勇者と聖剣(仮)   作:バク・ハンマー少佐

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part6 侵入

「入れて……くれ」

 

口調を真似したオレを門番は特に怪しむ様子もなく、らくらく内部に入ることができた。

中では兵士が動いていたが、口が空いてよだれは垂れ流し、目は虚ろでやはり生気がなく、雑談しているものもいない。

これが元々屈強な兵士たちの姿だと思うと何処か()()ものがある。

 

(確か……この先だったよな?)

 

オレは砦の中央にある城に目を向ける。

 

(一砦の城にしちゃあでけぇな、このてっぺんに黒幕がいるのか。 お、そろそろ見えてきたな、あそこが隠し道の入口……いや出口か? ややこしいな)

 

一人門番が見張っていたがなんの問題ない。

今のオレはこいつ等と同じ兵士ということになっている。

 

「そこ……入れて……くれ」

 

「……だめだ……禁止……」

 

まぁ、断られても大したことはない。

ジイさんからもらった手巾を使えば良いだけのことだ。

まずは周りに兵士がいないか探知で確認する、いない、ならばやる。

 

「あれ……見ろ……」

 

そう言って、振り向いた兵士の後ろに回って顔を手巾で覆う、するとジイさんの言っていたとおり魂を抜かれたように眠りに落ちた。

見張りを排除したオレは早速隠し道の中に侵入する。

 

(隠し道とは言うが倉庫に偽装してるだけで実際あんまり隠れてねぇな。 うわっクモだ、足細いやつ)

 

長らく使われて居ない様子で蜘蛛の巣がいたるところに張っており、虫がたっぷりいた。

それでも気持ち悪いだけマシというものだが。

出口を目指して進む。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「ミュラーさん、この鉄の扉が出口ですか?」

 

「あぁそうだ。魔術小僧がやらかしておらんかったらそろそろ開くはずだが……」  

 

まさにそう話している所で扉が開いた。

 

「うおっ」

 

「オレだよ、オレ!」

 

マークが変化で兵士になっているので一瞬驚いた。

 

良くやった(ブラボー)!よしっお前ら!敵兵の防具には着替えてるな!」

 

バレる可能性があると言っていたとはいえ、確実性を上げることに越したことはないと、剝いだ兵士の防具を俺とアリシアはつけていた。

騎士はなんだか事情があるようで、奇妙な鎧そのままだったが。

 

「手巾は持ったな! いいか! 奴らは操られているだけの味方だ! 殺すんじゃないぞ」

 

「はっ!」

 

そうして俺達は虫だらけの道を進んだ……

もう少し定期的に点検したりしてもいいのではないだろうか。

 

「しかし変化を使っていたとはいえあっさり来れちまったよ。 適当に受け答えしてもまるで俺を疑ったりしねぇ」

 

「そうだろうな、ワシが見た所によると操られた兵士は大幅に脳の機能が低下しておる……認知力や思考力がな」

 

「それほど兵士を戦力として重要視していないのかもしれませんね、あくまで人質ということですか」

 

「……そうだろうな」

 

騎士は不服そうに答えた。

そしてそのうちに扉が見えてくる。

 

「よしそろそろ出口だ……魔術の小僧、出口の近くに敵はいないな?」

 

「ああ、大丈夫だぜぃ」

 

「よしっ突入だっ……ついてこい……」

 

早速入口を目指す。

途中何人か兵士がいたが防具のおかげでうつむきながら進むことで若干怪しまれつつもスルーできた。

やはり感知能力が低下しているようだ。

 

「よし……まずは倉庫で火薬を調達させてもらうとしよう」

 

倉庫の入口を壁越しに覗き込む。

 

「倉庫に見張りが二人ほどいますけど……」

 

「問題あるまい、味方を装って近づいて、眠らせてしまえばよい」

 

「オレもやったなぁ」

 

眠らせるのは簡単にいった、暴れる暇もなく落ちるので苦労もしない。

ここで俺はふと、何故こんな便利なものが世界に広まっていないのかと不思議に思ったが、今考えることではないと忘れることにした。

 

「ン? 鍵がかかってんぞ、探しに行くか?」

 

「そんなことせずともよい、こうやれば……」

  

そうしてアリシアは分厚い木の扉を紙のように引き裂いた。

 

(マジかよ……)  

 

そうして俺達は無事倉庫に入ることが出来た。

 

「これだこれだ……少しまっておけ」

 

騎士は容器を取り出すと乱暴に火薬を持って調合し詰め始めた。

正確に調合しているようだが怒りで手が震えている。

 

「じ、ジイさん、大丈夫か……?」

 

「……おのれぇぇ……今に見ていろぉ……!! クズめ……!」 

 

まるで聞こえていない、

こんな状態を見ると背筋が寒くなる、相当の恨みを持っているのだろう。

 

「よぅし終わったぞ」

 

「よしっじゃあ内部にーーーっ にぃーーーっ!?」

 

「侵入者ァ!! 侵入者ァ!!」

 

マークが倉庫を出た所で遠方にいる兵士に確認されてしまった。

 

「馬鹿野郎ぉ! 探知し忘れたのか!」

 

「は、範囲外……見られるとは」

 

敵襲の叫びに引き寄せられ次々に兵士が集まってくる。

 

「クソが! 面倒なことになってしまった……! 小僧ォ!」

 

「ひーすまねぇ! 本当にすまねぇ!!」

 

アリシアが前に出る。

 

「仕方がない、ここは私に任せてもらおう。殺さずに無力化するのには自信がある」

 

流石にムチャである、集まってきた兵士は20人を超えており、殺さずなんとかするのは不可能に近い。

そして向かってきた兵士をアリシアは――

 

