勇者と聖剣(仮)   作:バク・ハンマー少佐

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part9 追憶

「■■シ■! ア■シ■! おい、もう朝だぞアリシア!」

 

(誰だ……私の名を……呼ぶのは)

 

「起きろ! 朝だぞ!」

 

「おとうさま……」 

 

「もうメシの準備は完了している、早く起きるんだ!」

 

「でも……とうさま、もう少し寝かせて……ください……」

 

「おいおい、物語に謳われるような英雄を志すならシャキッと起きれるようにならんとなァ! ホレホレェ」

 

 とうさまが勢いよく布団を剥がす、体温で温められた布団の熱が急速に失われ寒さが身にしみる。

貯まった温もりが急速に失われ寒さが身にしみる。

 

「アルサラールいいか、歳なぞ関係ない! 武人を目指すものとして当然だ! それにアリシア自身が望んでいることだ……さて、ワシは母さんの様子を見に行ってくるそしたら飯だ、飯!」

 

我が家はいつも家族みんな揃って食事する、みんな揃って食事をするのが、家庭円満の秘訣”とのことだ。

 

我が家はいつも家族みんな揃って食事する、父様のこだわりだ。

“みんな揃って食事をするのが、家庭円満の秘訣”とのことだ。

かあさまを見に行っていたらしいねえさまも一足先に長いテーブルに座っている。

 

「ええ、兄様、まだ調子が悪くどうもにベットから動けないようですわ……」

 

「仕方あるまい……、とりあえず母さん抜きで食べるとしよう! いただきます!」

 

「っ……そうか……では! 母さん抜きで食べるとしよう! いただきます!」

 

 卓上には豪勢な食事がぎっしりと並んでいる、と言ってもこの半分以上はとうさまの分だ。

とうさまはよく戦いよく寝て、そしてよく食べる。

 

「父様、相変わらずそんな子供みたいな食べ方で、良く貴族が務まりますなぁ」

 

「フンッ、周りに他人(ひと)がいる時だけ行儀よくしていればよいのだ、あんな貴族の集まりの時の食べ方をしていては食事が冷めてしまうわっ」

 

「お父様、明後日はアリシアの誕生日ですのよ。 パーティーの準備は大丈夫でして?」

 

「あぁ問題ない、派手なのを企画している!」

 

「問題ない! 最悪戦争が終わるまでワシが食材を自分で採ることになるだけだ! 狩りは貴族の嗜み、ハッハッハッ、腕がなるわ!」

 

「あの、父様、ただでさえ死亡した兵士たちの遺族たちに金を払っているのです、さらにパーティーというのは……」

 

「アルサラール、お前は兵士たちの家族も労ってやれない恥知らずな武門になれというのか! それにな誕生日パーティーに年齢も資金も関係ない、お前も誕生日が来たら派手に祝ってやる!」

 

「アリシア、期待しておけよ、俺はでっかいパーティーを開いてやるからな。 アルサラールも俺も仕事で来られないが……」

 

「そ、そうなのですか? あにさま」

 

「……あぁ」

 

あにさまは毎年パーティーで一緒だった、来られないというのは初めてで、あにさまのいない先のパーティーを想像してすこし寂しさを感じた。

とうさまは度々来られない事もあったが……

 

「戦争だからな、他の騎士も忙しく手が空いてるのが今はオレしかいないんだ」

 

「そう……ですか……」

 

私の失意を見かねたあにさまが言葉を続ける。

 

「アリシア……、ああ、でもそれとは別にプレゼントは用意しとくよ」

 

「おいおい、なにみみっちい話をしている、プレゼント代くらいワシはちゃんと用意しているんだ、それで買っておけ!」

 

「いいか、子どもに懐具合を気にされる程親として悲しいことはないんだ! アリシアの喜びそうな物を買って……いや、帰ってきたら一緒にプレゼントを選んで探してやれそっちの方がアリシアも喜ぶ」

 

「……だそうだ、帰ってきたら贈り物を一緒に買に行こう。 オレはもう今日の昼から行くから……誕生日の2日後には帰ってこれると思う、父様は明日から6日くらいか……いい子にして待っててくれ」

 

「はい! 兄様」

 

そうこうしているうちに粗方食べ終えた。

とうさまは私に「特訓しているように」と言い、母様の部屋に向かった。

かあさまの体調も気になっていた私はこっそり部屋を覗いてみることにした。

 

「どうだ……苦しくないのか?」

 

とうさまはかあさま寝ているのベッドの横の椅子に座って話しかけていた。

 

「ええ……大丈夫よ……」

 

口ではそう言っているが、顔色が悪く体調が優れているとはとても言えない。

 

「あぁ……まぁ別にそこまで大きい戦じゃない。 それにあいつは戦争の天才じゃないか」

 

「あなた……それでもあの子は…優しすぎるわ」

 

「いや、敵への情はもう捨ててるさ」

 

「いいえ……あの子はまだ……あなたのような目じゃない」

 

「目?」

 

「あなたは……戦う人の目よ……人を殺す覚悟がある、殺して受け止めきれる心がある」

 

「あいつは違うと?」

 

「ええ、あの子は……後悔の目をしている……自分のやったことを受け止めきれていないわ」

 

「8歳の頃から見ているだけとはいえ、戦場にいるのにか?」

 

「人には変わる部分と変わらない部分があるの……あなたも……変わらない側だったけどね」

 

「そうかもな……でもお前は変わったな、今の姿なんて昔からは想像もできない」

 

「ごめんなさいね……こんなに……なっちゃって……」

 

「おい、責めたわけじゃないさ」

 

私が覗いていると後ろから誰かが話しかけてきた。

 

「お嬢様、そろそろ行ったほうがよろしいかと」

 

話しかけてきたのはの直属の部下だった、まぁ父と母のやり取りも聞けたし、断る理由もないので特訓をするため屋外の修練場に向かった。

その途中ふと後ろを向くと部屋から出て部下と話すとうさまが見えた。

 

「おい、俺がいない間あいつ等はお前が守ってくれ」

 

何を話しているんだろうか?

