かうので、私はこれで失礼いたします。まだ用があるようでしたら昼になさってください」

 

 その深緑の瞳はあまりにも透き通っていて、まるで目の前のマクゴナガルすらも、何もかもを映さぬ硝子玉のようであった。

 カトレアはプラチナブロンドの髪を翻し、部屋にマクゴナガルを残したまま颯爽と去って行った。

 

 カトレアが大広間に戻れば、オリビアはグレープフルーツジュースを飲みながらカトレアを待っていた。

 先程まで盛りに盛られていたはずの目の前の皿はもうすっかり空になっていて、本当にカトレアを待つためだけにジュースを飲んでいたらしい。

 大広間にはもう数人ばかりの姿しかなく、大多数の生徒は既に教室へ向かっているようだ。

 

「どうだった?」

「今朝方にピーブスが悲惨な状態で見つかったらしいわ。縛られた状態で鼻と口に刺激物を入れられたらしくて、未だに話すのもままならないそうよ」

「それはそれは、ざまあみろ」

 

 オリビアは堂々と笑った。

 高笑いが広い大広間に響いた。

 1歩間違えれば悪役にも見えるほど、悪意に満ちていて、それでいて清々しい嘲笑だった。

 幾つかの視線が此方を向いたが、声の発生源がオリビアだとわかるとせっせと口の中に食べ物を詰め込む作業へ戻っていった。

 

「さ、ソフィアの様子見てから授業行こ」

 

 ソフィアはいつから戻ってこれるかな〜と呟きながらオリビアは席を立つ。

 まるで昨日の怒りなどさっぱり無くなったかのように心が晴れやかだ。

 なんせあのピーブスの怯えた顔!

 刺激物に悶える声!

 やめてくれと懇願する態度!

 今にもスキップしだしそうなオリビアだが、後ろを歩くカトレアを置いていくことは無い。

 

 当然、昨夜のピーブスに刺激物を与えたのはカトレアとオリビアである。

 縄でぐるぐる巻きにしたピーブスを前にカトレアはローブからさも尊い物でも見せつけるようにブツを取り出した。

 杖を持った反対の手にはブート・ジョロキア×2が大人しく収まっている。

 毒々しいほど真っ赤な瓶に髑髏のマークが浮き上がっている。

 

「なんでブート・ジョロキア?」

「なんでって、それは勿論、鼻と口に詰めるのよ」

 

 さも当然かのように、天使のような顔でとんでもない事を言い放った。

 ピーブスはますます激しく暴れ回る。

 暴れ回れば暴れ回るほど際限なく縄は締まっていくので、普段のピーブスの姿は見る影もない。

 瓶の中で間抜けに浮かんでいるピクルスの方がまだまともな様相をしている。

 どうしてローブの中にブート・ジョロキアを2本も入れているんだといった疑問はあるが、今はそんな事はどうでもいい。

 オリビアは手を伸ばしてカトレアからブート・ジョロキアをひと瓶受け取った。

 

「なんか、楽しそうかも」

 

 それは正しく悪魔の笑みであった。

 某超生物を暗殺する漫画に登場するキャラクターのように、黒い2本の角と先の尖った尻尾の幻覚が見えないこともない。

 ピーブスがどれだけ泣いて許しを乞おうと、刺激に咽び泣き悲鳴をあげようとも、助けが来ることはない。

 改良した人避けの呪文によってこの場には魔法使いもゴーストも足を踏み入れることは叶わない。

 それどころか、本来であれば2年後に入学する彼らが開発したであろう耳塞ぎの呪文まで使っているのだから。

 

「天誅〜」

「ジャパンには因果応報といった諺もあるそうよ」

「うーん、天誅の方が響きが好き」

 

 オリビアは横に並んだカトレアに向けて手を挙げた。

 カトレアはそれに呼応するようにオリビアの上げられた手に自身の手を重ねた。

 音が鳴るわけでもなく、ただ形だけのハイタッチだったが、それでいいのだ。

 カトレア達の間に派手なものは必要ない。

 ただあるのは確かな信用と信頼だ。

 そのまま重ねられた手を指を絡めて握る。

 オリビアはご機嫌にゆらゆらと握った手を振って歩く。

 

