ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
っていうか何かもう評価バーに色ついちゃった。嬉しみ
ベル達は、元の世界へ帰るに向けて、どうしても持っていけないもの。あまりにも堆積している素材や代えの利くものなんかを除いて、荷物を纏めることした。
……のだが。
「おいベル。お前、どれだけ持ってくつもりなんだよ…」
「ベル様……」
「ヴェ、ヴェルフやリリだって!」
お出しされた光景は、皆身の丈を優に超えるバッグに大量の物資を詰め込んだばかりか、体中に道具を収納し、背には荷物に収まらなかったであろう幾つもの武器が背負われていた。
そして当然、残りの二人も同じことだ。
「お、俺は鍛冶師だからな。修繕に使う素材の代用品が分からない以上念もって持って行く必要があるんだよ。武器も防具も、こっちの技術の粋を集めてるんだ。こっちの鍛冶道具ももっていかなきゃ使えないかもしれないだろ」
「リリだって、お二人ほど直接戦闘に長けているわけではないので、どうしてもアイテムや保険の武具が必要でして……」
「それなら僕だって、属性武器がメインなんだから武器に防具にお守りや装飾品、どれも複数種類持っていかないといけなくて…!」
ベルが身につけているのはEXオルムングβシリーズ。腰に佩くベルゲルヴァトラと同じく氷刃佩くベリオロスから作られた防具だ。同じモンスターの素材を使った装備は、余程偏ったものでもなければ大抵の場合相性はいいのだ。
ベルは、装飾品で自分好みのアレンジを加えられるβを愛用しており、よく属性強化の装飾品であったり、身のこなしを補助するスキルを発動させていることが多い。
そうして見れば、ヒット・アンド・アウェイや身軽さを活かした立ち回りで、攻撃回数の多い双剣の会心率も上げられるこれは、ベルにとってはかなり使いやすい部類の装備とも言えるだろう。
とはいえ、状況や相手、目的によって装備をまるっと変えることもよくあるので、一概にこの装備が最高だとは言い切れないのだが。
「……やっぱり、荷車でも貰うか」
「うん、そうだね。ちょっと、ここまでとは思ってなかったから…」
「そっちのほうが良さそうですね…」
最初に提案されていた荷車は、返せないことがあって断っていたが、思えばこれも見越していたのだろう。
思ったよりも知られているのだなと、今更ながらに恥ずかしくも誇らしくもある。
荷車を貰いに行くと、その見た目に大笑いされ、やっぱりいると思ったなどと言われて譲り受ける。幸い、というにはおかしいかもしれないが、この荷車は活動初期に緊急用に使っていただけで、現大陸との行き来が楽になった今ではもう使われることのないものらしい。
一纏めにして、マイハウスをさっぱりとさせた3人は、お世話になった方々に挨拶回りを始める。
まずは当然、自分たちを受け入れる判断を下した総司令。次いで、アステラでの生活の便宜を図ってくれた流通エリアを取り仕切る3人の主任。クエスト前の料理を作ってくれた、おばあちゃんに料理長。役立つ知識を教えたり、護衛任務に同行したりした研究員の方や、工房で働く職人たち。そして、これまで共に狩りをしたり、先達として様々なことを快く教えてくれたハンターのみんな。
大団長や竜人族のハンターには会えなかったが、今日の夜に行われる送別会には出席するらしい。そこで、今までの感謝を伝えよう。
やっぱり行き来には時間がかかるもので、すっかり日は落ち、とうとうアステラではベル達の送別会が行われることになった。
研究員もハンターも、みんな混じっての大宴会。集会酒場だけでなく、アステラ全域で同じ騒ぎようだ。
料理はわざわざアステラまで来てくれたセリエナの料理長と、こちらの料理長が腕を振るってくれている。
最初はあまりの量に圧巻した料理も、過酷なハンター生活を通してそれだけ食べなければやっていけないことにも気づいたものだ。
ここには、今まで新大陸で新たに発見した食材もふんだんに並んでいる。中には、自分たちがクエストを受けてはるばる取りに行ったものも含まれていた。
「おーい、こっちだこっち!」
声をかけられて見れば、目立つ船頭に調査班リーダーが待っていた。どうやら、そこがベル達の席らしい。
「ほら、主役なんだからここ座れ」
「ありがとうございます」
