ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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因みにベル君は当然各種属性双剣や装備なんかを持ってるので、2話前の金額が全てではありません。これはヴェルフやリリも然りです。
例を挙げるなら第2候補未満のクロムクロスⅢ。ベルゲルヴァトラと違って下位の頃のツインダガーから強化し続けているので、費用は15万7400z。ヴァリス換算すると10億7660万ヴァリスです。

因みに第1話でベルが使っていたベッドにはこれ以上の金額がかかっています。
追い剥ぎの装衣様々だね


不躾な眼差し

 

―――揺籃の時を経て、黒き竜は蘇る。

 

 かつて人が人の尊厳をかけた英雄達の時代。迷宮(ダンジョン)から怪物(モンスター)が溢れ出し、人々を脅かし、そのたびに輝ける英雄が現れ、世を照らしていた荒々しくも華やかな世代。

 

 それが神の降臨以前の古代の時代。今から1000年以上前の時代をそう称している。

 

 だがしかし、更に以前。英雄が英雄として求められる以前より、ダンジョンから地上へと進出した大いなる災厄。

 

 『陸の王者ベヒーモス』。『海の覇王リヴァイアサン』。そして『隻眼の黒竜』。

 

 他を逸脱した圧倒的な力を有する3体のモンスターは、遥か古代の時代から存在し、神の君臨した神時代に於いてはオラリオの責務にして下界全土の悲願『三大冒険者依頼(クエスト)』と恐れられている存在。

 

 15年前、神時代最強を誇った【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の二大派閥が討伐に挑戦。他派閥の尽力や主力級の団員への致命的な損害を受けながらも『陸の王者』、『海の覇王』は討たれる。

 

 しかし、最後の隻眼の黒竜への挑戦は失敗に終わる。現代においてはLv.7が最強の名を有している一方、彼ら彼女たちの団長のLvは前代未聞の8と9。更に幹部にLv7を複数有し、共闘派閥も相応に強力な冒険者たちがいても尚、敗北した。

 

 過去類を見ないほどの戦力と英雄たちに、黒竜討伐は最早成されたに等しいと、神ですら信じて疑わなかったのだ。

 

 二大最強派閥を壊滅させた当の黒竜は、今は大陸の北の最果てにある『竜の谷』と呼ばれる領域にて大精霊の『精霊の嵐』によって封印されている。

 『学区』と呼ばれる施設に設置された結界装置によって封印の維持及び補強が成されている。が、眠りについている黒竜の『竜の鼾』により生じる歪から古代から生きている強大な竜種のモンスターが放たれ、『学区』の結界をも突破し、大陸の北方部を中心に下界に甚大な被害をもたらす『訪竜問題』の要因にもなっている。

 

 というのが、今の隻眼の黒竜に対しての概要だ。

 

 否、()()()と言うべきか。

 

―――鳴動する。胎動する。鼓動が空を割り血脈が沸騰する。邪悪な隻眼が怨恨の焔を灯し、鱗の一欠片に至るまで威圧に満ちる。

 

 恐ろしいことに、黒竜は既に眠りから目覚めていた。時期にすれば、3カ月程前だろうか。

 

 もっと詳細に言うのであれば、今の黒竜であれば『学区』の装置で維持されている『精霊の嵐』を喰い破り、いつでも下界を絶望の淵に立たせることが出来た。

 

 しかし、目覚めた黒竜にはそれをしない理由があった。

 

―――『敵がいる』。

 

 それはかつて、己の片目を奪った人間が立ち塞がった方向にあった。

 

 己に匹敵しかねない邪龍の気配。そして、それすらに反逆せんとする異質な龍の気配。

 

 それらに比べれば脅威度は下がるものの、戦えば無事とは済まないであろう強大な龍のエネルギー。その他様々な龍の気配が一箇所に集まっていた。

 

 どれか一つであれば、黒竜は己の存在を脅かす唯一の外敵として今直ぐにでも誅伐せんと谷を抜け出すこともあったかもしれない。

 

 しかしながら、ここまで集まっていることに対して、新たな脅威としての警戒が勝ったのだ。何より、いつでも破れる封印とはいえ、眠っていたことは事実。目を奪われ、鈍っている今封印の外に出れば、感知した存在もこちらを認識して襲いかかってくるだろう。

 

 となれば、今できることはこの封印の中でかつての力を取り戻し、生まれて初めての外敵へ備えることだ。

 