「ぬん!」

 

腕を掴み背負投げ! 鎧をつけたゆうに100キロは超えるであろう兵士を軽々と叩きつけ気絶させた。

次に来た兵士は足を払い、頭を地面に打ちつける。

 

「マーク! お前も何かしろ」

 

「お、オレの魔法は殺傷力が高すぎて使えねぇよ!」

 

アリシアはまさに無双という有り様で、振るわれた剣は横から叩き割り、放たれた矢は空中で掴む、しまいには3人を投げに巻き込み気絶させる。

騎士も格闘術が得意なようで首絞めや投げを使い気絶させていたが、アリシアの速度には及ばない。

 

俺は……頑張ってはみたが恥ずかしいことに戦闘中ではせいぜい4、5人が限界だった。

マークは魔法が使えず役立たずと思われたが、何故か手慣れた手捌きで次々に手巾を兵士の顔に当て気絶させていた。

だがしかし増援が次々に来るせいで、数はまるで減らず、きりがない。

 

「一旦撒くぞ! 小僧どもついてこい!」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

兵士が急いで最上階へ駆け上がる。

 

「プリヴェーヌ…………様! 下の方では只今――」

 

連絡するのはこの事件の黒幕、兵士を洗脳した男は何かを準備していた。

 

「大事な話をするのです! 後にしなさい! わざわざ意識を残してやってるというのにわからないと言うのですか?」

 

「…………はい……すみません、わかりました」

 

そう言うと兵士はその場を去り階段を急いで下った。

希望と喜びの混じった顔を隠しながら。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「“音鳴らし”……だめだ一部の兵士が別れるだけで解決しねぇ」

 

「小僧、貴様が見つかるから……!」

 

「すまねえ、本当にすまねぇと思ってんだよ……!」

 

隙間から兵士が顔を出す。

 

「見づけッ」

 

その瞬間アリシアが壁に兵士の頭をめり込ませた。

 

「し、死んでないなよな?」

 

「力加減を間違えたりはしないさ」

 

「まずい……! どんどん来るぞ」

 

「こっちだ」

 

聞き馴染みのない声が聞こえた、音の先をみると兵士たちと同じ装備をした男が立っていた。

 

「ジェレミー……!?」

 

騎士が驚く。

 

「いいからここに入れっ」

 

俺達は案内された扉から内部に入った。

それを確認したジェレミーなる男が兵士たちに()()をした。

 

「ここは確認した――別を探せ!」

 

「あぁ……わかり……ました……」

 

命令を聞いた兵士たちはすぐに別の場所に行った。

兵士が周りに誰もいなくなった所で男が話し始める。

 

「ミュラー……戻ってきてくれたんだな……! 強力な仲間を連れて……!」

 

「ええ……」

 

思っていた疑問をマークが代表して言ってくれた。

 

「こ、このおじさん誰だよ!?」

 

騎士がらしくないかしこまった口調で紹介を始める。

 

「こ……この方は……この砦の主、ジェレミー侯爵様だ」

 

「ええっ!? 城主も洗脳されたって……」

 

それを聞いた男が事情を教えてくれた。

 

「確かに私は洗脳されていたよ、だがミュラー達が逃げた後、召使いとして解放されたんだ」

 

「そうだったのですか! あなたがゴコウ砦の主……」

 

「と……所でミュラー、敬語を使うのはやめてくれないか、君が使うとなんだか気味が悪く感じるのだ」

 

「いやぁ、仮にも公爵だからな、かしこまらんといけんと思うてな」

 

「お二人は結構付き合いが長いんですか? ずいぶん馴染み深い感じですけど……」 

 

「ミュラーは私の父の代から仕えてくれている教育係でな……主に戦闘の。 家族のようなものだ」

 

「なつかしいわい、今ではあんなハナタレ小僧だったのがこんなに立派になってのぉ……おっと感傷に浸ってる場合ではない、なぜお前が大人しく召使いなどやっておるのだ」

 

「それが……」

 

男爵は悔しさを噛み締めて状況をはなす。

 

「私の……妻子がっ……人質にされているんだ!」

 

「何だとっ……! 卑劣な……人形師野郎めぇ!」

 

話を聞いた騎士が怒りを露わにする、それは城主の妻子が連れ去られたという事象に対して不釣り合いな怒気であった。

 

「私が逆らった時はふたりとも殺すと……砦に連れてきていたばかりに……」

 

「ジェレミー、安心しろ! ワシ達が救い出してやる」

 

「ミュラー……!」

 

侯爵の顔が明るくなる。

 

「妻子はどこにおる?」

 

「地下牢だ」

 

「捕虜収容用の?」

 

「ああ」

 

「いい環境じゃなさそうだし……早めに助けたほうがよさそうだなジイさん」

 

「ああ、任せておけジェレミー、ふたりは必ず解放する!」

 

「ありがとう……それと黒幕を倒しに行くのなら必須なことが一つある、最上階に張られている結界だ。 私は許可されていて通れるが、君たちはそうはいかない」

 

「では……どうすればいいんです?」

 

「別棟にある結界を維持するための魔力岩を破壊すればいい」

 

「了解した、では……ジェレミーお前は来るべき時まで怪しまれないよう待機してくれ」

 

「ああ……」

 

「ではジャック、お前はワシと共に地下牢へ。 魔力岩はマークとブランの次女、それで行く」

 

「意図は?」

 

「“バランスよく”だよ、色々な面でな。 よし……では終わったらここに集合だ、解散っ!」

 

そうして解散した後、俺は騎士に地下牢の方へと案内してもらっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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