ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
スト6とコラボはなんとなく予想してましたが、まさか豪鬼が重ね着だけじゃなくて本人まで出てきて、その上でしっかり強い攻撃として動けるなんて誰が予想できたでしょうか…。
本拠を出て歩くこと少し。見覚えのあるカフェテラスを見つけることが出来た。
他の商店と同じ石造りだが、二階建ててやけに奥行きのある建物は、周りの他の酒場と比べても一番大きいかもしれない。
『豊穣の女主人』。朝にシルさんを運び込んだ酒場だ。
中はわいわいがやがやと活気に溢れており、中には冒険者と思わしき人が酒を煽りながらダンジョン内でのことや下らない話なんかをしている。
何だか懐かしい雰囲気に誘われて扉を開けると、その勢いもわずかに落ち、視線がこちらを向く。
な、何か変なところでもあったかな。
すぐに視線は逸らされ、先程と同じ喧騒が戻ってきたが、気になる。するとリリがすかさず耳打ちをする。
「ベル様、きっとその服装に注目していただけだと思いますよ」
「ブリゲイドαシリーズに?」
「はい。その高級感のある旅団服というのは概ね貴族街などを訪れることが多いので、あまり市井の酒場へは来ないのではないのでしょうか。加えて、ブリゲイドαシリーズは上位素材を多く使っています。防具としての性能は勿論、質も相応ということです」
「そっか。確かに僕もマスターランクのバフバロ布団使ってたし…」
そう言われると、確かに。上位の防具として申し分ない強度を備えておきながら、肌触りや質感も上等だ。すっかりその加工技術に慣れてしまったけど、昔の僕が見ればあんまりに上等な品に思いを馳せていたことだろう。って待てよ。
「……もしかして、ボンボンみたいに見える?」
「いえまあ、似合ってはいますし、自然体なので気にはなりませんが…」
そういうことなら良かった。
ふうと胸を撫で下ろし、周囲を見る余裕が出来る。
内装は外観から感じた通りの酒場と言った雰囲気が残るが、それでもシックさを両立している基調だ。入り口近くにカフェテラスがあったから、そういった需要も狙っているんだろうか。
僕達ハンターが集まる集会場は、そもそもの食事場の少ない田舎の村か、余程のことでもない限り一般の人が訪れることはないから新鮮だ。
それに、腕相撲用の樽なんかもない。いや、これはあっちが盛んだっただけか。
そして、次に店員。最初に目についたのはカウンターの中で料理や酒を振る舞う恰幅のいいドワーフの女性。招待してくれた女将さんだ。
てんてこ舞いに動き回るのはキャットピープルの少女たちやヒューマンの女性。中にはあの気位の高いと聞いたエルフまでもが加わっている。朝に見た何名かもここで見かけた。
それにしても…。
うん、何だか新鮮だ。新大陸やギルドの方では給仕の役割は殆ど見習いアイルーなんかがやっていたし、人が働いている場合でも、ここまで若い女性が集まっていることはなかったからだ。
……酒場の名前の由来をなんとなしに察した。
店内は明るい雰囲気で、店員さん達もはきはきとしてげんきがいいし、飛び交うのも罵詈雑言でなく笑い声ばかり。今の時間帯は酒場だからか、男性の冒険者が多く、鼻を伸ばしている人もいるけど、やはり純粋に酒や料理に舌鼓を打っている。
期待していなかったわけではないけど、これは想像以上だった。
「ほーう…。随分と良さげなところじゃないか」
「存在は知っていましたが…。成程、いいところですね」
どうやら神様やリリにも好評な様で、朝の縁に感謝する。
すると、僕達がやって来たのに気付いたのか、シルさんがこちらへと駆け寄ってくる。
「ベルさんっ」
「どうも。来ちゃいました」
「はい、いらっしゃいませ。……朝は本当にごめんなさい!体調も今は戻ったので、しっかり働いちゃいますよ!」
シルさんとの出会いは二人にも伝えているため、成程と納得した様子だ。
「そちらはファミリアの方ですか?三名様ですね。……ただその、申し訳ないんですが、今は三名様以上で使用できる席が埋まってしまいまして…。カウンター席ならご案内できるんですがそれでもよろしいですか?」
「まあ予約もしてなかったしね。ボクは構わないよ」
「まあ、少し遅いですからね。むしろ席が空いてることに感謝しましょう」
とのことで、僕達は入り口から見て左奥の壁際のカウンターに、神様、僕、リリの順番に着席した。
「おっ、来たね坊主。ちゃんとファミリアのお仲間も連れてきたみたいだね?」
