ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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オートマッピング&マーキングが有能過ぎて階層制覇RTAになってしまっている


品質偽造業者VS違いは分かるが相場が分からない人

 

 見事中層進出へのいいスタートダッシュを決めたベル達は、来る日も来る日もダンジョンに潜り、その生態やモンスターごとの特徴。詳細なマッピングに追記を繰り返したり、クエストを熟したりして順風満帆に冒険者生活をエンジョイしていた。

 

 特に、大樹の迷宮はスキル(神の恩恵によるものではない)であらゆる状態異常を無効化出来るベル達にとってはさしたる障害にもならず、マッピングもスキルによって自動で行われる。

 とくれば、ゆっくりじっくりとアイテムを集めることが可能となる訳だ。

 特に、大樹の迷宮はその特性上白樹の葉(ホワイト・リーフ)などを始めとした薬効成分を含んだ植物カテゴリのアイテムが多い。即ち、常に需要の絶えない類のアイテムだと言えよう。

 

 特に、周囲が状態異常まみれの環境なため、やっとその階層に挑めるようになった程度の派閥では呑気に長時間採取に時間を取るようなことはない。何なら、普段からそこを狩場にしている冒険者達ですら、状態異常の解除に使う費用を考えればモンスター討伐の傍ら見かけたら取る程度。安全マージンをとって採取出来るのは更に高レベルの耐異常を持つ冒険者に限られてくる。

 しかし、そのような高レベル冒険者はもっと稼ぎのいい階層に潜れるため、採取の程も個人的な小遣い稼ぎや通りがかり。或いはクエストとして賃金を出されている場合などに限られてしまう。

 

 まあ、要はベル達はそこで今後の備えも含めて荒稼ぎしたのである。

 因みに、そちらで採取した白樹の大樹の枝を古代樹の鉢に接ぎ木したらなんと育ち始めた。古代樹ってなんなんだろうか。

 

 毒を含むものなどはリリが弾薬にするために回収し、グリーンドラゴンという竜種も狩ることが出来た。宝石樹の宝石は使い道がないので宝飾店に売らせてもらったが、グリーンドラゴンの素材は植物素材との親和性が高いとはヴェルフ談。

 

 さて、そんな訳で順調に迷宮攻略と探索を進めているベル達であったが、ここ迷宮都市に来てから13日。

 

 日を跨いだ探索を休むことなくし続けるベル達に、ヘスティアが言ったのである。

 

「ベル君。君たちがファミリアに入って探索を始めてから、何日経ったのかな?」

「…12日ですね」

「それで、何日連続でダンジョンに行ってるんだっけ?」

「……12日、ですね」

 

 ベル達を問い詰めるように立つのはヘスティア。ベルはバツが悪そうに座っている。リリも同じ様に座らせられ、やがてヘスティアは叫んだ。

 

「二人とも休んでおくれよ!聞いた所徹夜して探索してる日も数日やそこらじゃないんだろう!?」

「あ、いえ、でもハンター時代は仮眠のみで1週間張り込み続けるとかはザラでしたし、それと比べれば今の難易度なら…」  

「そうかもしれないけど!だからって必要に迫られてもないのにやってたら体を壊しちゃうって!」

「あ、はい…。それはそうなんですが…。で、でもファミリアの資金は…」

「資金面はもう十分だって!大規模ファミリアで費用がかかるならともかく君たちほぼ無傷な上に装備も揃ってるだろう!?食事くらいにしかお金なんて使ってないし、急に増えすぎたから今の金庫じゃ収まりきれないんだよ!?」

「そう、ですね。リリも毒され過ぎてました…」

 

 ヘスティアが怒るのは至極当然と言えるだろう。ただ毎日迷宮に行くだけならばいざ知らず、彼等は平然とダンジョン内で数日を過ごし、じっくりと見て回っているのだから。

 

 ヘスティアとしても彼らの強さや行動を信じているためあまり口を出さなかったが、特に差し迫った理由もなく、知的好奇心と先に進めたいという気持ちだけで睡眠も取らずに冒険し続けるのはいただけなかった。というか普通に体を壊しかねない。

 

 資金的な不足もなく、急ぐ理由もないが、とりあえず沢山進めて沢山集めておきたいというベル達の悪い癖が出たようだ。

 

 健全な肉体には健全な精神が宿る。とあるが、正にそのとおりだ。

 

 ベル達も流石に思い直したのか、もう少し控えるか、ちゃんと安全な階層で休息を取るようにしようと誓ったのである。

 

 そんなわけで、本日の探索はヘスティアの鶴の一声で休止となった。

 ヴェルフにもその旨は伝え、ベル達は初めてとなる休日をとることにした。

 