「カトレアって、ジャパン好きだね」

「ええ、好きよ」

 

 例え今世がイギリス人であろうと、前世の記憶が消えるわけでもない。

 イギリスと日本、どちらが良い国かと聞かれれば、カトレアは日本だと即答するだろう。

 これは愛国心云々といった話では無い。

 だって、あんなにご飯が美味しい国が他にあるだろうか。

 イギリスと日本のご飯の差を身をもって知っている身としては、残念だがイギリスが日本に勝つことは無い。

 食を重視する日本人の魂は健在である。

 

「いつか、ジャパンに行きたいわ」

「いいね!休暇か卒業後にでも行こ!ジャパンだけじゃなくて、アメリカとか、エジプトとかも!」

 

 オリビアは既に行く気満々のようだ。

 確か、マグルの子供達は親の手伝いやアルバイトをして自分が自由に使えるお金を算出するのだったか。

 西園寺椿だった頃からアルバイトなどしたことがないため、真実は分からないが、一般的な子供はそうしていると聞いたことがある。

 ただ、カトレア達は魔法使いだ。

 魔法使いはアルバイトをするのだろうか。

 否、しないのだろう。

 作中で最も貧乏であったであろうウィーズリー家ですらも、誰一人としてアルバイトをしていない。

 する必要がないというか、そもそも何処の店もアルバイトなど必要としていないのだろう。

 彼等には便利な魔法があるのだから。

 

「少なくとも5年生までは無理ね」

「え、どうして?」

「親同伴の旅行でもいいけれど、それにしても私たちが魔法を使えるに越したことはないでしょう」

 

 魔法界は17歳が成人だ。

 成人するまでは学校や私有地以外での魔法の使用は禁止されており、使用した場合は個人個人に着いているにおいによって全て魔法省に検知される。

 故にホグワーツや私有地、成人して責任能力のある魔法使いの傍以外で魔法を使うことはしない方がいい。

 最悪の場合、ホグワーツを退学になるから。

 

「あー、そうか。保護者がいないと外じゃ魔法使っちゃいけないもんね。外での魔法使用で退学にはなりたくないわ」

 

 しかし、カトレアの家は両親ともにマグルだ。

 ソフィアの家は純血なので両親ともに魔法使いだと思うが、家庭環境があまりよろしくないと睨んでいる。

 オリビアの家ですらも母親しか魔女はいないのだ。

 

「あとは、お金の問題ね」

 

 エバンズ家は決して貧乏だという訳ではない。

 3人の娘を自由に育てられる程度には貯蓄がある。

 両親がお金のことで悩む素振りや出し惜しむ素振りすらも見たことがない。

 カトレアが旅行に行きたいと言えば両親は喜んでお金を出してくれるだろう。

 

「あまり両親に迷惑をかけたくないのよ」

「それなら魔法省に魔法を売ってはどうだい?」

 

 いつの間にか教室の前に着いていたようで、アシェルが石積みの壁に背を預けてカトレア達を待っていた。

 オリビアは考え無しに待っていたり話しかけてくるアシェルに眉間に皺を寄せたが、まさかアシェルが考え無しなわけが無い。

 

「目眩しの術をかけていたから心配無用だよ。彼らは諦めて教室の中さ」

 

 オリビアが噛み付く前にアシェルは弁解してみせた。

 今頃アシェルの取り巻き達は慌てていることだろう。

 そろそろ諦めた方が賢明だと思うが、そうもいかないのが純血貴族の悲しい性なのだろうか。

 

「それで、魔法省に魔法を売るというのは?」

「それも含めて後で話をしよう。今日の変身術の授業のあと、あの部屋で会おう」

 

 ⚡︎ ⚡︎ ⚡︎

 

