勇者と聖剣(仮)   作:バク・ハンマー少佐

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part4 謀略

「いやさぁ……いろいろあってそうなっちまった、じゃあこれから頼むぜ()()勇者殿()

 

まさか仮にも最初の仲間がこんな早くきまるとは、いや待て色々おかしい。

 

「な、なぜお前が?本当になぜだ?」

 

「あぁこう見えてもオレは魔術の成績がいいしな!馬車も動かせるしよ、偉い人が最適って判断したんだろうな!ほらほら乗ってくれ、いい荷車だぜ」

 

「いやでも……」 

 

色々おかしいし、突っ込みたい気持ちはあったが上が言うのならなにか理由があるのだと、心に蓋をした。

 

「いやしかし………おお!わかった、今乗る!」

 

俺はやけくそ気味の返事をして荷車に乗り込んだ。

荷車はここに来たときのよりも簡素な作りをしていたが広く、6人くらいは乗り込めそうだったし所々鉄で補強されている。

 

「よし!じゃあ早速出発だ、ジャック、どこにいく?急ぐのもいいがせっかくだし何処かによっていったらどうだ!?久しぶりにトム叔父さんの所にいって牛乳でも飲ませてもらうか?」

 

「んん……いやアリシア達より先に解決しなきゃいけないんだ……ゴコウ砦に頼む……」

 

「おうよ!快適な旅を約束するぜ!」

 

こいつは場が重い時には助かるがこういう時には少し騒がしすぎる……この先大丈夫か心配だ。

そうして馬車は出発を始めた。

ゴコウ砦目指してしばらく移動していると暇になったのかマークが話しかけてきた。

 

「しかしあのゴコウ砦が山賊ごときに手こずるとはなぁ、鉄壁といわれた砦がねぇ、兵士には強いが山賊には弱えぇのか、それとも噂だけなのか」

 

「もしかするとなにか悪いことが起きているかも知れんな」

 

「おいおいあまり不吉な事言うなよ。しかしあのアリシアという人、なかなかいい人だったなジャック!遠くで見てたが中々いいヤツに見えるぜ」

 

「そうだな、当主の血かも知れんな」

 

ブラン家当主のダナム・ブランは歯に衣着せない豪気な性格として有名で、部下の信頼も厚いらしい。

貴族なのに正直な性格は致命的な気もするが……そこは、彼の人徳故なのだろう。

 

「まてよ、お前遠くにいたのになんで性格がわかるんだ?」

 

「そりゃあ魔術よ!“音拾い”を使ったんだ、便利だぜ?これがありゃあゴシップには困らねぇ!上官が女に振られたことだってわかるぜ!」

 

「めちゃくちゃ悪用してるじゃないか……いいのかそれで」

 

またしばらくして今度は俺が暇になったので、マークに気になることを聞いてみた。

 

「そういえば一応は俺の部下ということだが……別にいいのか?」

 

「構わねぇよ、別にお前は上下に厳しいわけじゃねぇしな。何より給料が大幅アップしたんだ、感謝してもしきれねぇよ!」

 

前向きなのか特に何も考えていないのか。

本当によく魔術師になれたなコイツ。

いや昔から色々できたし才能があるのは確かなんだが……

 

「そこに袋があるだろ、パンとかハムとか買って詰めてきたんだ、それでも食って到着を待っててくれよ」

 

そう言われて早速俺は袋の中を物色する。

レーズンがある。

ふざけるな。

 

「お前なぁ、レーズンが入ってるじゃないか!俺の好き嫌い知ってるクセになんで買ってくるんだよ!」

 

「あっ……いやスマン!保存が効くからつい……本当にうっかりだ、だから許してくれ!なっなっなっ待て待て待て指を鳴らすな!」

 

「……………はぁーー……まぁいい」

 

ひとまず許してパンに齧りついた、もしこれがレーズンパンだったらぶん殴っていたところだ。

 

そして砦に近づいたところでおそらくゴコウ砦の兵士だと思われる男達がこちらに近づいてきて喋り始めた。

 

「この先は……山賊もおり危険と判断したゆえ……同行……いたし……ます」

 

やけに生気のない話し方だが、山賊に襲撃されているのでは仕方ないと気に止めなかった。

この時俺は気づかなかった、兵士たちが目立たぬよう直剣を構えていることに。

 

森に入りしばらく移動すると別の馬車が見えてきた。

 

「ん?あれアリシアじゃねぇか?先に行ったはずなのに追いついちまったぞ」

 

近づくと追いついた原因がわかった。

巨大な岩が道を塞いでいたのだ。

 

「どうも、アリシア」

 

「あぁ!ジャック・リアス!見ての通りだこのクs……岩が道を塞いでしまって通れないのだ、押してみたものの少しぐらつくだけでな」

 

なにか物騒な言葉を言いかけた聞こえた気もするが……

それはともかく大岩は3メートルはあろうかという大きさで一人では動かないのも、通れないのも無理はない。

 

「おいおいどうするよ?幸いゴコウ砦は味方側からのアクセスが良いから、回り道って感じでいくか?若干到着は遅くなるけどよ」

 

「そんなことをする必要はない。動かせばいい、だろう?アリシア」

 

同意を求める。

 

「おいおい冗談で言ってんのか?アリシアも何か――」

 

「おおジャック・リアス!そう言ってくれると信じていた!流石は聖剣に選ばれし者!」

 

