ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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前話のスキルの部分を修正致しました。
ダンまちではスキルは全部漢字でしたね…。申し訳ありません…。

それと、今更にはなりますが、2話前のギルド職員に対して擁護します。
まず、冒険者はよく死にます。仲良くなくても、普段から顔を合わせ、名前や行動を覚えている人がころころ死にます。仲良くなれば尚更です。なのに関わらず、仕事は常に冒険者と関わり、アホほど多い冒険者はみんなギルドを通してなっているので、関わらないという選択肢はギルドを辞める以外にはほぼありません。なので、死にクレバーにならなければただでさえ忙しい仕事に支障が出ます。
これは原作15巻でもありました。とはいえ死を賭けにするのは普通に不謹慎ですし、処罰、お叱りものとも明言されています。まあ、そういうからかいと、そうでもしなければやっていけない。むしろそう出来るくらいのメンタルがなければ辞めている、というのが理由です。
そして、冒険者は見た目で判断したら駄目、とあります。だからこそ、オラリオへ入る時は恩恵の確認をしたり、それぞれの名簿と派閥ごとに厳重に管理されています。都市外のファミリアがある程度育ってからオラリオ入りする例もあるので、そのあたりはしっかりしています。なので、神の恩恵がなく、新規に冒険者になることが分かっているベルと、【ソーマ・ファミリア】のLv.1冒険者であるリリの二人のみの派閥ということが判断材料になりました。
当然、全くの新派閥に幼気な顔の只人(ヒューマン)と、冒険者に最も向かないとされている小人族(パルゥム)の少女二人のみとか、アカン要素しかないのです。
レザーXシリーズにも気付けないのかという件に関しましては、ギルド職員の武具への目利きはそこまで高いわけではなく(もちろんドロップアイテムなどは素材としての価値がある程度定まっていることと、取れる対象がわかっているので査定しやすい)、本職に比べれば劣りますし、どっちかと言えば武器や金属の防具などの方が分かりやすいです。
そしてマスターランク素材ですが、異世界で完全にルーツの異なるモンスターの皮を一目で見抜くほうが凄いです。
私達だって名前も知らない海外の動物の皮を色んな動物の皮と一緒に見せられても、どれがその生物か、どのくらいの価値があり、どのくらい強くて用途があるのかは分からないでしょう。そんな感じです。

長々と失礼しました


スキルを理解しよう

 

「ええ……」

 

 ヘスティアはドン引きしていた。それというのも、深夜帯に帰ってきたベル達を迎え、起きがけにステイタスの更新を行ったことが原因だ。

 

ベル・クラネル

 

Lv:--

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0  

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

【狩猟生活】

・釣りの成功確率に超高補正

・肉焼きの成功確率に高補正

・探索した区画のマップ暗記

・マップ内に各ポイントの追記

 

【煌黒龍乃恩恵】

・魔法属性の変換

・全属性に対する耐性強化。専用装備時更に強化。

・【黒龍邪視】の悪性効果無効化

 

【黒龍邪視】

・黒龍の存在値未満の呪詛の無効化

・発現者に精神汚染、幻覚、悪寒の状態付与

 

【狩人剥取】

・一定範囲内の『剥ぎ取りナイフ』にモンスター素材の剥ぎ取り可能状態付与

・剥ぎ取り回数は剥ぎ取り対象に依存

・回収可能素材は確率依存

 

 ファミリア結成から三日目のことである。

 

 内容に移ろう。ベルの背に記されたステイタス。ここには恐ろしいことが書いてある。

 

 【狩人剥取】という名のスキルによって、実質的にドロップアイテムを確定させることが可能なのだという。

 世俗や冒険者稼業に疎いヘスティアとて、その意味は理解している。稀にしか出ないから高値で取引され、数多の需要を生み出しているドロップアイテム。

 冒険者の稼ぎ口の一つであり、価値の暴落、あるいは確実に取れる人物であると指定され、他の冒険者に依頼が回らなくなる可能性がある。

 

 ……ハッキリ言って、何が何でも派閥に取り込まれて飼い殺しにされるか、手駒にならないならば殺してしまえと判断されても可笑しくはないレアスキル。

 