 図書館の奥の奥。

 禁書の棚に接する、1番奥の左側の棚。

 下から5段目の1番右には他の本とは違う、木でできた本が収まっている。

 それは本棚から抜けることはなく、オブジェのようにただそこに佇んでいた。

 周囲に人が居ないことを確認し、杖をサッと1振り。

 人避けの魔法(改)である。

 禁書の棚に触れないように魔法をかけるのは一苦労だが、これは仕方の無いことだ。

 禁書の棚はその名の通り禁書が並ぶ場所であるので、教員のサインがなければ入ることは叶わない。

 悪知恵を働かせて入る者がいないよう、グリンゴッツのように侵入者対策がされているのだ。

 図書館の中は魔法の使用が原則禁止であるし、禁書の棚に魔法が触れると警報が鳴るのだ。

 カトレアは木の本の隣の本を2.3冊抜き、木の本を抜くのではなく持ち上げた。

 カコンと軽い音を立てて持ち上がった木の本にカトレアは息を吹き込むように囁く。

 

「真理を求め、知識を糧に、果てしない議論をいざこの手に収めん」 

 

 木の本が収められている棚が動き出し、人1人分通れるほどの通路を作り出した。

 

「ここは?」

「ホグワーツの創設者が1人、ロウェナ・レイブンクローが遺した部屋よ」

 

 ぽかんと口を開けて呆けるオリビアの手を引いてカトレアは通路を通る。

 吹き抜け状になった部屋には外の天気を反映するかのようにどんよりとした雲をすり抜けたほのかな陽が差し込んでいた。

 2人が通れば、通路はひとりでに閉まる。

 

「こんにちは、アシェル」

「ああ、こんにちは」

 

 アシェルは既にソファに座って本を読んでいた。

 傍らには小皿に盛られたクッキーと、白地に金の模様のティーカップがソーサーに収まっていた。

 真白な陶器には白湯気のたつ黄金色の泉が佇んでいる。

 

「貴方も持ってきていたのね。私達も貰ってきちゃったわ」

 

 机の上に全く同じバスケットが2つ並ぶ。

 カトレア達は厨房によって飲み物と軽食をもらってきたのだが、それはアシェルも同様であったようだ。

 アシェルは本から顔を上げ、栞を挟むとパタンと閉じた。

 

「食べ物は幾らあっても構わないだろう」

「ふふ、そうね。アシェル、紅茶を淹れていただけるかしら」

 

 誰とは言わないが、お腹の容量がブラックホールに等しい人がいるのだから。

 アシェルは鋭いオリビアの視線をスルーして席から立ち、カトレアとオリビアの分の紅茶を入れ始めた。

 オリビアはその様子をジッと見ていた。

 

「魔法、使わないんだ」

「魔法は便利だが、僕は自分の手で淹れる紅茶が好きだ」

 

 紅茶は専門外の為詳しくないが、そんなオリビアからしてもアシェルの所作はとても慣れているように思えた。

 まさか聖28一族筆頭のフォーリー家次期当主に紅茶を淹れさせるのなんてカトレアぐらいだろう。 

 どこか落ち着かない様子でソファに座っているオリビアと違い、カトレアは慣れたように棚に並ぶ本を見繕っている。

 アシェルが紅茶を茶器に淹れる頃には、カトレアも本を数冊持ってソファに座った。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

「…ありがと」

 

 カトレアとオリビアは目の前にサーブされた紅茶に揃って手を伸ばす。

 アッサムの心地良い香りが鼻腔を通って体中に染み渡る。

 カトレアが杖を振れば、2つのバスケットからサンドウィッチ等の軽食やクッキー等のお菓子が踊るように飛び出してくる。

 それらはまるでお行儀の良いバレリーナの様に机の上に綺麗に並んだ。

 ブラックホールに挑む準備は満タンだ。

 

「カトレア。昨夜ピーブスに刺激物を詰め込んだのは君かい?」

「ええ、そうよ。オリビアと2人でね」

「ちょ、ちょっと言っていいの!?」

 

 カトレアとアシェルは紅茶を飲みながら、まるで昨日の天気の話でもするかのように話していた。

 カトレアは何時もの様に微笑んでいるだけだし、アシェルの無表情など言うまでもない。

 しかしカトレアはアシェルのその色鮮やかなアースアイが愉快気に嗤っているのを知っていた。

 

