寮対抗クィディッチの終盤も近づき、クリスマスも目前となった頃。
肌寒い風が雪を伴って舞い、どんよりと曇った寒空の下で生徒たちもマフラーに顔を埋めている。
大広間にはハグリッドが運んできたモミの木が魔法で飾り付けられている。
グリフィンドール寮の自室にて。
カトレアはドレッサーの前に座り、いつもはおろしている腰まであるプラチナブロンドの髪を編込んでいる。
長く艶やかな髪を器用に纏めあげ、ピンを幾つか挿して固定する。
そうしてドレッサーの鏡に映る自身の顔を見、少し迷って赤と金の髪飾りを着ける。
赤と金がイメージの寮に入ったと知った母から入学祝いで貰った物だ。
普段は化粧をせずとも完成された顔にはうっすらキラキラとした色が乗っている。
最後に紅を唇に引けば完成。
「どうかしら」
振り返って意見を仰いだのは当然同室のオリビアとソフィアで、彼女らもカトレアと同様におめかししている。
ソフィアは漆黒の布地に袖に刺繍が入っているローブを着、オリビアは内側に星空を溶かし込んだようなローブを着ている。
「完璧だよ」
「超綺麗!」
「2人も素敵だわ」
カトレア達は3人とも、スラグホーンのクリスマスパーティーに招かれているのだ。
事の発端は、そう、カトレア達がスラグホーンのお気に入りとして認定されていることだ。
スラグホーンは血やら寮での差別をしない代わりに、将来性などでの贔屓をすることが有名である。
対して、自身の関心の的となり得ない相手、華やかさを感じない相手には侮蔑こそしないが、声をかけなかったり、名前を覚えないといった対応をすることも有名である。
魔法薬学が得意で少々特殊な生まれのソフィア、マクゴナガルが狂喜乱舞するほどの箒の腕前を持つオリビア。
そして魔法薬学は勿論、全ての科目でもアシェルと共にトップを張り合うカトレアは当然のようにスラグホーンにとって一等のお気に入りなのだ。
授業終わりに贔屓を隠すでもなく堂々と招待状を渡してきたスラグホーンに呆れはしたものの、カトレア達に特に断る理由はない。
故にこうして少々めかしこんでいるのだ。
「じゃあ、また後で」
カトレアはドレッサーにかけてあった裏地に銀の刺繍が施されたローブを羽織り、ひらりと手を振って一足先に部屋を出る。
久方振りに髪を纏め上げたので首の後ろが少々寂しい。
常に髪を下ろし、ほぼメイクもしないカトレアがおめかしをしているからか、視線を感じる。
クリスマスパーティーはパートナーと来ることを勧められている。
オリビアはレオを誘い、ソフィアはスラグ・クラブのレイブンクローの3年生に誘われ。
カトレアは、アシェルとである。
カトレアは約束の時間である18時に、待ち合わせ場所の玄関ホールのモミの木の下へ向かった。
モミの木はクリスマス用に飾り付けられ、オーナメントやてっぺんには大きな星が輝いている。
アシェルは既に来ており、片手に本を持って時間を潰しているようである。
いつもは下ろされている髪が片側かき上げられている為、なんだか見慣れない。
その周りには大勢の女子生徒_大半がスリザリン生_がうろついており、カトレアがアシェルに近づけば恨みがましく睨まれた。
当然だが、アシェルはとてもモテる。
血筋も、容姿も、才能も、文句なしの100点満点。
そのうえ大抵の純血貴族が幼少期から決められている許嫁もいない。
才能あふれるアシェルがスラグホーンのクリスマスパーティーに呼ばれることは当然のこと。
彼女たちはアシェルが自分をパートナーに選ぶのを望んでいたのだ。
彼が自分をパートナーに選んだのなら、絶大な権威も、周囲からの羨望の眼差しも、一族の安泰ですらも、全てが手に入る。
だから純血の者や、それに追随する半純血の者は、親などにどうにかアシェル・フォーリーの心を射止めてこいとまで言われている始末。
それだけアシェルの、フォーリー家の力は絶大なのだ。