俺もそう言うと予想していた、流石だ、あのブラン家の次女なだけはある。

そして俺とアリシアは大岩の横に立ってカウントする。

 

「行くぞ、3・2・1せーのっ!」

 

押すと岩は徐々に動き始めた。

 

「し、信じらんねぇ、コイツこんなに力をつけてたのか……」

 

(いや待てよ?なんで兵士はここに岩があることを教えてくれなかったんだ?こんな岩数時間で湧いてくるなんてことありえねぇしな……)

 

道の半分ほど押した所で兵士がよろよろと、剣を持って近づいてきた。

その時、森の方面から何かがマークの前に転がった。

 

「ん?なんだ?これ」

 

マークがまじまじと観察する、何かを詰めた木の容器に見えたそれは次の瞬間大きな音とともに弾けた。

それを聞いた俺はすぐさまマークの方を見ると、濃い煙が広がっており、それはすぐに俺たちの周りを包んだ。

 

「……!この煙何かマズイぞ、マーク!防護魔法を張れ!」

 

しかし煙の発生場所に近かったマークは既に気を失っており魔法を張ることは叶わない。

 

「やはり……毒かなにかか……!もう吸い込んでしまった……どうすればいい!アリシアなん……とかならないか!??」

 

「無理だもう……意識が……朦朧として………………………」

 

俺もアリシアも何もすることが出来ずそのまま眠ってしまった。

 

そして目を覚ましたときには──

 

「起きたかァ、小僧」

 

全身見たこともない鎧に包まれたの騎士が焚き火でスープを煮込んでいてそれをマークが美味そうにがっついていた。

急な状況を理解するために周りを見渡してみるとどうやら、俺だけではなくマークもアリシアも連れてこられたらしく、自分たちは洞窟にいるようだ。

 

「ふぁ……」

 

アリシアも目を覚ました、そして眼の前の騎士をまじまじみると口を開いた。

 

「……もしやその鎧、ゴコウ砦の騎士ミュラー殿では……」

 

「そうだ、よくわかったな」

 

……自分には知らない名前だったが既に起きていたマークが教えてくれた。

 

「知らねぇのも無理はないな、このジイさんが活躍したのは30年位も前の話だからなぁ……スープうまっ」

 

30年!目の前の騎士はよほど高齢なのか。

それよりマークの言い方や行動を見るにこちら側の騎士らしい、眠らされた自分たちを助けてくれたのだろうか。

 

「説明もしていないのに良く知っとるな小僧」

 

「豊富な知識が取り柄なもんでぇ、あんたの話は結構()の間じゃあ有名だぜぇ?リャレー城攻城作戦の総合指揮、アンバル防衛戦での活躍!渋い働きがなかなかウケてるよ」

 

こ、こいつ目上の人間にこの態度とは……

 

「マーク! 言葉を慎めよ」

 

「いやいいんだ、このジイさんに関してはさ」

 

言っている意味がよくわからない。

それにしてもこのミュラーとかいう騎士、なかなかの古強者らしい、しかしそれ程のものが何故こんな洞窟に?

 

「ブラン家の次女……はわかるがお前は誰だ?小僧、名前を言え」

 

「あ、はい自分は――」  

 

「敬語はいらん! 最近のヤツはみんなそうなのか!?    ワシの時代は上官とワシらの立場以外の隔たりはなかった、そもそも貴族の奴等が――」

 

さっきのマークの言葉の意味がわかった。

 

「お、おいジイさん! 話はいいから!」

 

「おおそうだった、名前を」

 

「ジャック・リアスでs……だ」

 

「ほうほうそれはそれは……やはりわからん」

 

「おいジイさん! ジャックは勇者なんだ! 持ってる剣を見てみてくれよ、すげぇぜ!」

 

「んん〜?おおっこれは……聖剣か!? 小僧まさか……お前勇者の器なのか!?」

 

「はい、まだ正確には勇者ではありませんが――」

 

「いらんと言っているのに何故わからんか!」

 

騎士はものすごいドラ声で俺を怒鳴りつけた、なんだか訓練時代の鬼教官を思い出す。

最もあっちでは敬語を切らすと叱ってきたのだが、そのせいで染み付いてしまった。

 

「だが! だがついに聖剣を持つものが現れたか! ウオオオーーッ!」

 

そう言って騎士は天を仰いで……洞窟内だから天は見えないが慟哭した。

 

「このジイさんちょっと感情の振れ幅がでけぇな」

 

慟哭し終わった老人は息を切らしてバテていた。

やはり歴戦の騎士と言っても年は年なのか、しかも急に叫び始める所を見ると少し頭がボケて来ているのかもしれん。

しかし自分たちを救ってくれたのは事実だ。

 

「ミュラーさん、あの煙から助けてくれたのは感謝して……いる、ありがとう」

 

「ん……煙から助けたぁ? そりゃ違うぞ、あの瓦斯(ガス)をまいたのはワシだよ」

 

「えっ」

 

「悪いがあれしか方法が無かった、あのまま助ければ兵士に言いくるめられてしまう」

 

「ま、まて……どういうことです?まるで兵士が敵かのような言い方ですが……」

 

「だから使うなと……ええい! もう良い! そうだ奴らは敵だ!」

 

「あ……ジイさん……もう敵と味方と区別も……」

 

「違うわい! 老骨扱いするんでない! いいか単刀直入に言うぞ、兵士(やつら)は操られとる! そしてゴコウ砦は陥落した! 兵士はワシを残して全滅だっ!」

 

 

 

 

 

 

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