 資金難の解決や、武具やポーションの素材としてならば有り難いのだが、【ヘスティア・ファミリア】は零細派閥。大量に持ち込んでも盗品か後ろ暗い手段をとったと怪しまれるか、何かがあると勘繰られるに違いない。

 

 これに悩んだヘスティアは、もう一つの案件のせいもあり、無自覚なままでいさせることに危機感を覚え、腹を決めた。

 

 出来事の確認などのことからヴェルフを呼び付け、何故かおまけについてきたヘファイストス(「ヴェルフを呼ぶなんて絶対向こうの世界のことじゃない。私も気になるし行くわ」と即断していた)も交えてベルのステイタスを開示する。

 

「「「「……………」」」」

 

 その反応は、一様に無言。

 

 内容に誤りがないかとまじまじと見つめ直して、不備のないことを知った一同は大きく溜息をつき、特にヘファイストスに至っては頭が痛そうに眉尻を抑えている。

 

「………ここに記されている内容は本当なの?」

「う、疑う気持ちは分かるけど本物だよ!僕だってどうしようか悩んでるんだからさ!ほら、ベル君の恩恵を見てもいいさ!」

 

 そう言って、ベルの背をヘファイストスへと向ける。本来ならば、他派閥は愚か自派閥の仲間ですらステイタスの詳細を見せるものではないのだが、事が事。初心者のヘスティアが処理するには限界があったのだ。

 

「……………………ええ、確かにここの内容と変わりないようね」

「だろう!!?」

「ええ、もういいわ。私も口外は決してしないから、早く施錠(ロック)をして頂戴。これを晒していると思うと気が気じゃないのよ……」

「…え?ロック……?ステイタスって隠せるのかい!?」

「そんなことも知らずに眷属を探してたの…!?全く、いくら神聖文字だからって、下界にも読める子はいるのよ?それも神々ならわかるし、こんな逸材を見つけたら絶対しつこく勧誘してくるわよ」

「うぅ…だ、だって誰も教えてくれなかったし……」

 

 最初に怒鳴ったきり、最早怒りを通り越して呆れを見せるヘファイストスの様子に、「これはマジなやつだ」と恐々とするヘスティア。 

 

「はあ…。まあ、今気づけただけよかったことにしましょう。ほら、やり方は教えてあげるから、リリルカ・アーデ(そっちの子)にも後でするのよ」

「ヘ、ヘファイストスぅ……!」

 

 やはり持つべきものは友である。感涙したヘスティアは嬉しさを隠さず縋るも、対するヘファイストスは冷めた目つきだ。

 

「……まだ何か言ってないことあるんじゃないでしょうね」

「ギクッ!」

 

 その言葉にあからさまに態度に出すヘスティア。滅茶苦茶分かりやすいのである。

 

 追求すると、スキルのことを当のベル達にすら隠していたことを自白する。

 

 当然ヘファイストスは大激怒。黙っていたほうが都合の良いスキルでもなく、むしろその存在とデメリットの観点から、本人に伝えないことなどありえないと烈火の如く再燃する。

 

「ひ、ひえぇ……!だ、だって僕も初めてだったし、いきなりイレギュラー過ぎてどうしていいか分からなかったんだよぅ……」

「それにしたって今開示するなら一緒でしょう!大体あんたは昔から――――」

 

 しなしなになっていくヘスティア。ファミリアとは、主神とは何たるかを叱りつけるヘファイストス。

 

 その絵面を見て、話が進まないと思ったのかヴェルフが進言する。

 

「まあまあ、それは後で。今はベルのステイタスの話でしょう?」

「……それもそうね」

 

 落ち着いたヘファイストスと、宥めてくれたヴェルフに感謝の意を示すヘスティア。ようやく場が整った所で、本題に移る。 

 

「あの、僕ってレベル1じゃなかったんですか?」

「うん。ごめんねベル君。何故か数字が何も出てなくて、わからなかったから」

「…………まあ、これに関しては一応の推測はついてるわ」

 

 そう告げたヘファイストスに、凄い勢いで首を向けるヘスティア。期待を受けつつ、念を押してから語り始める。

 

「…そうね。まず確認なのだけど、リリルカちゃんのステイタス表記もおかしな事になってないかしら。例えば、レベルや潜在値(アビリティ)の末尾に(疑問符)がついているとか」