そんな彼が選んだのはマグル生まれの女なのだから、恨めしく思わない筈がない。
他人の僻み以上にどうでも良いものは無いが。
「ごめんなさい、待たせてしまったかしら」
「いや、僕も今来たばかりだ。時間丁度だよ」
差し出された手に、周囲から黄色い悲鳴が聞こえた。
アシェルのエスコートを受けた者など、この世に片手ほどしかいないだろう。
というものの、パートナー必須のパーティではアシェルは必ず彼の親戚筋のカメリアという少女をパートナーにするからだ。
カメリアはアシェルとお揃いの白銀の髪の毛と、空色の瞳を持つ美少女。
彼女たちが喉から手が出る程羨む、深窓の令嬢だ。
アシェルのパートナーの立場を許せていたのは、カメリアがフォーリーの分家であり、滅多に世間に姿を現さないほどの病弱だからだ。
それなのにマグル生まれの女が横から掻っ攫っていくだなんて、純血の淑女達がハンカチを噛み締める音が聞こえてきそうだ。
カトレアは差し出された手の上にそっと手を乗せた。
今気づいたが、アシェルの漆黒のローブには透かしのような、近くで見なければ分からない刺繍が施されている。
アシェルも、カトレアも、周囲の視線などは気にしない。
パートナーとしてパーティに行くということは周囲に恋人だと受け取られても仕方のない事だが、別にお付き合いだとか恋慕の情を抱いている訳ではない。
ただ、カトレアもアシェルもパートナーを探すのが面倒くさかっただけの話なのだ。
なんせ、アシェルは上記の通りであるし、カトレアも血筋を気にしない人にとってはとても魅力的な女性なのだ。
パートナーを探す素振りを見せれば、砂糖に群がる蟻のようにあっという間に惹かれた者が集まってくるのだから。
カトレアとアシェルは友人であり、このパートナーは互いにwin winの関係である。
「今日のパーティ、誰が招待されていると思う?」
「ホグワーツの生徒以外でっていうことよね」
「そう。…賭けようか」
どちらが一方が当たっていたら相手に一ガリオン。
金を賭けた賭博だが、これはただの戯れ。
渡せばクリスマスか誕生日のプレゼントが豪華になるだけだし、渡さなくとも誰も気にしない。
「珍しいわね」
「たまには良いだろう。僕はそうだな…魔法大臣なんてどうだ?」
「貴方が言うと洒落にならないわね。なら私は日刊預言者新聞の編集長だなんてどうかしら」
確か前回の晩餐会でスラグホーンが自慢していたはずだ。
それで言うとアシェルが言った魔法大臣も散々話題に出ているのだが。
⚡︎ ⚡︎ ⚡︎
クリスマスパーティーの会場であるスラグホーンの部屋からは笑い声や音楽、賑やかな話し声が響き漏れ聞こえていた。
エメラルドや紅、金色の煌びやかなひだ飾りで優美に覆われ、まるで参加者全員が大きなテントの中にいるようだった。
天井の中央から凝った装飾を施した金色のランプが下がり、中には妖精がきらびやかな光を放ちながらパタパタ飛び回っている。
「妖精と精霊の違いは分かるかい?」
「精霊は自然から生まれる神聖なもので、妖精は魔法生物ね」
「その通り。精霊と妖精は、サラマンダーと火蜥蜴ぐらいの差がある」
混み合った部屋に足を踏み入れるや否や、まるで二人を待ち伏せしていたかのようにスラグホーンの太い声が響いた。
人込みを掻き分け、スラグホーンはカトレア達の元へやってきた。
「これはこれは、アシェルにカトレアではないか!」
「「こんばんは、スラグホーン先生」」
「ほっほう!相変わらずの仲良しさん達だね。なぁにいや、仲睦まじいのはとても良い事さ!」
うんうん、と全てを分かったように頷くスラグホーンに、カトレアは彼が自分と友人との関係をどう思っているのかを知った気がした。
「さあ、さあ、こっちに来なさい。君達に是非とも引き合わせたい人物が大勢いる!」
アシェルの腕をがっちりと掴み、カトレアの肩を優しく、それでいて決して離れない様にしっかりと抱いたスラグホーンが二人をパーティーの真っ只中へと導く。
