勇者と聖剣(仮)   作:バク・ハンマー少佐

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part3 仲間ともう一人

ドゥランを倒した俺は、勝利の歓喜に打ち震えて雄叫びを上げた。

 

「しゃあああーーっ!!」

 

そのあと冷静になってどう帰ろうかという時、声が聞こえてきた。

 

「おぉーい!坊主ゥーー!!」

 

振り向くと先程の騎士と、空の馬車があった。

俺は驚愕して

 

「騎士さん!なぜまだここに!?みんなと一緒に撤退したんじゃ……」

 

それを聞いた騎士は清々しいほどキッパリと言い放った。

 

「逃げたよ!もちろん!」

 

その答えを聞いて俺は()()()が頭に浮かんだ。

 

「ど、どういうことですか……?」 

 

「いやぁお前があっさりやられたのを見た時には、もうみんなと一緒に逃げたんだがな、その後お前がまた戦っているのが遠目に見えたんだよ、優勢だったように見えたから戻ってきたんだ」

 

「ああ……そうですか」

 

信じて待っていたとか、そんなロマンチックな理由を期待していたが、世の中そんなことそうそうないか。

話をしていると騎士が俺の持っている剣に気づいたようだ。

 

「ん?あれっその剣……あれ?おまえ、持てるのか?」

 

「ええ……俺はよく鍛えてありますからね、こんな大剣でも全然大丈夫ですよ」

 

「い、いやそ、そ、その剣、せ……せ……」

 

急に騎士がどもった、よくよく見ると剣には宝石や美しい金の装飾が施されておりもしや観賞用の高価な剣でも振ってしまったのかとおもった。

 

「?、なんですって?」

 

「せ、聖剣だ……持ってる……勇者しか……持てないはずなのに」

 

「え?」

 

その言葉を聞いて俺は困惑したが、状況を理解してくると……嬉しさがこみ上げてきた。

 

「持ってる?俺が……せ、聖剣を?ちょ……」

 

俺もあの人のようになれるのか?ゆ、勇者になれるのか?

いろんな考えが巡って……

 

「いや……ちょ、え?つまぁりおれ……」

 

「……えあ……つま……り……うん?………??」

 

俺も騎士もあまりの衝撃にろれつが回らない。

しばらくそんな状態が続いたあと騎士が動揺しながらもなんとか口を開いた。

流石は騎士である。

 

「と、とりあえずお前は王に会う義務がある……なんだってあの、いやこの聖剣を持って、振ることができたんだからな。さ、さぁ、乗れ」

 

「ああ……はい……」

 

俺はもう……上の空で、いわれるがまま荷車に乗った。

あのドゥランに打ち勝ち聖剣に選ばれた……もう夢のようだった。

俺が荷車に乗り込むと騎士も御者台にのり来んだ。

 

「よし行くぞ、荷車にはお前一人だから……寝ててもいいぞ。」

 

「あ、はい」

 

「どう!どう!」

 

騎士が合図をすると馬車は移動し始めた、自分ひとりしかいない馬車は揺れも少なく快適だ。

すっかり落ち着きを取り戻した騎士は話を続けた。

 

「俺は軍の上層部に報告しておくよ、まぁ……明日か明後日には通達が来るだろ、あと聖剣は一時的にこっちで預からせて貰う、国のものだからな」

 

「…………わかりました、どうぞ」

 

せっかくもった聖剣を手放すのは少しさみしいがしかたない。

 

「ほらよ、回復のポーションだ、コレでも飲んで傷を癒しな。

遠慮はいらんぞダチに魔術師がいるからな、格安で売ってくれるのさ」

 

ポーションの飲むと体が少し楽になった。

味はとても上等とは言えなかったが。

自分も友人に魔術師がいるが高価なポーションを安く売ってくれるのは有り難いものだ。

 

「そういえば坊主、名前は?勇者になるかもしれないんだ、今のうちに聞かなきゃ新聞に名前が載ってもわからんからな」 

 

ここで自分がまだ自己紹介していないことに気づく。

 

「ジャックです、ジャック・リアス」

 

「そうか、ちなみに俺はジョン・マイン、今更だがなジャック」

 

「はい、ジョンさん」

 

そうしてしばらく雑談しながら移動していると王都についた。

門に入ろうとした時、門番が呼び止めてきた。

 

「そこの2人!お前はさっきの奴らとはぐれたのか!?聖剣は回収したようだが」

 

「ちがう、この坊主を返すために遅れてたんだ。

驚けよ、こいつあの聖剣に選ばれたんだ」

 

「……冗談だろう?ジョン」

 