「「!?」」

 

 対岸の火事として見ていたリリは、女神に言い当てられたことにより驚きを返し、咄嗟に身構える。

 

「ああ、ごめんなさい。別に探る気とかではなくて、ヴェルフも同じだからよ」

「ヴェルフ様も…ですか?」

 

 尋ねると、頷くヴェルフ。同じ帰還者として、二人に異常事態が起こっているのなら、原因が同じだと疑わざるを得ない。

 

「まず、大前提で神々(わたしたち)の『恩恵』は、子供たちの“可能性”を経験を通じて摘み上げて、形にしてあげること。あくまで成長の促進剤としての域を出ないのよ。…勿論、スキルやアビリティ、魔法なんかの強化もあるけれど、“本人のあり得る姿”の一つなの」

 

 ヘファイストスが説明するのは、神の恩恵そのものの仕組み。それは、本人の素質や可能性に準ずるものであって、どうしてもあり得ないものを獲得することには至らないのだとか。

 

「そうね…。スキルなんかは本人の意思が関わるから、様々な可能性があるのよ。例えば、誰々に憧れた。何か出来事があって、それが一生をかけるものだったとか。そのきっかけから生まれる活動の手助けになったり、最終的にはその域にまでたどり着く可能性自体があるの。あり得ない可能性は……そうね。魔法で例えると、あるドワーフが治癒魔法を覚えようと鍛えても、適性が致命的になければ、それは神の恩恵でも発現はしないの。仮に魔法適性が限りなく低いだけなら、そのごく僅かな可能性を汲み取ってくれることもあるけど……。だからといって、治癒魔法を覚えられるという可能性がないなら、神の恩恵ではどうしようもないの」

 

 ま、ホントにそこまで致命的なことなんて殆どないんだけど。と語るヘファイストス。これで、神の恩恵の概要は伝わった様だ。

 

「で、そこを踏まえると、別に神の恩恵無しでも鍛えることで強力な器へと昇華……つまりはランクアップの様なことはできるのよ。……勿論、手っ取り早く強くなれる今の時代で行う人なんて殆ど居ないし、仮に可能性があっても、一生かけても届かないかもしれない。……でも、前例はいるでしょう。神の恩恵がなくとも、モンスターと戦い続けてきた子供達が」

 

 その言葉に、ベルが真っ先に反応する。

 

「古代の英雄…」

「ええ。英雄と呼ばれた彼らは、今の第一級冒険者と比べても遜色のない実力を持っていたと聞くわ。…多分、貴方はそういう例ね」

「そ、そうなんでしょうか?」

 

 ぴしっと突きつけられた指に、かつてその昔の英雄たちに憧れていた少年として、恥ずかしくも、それでいてハンターとして生きてきた暮らしが評価された様で嬉しくもある。

 

 しかし、そこでヘスティアが疑問を呈する。

 

「待った!確かにそういうこともあり得るんだろうけど、肝心のレベルの表記がないことの説明にはなってないぜ。種族や鍛錬での能力の違いはあっても、レベルはみんな1から始まるのが僕達の恩恵じゃないのかい?」

「確かに、恩恵無しで器の昇華(ランクアップ)を果たした冒険者以上の実力を持つ子が、恩恵を刻まれたらレベルは1になるのかという疑問は残るのよね。何せ、神時代になってからはそんな例はとんと見ないもの。恩恵を受けた存在を倒した例があっても、先天的に魔法を持っていたり、種族特性のお陰だったりするから、一概に決めつけることも出来ないのよね」

 

 あっさりと認められて、ヘスティアは目を白黒させる。結論として、何が言いたいのだと。

 

「ごめんなさい、少し脱線したわね。まあ、私が言いたいのは、私たちの世界とは異なる世界で、自身を鍛え上げたからじゃないかと推測するわ」

「……?世界が違うと、ダメなんですか?」

「そこは…例がないから分からないけれど、話してくれた異世界とは私たちの世界とは根本から異なるでしょう?向こうのシステムとこちらのシステムが違っていて、後天的に身に着けた神の恩恵がエラーを起こしている可能性が考えられるわ」

 

 顎に手を当てて話し始めるヘファイストスの推測に、頭が追いつかない4人。

 