「はい。見た限り、期待以上のお店で少しワクワクしてます」
「へえ、言うじゃないか…。そんじゃ、その期待に応えてやらないとね!」
女将さんとしては、こう、豪放磊落といった言葉が相応しいだろうか。現大陸ではこういった性格の女将さんは何人もいたため、少し気分が楽だ。
ただ、ここの店員さんもそうだけど、中でも女将さんから感じる気迫は特に凄い。もしかしたら、昔は名のある冒険者だったりするのかもしれない。
そのことにリリも気がついているようで、こうも見目麗しい女性ばかりなのに、そういった問題が殆どないのはその為かと納得していた。
「ず、随分とするね…」
「まあ、その分色々と保証されてるんでしょう」
「あ、お金の方は気にしないでもいいですよ。今回はお祝いですし、懐も潤ってますから」
神様がメニュー表を見て、その値段に驚愕する。…まあ、普通にしていれば、50ヴァリスもあれば腹を満たせる生活に身を置いていたんだから、料理の中でも最安値のパスタで300ヴァリスというのは中々響いてるんだと思う。
でも、今は正直かなり余裕があるし、貯金も既に金庫に収まりきらないくらいある。
急にお金が入ったから神様は小市民的な感性が抜け切らないらしい。
「そ、そうかい?でも君たちが稼いだお金なわけだし、それって何だかヒモみたいじゃないかい?」
「そういうものじゃないんですか?特に探索系のファミリアなんて。神様がいるから、その稼ぐための力を発揮できてるんじゃないですかね」
「何を今更。ヘファイストス様のところにいた時はヒモじゃなかったとでも?」
「そ、それはお互い神界からの親友だったから…。…でも、そうだね。うん、暫く一人暮らしだったから、慣れてなかったのかも。よーし、そういうことならじゃんじゃん頼んじゃうぜ?」
神様はいい笑顔であれこれと料理やお酒なんかを頼み始めた。さて、迷いもなくなったことだし、僕たちも取り敢えず気になる料理なんかを頼んでいく。
いくつかの料理とお酒が出てきた所で乾杯だ。
「それじゃあ、ボク達の出会いとファミリアの結成を祝って、乾杯!」
「乾杯」
「乾杯です」
3人でジョッキを打ち鳴らし、料理を食べ進めていく。
まず手にかけたのはナポリタンだ。具材はシンプルなベーコン、ピーマン、玉ねぎの3種類。ナポリタンと言えば、ベルナ村で食べたベルナスとシナトマのパスタが思い出深い。
ベルナ村の特産品でもあるベルナスはかなり応用が利き、あの天にも昇る味と称される完熟シナトマトの味にも見事に調和していた一品、いや逸品だった。
流石にそれに比べると質自体は劣るかもしれないが、腕がいいのか、この街で見ても物凄く美味しい。
「美味しい…!すごい当たりじゃないか!よくやったねベル君!」
「ええ、とても美味しいです。どれも専門店クラスはあるでしょうか…。この盛況も頷けるというものです」
神様もリリも気に入ったようでよかった。と、ほっとしていると、ドン!とナマズに似た魚の揚げ物が出される。でも、誰も頼んだ覚えがないので、顔を見合わせる。
そんな僕達を見て、女将さんは快活に笑う。
「ほら、朝に言ってたオマケ。今日のオススメ!代金はいらないよ!」
「え、今日のオススメって……850ヴァリス!?い、いいんですか?」
850ヴァリス…。普通の食事14回分もの料理をタダで!?
僕がそう困惑していると、女将さんは気にするなとても言いたげに手を振った。
「気にしなさんな。礼もあるし、今日は祝い事なんだろう?…それにこんだけ頼む上客にはまた来てほしいからね」
「へ?」
女将さんに言われて、卓を見れば、そこには山盛りの料理と様々なサイドメニューがカウンターを埋め尽くし、一山作っている。
「………あの、もしかして頼みすぎだったり……?」
「?何だいあんちゃん、そんな大食漢のクセして無自覚かい?」
見れば、神様があまりの物量に物理的に潰されかかっている。が、それを気にせず色々な料理を摘んでいくリリ。
視線に気付いたのか、骨付き肉を手にしたリリがこちらを向く。
「ああ、そういえばベル様って田舎からあちらの方に直行でしたね。はい、私たちが普段口にする量は一般的にはかなり多いですよ。食後も一抱えもあるこんがり肉食べれるでしょう?」
「う、うん…。そうだけど…。もしかして、他のお店でもなんか言われてた?」
「直接的には何も。ただ、お店の方は青褪めてましたね」
「嘘ぉ……」
ここに来てカルチャーショック…!飲食店とか近くにない田舎から新大陸のハンター飯を食べていたから、自然と店ではそれぐらいの量を普通に出すと思ってた…!