 黒竜は未だ封印の術中にあると偽装するために再び瞳を閉じ、その裏で、凝りをほぐすようにゆっくりと肉体の調子を元に戻しているのであった。

 

 

 

 

 

 

 ベルとリリルカは先日のミノタウロス事件をギルドに報告し、参考証人として聴衆されたものの、その実態の確認が取れたことで解放された。

 

 そして今日。未だヴェルフの鍛冶が続いていることもあり、本日も自由探索ということになった。

 

 ベル自身には特に予定はなかったのだが、リリルカが元主神ソーマの元へと畑の手伝いと拡張、及び他の植物の生育などを教えるということになったので、ベルは一人でダンジョンへと赴くのである。

 

 今回の目的は白樹の葉(ホワイトリーフ)やその他薬草などのクエストに頻繁に出される素材を依頼発生時に納品出来るように集めておく、くらいだろう。

 

 採取と金策、ついでに検証。

 

 ベル達の今の装備はギルドワークα装備。

 工房の親方達が造った一品物で、その見た目は男性ならば一期団きっての凄腕ハンター『ソードマスター』そっくりの防具なのだ。

 

 もっとも、ソードマスターその人が纏う旧式のレイア装備の見た目を模しているだけで、実際の性能や発動スキルは大幅に違う。このような凝った造りにした親方達に感嘆ものだろう。

 

 やはり採取ならばこれだと引っ張り出し、毒耐性や麻痺耐性などを整えれば出発だ。

 ここ迷宮都市ではフルフェイスの鎧姿など珍しくもなく、強いて言えば竜鱗をあしらった意匠に目を奪われることこそあれど、その程度。

 

 世界中から集まる人々の多様性に比べればなんてことはないのだ。

 

「植生学と地質学は分かりやすいけど、ダンジョンだと活性化した採取ポイントはどうなるんだろう…?」

 

 歩きながら独り言ちる。そう、ベルの今日の検証内容は植物やキノコなどの消費アイテムの採取量を増やす『植生学』。骨や特産品、鉱石などの採取量を増やす『地質学』。そして剥ぎ取り回数を一回増やす『剥ぎ取り名人』だ。

 

 何れも、採取用スキルとして重宝していたが、こちらではダンジョンという環境故に何か変化があるかもしれない。特に、特産品の定義であったり、消滅するモンスターの死体であったりと、試す価値は十分にあるだろう。

 

「……?」

 

 検証内容を頭の中で反復していると、ベルは視線を感じて咄嗟に背後を見た。

 

 それはただ物珍しげに目を向けた、という程度のそれではなく値踏みするような、無遠慮な視線。しかし、直ぐにその違和感も消え失せた。

 

「っ…?気のせいかな?」

「あ、あうっ…」

 

 不思議そうに辺りを見回すベルの後方から声が聞こえた。

 直ぐ様反転し、様子を見ると、ヒューマンの少女が道の中央でへたりこんでいた。

 服装は白いブラウスと膝下まである若葉色のジャンパースカート。更にその上にサロンエプロン。

 薄鈍色の髪を後頭部でお団子状にまとめ、ポニーテールのようにぴょこんと尻尾が垂れている。

 

 人の往来も激しい石畳に座り込むという真似には見えず、直前に聞こえた声は、多分この人のものだろう。

 

「…大丈夫ですか!?」

「は、はい。…急に、立ち眩みがしてしまって…」

 

 手を伸ばすと、若干躊躇するように目を彷徨わせたので、威圧感をなくすためにヘルムを取って素顔を見せる。

 

 どうにか体を起こす手伝いをするも、後に引いたのか、足腰は心もとない。というか、全体的に顔色が悪そうだ。

 

「立てますか?よろしければ、肩を貸しますが…」

「い、いえ、そこまでしていただくわけには…」

「でも、顔が真っ青ですよ。……えっと、確かそこのカフェ…?酒場?ですよね?」

「は、はい。じゃあ、お言葉に甘えます…」

 

 店舗名は『豊穣の女主人』。

 

 外に出ていたのはこの店員さんだけの様で、まず入り口を軽くノックしてからそっと扉を開けた。

 

「あのー、すみませーん」

 

 そう声をかけると、店内の準備を進めていたウェイトレスさん達から視線が集まる。……何だか、剣呑なような…。

 