「天界なら分かったかもしれないけど、今の私たち(零能)にはここが限界ね。神の恩恵を既に受けている二人は、どんなものであれ【経験値(エクセリア)】に反映されるはずだけれど、結果は奇妙なことになっているでしょう?だから、二人と彼の違いを挙げた結果、そう考えるのが自然ってだけよ」

 

 つまり、本来ならば神の恩恵を用いて能力値を上げる所を、システムの異なる世界で、自身で自然と行ったせいで、神の恩恵(既存のシステム)ではその分の潜在値やレベルを写し取ることが出来なかった…ということらしい。

 

 それが正しいものであるかの判断はつかないが、実際の身体能力と表記の共通点などから、納得がいきやすい。

 

「あれ、でも表記がおかしいって話ですけど【スキル】や【魔法】は普通ですよ?」

「それは別にレベルやステイタスと関連してる訳じゃないからよ。魔法は才能や知識、後は魔導書(グリモア)みたいな例で新たに身につけることが出来るし、スキルは本人の経験や強い想いから新たにつくこともある。まあ、数値に表すことにエラーが出ているものと違って、強く心に残ったことだから現れやすいってことかしらね…」

「そんなものでいいのかい…?」

「仕方ないでしょ。証明のしようがないんだから」

 

 いつもは厳格なヘファイストスがそんな曖昧なことを口にしたので、ヘスティアは恐る恐る尋ねるも、返された言葉は正に正論。

 

 一旦疑問の氷解した4人は、続いて露わになっているベルのスキルへと移る。

 

「まず【狩猟生活】は…」

「ああ、それは俺にもあるな」

「リリにもですよ」

 

 とは二人の言葉。もともとリリのスキルを見ていたヘスティアは兎も角、ヘファイストスは大いに驚いた。

 何せ、似た経験や家族、兄弟などの関係から、類似した名や効果を持つスキルが発現する例はあったが、ここまで効果と名前が全く一致していることなどあり得ないのだから。

 

「…まあ、これはあちらでのハンターとしての嗜みといいますか、共通認識の様なものだったので、それがハンターであるという自意識と共に発現したのでは?異世界の経験なのでわかりませんけど……」

「……そういうことにしておくわね。効果も……そうね。マッピング関係はかなり希少なんじゃないかしら?何で釣りと肉焼きがあるのか分からないけれど……」

 

 悩むだけ無駄だと早々に切り替えたヘファイストス。その効果の一部に疑問を覚えつつも、まあ悪いものでもあるまいと流す。このスキルも一部のファミリアにとっては喉から手が出るほど欲しいのだろうが、既に攻略を終えた派閥にとっては、ダンジョンのマッピングやアイテムが採取可能な場所は覚えている。

 

 実力はあるものの、今から攻略を始める【ヘスティア・ファミリア】にはピッタリの能力と言えよう。

 

 因みに、このスキルにおいてヘファイストスは一つ思い違いをしている。

 ヘファイストスにとっては、必ず入手可能な資源、それこそ肉果実(ミルーツ)雲菓子(ハニークラウド)水晶飴(クリスタルドロップ)といった迷宮内で入手可能な資源や、24階層の宝石樹、51階層のカドモスの泉などの限られた箇所へのマーキングだと思っているが、その実態は壁内に埋まっている希少鉱石や資源に至っても、生成時にマーキングされるというものである。

 

 何が取れるかまでは分からないものの、階層の深度や場所によっての推測、質の出来は予測でき、その点から見れば、鍛冶師垂涎ものの効果である。

 

 共有されていない理由は、なまじ理解を示しているために当然と思っている三人からの訂正がなかったためである。このことが知れたら、このスキルの重要性が更に二段階は上がることだろう。

 

「そして…【煌黒龍乃恩恵】。………黒龍とはあるけど、どういったことが原因なのかしら」

「あ、そっちは分かります。煌黒龍、向こうの世界でその二つ名を持つモンスターを僕たちで討伐したんです。……本当に、次元が違う強さでした」

「…それほどの強敵だったのね」

「ヘファイストス様、アルバトリオンですよ。アルブレはそいつの素材から作られたんです」

「あの双剣の!……そう、確かにそれは別格かもね。それこそ、倒した経験がスキルとして現れる程には…」

 