「はっはっは!まあ、ウチは宴や冒険者も多いからね!このくらいの量なら娘っ子が悲鳴を上げるだけさ!」
「いえそれが不味いんじゃ…」
「いい経験になるからいいのさ。それに、その分金も落としてくれるんだろう?」
「くそぅ…。このままじゃここの常連になっちゃう…。あ、美味しい。これ美味しいですね女将さん」
「美味いのは当たり前だよ。しかしどんな感情で言ってるんだいそれ」
うん。お金に余裕あるし、食べたい気分の時はここに来ようっと。
そう僕が密かに常連になる決意をした所で、シルさんがやって来る。
「楽しんで……ますね」
どうやらシルさんもこの量には驚いている様で、既に空になったお皿の山を見て頷いた。壁際の丸イスを持ってきて、隣に陣取った。
「お仕事はいいんですか?」
「キッチンは凄く忙しいですけど、給仕の方は間に合っていますから」
「そういうものですか…」
「そういうものなんです」
それから、シルさんはここのお店のことを話し始めた。
ちらりとリリ達の方を伺うと、神様の内職(あちらの世界の植物の扱いや進展)の話をしていたので、それならいいかと向き合う。
僕達の読み通り、ここの女将さんが元冒険者であったこと。神様の許しを貰って、半脱退状態であること。
従業員は女性のみの受け付けと徹底的で、結構訳ありな人も多く、それでもミアさんは気前よく受け入れてくれるのだとか。
ここの従業員に強そうな人が多いのはそういうことらしい。
「じゃあシルさんも?」
と尋ねてみる。僕としては、シルさんの纏う雰囲気も何だか只者ではないような気がするので尋ねてみるも、彼女は「働く環境が良さそうだったので」と答えた。
まあ、そりゃそうか。ただの客に言わないよね。それに同性だけってのは十分な理由になるだろうし。
「このお店、冒険者さん達に人気があって繁盛しているんですよ。お給金もいいですし」
「へえ…。やっぱり値段が高い所はそういう所も充実してるんですね」
そして、シルさんは店内を見渡す。
「沢山の人がいると、沢山の発見があって……私、目を輝かせちゃうんです」
瞳を細めてシルさんはこぼした。
「とにかく、そういうことなんです。知らない人と触れ合うのが、ちょっと趣味になっているというか……その、心が疼いてしまうんです」
「……結構、凄いこと言うんですね。でも、ちょっとだけ分かります。……僕も、色々な初めてのことを経験して興奮ばかりしてましたし、身につけているものや会話から、色々なことを想像してしまいますし…」
そう、ハンター同士の宴なら、その依頼での話や、フィールドでの情報なんかが行き交うし、新大陸では見たことない装備や、面白い情報、そのハンターの経験なんかが出てくる。
だから、旅先の集会場での食事は色々と楽しかったし、それ繋がりで新しい縁ができたこともあった。
そうシルさんの言葉に共感していると、突如、どっと十数人規模の団体が酒場に入店してきた。
僕達のいるカウンターから対角線上の、予約済みだった一角へと案内される。
一団の種族は統一性がなく、けれどその実力はこれまでに見てきた中でもかなり高いレベルで備わっている様に見える。
特に、纏まっている金髪の小人族、緑髪のエルフ、そしてドワーフの三人は一つ抜けて、上位のクエストならばどれでも狩猟許可が出せそうな程に。
(って、あれは…)
そして、その一団の中に砂金の如き髪を携えた、まるで妖精や精霊みたいな整った顔。
アイズ・ヴァレンシュタインさん。
先日迷宮内で出会った不思議な様子の彼女がそこにいた。
となると、その一団は紛れもなく【ロキ・ファミリア】だ。上位ハンターに匹敵する人員があんなにいるのか…。
周囲の客も【ロキ・ファミリア】であることに気づくと、容姿に見とれていた反応から一転、ひそひそと密談を交わす。
「あれが」「……巨人殺しの【ファミリア】」「第一級冒険者のオンパレードじゃねえか」「どれが噂の【剣姫】だ」
聞こえてくるさざ波のような声には全て畏怖がこめられていた。旅の途中、現大陸出身で筆頭ハンターでもあったエイデンさんや、超エリートの青い星にそんな目が向けられることは前にもあったけど、僕達や調査班リーダーは完全に新大陸で活動していたから、みんな見知った人ばかりでそういう噂はされなかった。