「アシェルに隠そうとしても無駄だもの。それに、彼は私達が何をしようと気にしないわ」

「流石に鼻と口にブート・ジョロキアを詰め込むのは驚いたけどね」

 

 アシェルはわざとらしく肩を竦めた。

 今朝、丁度カトレアがマクゴナガルに呼び出されていたころ。

 アシェルも同様にスリザリンの寮官であるスラグホーンに呼び出されていたのだ。

 とはいえ、当然アシェルは容疑者として呼ばれたわけではない。

 

「僕の魔眼は魔法を見ることができる。魔法の痕跡は1日程度は残るし、カトレアのような魔力も多く質のいい魔法使いの魔法なら殊更。それに、いつ何時でも精霊はヒトを視ている」

 

 昨夜のは、彼らも楽しんでいたみたいだよ、なんてアシェルは嗤った。

 自然的な存在であれど、彼らには心も体もある。

 彼らは美しく純粋な存在を好むが、俗的なものが嫌いなわけでもない。

 なにより好きな人がやることは何でも応援したくなるし、よっぽどのことでなければやることなすこと全て好意的に映るのだ。

 

「ダンブルドアにも、何か知らないかと聞かれたよ」

 

 ダンブルドアに魔眼の詳細を話した覚えはないが、あの校長のことだ、何処からか聞き及んでいるのだろう。

 朝から嫌なものを見た。

 あの無駄にキラキラとした青白い目。

 まさかかの校長先生様が生徒に開心術をかけるとは。

 弾かれることも織り込み済みで、それでも彼はアシェルに開心術をかけたのだろう。

 

「ピーブスの事は不問にした癖に、私達の事は疑うのかよ。まさか言ってないでしょうね」

「僕はダンブルドアが嫌いでね。なんでもかんでも反抗したくなるんだ」

「あら、反抗期ね」

「そうさ、反抗期だ。彼のような老人と違って、僕はまだまだ子供だからね」

 

 3人は嗤った。

 ダンブルドアはわかっているだろう。

 ピーブスに刺激物を詰め込んだのはカトレアとオリビアだということに。

 それでも彼は2人を罰することは出来ない。

 “疑わしきは罰せず"と彼が言ったのだから。 

 

「と、まあ僕からの報告はこんなもので。本題に入ろう」

「魔法省に魔法を売ると言っていた事よね」 

「ああ、そうさ。とはいえただ言葉の通りなのだけどね」

 

 オリビアは先ほどから軽食やお菓子を食べる手が止まらない。

 止まらないが、これでも聞いている。

 アシェルとカトレアにとっては本題だが、オリビアにとってはさして重要ではないのだから。

 

「魔法そのものでお金を稼ぐには2つ方法がある」

 

 アシェルは指を2本立てた。

 ひとつはアシェルがカトレアに勧めているとおり、魔法省に創作の魔法を売ること。

 もうひとつは個人で創作の魔法をまとめ、本を出版すること。

 

「僕のオススメは当然前者だね。魔法省に売るということは、日々様々な魔法に触れている者が創られた魔法を実際に使用して安全や使用感を確認する。その分最低限のラインも求められるが、認められれば魔法省お墨付きになる。定期的に使用料も入ってくる」

「後者はそのラインに達せられない者が進むのね」

「その通り。魔法省の認可を受けない分好きにできるけれど、当然本が売れなければお金は入ってこないどころか赤字もあり得る」

 

 君なら難なく魔法省の認可を受けれるさ。

 なんて言いながらアシェルは冷めてしまった紅茶に杖を振って温めなおしてから口をつけた。

 魔法は便利なものだ。

 ほとんどの魔法使いは自身が魔法使いであることに誇りを持っているし、魔法が身の回りにある生活を当たり前のように享受している。

 その裏には魔法を創造する者が必ずいる。

 彼らがいなければ魔法使いは魔法使い足りえない。

 

「改良の魔法でも新しい魔法でも、便利で使いやすいものであれば高額で買ってくれるよ」

「そうね、前向きに検討してみるわ」

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