給仕のアイルーに頼んで席に料理を運んでもらう。ベルが持っているのは、草食竜と飛竜の卵の目玉焼きに、ビッグサーロインの塊肉とポポノタンの塩焼き。サシミウオの刺し身盛りに、ツボアワビの盛り合わせ、城塞ガニ焼きなどが続々と運ばれていく。
狩猟前のネコ飯ではないので、どれだけの種類をとっても支障はない。折角だから、美味しかった思い出の食材をたくさん選んでいる形になる。
ヴェルフやリリも同様、リリは野菜や果物、乳製品を、ヴェルフは酒や穀物、そして珍味などをと分担して席に集まり、互いにシェアをして食事を進める。
場に酒が出回ると、総司令の言葉と、調査班リーダーが乾杯の音頭を取る。
「あー、それじゃあ、俺達調査団のハンター、ベル、ヴェルフ、リリルカの新たな門出と、故郷への帰還を願って、乾杯だ!!」
「「「おー!!!」」」
そうして、宴は始まった。
挨拶回りでは時間がなくてしていなかったような話や、昼は狩りに出ていて話せなかった5期団所属のハンターとも言葉を交わす。
やれ、最初の頃は危なっかしかっただの、端から見てて信頼関係がなくてハラハラしただの。そして、それも含めて見守ってくれていた彼らとも、今では肩を並べて狩猟に出れるようになった。
5期団はみんな経験を積んだハンターだから、最も新参なのが僕たちで、全員の後輩として見ていたこと。自分たちにとって当たり前でも、未知のことに目を輝かせたり、有効な立ち回りを考える姿を自分たちに重ねていたことなど。酒の勢いもあってか、感慨深げに、何度も話している。
「新しい土地……いや、お前たちの故郷だったな。元の場所でも、頑張れよ。新大陸で学んだことは、きっとそっちでも活かせるはずだからな!」
最後にバシンバシンと背中を叩かれ、挨拶の済んでいないハンターは、あの人で最後だ。
くぴ、とレウスウィスキーを煽る。最初は弱いお酒しか飲めなかったが、あまりの美味しさと、こちらでの屈強な食べ物を摂り続けてきたからか、今では灼炎スピリタスだって飲める。………ジョッキ一杯でダウンするから飲まないようにしてるけど。
「おう!飲んでるか!」
「「「大団長!」」」
どしり、と隣に腰掛けたのは筋肉質なよく焼けた体に、荒々しくも後ろに伸びた頭髪を持つ男性。もう既にお年を召しているというのに、まるでそうは思えない。
ソードマスターさんからも、
そんな傍若無人な人だけど、それでもやっぱり人の上に立つ人なだけあって、信頼できる要素も多くある。茶目っ気も、カリスマの一つというやつかもしれない。
「レウスウィスキーか。知ってるか?今出てるレウスウィスキーはあの時のやつだぞ?お前たちが旅立つからと開けてくれたんだ」
「…!そうだったんだ…。何か、感慨深いです」
あの時、というのは大団長の思いつきでレウスウィスキーを作ろうということになった話だ。熟成樽に入った最高級ウィスキーを、リオレウスの目撃情報のあった場所まで持っていって、ブレスを誘発してタルを焦がそうとしたのだ。
「おお、あの時のか…!あれは、マジで死ぬかと思ったな…!」
「ほんとですよ。リオレウスが狙いだったのに、出てきたのは火竜の希少種夫婦……!運がいいのやら悪いのやら…」
結局、その希少種は途中で正式にクエストを受けた青い星が単身リオレウス希少種を相手どったから、僕たちがリオレイアの希少種を討伐することで解決したんだった。
その時、通常種よりも高い火力で炙られたものとのこと。
確かに、言われてみれば前に飲んだ時よりも味が濃くてスッキリしている。
「そうだな…。積もる話はあるだろうが、しっかり精算してから行くといい。……ああ、それとだな。最後の一杯ならラッキーテキーラを飲むと良い。旅立ちを祝う縁起のいい酒だからな!」
ハッハッハ!と笑いながら、向かいで行われている腕相撲の会場に乱入する。先程勝利したヴェルフが青い顔で勝負を受け、次の瞬間に体が空中に投げ出された。
「ぐあああっ!!?」
「あっはっは!!そりゃ無理だよヴェルフ…!」
「無謀ですね……」
それからも、たくさんの人と会って、祝いの言葉と激励を受け取る。
「やあ、調子はどうかな?」
「楽しんでる?」
「おばさま!?」
声の主を辿ると、竜人族のハンターとフィールドマスターがいた。二人共、ずっといたわけではなかったけれど、竜人族ならではの視点でのアドバイスや、環境を知り尽くした女傑からのアドバイスは無事僕たちの糧となった。