門番はこちらをじっと見た、他の門番もこちらが気になっているようだ。

そりゃあそうだが……

 

「ホントだよ、ほら振るところを見せてやれ」

 

俺は軽々と聖剣を振ってみせた。

門番は目をぎょっと見開き、周りの門番もざわざわし始めた。

 

「ほぁっ……え?え?」

 

門番は言葉にならないという感じだ。

自分たちとあまりにも同じ反応だったので少し笑いがこみ上げてきたが、失礼なので我慢した。

 

「俺はこれから城に行って報告するからからお前は寮にでも帰っておけ、満身創痍だからゆっくり休めよ」

 

「わかりました、送ってくれてありがとうございます」

 

そして俺は馬車から降りて寮に向かった。

帰る途中騎士ジョーと門番が色々話しているのが見えた。

 

俺は寮に帰宅してベッドに吸い込まれるように入った、体がビシビシ痛かったのと疲労もあってまだ日も沈んでいないのに熟睡してしまった。

 

「ああ……布団が……しみる……」

 

翌日──

 

小鳥のさえずりを聞いて俺は気持ちよくベッドから起床した。

 

「ふわ〜〜あ、よく寝た……今日は休みか……」

 

起きた俺は早速朝食を取ることにした。

体もまだガタガタだった。

 

(……疲労回復のスープを作るか)

 

そして俺は薬草棚からいくつかの薬草を取り出して調合する。

 

(やはり薬草学は使えるな……あっ入れすぎた……母数を増やせば問題ないだろう)

 

そして俺は水を……目分量で済ませてしまった。

なぜだ?寝ぼけていたのか?

当然まともなものが出来上がるわけがない。

 

(な……なんだこの苦さは……あの地獄のサバイバル訓練で食べた幼虫以上だ、なんで草を混ぜただけなのにこんなものができるんだ)

 

だがこれが逆に効くだろうと思い出来た分をすべて飲み干した。

 

(スープ以外に作れそうなものがないな……市場に行こう)

 

俺はさっと着替え寮を出るといきなり同期の兵士達に話しかけられた。

 

「お前スゲェな!あのドゥランを倒すなんてよ!しかも聖剣まで持ったんだって!?」

 

あの馬車の上で話した男もいる。

 

「ああ全くだ!助けてくれてありがとよぉ!抱きしめたい気分だぜ!」

 

実際人に感謝されるのがこんなにむず痒いとは思いもしなかった。

 

「ああ、どうも、どうも、あぁ通してくれ、通してくれ!」

 

なんとかして人混みをくぐり抜けた俺は早速市場にむけて歩いた。

 

(フルおばさんのとこにパンでも買いに行くか)

 

いつもの変わらず朝の市場は人でいっぱいだった

 

「おおジャック…噂は聞いてるよ、聖剣を持ったんだって?すごいじゃないかい」

 

「やめてくれよおばさん、小っ恥ずかしい」

 

「へへへ……記念のこのパンをあげるよ、家でゆっくり食いな」

 

「いいのか!?ありがとうおばさん」

 

(次は……教会で施しを受けよう、そうすればこの体も治るだろう)

 

俺は早速教会に向かった。

あまり気乗りはしないが……

 

「すいません、回復の施しを受けたいのです」

 

「えぇよろしいでしょう、よろしいですよええもちろん、フフフ……ではこちらへどうぞどうぞ」

 

なぜ聖職者ってのはみんな胡散臭い喋り方なんだ?

毎回変なことされないか心配になってしまう。

 

「どうですか?ぐあいは?施しは終わりましたよ、終わりましたともええ、ではお代を頂戴いたしますよ……ウフフフッ」

 

コイツラは国民からの税金で生活してくる上に利用すると金も取ってくる、せめて無償にしてほしい……

だが効果が本物だからたちが悪い。

 

俺は一旦ベンチでさっきのパンを食べる。

 

(ん?あれ?うおっマジかよ)

 

パンの中にはレーズンがはいっていた。

 

(お、おばさん、パンと気持ちは嬉しいけどレーズンはクソだよ、でもおばさんは悪くないな、うん。レーズンが嫌いと言わなかった俺が悪いんだ。おばさんの気持ちに免じて食べてやろうレーズンよ)

 

そうして俺はレーズンパンをなんとか完食すると夜食の調達もかねて趣味の釣りに行った。

釣果はもう……何も言うまい。

 

俺は結局夜ご飯は市場のベーコンサンドで済ませて寝ることにした。

 

次の日も昨日と同じように俺の周りに次々に兵士が集まってきて困っていると……

 