 

 

昼になった頃、あにさまを見送るために広間へ私は向かった。

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

「行ってらっしゃい、あにさま!」

 

「おう! プレゼント期待してくれよ」

 

そうして、あにさまの背中を見送った。

その時はただ、何も起こらないと思っていた。

予感も何もしなかった、また4日後にはまたあにさまの姿がここにあると考えていた。

テーブルには豚の血と脂の赤ソーセージ、ひき肉詰めの木ひばり。うさぎのシチュー、そら豆の濾し汁、牛と羊の大ぶり塩漬け肉。

肉だんご、クレープ、プリン。

肉桂入り甘葡萄酒、様々な豪華な料理が置かれている。

 

「アリシア! お誕生日おめでとう!」

 

「お嬢様! おめでとうございます!」

 

テーブルには大きなベリーのケーキ、豚の丸焼きに……豚の血と脂の赤ソーセージ、うさぎのシチュー、そら豆の濾し汁、牛と羊の大ぶり塩漬け肉。

肉だんご、クレープ、プリン。

肉桂入り甘葡萄酒、様々な豪華な料理が置かれている

 

そんな中、とある騎士たちが小耳に挟んだ噂について、話していた。

 

「城主さま、昨日食事のために朝から()に入って狩りをしたらしい。 それでな……森といえば住んでいる生き物が異常に育っているだろう? で、そこの猛牛を5匹も狩って全部朝のうちに食べ終えたらしいぞ」

 

「本当か……? あり得ない話ではないが……」

 

「この家紋に誓って、嘘じゃないぜ」

 

「なら信じよう。 所で俺も風の噂で聞いたんだがアルサラール様の出陣した戦線にかなり不穏な動きがあるらしい、幹部クラスが出ているという……」

 

「なんだと……? あり得ないとは思うが万が一アルサラール様が戦死……なんてことがあればここは跡継ぎについて一悶着起きるかもしれんぞ」

 

「あぁ……同感だ、無事に帰ってきてほしいなぁ。 おっと祝の席には相応しくない話をしてしまったかもしれん、いったんパーティを楽しもう」

 

私は周りの料理を無視してケーキを食べ続けていた、人は甘いものに目がないものだ。

 

「ほら……アリシア喉を詰まらせてしまうわ、お水を飲んで……」

 

かあさまは無理をして出席して私の横に居てくれた、私のために奥の方にある料理を取ってくれたり、汚れた口を拭いてくれた。

ねえさまはパーティーはあまり気乗りしないようで、紅茶を飲んで私を見守っているだけだった。

 

「おい! この箱はなんなんだ?」

 

騎士が指し示す先には言った通り大きな箱がおいてあった。

 

「今朝届いたのだ! アルサラール様からの贈り物らしい」

 

「えっ」

 

兄様からの贈り物……パーティー中に送ってくるとは……来るのは兄様の帰りと同時だと思っていたが……

 

「アルサラール様もニクいことをする……! もうパーティーいいくらいだ、開けてしまおうよ」

 

あにさまからのプレゼント、私の心は期待でいっぱいだった、なにを届けてくれたのか、気になって仕方がないくらいに。

 

「プレゼントはアリシア様が開けるべきだな」

 

「ああ、最もだ。 どうぞこちらに。 よーしみんなぁ! アリシア様がアルサラール様からのプレゼントを開けるぞ! さぁ集まって集まって」

 

「かあさま、一体なにが入っているのでしょう」

 

「きっと素敵なものが入っているはずよ」

 

そしてプレゼントの上蓋を開けた。

そしてすぐにそれを後悔する事になる。

 

「うあああああっ! アルサラール様ァァッ!?」

 

入っていたものは……あにさまの首だった、その他にあにさまの胴、四肢が……いくつもに別れた状態で中に収まっていた。

 

「あに……さ――」

 

「お嬢様!」

 

とうさまの部下が私の顔を押さえながら勢いよく後ろに引っ張る。

 

「嘘よ……こんな……アルサラール……あぁ」

 

私はしばらく目を覆われ、何も見えなかったが誰かが倒れる音は聞こえた。

 

「ああっ奥さまぁっ! は、早く! とりあえず医者に見せてこい!」「隠せ! これ以上酷い姿を晒させるな!」「あ、兄様……どうして」「一体……誰がこんなことを!?」

 

パーティーは邪悪なプレゼントによりそこで終了となった。

部屋に戻らされた私はまだ己の目で見た景色を信じきれず呆けていた。

そこに入ってきたねえさまによる衝撃的な知らせは私の気付けに十分なものだった。

 

「母様が……ショックで……意識が……うぅ……」 

 

「……え」

 

そう言われて私はかあさまの居る病室に飛んでいった。

 

 

 

「おい……これは……いつ治るんだ」

 

「今の所……回復の見込みは……」

 

「……っ! 何故チェックしなかった! 確認さえしていれば奥様は……少なくとも……」

 

「せ、せっかくのプレゼントを勝手に開けてはいけぬと思い……それにアルサラール様のサインもあった故……とても中身があんなものとは……」

 

部屋に入ると複数人の騎士が話しているところだった。

 

「か、かあさま……」

 

かあさまはベッドの上で死んだように眠っていた、手を握っても、声をかけても何も反応しない。

 

「そんな……かあさま……」

 

「魔族め……酷いことを……」

 

(魔族が……こんなことを……にいさまを殺して、母様までこんな目に……)

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「魔族は……許さない……!」

 

 

 

 

 

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