特に、リリにとってはこちらでの師匠の一人でもある。戦えないながらに危険地帯で生き延びる術と、知識を活かす方法を知っていて、加えて編纂者としてのノウハウも同時に学んだ相手でもある。特に、神の恩恵も受けていない身の老齢の女性が、惨爪竜オドガロンを足止めし、あの執拗な追跡者から無傷で生還しているという実績もあるということで、更に熱が入ったとのこと。
因みに大団長も恩恵はないと言うと「もうあれは7割位モンスターみたいなものです。ただの人間な筈がありません」と頑なに否定していた。
二人で話に花を咲かせている間、僕は竜人族のハンターさんと話す。
「ははは、我らは男性陣で話をしようか」
「そうですね」
「初めて君たちを見た時の妙な違和感は、恐らくこの世界の人ではないからだったのだろうな。……ベヒーモスやウィッチャーにも、似たような感覚があったのだ。だが、あの時は地脈の収束地を探るため、深入りせずすまなかった」
「いえ、そんな…。あの時に話されていても、むしろ困っていたと思います」
「…そうだな。ありがとう」
彼は、猟虫のついていない操虫棍を杖代わりに新大陸を歩き回り、とうとう龍結晶の地と地脈の収束地を発見した一人でもある。竜人ならではの深い知識と経験から、独自に別ルートを探索していた一人でもある。
「…確か、君たちの世界には私たちに似た、エルフという種族がいるのだろう?」
「はい。僕はまだ見たことはないんですが、リリとヴェルフなら、オラリオにいたから何度もみたことがあるって」
そう、こちらの彼は竜人族。僕たちの世界のエルフの様に長い耳と寿命を持つ種族だ。違うところと言えば、指の数が4本であったり、足の形が異なるということくらい。
それも、殆どの竜人族は心穏やかで、賢く、それでいて調和を重んじるような人達だ。はっきり言って、この種族は全員聖人か何かってくらいの性格だ。
リリやヴェルフ曰く、「エルフと比べるのは失礼」とか「エルフにも良い人はいるけど、大抵見下したり潔癖症だったりする」とのこと。……ちょっと僕の憧れが傷ついたような気がする。
「…そういえば、竜人族の方ってどのくらいの寿命なんでしたっけ」
「寿命か…。ハンターの街、ドンドルマを仕切る大長老は、1000歳を超えていると聞くが……そこは個人差が激しいかもしれないな。……エルフは若くとも人間と同じように成長するんだろう?だが、竜人族は人間の老人ほどの年齢でも童の外見だから、そこも関係しているとは思うが……」
「確か、聞いた話だと、ひいおばあちゃん位の年齢でも子供扱いされてるんでしたっけ………。貴方の年齢が、余計に分からなくなりました」
「ん?ああ、多分君が思うよりずっとずっと上だろうな。300は超えているとだけ言っておくよ」
「あはは…ちょっと想像つかないです」
落ち着いた雰囲気の彼は、殆どフィールドワークに出ていて、アステラで出くわすことはあまりないけれど、それでも頼りになる大人の男って感じだ。アステラにはあまりいないキャラだからそう思うだけかもしれないけど…。
リリとフィールドマスターの話が終わったのを見て、こちらも話を切り上げる。まだまだ時間はあるとはいえ、酒が入って酔う人も現れるだろうから、その前に話は終わらせておきたいのだ。
それを見てきたのか、現れたのは4人。ジョッキ片手に肩を組むのは、明るい橙色の髪に鋼色の防具を纏った人物と禍々しくもある黒い防具を身に纏った人物。
「よっ、今度は俺たちだな」
「ちょっと、防具を脱ぐ時間くらいあったでしょ?」
「相棒もです。皆さんが怪我をしちゃいますよ?」
「………」
丁度その頃、腕が疲れたのかヴェルフも帰ってきて、4人と挨拶を交わす。
緑を基調とした落ち着いた色の編纂者と、黄色を基調とした編纂者の2人が互いのバディを宥める。
2人のハンターの防具は、それぞれEXクシャナシリーズとEXドラゴンシリーズ。暴風を巻き起こし、悪天候を司る古龍、鋼龍クシャルダオラと、御伽噺に語られた世界を滅ぼす天災と記された伝説の古龍、黒龍ミラボレアスの素材から作られた防具を身に纏っている。
当然、どちらもマスターランクの個体だ。加工された素材ですら生前の圧倒的な威圧感を伺えるそれを纏う2人は、ただでさえ少ないマスターランクのハンターの中でも、最高峰の実力者だと言える。
導きの青い星の異名を持つ彼と、エイデンさん。彼らは、度々世話になったり、環境生物の収集やフィールドワークでも共に出かけたこともある。