「ジャアック!こっちだ」

 

騎士のジョンが豪華な馬車を携えて、大通りに立っていた。

 

「ほら、乗れ快適だぞ。お前らは散れっほらっ」

 

馬車はふかふかのソファ付きでとても心地よかった、そうしてジョンが馬を走らせると、話を始めた。

 

「ちょっと聞いてくれ、今から任命の式典と王への謁見のハズだったんだが……面倒なことになった」

 

「なんですか?」

 

「ブラン家がいるだろう、貴族の。そこの次女が勇者候補でな、納得いかないと言い出して面倒なことになった。ブラン家といえば前の戦争で大きな戦果を上げた一族だ、発言権はトップクラス」

 

なんだか嫌な予感がした。

 

「……それで?」

 

「そのブラン家の次女、アリシア・ブランとお前どちらが勇者にふさわしいか決めることになった。

任務でな」

 

「しかし……俺は聖剣を扱えました、その次女は…?」

 

「もちろん使えん、がブラン家の現当主に言わせれば『聖剣が使えるかどうかは些細な問題だ、敵に勝てる心と力があればそれは勇者』……らしい、もうメチャクチャだろ?」

 

「はあ……」

 

そう話していると王城についた。

 

「よし、俺が案内してやる、こっちだジャック」

 

そして俺はジョンに案内された。

城はずいぶん豪華な作りであらゆる所に金や宝石が散りばめられていた、床、壁、天井に至るまで。

王族というものはいつもこんな所に住んでいるのか?

 

そして王の前に付いた。

横には例のブラン家の次女であろう自分と同じくらいの年の女性がひざまづいていた

あまり学がない俺でも王の前での所作は知っていたのですかさず膝まづいた。

ひざまづいた俺は王の横の将軍から話を受けた。

 

「第3兵士群、207期生、ジャック・リアス、敵大将ドゥランの撃破、見事であった。」

 

そこからはジョンに聞いた話と概ね同じだった。

 

「というわけで貴殿とアリシア・ブラン殿には任務をどちらが早く解決できるか競ってもらう!」

 

将軍はそう言うとスクロールを取り出して話し始めた。

 

「ゴコウ砦より連絡があった、山賊が夜な夜な荷物を略奪し、戦闘した兵士は殺されているらしい、貴殿にはこれを解決してもらいたい。」

 

それを聞いた俺は思ったより拍子抜けだなと思った。

まあ自分は新米……よこの彼女も若いのでそんなものかと考えた。

将軍は話を続けた。

 

もしアリシア殿が、先に解決した場合は君に勇者の称号を与えるのを先に見送ることになる、よいか?」

 

「はいっ!」

 

それを聞いた将軍は威厳たっぷりに言った。

 

「では去るがよい」

 

将軍がそう言うとジョンが付いて来いと言ったのでそのまま外に出ていった。

結局王は口を開かなかった、声を一度聞いてみたかったが。

 

外に出ると例の次女が話しかけて来た。

 

「あーよろしく、ジャック・リアス私はアリシア・ブラン。聖剣に選ばれたとは、すごいじゃないか!」

 

「こちらこそ、よろしく」

 

そう言うと彼女が手を差し出してきたので、強く握手すると少し微笑んだ。

そしてこう続けた

 

「だが勇者になるのは私だ、ブラン家の威信にかけてな」

 

そういう彼女の顔はまだ微笑んだままだったが、強い使命感を帯びた顔をしていた。

そして御者であろう男が彼女を呼んだ。

 

「では私は失礼する、これから賊共を殲滅しなければいけないのでな、君も急いだほうがいいぞ、いくら聖剣を持っていたとしてもな」

 

そう言うと馬車に乗って去っていった。

そして次に自分に話しかけてきたのはジョンだった。

 

「よしジャック、お前に紹介……というわけではないが伝えることがある」

 

「え?」

 

かしこまった態度をジョンが取ったので自分は若干緊張した、い、一体何が?

 

「預かってた聖剣を返す」

 

………それを言われると何だそんなことか、と安心したが

 

「あとお前の御者兼魔術兵に選ばれたマーク・クロフトだ」

 

「えっ」

 

「よう!そういうわけだ、頼むぜぃジャック」

 

あまりにもあっさり流れるように言われたので数秒脳内が停止したあと……

 

「えぇぇーーーーっ!?」

 

やっと口に出すことができた。

マジかよ。

 

────ゴコウ砦付近────

 

「クソ……逃げられんか……なぜ……なぜこんなことに!ゴコウ砦が……陥落するなんて!」

 

 

 

 




続く
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