スラグホーンは二人に日刊預言者新聞の編集長や高難易度の魔法薬学の教科書の著者などを次々と紹介した。
大抵の人はかのフォーリー家の嫡男に驚くふりをし、それと同時にアシェルと並ぶマグル生まれの魔女の存在に実際に驚いていた様だった。
スラグホーンの紹介は留まることを知らない。
カトレア達に招待客を紹介し、招待客にカトレア達を紹介する。
その流れを何度繰り返しただろうか。
振りまく笑顔も、大きな手に包まれる握手も、もうたくさんだ。
魔法大臣の秘書を務めている男の紹介が終わった時、カトレアは人混みの中に高く結われたチョコレートブラウンの髪を見つけた。
「友人を見つけたので、私たちはこれで失礼します」
まだ紹介したりなさそうなスラグホーンに一礼をし、アシェルの腕を引いてオリビアの元に向かう。
オリビアは立食パーティをこれでもかと楽しんでいた。
皿の上には山ほど料理が盛られ、それを1口食べるごとにとても幸せそうな顔をするのだ。
近くにレオの姿が無いが、何かを取りにでも行っているのか。
まさかレオに限ってオリビアを置いて帰ったなんていう訳がない。
「はぁい、オリビア」
「ん、」
カトレアが声を掛けた時、オリビアはちょうどミンスパイにかぶりついたところだった。
掌サイズのミンスパイが三日月を形作る。
「あら、ごめんなさい。ゆっくり食べてちょうだい」
カトレアは足元を動き回る屋敷しもべ妖精からグラスを二つすくい上げ、片方をアシェルに渡す。
パーティーに参加してから漸く、初めて口にするものだった。
「乾杯」
「乾杯」
カチンとグラスをぶつける音が煩雑なパーティー会場に小さく鳴った。
砂漠のように渇いた喉に水分を流し込む。
薄黄色のそれはパチパチと炭酸を弾かせる。
ほんのり甘い、スッキリとしたレモネードだ。
パーティーの料理は自分で盛ることもできるし、オススメの料理が一通り盛られた皿も用意されていた。
カトレアはその既に料理が盛られている皿を取り、アシェルもそれに倣った。
「で、漸く逃げ出せたんだ」
ミンスパイを飲み込んだオリビアが何処か疲れた様子の二人を見て肩をすくめる。
カトレアもアシェルも多少の疲労が出るタイプの人間ではない。
寧ろ疲れているときこそ気丈に、いつも通りに振舞おうとするタイプだ。
オリビアだからわかる違いだとも言えるが、オリビア如きに察されるほどわかりやすい2人ではない。
「もう当分は遠慮したいわね」
「私だったらまっぴらごめんだね」
「まぁ酷い。薄情ね」
そんな掛け合いをしていると、両手にグラスを持ったレオが戻って来る。
別の飲み物を取りに少し遠くの屋敷しもべ妖精まで行っていたらしい。
グラスは汗をかいていて、氷が少し溶け出している。
「スラッギー爺さんに絡まれちまったぜ。遅くなってごめんな、オリビア。エバンズもフォーリーもお疲れ」
オリビアに片方のグラスを差し出し、レオは余程喉が渇いていたのか持ってきたばかりのグラスを一気に飲み干した。
レオは別段お気に入りという訳ではないが、彼がオリビアと仲が良い_今日はパートナーにすら選ばれている_のを覚えていたらしい。
どうやらカトレアとアシェルがどっかに行ってしまい、招待客の間を練り歩いていたスラグホーンに絡まれたとかなんだとか。
「ソフィアも楽しんでいるみたいね」
4人は華やかな壁の花になりながら談笑する。
カトレアの視線の先にはレイブンクローの3年生と笑っているソフィアの姿があった。
相手の彼は、最初の晩餐会で紹介された記憶がある。
魔法薬学の権威者が親戚にいて、彼自身も魔法薬学を得意としていたはず。
「ねね、まさかコレを機に、なんてことあると思う?」
オリビアが顔を寄せ、コソッと囁く。
聞かれて困る人が近くにいる訳では無いが、恋バナは女子同士の醍醐味だろう。
ガヤガヤと騒がしいこの場でオリビアの言葉を正確に聞き取れたのはきっとカトレアだけだ。