 リリは貰った古代樹の植木の世話と育った植物の収穫。ついでに昔お世話になった人への顔出し。

 

 ヴェルフは【ヘファイストス・ファミリア】でヘファイストス様と鍛冶師談義をするらしい。

 

 ベルは、ダンジョンばかりに行っていたため、オラリオで巡っていない場所も多く、当てもなくぶらりと歩いてみるのもいいだろうと散歩へ出かけてみることにした。

 

 因みに、インナー姿で出かけようとしたらリリとヘスティアに止められ、薄茶色に染めたブリゲイドαシリーズを装備して街へ繰り出したのである。

 

「あ、そうだ…。ここ数日ダンジョンに籠りっぱなしだったし、顔を出しておこうかな…」

 

 ベルはオラリオに来てから日が浅く、ヴェルフやリリルカと違って顔見知りがほぼいない。だが、ファミリア結成当初、ヘスティアの紹介もあって少しだけ見て回った時に出会った、とある【ファミリア】は新たに顔馴染みになったばかりである。

 

 ヴェルフにリリルカと同じ様に、顔を出しておくかと考えるのも自然なことであった。

 

 その店は、西のメインストリートから少し外れた路地裏にある。日当たりが悪く、少しじめじめした場所にぽつんと建つ一軒家には、人の体を模したエンブレムが掲げられていた。

 

「すいません、おはようございます」

 

 両開きの木扉を少し開けて顔を出すと、薄暗い店内では一人の犬人の女性が戸棚に商品を並べていた。その女性はベルに気がつくと、眠たげな表情のまま、抑揚のない声で反応した。

 

「おはよう、ベル。何日かぶり…?」

「あ、はい。最近は何日かダンジョンに泊まってたので…」

「ん…。何日も?確かベルは最近オラリオに来た筈だよね…。大丈夫だった……?」

「まあ、一応こういうことには慣れてるので……。そのせいで、神様に今日は休めって言われちゃったんですけど…」

 

 女性の名はナァーザ・エリスイス。ヘスティアの友神でもある男神ミアハが統べる回復薬などを扱う道具店を営む商業系ファミリア、【ミアハ・ファミリア】の唯一の眷属だ。

 

 ここ、本拠でもある店舗「青の薬舗」を営んでいることもあり、以前ヘスティアから紹介にあったのである。

 

 生憎と今は回復薬などは足りているが、その材料はこちらの世界では貴重も貴重。植生研究所から持ち込んだ古代樹の一部で栽培が出来るとはいえ、替えの利かないリリルカの弾薬などを集中して育てているために、替えの利く回復薬はお世話になるだろうと見越しての挨拶まわりだったりする。

 

 因みに、薬草とアオキノコは余程の極地でもなければ育つために植えることも検討されたが、逆に繁殖力と生命力が強すぎて、特に管理のされていない土地に植えてしまうと周辺の植物を駆逐してしまったり、広がりすぎて問題になってしまう可能性があるため、やるにしても管理された土壌を作ってからということになった。尚ハチミツは作られている。

 

「そうなんだ…。じゃあ、消耗も多いだろうし、いっぱい買っていってよ。その方が私たちにも懐が温まるし、どっちも得だよ…?」

「あー…でも、まだ間に合ってますし…」

「そんな…。最近稼いでるんでしょ…?」

「どっ、どこでそれを…?」

「……引っかかったね。おしゃれそうな格好だし、余裕があるんじゃないかと思ったけど」 

「…あっ」

 

 どうやら、カマをかけられたらしい。図星のベルの様子はあまりにも分かりやすく、くすくすと笑うナァーザに嵌められたと気がついた様だ。

 

「それにしても、間に合ってるって、酷いな…。ミアハ様も寂しがってたし、ひもじい私たちを差し置いて買ってる店があるんだね」

 

 と、よよよと泣き崩れる様子を見せるナァーザだったが、二つ勘違いをしている。

 

「あっと、その、別に他のお店で買ってるとかじゃなくてですね…。単純に買ってないってだけで…」

「……!それは危険…。ダンジョンでは何が起こるか分からないし、外で荒事の経験があっても、何も持たずにいくなんて自殺行為。そういう服を買うために我慢してるんだったら止めさせて貰うよ…?」

「……?あっ、違う違う違います!単純に必要になる状況にないんです!この装備はオラリオに来る前のところから持ってきたものですし、攻撃も全然食らってないので…!ナァーザさんが考えてるようなことはありませんから!」

 

 キッと鋭くなったナァーザの目にたじろぐベル。どうやら、ナァーザは服を買うためにポーション分すら節約してダンジョンに潜る危険行為だと思われたらしい。

 

 慌てて否定するベルにホッとした様子のナァーザだったが、そこでまた新たな疑問が浮上する。

 