 感慨深げに、しみじみと頷くヘファイストスだったが、ヘスティアとしてはやや首を傾げ、独りごつ。

 

「うーん、確かにその経験が色濃く残っているなら発現するかもだけど…。これ、ちょっと加護に似てるような…?」

 

 しかしながら、実物と本体を見ていないヘスティアは、そんなわけないかと流してしまうのであった。

 

「効果は魔法属性の変換。この効果は見たことないけれど、まあ常識の範囲内ね。結局、本人の魔力に依存する効果だから、使い分けに便利、といった所かしら。まあ、肝心の魔法が発現してないからこの効果は検証出来ないわね」

「もう一つの属性耐性に関しても、全属性はともかく、別にないこともないわ。鍛冶師の中には火に近いこともあって、炎への耐性がつく子も珍しくはないし。強化幅がどのくらいかは分からないけど、魔法系の攻撃を持つモンスターや魔導士に強く出れるのはいいかもしれない。という評価かしら」

 

 ヘファイストスの評によると、確かに全属性ということは珍しいが、そもそもの自力に依存し、効果を底上げするものではないことと、属性耐性という比較的広まっている効果であったので、痒いところに手が届く便利スキル、といった感じだ。

 

 そして、最後の効果に至る前に、もう一つのスキルについて触れなければならない。

 

「……次よ。【黒龍邪視】…。効果は存在値未満の呪詛(カース)の無効化と、貴方自身に精神汚染、幻覚、悪寒を植え付けるもの……。何でこうなったのかしら?」

「呪詛の無効化といっても、多分これ強い呪いで他を寄せ付けてないだけですよね…」

 

 ハッキリ言ってデメリットしかない。呪詛の無効化も、上回られてしまえば普通にかかるし、それよりも下回る呪詛ということは、現在進行系でかかっているものの方が効果が高いということになる。

 明らかに本人の意思や経験では発現もしなさそうなスキルに、ヘファイストスとヘスティアは揃って頭を抱えていた。

 

「……もしかしたら、俺のスキルと似たようなものかも知れん」

「ヴェルフの?」

「ああ、俺の【魔剣血統(クロッゾ・ブラッド)】は俺の一族に現れるスキル。…前に俺の先祖と魔剣の話はしただろ?その時の精霊の血が由来で先祖が魔剣を創れる様になり……。スキルとして俺にも受け継がれてる。………あるんだろ?」

 

 尋ねると、ベルは肩をビクつかせて目を逸らす。実に分かりやすい奴だ。とヴェルフの疑問は確信に変わっていた。

 

「うん…」

 

 そう言って、ベルは廃教会の中から木箱を取り出すと、何重にも布で巻かれたそれを解放した。

 

「「っ!!??」」

 

 現れたのは、巨大な眼球。縦に割れた瞳孔が爬虫類などを連想させるものの、その尋常でない威圧感と禍々しさは神でさえ――否、神だからこそその存在の格を理解してしまった。

 

「………っ、これは、一体何なんだいベル君。前々から何かよくなさそうな雰囲気だなとは思ってたけど、こんな…」

「あり得ない…。明らかに、海の覇王(リヴァイアサン)のドロップアイテムの比じゃ……」

「これは、僕が出会った中で最強の生物。あちらの世界でも、お伽噺にしか登場しない筈の、世界を滅ぼす龍。黒龍ミラボレアスの眼球です」

 

 ヘスティアは畏れ、慄き、己の眷属が何故こんなものを持っているのかと恐々とし、ヘファイストスはその存在の格を、そして悍ましいまでの素材としての良質さを見抜いて、直後にこれの生前に比較できる対象が、こちらの世界では隻眼の黒竜と呼ばれる存在しかいないと直感的に理解した。

 

(こんな、こんな存在と相対していて、この子は五体満足で生きているというの……!?強いとは思っていたけど、はっきり言って、想像を遥かに上回って……!)

 

「まあ、貰い物なんですけど……」

「あー、うん。わかるぞ。俺も忍ばされてたからな。どうせ青い星(あの人)が荷物の中に紛れ込ませてたとかだろ」

「うん…」

 

 次いで、それを気軽に渡してきた相手がいると知って二柱の神は本格的に頭を抱えたのだった。




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