顔を寄せ、そっとソフィアの様子を見守りながら囁き合う。
「ないことはないんじゃないかしら」
「まさかのソフィアが一番乗り!?」
クスクス、クスクス、と笑う。
当然、馬鹿にしている訳では無い。
女というものは総じて恋バナが好きなのだ。
どんな相手だろうと、余程の者でない限りカトレア達はソフィアを肯定し、応援するだろう。
「思ったよりも緊張して無さそうだし、ワンチャンあるかも」
フリーン・ドゥに誘われた時、ソフィアは顔を真っ赤にしていた。
ソフィアは人見知りだ。
異性どころか同性と話すのすら緊張して真っ赤になってしまうし、そもそも自分から話しかけることもできない。
当然男の子にパーティに誘われたことなんて1度だってなかった。
スラグホーンにはパートナーと共にと言われたが、自分から誘うことも出来ないから1人で参加しようと覚悟まで決めていたのだ。
異性に自分から話しかけるぐらいならスラグホーンの期待を裏切って1人でパーティに行った方が遥にマシだから。
カトレアとオリビアは一緒に行こうと言ってくれたが、彼女たちのパートナーは既に決まっていた。
いくらアシェルとレオという知り合いであっても、既に決まっているパートナーに交ぜてもらうのはあまりに非常識ではないか。
フリーンはソフィアの人見知りを知っていて、それでもソフィアと魔法薬学の話がしたいと誘ってくれた。
「もし、ソフィアに彼氏ができたらどうする?」
「どうするって、どうもしないわよ」
「そんなこと言って、アタシらの事なんて放って彼氏とイチャイチャしてるかもしれないじゃん」
許せる?オリビアはニヤッと笑った。
カトレアは困ったように微笑んだ。
そもそもソフィアが友人であるカトレア達よりも彼氏を優先する未来など想像できない。
けれど確かに、今まで一緒に食べていたご飯も、一緒に取り組んでいた課題も、息抜きのピクニックや散歩も、やろうと思えばカトレア達じゃなくてもできる。
カトレア達にできるのは一緒に授業を受けることだけ。
それも同い年で同じグリフィンドールの人ならできる。
ただ、それはあまりにも_
「寂しいわ」
恋の魔力は恐ろしい。
たとえ惚れ薬を盛られていなくても、燃えるような恋というものは相手しか目に入らなくなるものらしい。
友人も、他の異性も、一切興味がなくなって、ただただ相手を求め続ける。
「ま、ソフィアは多分そんなことないけどね」
「…そうね」
「もしそんな事になったら、アタシが頭でも殴って目を覚まさせてやるから安心しなって」
これはオリビアの持論だが、力に勝るものはないのだ。
そして、友に勝る恋もない。
オリビアの拳骨を食らったらソフィアなんて軽々吹っ飛びそうなものだが、それは今は考えないようにしておく。
「オリビア、カトレア、バタービールあったけど飲むか?」
「いる!」
「貰うわ、ありがとう」
レオが貰ってきたバタービールのグラスを受け取り、4人で乾杯する。
グイグイとグラスを呷るオリビアとレオに対して、カトレアとアシェルは泡髭をつけないようそっと傾けている。
「それで、なんの話をしてたんだ?オリビアが誰かを殴るって聞こえたけど」
「ああ、ソフィアの話」
オリビアはお行儀悪く舌で泡髭をなめとった。
それをチラリと見たアシェルは見なかったふりをした。
「あの子、彼氏できたらどうなると思う?」
「そもそもイリングに彼氏ができる想像ができないのだが」
「もしよ、もし!」
相変わらずアシェルにあたりの強いオリビアが睨みつけた。
しかしアシェルはオリビアの事など何処吹く風。
肩を竦めて再びグラスを呷った。
「もしかしたら、今回のパーティをきっかけにソフィアがフリーン・ドゥとお付き合いをするかもしれないでしょう」
「いやいや、展開が早すぎるだろ」
「あら、女の子は早熟なのよ」
まあ、ソフィアの事だからこんなに短期間でのお付き合いなど本当に、よっぽどの事がなければないだろうが。
