#1 旅の再開
"ッ…グッ…ハッ……"
ドサッ
"あぁ…(手が消えている…)"
"…終わる……ようやく…俺の旅…が…"
……
「……い。」
「……先生、起きてください。」
「門矢士先生!!」
"…グッ…んん。"
「……。」
"…誰だ…お前?"
「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。」
「なかなか起きないほど熟睡されるとは。」
"熟睡……俺は死んだはずだ。"
「死んだ?…夢でも見られていたようですね。」
「ちゃんと目を覚まして、集中してください。」
"夢だと……?"
「もう一度、あらためて今の状況をお伝えします。」
"今の状況?"
リン「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です。」
"キヴォトス……聞いたことがないな。"
リン「聞いたことがない…ですか…あなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生……のようですが。」
"なぜ疑問形なんだ。"
リン「疑問形でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
"お前も知らないのか……"
”(俺はあの時、奴に倒されたはずだ……あの時、消えていったが…まさかその時にか?)”
リン「…混乱されてますよね。分かります。」
リン「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。」
リン「どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」
”……わかった、ついて行こう。”
リン「ありがとうございます。」
”それで、やってほしい事とは?”
リン「学園都市の命運をかけた大事なこと……ということにしておきましょう。」
"……"
"(どうやらこれはあるみたいだが……カードはかなり無くなっているな。)"
士は、リンの後をついて行き、エレベータに乗り込む。
リン「「キヴォトス」へようこそ。先生。」
リン「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。」
”……すごい景色だ。”カシャ
士は首にかけていたカメラで写真を撮る。
リン「……先生、話を聞いているんですか?」
”ああ、聞いている。 数千の学園があるんだろう、俺はどこの学校の先生なんだ?”
リン「ほぼ全て……と考えてもらいます。」
”……本気でいっているのか?”
リン「……きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……。」
リン「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。」
リン「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね。」
”……連邦生徒会長さんに会ってみたくなったな。”
リン「……」
リン「……それは後でゆっくり説明することにして。」
ガラスが反射して、自分の顔が写る。
”……!”
リン「どうしました?」
”……いや、なんでも。”
”(若返っている……だいたいウィザードと会った時ぐらいか?)”
チーン
ザワザワ……
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「……うん?隣の大人の方は?」
「首席行政官。お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
”……誰だこいつら?”
リン「面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
”……(嫌な顔をしているな。)”
リン「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
リン「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。」
リン「今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために……でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
リン「……」
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
”確かにな、俺にも話したいことがあるんでな。それにしても数週間も姿を見せてないのか?”
リン「……」
リン「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」
”なんだと?”
「……え!?」
「……!!」
「やはりあの噂は……」
リン「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御兼を失った状態です。」
リン「認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
リン「はい。」
リンが士の方を向く。
リン「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
「!?」
「!」
「この方が?」
”俺が……?”
「ちょっと待って。そう言えばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね。」
リン「はい。こちらの門矢士先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……」
”……大体わかった…門矢士だ。”
「ど、どうも、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……」
「い、いや、自己紹介なんて今はどうでもよくて……!」
リン「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」
ユウカ「誰がうるさいって!?わ、私は[[rb:早瀬 ユウカ!覚えておいてください、先生!」
”そうか。”
リン「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
リン「連邦捜査部「シャーレ」。」
リン「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。」
リン「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……」
リン「シャーレの部室はここから約30km離れた外廓地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に「とある物」を持ち込んでいます。」
リン「先生を、そこにお連れしなければなりません。モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
モモカ『シャーレの部室?……ああ、外廓地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
リン「大騒ぎ……?」
モモカ『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。』
”そう言えば、コイツがそんなこと言っていたな。”
リン「……うん?」
モモカ『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡行戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
”戦車に焼野原か……まるで世紀末だな。”
モモカ『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占領しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』
リン「……」
モモカ『まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』
ブツッ
リン「……」プルプル
”大変だな、お前も。”
リン「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」
リン「……」ジー
「……?」
ユウカ「な、なに?どうして私たちを見つめてるの?」
リン「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
ユウカ「……えっ?」
リン「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」
”やれやれ、無責任な連邦生徒会長さんの尻拭いをしてやるか。”
リン「……何です?」
ユウカ「け、結構ハッキリ言うわね……」
リン「連邦生徒会長はそんな……」
”そんな人じゃない……か、お前から見てのそいつはどうかしらんが、こっちはいつの間にか同意も無しにこの場所に連れてこられ、数千の学校の先生を強制的に決められ……まあ、そこは慣れているがな、そいつがするはずだったことを俺に押し付け、当の本人は行方を晦ます……俺から見れば、無責任だと思うんだが?”
リン「……」
”まあ、お前も何も知らされてないみたいだしな、先生はしてやる、案内しろ。”
リン「……はい。」
”行くぞ、お前ら。”
ユウカ「あ、待って!?」
士たちは、リンの後に続く。
ドカアアァァァァン!
ユウカ「な、なに、これ!?」
タタタタタタッ!
ユウカ「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」
”思ってる以上にひどいな。”
「サンクトゥムタワーの制御兼を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから……」
ユウカ「それは聞いたけど……!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が……!」
”……ん?”
銃をユウカに狙って撃とうとする奴が見えた。
”ユウカ!危ない!!”ダッ
ユウカ「え、キャッ!?」
士は瞬時にユウカを抱え、物陰に倒れこむ。
タタタタタタッ!
”大丈夫か!?”
ユウカ「え、あ…大丈夫です/// で、でも、私たちは銃弾を当たっても大丈夫ですけど…」
”なに?”
「はい、私たちは銃弾に当たった程度では痛みを感じますが、致命傷になることはほとんどありません。」
”……そうか”
「皆さん今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。」
「先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です。」
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
ユウカ「わかってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦ってる間は、この安全な場所にいてくださいね!」
”……いや、その必要はない、お前たちは自分の身を守れ。”
士はそう言いながらジャケットの内側から、マゼンタ色をしたベルトのバックルを腰付近に当てる。
すると、ベルトのバックルからベルトが現れ、士の身体に巻かれる。
ハスミ「どういうことですか……?それにそのベルトは……?」
士は、ベルトについているカードケースから、カードを取り出す。
ユウカ「カード……?って先生!物陰から出ちゃダメ……!!」
「な、なんだ……?急に出て来やがって…」
「何か持ってるみたいだが、関係ない……撃て!!」
”……変身!”
DECADE