「何だい?まだ店は開けてないよ?」

「えっと、ここの女将さんですか?」

 

 それも、ドワーフの女性が声をかけたことによって消え失せる。

 

「あの、外に出られてたここの店員さんが体調を崩してしまったみたいで…」

 

 そう説明すると、視線を店員さんに向け、青い顔を見て「そうかい」と言って上げてくれた。

 

「座れますか?」

「はい。……ありがとうございます」

 

 近くにあったカウンターの椅子に腰を降ろさせてやると、女将さんはその店員さんに何があったのかを問いただしていた。

 

「で?シル?一体どうしたっていうんだい?」

「…はい。すみません、ミア母さん。何だか、急に気分が悪くなってしまって、立てなくなってしまったところをこの人に支えてもらったんです」

「ふぅん…。それで、仕事の続きは出来るのかい?」

「いえ、それが……まだちょっと頭が痛くて……。すみませんミア母さん…」

「…まあ、いいさ。そんな奴を表に出すわけには行かないしね。……リュー、シルを部屋に運んでやりな」

 

 そう言うと、薄緑色の頭髪のエルフの店員がシルと呼ばれていた彼女を連れて奥へと消えていった。

 

「アンタもすまなかったね。見た所、冒険者かい?」

「あ、いえお気になさらず。今日は特に予定もなかったので…」

「礼ってわけじゃないが、今夜はウチで食ってきな。そんな装備着てるくらいなら、ウチの飯代くらいは大丈夫だろ?ちょっとしたオマケくらいはするさ」

「そう、ですね。じゃあ、今夜はお世話になっちゃおうかな…。あ、ファミリアの仲間や神様も誘っていいですか?」

「客が増えるんなら店としては万々歳だよ」

「あはは…楽しみにしてます」

 

 今は開店前。あまり長居しても邪魔になるので、言葉少なに退出する。

 

 ……そういえば、何気にオラリオに来てから外食はてんでなかった気がする。いや、向こうにはお店がなくて、全部料理長か自分達で作るかだったから仕方ないんだけども。

 

「よし、じゃあ今日も頑張ろう!」

 

 余談だが、植物系アイテムは倍になったし、剥ぎ取りも一回増え、鉱石も倍になった。特産品は雲菓子(ハニークラウド)水晶飴(クリスタルドロップ)等の、迷宮独自の資源なんかが当てはまるみたいだった。

 

 因みにどんなふうに増えたのかというと、採取したそばから同じ場所で生成された。確かにどれも迷宮によって生成されたものだけれど、あまりに不思議な光景に言葉を失ってしまった。

 

 こっちでも、採取クエストなんかでは重宝することになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜、大漁大漁!」

 

 ベルが迷宮から帰る頃には、陽は傾き、赤々とオラリオの街並みを照らしていた。

 

 そんなベルは調子の良さそうに足取りが軽い。それというのも、大樹の迷宮で需要の高い薬草やアイテムなんかを他が羨む程に大量に採取することが出来たからである。

 

 それも当然。迷宮には定位置に湧くものと、ランダムに生えるもの等があるのだが、ベル達の持つスキルではその両方の位置が綺麗に分かるのだから。

 

 ましてや、採取量を増やすスキルで延々と練り歩いていたのだから、ベルの採取量のみで一月以上の仕入れ量に匹敵する程。

 

 内、一部を換金して、現物を持ち帰る。自分達で確保しておくという理由も少なからずあったが、殆どは実物資産のようなものだ。入り用があれば使えばいいし、然るべき場所に安定して供給するのも手だ。

 

「こんなに取ってもどこからともなく生えるなんて、ほんとに不思議なところだなぁ」

 

 これまでにもたくさん不思議な点はあっただろうが、ベルは生態系への影響を考えなくていい点が気にかかったらしい。

 

「まあその分、こうして余分にとっておいたり、必要な時に取りに行けるんだけどさ」

 

 そう一人呟きながら、教会の隠し部屋へと降りる。

 

「神様、リリ、今帰ったよ」

 

 ベルが帰ると、待ちわびたとばかりリリが出迎えた。

 

「お帰りなさいベル様。成果はどうでしたか?……どうやらその顔をみるに、うまくいったみたいですね」

「そうなんだよ。理屈は分からないけど、植生学でも地質学でも増えてさ。剥ぎ取り回数も一回多くなってたし、マップと組み合わせると…この通り!」

 