仕方ないとは言え、僕もそういう噂されてみたかったな。という気持ちがないわけではない。ほら、僕も数少ないマスターランクのハンターだし、あの黒龍に立ち向かった一人なんだし…。
いや、黒龍の件は細かい情報は秘匿されてるみたいだから広まらないのが自然なんだけどさ。
そう、嫉妬か悔恨かよくわからない悶々とした思いを抱えていると、【ロキ・ファミリア】の来店で目線を戻したリリが呟いた。
ちなみに、神様はリリの話と大量の食事とお酒でダウンしていた。
「【ロキ・ファミリア】ですか……。こんなに早く出会うとは思いませんでしたよ」
「あはは…。まあ、同じ都市に暮らしてるわけだしね」
そうしていると、一人の人物が立って音頭を取った。
「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなごくろうさん!今日は宴や!飲めぇ!!」
あの赤髪の女性は、雰囲気が違うので多分神様…【ロキ・ファミリア】の主神であるロキ様だろう。
その音頭に合わせて、【ロキ・ファミリア】の人たちは騒ぎ出した。「ガチン!」とジョッキをぶつけ合い、料理と酒を豪快に口の中へ運んでいく。
ここも、向こうとは違う。向こうだと、ハンターは基本最大でも四人でしか組まないから、出発地点や依頼の関係でどれも小規模な組み合わせで、それを超えた数となると、根ざした拠点で親しい人物が多かったり、或いはギルドからの大型依頼、防衛クエストなんかでしか見かけることはなかった。
調査団は全体で成し遂げることが多かったから、その機会も相応に多い。これも現大陸で知ったことだ。
「【ロキ・ファミリア】さんはうちのお得意さんなんです。彼らの主神であるロキ様に、私達のお店がいたく気に入られてしまって」
いつか【ヘスティア・ファミリア】もあの頃みたいな大所帯になるのだろうか。と思いを馳せているとシルさんが耳打ちしてくれた。
「……どうしようリリ」
この前のリリの忠告が頭を過る。
「素知らぬ顔をしてればいいんですよ。幸い料理の壁もありますし、向こうは宴の最中です。そんなに気づきませんし、流石に宴から抜け出してこちらへ来ることなどないでしょう」
「そ、それもそっか」
リリの言葉になる程と納得した僕は、視線から気づかれないように目を逸らして、再び食事に勤しむのであった。
うん。折角の外食だからもっと色々と食べたいし…。ね?
ベルは集会場で色々わちゃわちゃしてるのが好きだった人です。
おまけ
ソーマ様、新視点に驚く。
ソーマ「これは……。芋の焼酎か。黄金芋酒とは別だな」
リリ「はい、かなり辛口ですが…」
ソーマ「ふむ……。……っ!何だ、この辛さは…!アルコールや芋由来のそれとは異なる刺激が混在している…!」
リリ「おお、流石酒神…。そこに一口で気がつくんですか!」
ソーマ「だが、分からない…。何だ?何を入れている?この私が想像も出来ない素材……。痺れる様な刺激…だが、香辛料の類でもない…。分からない。一体、何を使っているんだ…?」
リリ「秘密はこちらです」
ソーマ「それは…牙か?それもモンスターの?」
リリ「はい。私たち新大陸調査団では、このドスギルオスの牙を隠し味として漬け込むという独自の手法を用いているんです」
ソーマ「モンスターの牙を、だと?」
リリ「はい。ドスギルオスの牙には対象を痺れさせる麻痺毒がありまして…。それを芋やアルコールで分解しながら、素材由来の旨味や辛さを実現させているんです」
ソーマ「成程……。それは、私にはなかった発想だ。………フッ、下界の子どもたちを見限ったのは、時期尚早だった、ということか」
リリ「あの、異世界なので多分下界云々は関係ないと思いますよ?」
ソーマ「…………そう、か。しかし、いい刺激になった。思いもよらぬものが、素晴らしい組み合わせを生み出すことも、あるのだな。それは存外、お前の現状にも、当てはまるかもしれないか……」
『鬼芋酒』登場作品:MH3, MHW
芋を材料に作られた、鬼もうなるほど辛口のお酒。
女性は男性にこれを進められたら注意が必要。
新大陸調査団の間では、ドスギルオスの牙を隠し味として漬け込む独自の製法があるという。