「それなら良かったけど…。攻撃を食らってないって、ダンジョンは初めてなんだよね?もしかして、前にヘスティア様が言ってた事情に関係してたりする?」

「まあ、はい…」

「もしかして、外でモンスター退治の仕事してたとか?」

「似たようなことは……」

 

 追求するナァーザに少々圧されるベルだったが、そこで新たな声が割って入った。

 

「こらこら、ナァーザ。ベルを困らせるんじゃない」

 

 カウンターの後ろから姿を現したのは優しげな笑みを携えた長髪の美男子。ここの主神でもあるミアハその人だ。

 

「ミアハ様…」

「すまんなベル。うちのナァーザが」

「いえいえ、別にそこまで困ってた訳でも…」

「そうか?それならいいんだが…」

 

 ミアハはこの通り人柄もよく、下界に降りてきた享楽主義な神々の中ではとりわけ珍しく温厚で優しい神格者でもある。

 

「しかし、いくら慣れているとは言っても、ダンジョンは未知が多い。持っている分にはいいのではないか?以前にもケガをしなかったなどということはないであろうしな。ヘスティアが愚痴っていたぞ?ベル達が何日もダンジョンに籠もっていて心配だ…やら、最近稼ぎが急に増えて驚いている…とか。どうだ?我らを助けると思って買ってみんか?」

 

 違った。こっちも売り込みだった。

 

 いや、ミアハの気質からすれば建前ということはなく、心配も本物であろうが、そこにヘスティアの口から語られた経済状況から勧めても問題ないと判断したのであろう。

 

 いくら信頼できる神格者の友神とはいえ、口が滑り過ぎではないかと思われるが、ヘスティアは環境の変化と抱えている秘密が大き過ぎて、愚痴でも言わなければやっていけないのだ。もちろん言っちゃいけないラインは守っているので責められるものではないだろう。

 

「まあ、そうですね…。懐が温かいのは事実ですし、買わせて貰います。えーっと、オススメってありますか?」

「じゃあ、この高等回復薬(ハイ・ポーション)がオススメだよ」

「ナァーザ。そう無理強いをするものでは…」

「あ、大丈夫ですよ。じゃあ…そうですね。とりあえず普通の回復薬(ポーション)を10個に、高等回復薬(ハイ・ポーション)を3個下さい」 

「…いいの?」

「なんと…儲かっているとは聞いていたが、それほどか」

 

 流石に買うとは思っていなかったのか驚く2人。けれど予想外の売り上げに頬が緩んでいた。

 

「…まいどあり。また来てね」

「色々とすまなかったな。……それは仲間に?」

「ああいえ、えっと、僕達が調合した回復薬とオラリオの回復薬(ポーション)の違いも確認したくて…」

 

 そう言うと、ナァーザとミアハは驚いたように言葉を詰まらせる。特に、ナァーザに至っては顔が蒼白になった。

 

「…ベル、調合出来るの?」

「え、はい。出来ますけど…」 

「成程…。道理で間に合ってるということか…。そういうことなら悪いことをした…」

「あ、えっと、たぶんお二人が思ってるのとは違ってて、僕が新大陸()で覚えた独自の素材を使ってるので、比較したいのはあるので気にしなくても…」

「ほう、それは気になるな…。差支えなければ、後で感想を聞かせて欲しい。その方がためになる」

「はい。……それでは、また今度」

「う、うん。また…」

 

 そう言ってベルは退店すると、1本の薬瓶を取り出して呷る。

 

「…苦くない。飲みやすい、かも?水で薄めたり、甘味料入れてるのかな」

 

 そう感想を言って納得するベル。回復薬が正規品から薄められ、甘味料で誤魔化していることには悟っていたが、生憎とこちら産のポーションに明るくないために、あえてそうした手間を加えたものだと勘違いしたのである。

 

 その日一日、魔石製品や工芸品を見て回ったり、露天での買い食いなどを終えたベルは満足気に休日を謳歌したのであった。

 

 尚、この品質偽装はベルが疑うことなく使用しているせいで発覚が遅れ、リリルカが気づくのには更に時を要することになるのである。




ナァーザの品質偽装、ベルは気づくが、回復薬よりは飲みやすいしグレートにはハチミツを入れてるせいでそういうのもあるのかと痛恨のスルー。
尚薄めているのも原液のままだと効果が強すぎたりするものに使ってたりするから気づけず…!

自分で調合出来るだけの味覚と目はあるが、肝心の相場を知らず…!そのことはリリも信頼していただけに、こちらのポーションを飲んでいないことを失念するミス。

ついでに言えば今の懐ではそこまで大した出費でもないため、他もそこまで気にかけなかった。
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