少なくともカトレアとオリビアへの相談ぐらいはあると信じている。
「あ、あの、アシェル…良かったら一緒に踊ってもらえないかしら」
「「ほらね」」
とても良い具体例が自ら近づいて来てくれた。
スリザリンの1年生の女の子。
あまりアシェルに絡んでいる所を見たことはないが、コレを見るに前から狙っていたのだろう。
アシェルを狙っていないスリザリン生の女の子などあまりいないが。
「申し訳ないが、僕は今日彼女のパートナーで来ている。君と踊るのは彼女にも、君のパートナーにも申し訳ない」
アシェルは彼女に幼い頃からの許嫁がいることを知っていた。
彼女の後ろで仕方なさそうな顔をした男である。
器の大きい男に見られたくてかは知らないが、相手の色ボケを許すな。
だから自身に許嫁がいるのに、相手にも他のパートナーがいるのにダンスに誘うような真似ができるのだ。
アシェルの無表情の裏には、そんなに自分がパートナーを放って許嫁のいる女の子と踊るような見えるのかという侮蔑が見て取れた。
カッと赤くなった女の子がカトレアを睨む。
カトレアは睨んでくる相手の目を真っ直ぐに見つめ、微笑んだ。
「断られたんだからさっさと諦めなさいよ」
カトレアの前に出たオリビアが女の子を見下ろしながら睨んだ。
同じ学年ではあるが、オリビアは同学年にしても背が高く、女の子とは頭1つ分以上の身長差があった。
「…そう」
女の子はギュッと拳を握りしめ、ローブを翻して去っていった。
その後を慌てて許嫁の男が追う。
男が女の尻に敷かれている方が上手くいくらしいが、アレはあまり良くない例だろう。
「わかったでしょ、女は早熟なの」
「ああ、よくわかったよ」
家が主催するパーティでダンスの誘いなどされたことがなかった。
パーティの招待と共にの誘いはあれど、パーティ会場での誘いなど非常識な行為だ。
いつだってアシェルのパートナーはカメリアだから、他の女に入り込む隙は無い。
ただの親族であり恋人でもないカメリアがパートナーであるのは、アシェル自身が選び、アシェルの両親も認めているから。
アシェルの恋人ないし妻の座を狙う女の子たちは、羨ましくとも納得せざるを得ない。
あの女の子も教員が主催のパーティで、マグル生まれがパートナーなら許されるとでも思ったのだろう。
「なんか、一気に疲れた気がする」
「確かに。もう帰る?」
パーティに来てから2時間は経っている。
消灯時間まではまだあるが、今日はもう早く寝たい気分だ。
「じゃあそろそろ帰りましょうか」
「寮まで送っていこう」
「寮の場所を知られたら怒られちゃうわ」
いくらカトレアの友人といえど、アシェルはスリザリン生だ。
犬猿の仲のグリフィンドールとスリザリン。
グリフィンドールの中にはカトレアがアシェルと友人であることをよく思っていない人もいる。
仲を引き裂く要因は少しでも避けるべきだ。
「アタシ達もいるからアンタはそのまま寮に帰ってもらって結構」
「女性を送らない方が怒られそうなのだが…」
だがアシェルもカトレア達が考えていることは理解できる。
もし立場が逆であったのなら。
アシェルは気にしないが、ルシウスや他の面子は深淵に蔓延る闇の様に怒りを燻らせるだろう。
優雅でないから怒鳴ったりしないだけで、怒りの振り幅はきっと同じだ。
偏見のようであるが、その点グリフィンドールは烈火の如く怒り狂うだろう。
「わかった。城の中だから心配はいらないだろうが、何かあったらフクロウを飛ばしてくれ」
よく言えば紳士的。
悪く言えば細かくて心配性だ。
一同はスラグホーンに暇の挨拶を告げ、引き留められながらも振り切って帰路に就く。
「あら、貴女ももう帰るの?」
「うん、また話す約束したんだ」
「へぇ、いいじゃん」
偶然帰路に鉢合わせたソフィアも共に。
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