 ベルが握りしめる革袋にはジャラジャラとずっしりとした金貨の山。いくら分けたとは言え、量が多過ぎることから、一部の薬草類は医療系ファミリアでも大手の【ディアンケヒト・ファミリア】へと直接売ることにしたのだ。

 一応【ミアハ・ファミリア】へと売ることも考えたが、やはり店の規模や売り上げから、そう多くあっても活かせない…というか客層から逆に赤字になってしまうだろうから、下級冒険者から第一級冒険者までもがお世話になる【ディアンケヒト・ファミリア】にした。

 

 いくら中層の薬草とはいえ、高級なポーションだけが売れるわけではない。よって、十分に需要は満たせた筈で、更にそれなりの数を安定供給できるというのは無視できない筈だ。

 これからも定期的に売りにいき、良客として見てもらおう。

 

 因みに今のベルのファミリアの運営やら備品やらを抜いた個人的な所持金は200万ヴァリスとちょっと。リリは節約分それを少し上回るくらい。ヴェルフは工房の改造に資金を充てているため20万ちょっと程度だったりする。

 

 貴重品類などをしっかり仕舞うと、ひょっこりとヘスティアが顔を出していた。

 

「お帰りベル君。今丁度リリ君と晩ご飯の話をしていたところなんだよ」

「そうだったんですか?」

「うん。僕らも……というか、ベル君達は暫くダンジョンづくめだったわけだし、しっかりとしたご飯は食べてないだろう?最初の頃は色々と手続きとか慣れない面もあったし、その後は籠ってたからね。なら、落ち着いてきた今、歓迎会も兼ねてファミリアのみんなで外食にでも行こうかと考えてたのさ」

「成程…。それで僕を待ってたと…」

「うん。ヴェルフ君には悪いけど、今回は【ヘスティア・ファミリア】結成のお祝いだからね。下手に除け者にするものあれだし、それならあっちも用事がある今が丁度いいかなってさ」

 

 ヘスティアは3人の友情を感じていたからこそ言い出しにくかったが、丁度機会が訪れたということである。ただし、ベルの帰る時間が分からなかったために予約などはしておらず、今から入れる店を探しに行こうと支度を進めていた。

 

 と、そこでベルは今朝の出来事を振り返った。

 

「あ、それならあるお店にちょっと誘われてて…丁度みんなで行こうと思ってたんだ」

「そうなのかい?さっすがベル君、これは世界が僕らを祝えと言っているに違いない!」

「あ、あはは…」

 

 偶然の一致に舞い上がるヘスティアに苦笑いをこぼす。ベルはホルスターやら装備やらを外してアイテムポーチも整えると、以前にも着ていたブリゲイドαシリーズを身に着けていく。

 ……何だかすっかり普段着のような扱いになっているが、これでもれっきとした上位装備。下手な第一級冒険者の装備よりも強かったりする。

 作成には闘技場のコインなどを一定数提示する必要があるので、闘技場クエスト達成の証でもあるこれを肥やしにするのは勿体無かったのかもしれない。

 

 因みに、リリルカはずっとEXベニカガチを愛用している。本気の装備というわけではないのだが、軽い状態異常でのサポートと、前に着ていたコートと着用感が似ているからとのことらしい。

 

「それで、どういったお店なんですか?」

「西地区の方のお店で、名前は……『豊穣の女主人』……だったかな?」

 





【悲報】黒竜復活してた

はい。今作はベル達が来た時空の歪みと強力なモンスターの気配に生存本能を刺激されて目覚めてます。が、封印されている体をもったまま力を溜めています。何せ感知したのが黒龍の邪眼にアルバ武器、ムフェトの力の結晶、その他古龍や古龍級の素材が一箇所に集まっているからね。

因みに某美神様はカウンターは食らってません。ただ見ようとして失敗し、何故か足の力が抜けて悪寒がしただけです。いやぁ、何でやろな。
某美神様はベル本人に悪感情を抱いたりはしてませんが、今回のことで余計に興味を持たれました。

植生学とか剥ぎ取り上手がしっかり機能する模様。おかげで採取系のクエストがイージーモードに。ただ深ければ深いほど収入が増える特性上、ずっと採取装備のまま下まで降りることになるので、モンハン世界ほど欲しいものが増えるわけではない。
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