勇者と聖剣(仮)   作:バク・ハンマー少佐

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part8 黒幕

 俺たちは最上階に向けて歩みを進め、兵士もあまりおらず順調に上がることができた。

 

「全くと言っていいほど兵士がいませんね、地下牢もにいませんでしたし……」

 

「いや、先程までここにいた形跡がある……おそらくジェレミーが兵士を移動させてくれたんだろう」

 

「侯爵の援護、ということですか」

 

 砦の塔はずいぶん高く、体感で20メートルぐらいはありそうだと感じた。

ミュラーは頂上に近づくにつれて息遣いが荒くなっている、それは老いたことによる体力の低下……()()()()

 

 黒幕に近づきつつあることで逃げ出した自分の無力さと無念、兵士たちが洗脳され黒幕の思うがままに動かされていることに対する怒りが再び大きく燃え上り興奮して息が荒くなっているのだ。

黒幕を見た瞬間飛びかかりそうな状態を見てマークが声をかけた。

 

「ジイさん、今にも飛びかかりそうな感じだがよ……まずは静かに様子を見て、それから奇襲したらどうだ」

 

「……わかった」

 

 騎士はすこし納得いかない様子だったがひとまず了承したようだ、そして最上階へ向かう途中マークが口を開いた。

そして最上階へ向かう途中マークが口を開いた。

 

「おい、何か聞こえないか?」

 

 誰かの声が微かに聞こえる、もしかしてこの事件の黒幕が誰かと話しているのだろうか?

俺達は静かに上に向かい、部屋の扉の前で耳を澄ませた。

 

「ええ〜ええ〜問題ありません、何も起きておりませんよ。 楽なものです、鉄壁という名は贅沢すぎる」

 

『そうか』 

 

 ミュラーは強く歯を食いしばり、悔しさを滲ませた表情で黒幕を見つめている。

 

「では例の約束、守ってもらいますよ。 そのためにわざわざこんな所に来たのですからぁ……ね」

 

 俺たちは会話の内容が気になりそっと扉を開けて覗き込んだ。

幸い黒幕は会話に夢中でこちらに気づいていないようだ。

 

「あいつかぁ……見つけたぞ……殺すっ」

 

 そう言うとミュラーは口角を吊り上げて黒幕を見つめ、いきなり飛び出そうとしたので慌てて制止した、もはや目の前の相手しか見えていない、かなり危険な状態のようだ。

 黒幕の方を見るに通信用の魔法具(マジック・アイテム)を使って遠方と会話しているらしい

 

『あまり調子にのるなよ、プリヴェーヌ……貴様は昔からすぐに油断する……!』

 

(この黒幕はプリヴェーヌという名なのか、ずいぶんオシャレな名前だな)  

 

「わかっております……えぇ! 油断せずやってますよ」 

 

『本当か? わかっているはずだな? 万が一奪い返された時は貴様を――』

 

「奪い返される? あり得ない、何人生き残っているかは知りませんが、たかが城主の息子ひとり人質に取った程度で反抗する気を無くす腑ぬけどもが取り返せるはずがない。 これは油断ではなく余裕というものです」

 

 兵士の愚弄を聞いた騎士の目が充血し、顔や腕に血管が浮き出てくる。

 

「じ……ジィさん……落ち着いてくれ……ん……あれっ!?」

 

 マークがミュラーをなだめようとしたがすでに飛び出した背が前方に見えた。

 

「なんですかァ!?」

 

「死ねぇェエ!!」

 

「きっ……貴様はぁぁぁぁぁ!?」

 

 そして騎士は籠手(ガントレット)から剣を出し斬りかかる。

 

(籠手から……剣が!?)

 

 しかしその剣が届くことはなく、直前で何かに止められていた。

 

「ヒィッ………… な、なんだ、驚かせてくれましたがぁ……間に合いました!」

 

「なんてこった! あれは……魔術の“障壁”か! しかもかなり高度だ」

 

 魔術の心得があるマークが解説する。

 

「あ、あなた、ミュラーですねぇ? どこからかはわかりませんがお仲間を連れて戻って来るとは……舐めてましたよ、その行動力」

 

『おいどうした』

 

 通信機から何者かの声が出たが、戦闘中にある黒幕の耳には届いていないようだ。

 

「ミュラー殿! 退いてくだされ!」

 

そう叫んだアリシアが障壁に向かって突きを放つ。

 

「そんなもので突破できるはずかないでしょ!」

 

 しかし黒幕の『突破できるはずがない』という予想に反し大きなヒビが入り、障壁は崩れた。

 

「馬鹿なぁ!? 剣一本で突破できるはずが」

 

「その命、もらい受ける!」

 

 だが切っ先が首に届く前に黒幕がアリシアの首を掴みそのまま怪しげな光をアリシアを覆っていく、振るわれようとした剣は急停止した。

それを見たミュラーが焦る。

光に包まれたアリシアは大きな悲鳴を上げて苦しむ。

 

「まずい! 洗脳されてしまう!」

 

 洗脳!? アリシアがあの虚ろな兵士と同じように俺達に敵する人質となってしまうのか!?

 

「もう遅い!」

 

光が消えるとアリシアは力なく倒れた。

そして……糸で吊られた人形のように起き上がり……

 

「さあ!貴様の味方を皆殺しにしちゃってください!」

 

 アリシアはこちらに剣を向けてきた。

この事態に真っ先にマークは反応し透明化して背後から麻酔手巾を突きつけ無力化させようとしたが……

 

「うぐっ!?」

 

 おそらく――僅かな風の動き?気配?いずれにしろマークを察知したアリシアは先ほど構えた剣をすぐさま床に捨て、手巾をもった腕を掴んで引っ張り、マークの体を後ろに回して関節を極めて蹴り飛ばした。

俺も加勢するが……

拳を出すと腕を掴んで腰に蹴りを入れられる、俺も蹴り出すが体を回して回避され……

 

「あっ!?」

 

 さらには頭を横から掌底で叩かれ、空中を一回転し地面に打ち付けられた。

続いて騎士が後ろから手巾で麻酔を嗅がせて気絶させようとしたが手巾を奪い取られてしまう、さらに後ろにまわり首を絞めようとするが、しかし……

 

「あ、ありえんっ! 首を筋肉で固めておる! 頸動脈が絞まらんっ!」

 

マジかよ、本当に人間か?

そして力付くで首の拘束を外し、騎士の手を摑み一本背負いした。

 

「がはぁっ!!」

 

鎧はその硬さにより衝撃を和らげ、使用者を守る。

だが今のミュラーは逆に鎧の硬さが仇となり、いわば金属の板の上に投げ飛ばされたも同然。

 

 

(なぜだ!? アリシアは洗脳され操られている、どうして俺が今まで見た兵士のように鈍重な動きではなくここまで強いんだ?)

 

 操られた兵士たちは皆、虚ろな目をしてフラフラ歩いており、まともな状態とは思えなかった。

しかしアリシアは目こそ虚ろなものの、しっかりとした動きでこちらを圧倒している。

 

「当然です! 私が直々に戦えと目の前で命令を出しているのです、そこらに徘徊させているだけのボンクラとは違うのですよ! 意識がないまま命令にしたがい、通常時と同じ力と技術を発揮させることができる!!」

 

ど……どうしたらいいんだ……

 

 

 

(なんだ……何が起きた……私は……)

 

アリシアの意識は深い闇に閉ざされ、外部のことは何も感じ取ることは出来ない。

 

(そうだ……兄様……)

 

そんな闇の中で見つけたのは幼少の頃の記憶であった、今も忘れることの出来ない記憶――

 

 

 

 

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