そして、僕を含めた3人で、黒龍を抑えたことは今でも思い出せる。……とは言っても、本気を出した黒龍のブレスに当たった僕はそのまま離脱してしまったんだけども。
「良かったな。故郷に帰る手段が見つかって。ここも寂しくなるよ」
「………そう、ですね」
「はい…エイデン様、青い星、編纂者のお2人も、今までお世話になりました」
「ああ、あんた達のお陰で、調査も進んで、お陰で俺等の装備だってここにあるしな」
2人は、ただでさえ武器を変えることの少ないハンターの中でも、全ての武器を同等の練度……それも古龍にも担いでいけるような類稀なハンターだ。僕が武器を変える際の相談にも乗ってくれたこともあるし、リリやヴェルフの件も、あらゆる武器や戦い方に精通している2人はとても参考になったものだ。
青い星はそこまで喋る方ではないけど、頼りになるし、愉快な人だった。エイデンさんの方は、逆に誰とでも直ぐに話せるタイプで、それでいて専門的な知識にも深く精通しており、意外にも読書が好きで学者先生の論文なんかも好んで読んでいる。
狩猟以外でも、よく個人的な散策なんかにも連れて行かれたものだ。青い星の方はアステラでカブトムシを見つけたことを嬉しげに話して、一緒に拠点内のカブトムシを探し回ったり、古代樹の森で一緒に迷子になったり……。
エイデンさんの方はちょっと騙されやすいけど、為になる知識やモンスターの特徴なんかを実戦形式で教えてくれたりもした。鬼人化の感覚が分からなかった僕に教えてくれたのも彼だ。
何でも、昔双剣使いの恩師が双剣の振り方を忘れたときにも教えたことがあるらしい。……ギルドきっての特殊部隊で、国からも一目置かれている組織のリーダーに、そんなことあるのだろうか。
勿論、2人の活動や功績が目立っているけど、その2人についている編纂者もまた凄腕だ。狩猟したモンスターの情報や、クエスト手続き、フィールドワークやその土地のマップの作成に、報告書などと、やることが多いのだ。
それも、相方が未調査領域だったり、新発見、希少モンスターを頻繁に任せられる程の相手だから、それに応じて彼女たちの負担も増える。
よく食い意地が張っている、好奇心旺盛でそそっかしいと言われている青い星のパートナーも、裏を返せばそれだけの作業を熟して尚、平気な顔で現場の食料を探したり、率先して狩り場に出ているくらいには、優秀なのだ。
エイデンさんのパートナーも、いかにも敏腕といった感じで余裕のある大人の女性って感じだ。実際、面倒見もよく、ちょっと抜けているエイデンさんの補助に回ったり、リリや僕たちに調査報告書の書き方やメモの取り方を教えてくれた人でもある。
ハンターと編纂者。双方が足りない部分を補い合っている、正に相棒だ。
「ちょっと」
「…あ、ごめん。何か、悪いこと言っちゃったか?」
「いえ、エイデン様は悪くありません。こちらは、私たちの気持ちの問題なので」
「……そうですよね。世界が違うから、もう二度と会えないかもしれない、ですもんね」
僕たちが思っていたこと。それがこっちの人たちから出されると、実感を帯びてくる。
「………」
「そっか。そうだよな…。他の地方なら、休暇にでも会えるけど……」
「その、すみません。祝いの席でこんなこと…」
「……その、これが慰めになるかは分かんないけどさ。こっちに来た人たちだって、帰る故郷なんかもあった。不安定な航海、40年続けても解明されていない謎。未開の土地。……多分、もう二度と故郷に帰れないと悟った人だっていただろうし、実際、早く来た人達はもう何十年も帰ってない。……その前に、死んだ人だっていただろうさ。だから、親しい人と会えないかもしれないってのは、みんな抱えてる。いや、ハンターとして生きている以上、少なからずそんな思いはあるのかな。……えーと、つまり何が言いたいかって言うと……」
「もう、相変わらずね。要は、親しい人や場所と別れているのもあなた達だけじゃないってこと。でも責めてるわけじゃないわ。勿論、大切な思い出はあるし、帰りたくない訳がない。でも、離れたって仲間じゃなくなる訳じゃないわ。いい?あなた達はあなた達で、新しい出会いと冒険を見つけるといいわ。きっと、ここで過ごした経験は力になってくれるわよ。心に強く残っているのだから、きっと大丈夫よ」
話を変えたまま、勝ち気な表情でそう断言する。それに、エイデンさんも首を振って同意している。
