「突入だっ」
奇襲を掛けた俺達は、楽に攻め込めた。
騎士が押し込み、食事中だった敵を次々と薙ぎ倒した。
俺達は敵軍を飲み込み圧倒していた、まるで建物をさらう洪水のように。
俺も反抗してきた魔族を何人か殺した、角付きの赤膚の魔族相手では人間よりも罪悪感が湧きづらく、むしろ落ち着いて戦うことができた。
戦っているうちに俺達の間には楽勝ムードが流れ、時間を気にしだしたものもいる中、突如大きな声が聞こえた。
「撤退だぁーー!!撤退しろーー!!」
俺達の間に一瞬で緊張感が張り詰めた。
そして白の内部から逃げる騎士たちを蹴散らしながら体格のいい斧を持った右手隻腕の魔族が出てきた。
「ウワァァァアな、なんだってこんな奴がいるんだよ!?」
保険のため兵士たちに混じって何人か配属されていた騎士が泣き言をはいた。
俺はその反応が気になり質問した。
「こ、こいつはなにかやばい……のですか!?」
「馬鹿!お前ぇこいつは旧魔王に仕えていた幹部!大地割りの伝説のドゥランだよぉぉ」
俺達の間に張り巡らされていた緊張感が絶望感へと変わった。
皆逃げ出した、気持ちが追いつかず傍観していたものも、その名を聞いた途端一目散に逃げ出した。
それもそうだ、魔王軍の中でも随一の武闘派で有名だった男だ、自分も名前は聞いたことがある。
「何しているんだ!お前も逃げろ!」
騎士の男が叫んだ
「ですが聖剣は回収できたんですか!?」
「できたわけねぇだろ!あんな奴がいたら!」
俺も騎士の男も味方とともに撤退した、逃げ遅れたものは鎧ごと真っ二つに切られていた。
門から出た俺はまず馬車を目指した、そして到着することは出来たが後ろにはまだ何十人もの兵士や騎士たちがいた。
殺される兵士達を見て、過去の体験がフラッシュバックした。
「俺は……俺はあいつらを逃がしに行きます」
俺はあの人を思い出していた。
「何を言っているんだ!何をするつもりだ!」
「戦うに決まってるじゃないですか」
「無茶だ、抵抗した奴らはバッサリいかれた、一撃でな、お前もそうなる」
騎士が俺を心配してくれた。周りの兵士にも聞こえているようでやめておけ、
という声がそこかしこで聞こえた。
「倒そうってわけじゃありません、攻撃をよけて時間を稼ぐだけです、安心してください大体が馬車に乗ったら俺も逃げます」
無謀だと理解していた、だが俺は聖剣の権利にも選ばれなかった、その上こんな所で逃げるようでは、本当の意味で勇者にはなれないと思った。
「行ってきます!!」
俺は急いで砦の門をくぐりなおしドゥランのもとへ走った、逃げる兵士たちは俺を何度も呼び止めたが、俺の意思は硬かった。
そして俺はドゥランと相対した。
「若き者よ……逆に向かってくるとは無謀なのか勇敢なのか」
俺に対して
俺は時間稼ぎのためにも言い返した。
「勇敢に決まっているだろう、俺は……勇者を目指して──」
言い終わる間もなくドゥランは斧を俺の胴体に振ってきた。
しかしこれも想定していた、わざわざ俺の話を長々聞くわけないと思っていたからだ。
振られた斧を俺はしゃがみこんで躱した。
(やった……躱せた……!)
だが次の瞬間、俺はドゥランの蹴りが俺の脇腹に食い込んだ。
「ううあっ」
「どうやらまだ無謀だったな、若い者」
「いぃや……違ァう!」
俺は…持っていた剣をドゥランの首に突き刺したが……
「ば……バカな……」
剣は貫き通すことなく折れてしまった。
動揺した俺は……かろうじて斧を避けることが出来たが、今度の蹴りは避けられなかった。
まともに食らった俺は砦の方向に吹き飛ばされてしまった。
飛ばされている途中に何人かの悲鳴が聞こえた。
蹴っ飛ばされた俺は……満身創痍になってしまっていた。
「け……剣が……クソッ!!」
ドゥランは一瞬こちらを追撃しようとする姿勢をみせたが、すぐに撤退する兵士を追うようにした。
俺は不覚にもそれを見て一瞬ほっとしてしまった。
(!?……馬鹿か……俺は……勇者に……なるんだろ……この程度で折れるな……!何か……武器はないのか…?)
俺はあたりを探すと装飾を施された大剣を見つけた。
怪我のせいか、異常に重く感じた。
「よし……実戦には向かなそうだが……ひとまずこれで戦える……!」
もはや回避して時間稼ぎという選択肢はなかった、砦の方にいるのだ、逃げた先にドゥランが立っている、
もはや戦う以外なかった。
俺は立ち上がり、急いでドゥランの方へ急いで向かった、武器を見つけたおかげか、勇気も力も湧いてきた。
そして最後尾の兵士たちを襲おうとしていたドゥランに俺は叫んだ。
「待てぇ!ドゥラン!俺と戦え!」
「お前にはもう……… ………!!
そのときはもう大剣に重みは感じなかった。それどころかまるで羽のように軽く感じた。
向かってきたドゥランは一直線に俺に向かって斧を振り下ろす。
(振り下ろしなら予測しやすい……!ここだ!)
振り下ろされた斧は足元の石畳を無いかのように切り裂いた。
回避することはできたが流石はあのドゥラン、すぐさま次の攻撃に移ってくる。
俺は内側に踏み込んで回避し──
「喰らえぇっ!」
ドゥランの右肩から左脇にかけて袈裟に切った。
「!!ぐぅあああああ おあ あ あ あ あぁ!!」
よほど痛いのかあのドゥランが大きく悲鳴を上げた。
「や……やはりか……ぐぅっおおおっ!」
そしてドゥランは俺に向けて力いっぱいに薙ぎ払ってきた、俺は思わず剣でガードしようもしてしまった。
先ほど鎧ごと真っ二つにされた仲間の姿が思い浮かぶ。
しかし……
ズパッ
俺ではなくドゥランの斧がガードした剣によって切り裂かれていた。
「な、なんて切れ味だ……この剣」
「わ、ワシの斧がぁっ……!」
あからさまにドゥランは動揺していた。
(今しかない!)
そう思った俺は力いっぱい大剣をドゥランの首元めがけて振り下ろした!
剣はドゥランのガードした腕を落としついに首に刃が届いた。
「あがっがががががぁぁ!!」
「落ちろおおおお!!」
ザンッ
「ま……またひと……り……せい……!」
ドゥランの首が落ち地面に転がった、死に際に何か呟いたがすぐに体も、頭も物言わぬ死体になった。
続くよ!