「…そうですよ!今回は、私たちが最前線で新大陸の謎を解明していましたが、今度はあなた達の番です!…私も、次の課題に進むところです。道は違っても、同じご飯を食べて、一緒に笑い合った仲間です。世界が違っても、それは変わりません。……いつか、居て当たり前だった人と別れる時が来る。でも、それは決して悲しいことだけじゃないと思うんです。おばさまと、そのお師匠様みたいに、今度は…私たちで。ですよね、相棒!」
「……ああ」
頷いた彼と、担当編纂者がこちらに向かってグッと親指を立てる。
しんみりとした空気が漂ったが、直ぐに「そうでした、相棒からベルくんにプレゼントがあるんでしたよね!」と空気を一変させる。…こういった部分もあるから、これまで軋轢もなく良きパートナーとしてあることが出来たんだろう。
「ぼ、僕に?」
「ああ、そうそう。そうだった! ヴェルフには、俺からも一つ」
「おお…」
「リリちゃんには私たち2人からね?」
「元の世界がどのような所かは分かりませんが、きっと役立つと思います!」
「そんな…ありがとうございます」
そう言って、リリは編纂者の2人からふたつの小包みを貰っていた。
「ありがとうございます。これは…?」
「私からは、龍脈のコハクのネックレスと、書類作業用のペンよ。ちなみに、ペンの方は私とお揃いよ」
「私からはお肉の美味しい焼き方から、様々な料理の保管方法と、携帯食料を美味しく作る方法を書いたレシピです!もちろん、料理長ほどとは行きませんが、これで長い旅でも美味しいご飯が食べられますよ!」
前者はいいとして、後者は本当に同じ編纂者なのだろうか…。確かに被ったりするよりもよく、普通に嬉しいのだけど、生憎と役職とはまるで関係ないものだ。それでいいのか。
リリは複雑そうな顔で黄色の編纂者を眺めているけど、ニコニコ顔のそれに諦めを覚えたのか、礼を言って懐に仕舞う。口ではぶっきらぼうでも、あれは喜んでる反応だ。
多分、予想と違うから少しつっけんになってるだけだなあれは…。
「ほら、俺達は一緒に」
「………」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうな」
ヴェルフと僕が、差し出された袋詰の何かを受け取る。袋に包まれたそれを開くと、中から紫と黄白色の下地に、大きな縦長の瞳孔がこちらと目を合わせていて……。
隣が輝いたかと思うと、ヴェルフが手にしているのは赤く輝くエネルギーに満ちた結晶体。危うく取り落としかけていた。
「……あの、これって」
「黒龍の邪眼」
「へへっ、ジオニウム結晶体っス」
問い詰めると、2人して指で鼻をこすりながら恥ずかしそうに告げた。
「なんつうモン渡して来やがる!!?」
「ええ……」
怖い。というか贈り物に眼球っていいのか?ジオニウム結晶体はまだ見た目で分かるけど、それにしたって赤龍ムフェト・ジーヴァの力の源とすら言われているエネルギーの集まった貴重素材だ。こんな軽々しく渡していいはずがない。
僕の方は…うん。ハッキリ言って論外だ。
「あの、申し訳ないんですけどいらないです」
「悪いけど、返す」
「っ!!?」
「えっ!?古龍の大宝玉の方が良かったっスか!?」
そういう問題じゃない。
何とか渡そうとしてくる2人を振り切って、何とか返却に成功する。……いや、何でこんなのになってるかは知らないけどさ。余計に疲れた。
そうこうしていると、ハンター達の間で余興やレクリエーションが始まる。
装備自慢であったり、不思議な体験談。飲み比べや早食い。
特に、何故か唐突に始まったカブト相撲は僕やヴェルフも参加させてもらった。キラビートルをやたら上手く扱う植生研究所の研究員の人と、ヴェルフのドスヘラクレスが戦って作戦負けしたり、盛り上がりどころも結構あった。
決勝は、僕の虹色ドスヘラクレスと大団長のゴールデンヘラクレスの一騎打ち。手に汗握る死闘を繰り広げ、紙一重の差で僕の勝ち。優勝賞品としてレアな装飾品をいくつか貰ったのだった。
因みに、同じく虹色ドスヘラクレスを飼っており、優勝候補とされていた青い星は、グランツビートルを突然変異のカブトムシだと言い張って出場したため反則負けの1回戦敗退だった。なにやってるんだあの人……?
こうして、騒がしいながらに楽しく、活気のあったアステラの送別会は、盛況のまま幕を下ろしたのだった。
まだ…!元の世界に帰っていないのである……!
あと青い星は
ベルといるとレア環境生物によく会うので験担ぎに連れてかれてたりしている模様