ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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何か長引いてますね…。
まあ、今の時系列だと特にこれといった事件もないからなんですけどね……。
後、書くまでもないような描写だったり、スキップしても良さそうなとこは飛ばすようにします。

だから木竜はナレ死します。


ラウル・ノールドの非凡なる一日(4)

 

 斬閃、閃光。

 

 盾内部にて剣撃エネルギーを刀身に上乗せした強力な剣撃が傷ついた木竜へと振り下ろされる。

 

 渾身の力を込めた斬撃は木竜の甲殻を砕き、肉へと達し、同時に榴弾ビンのエネルギーが炸裂し、肉質を無視した破壊力が木竜の内部で弾ける。

 

 『属性強化』時にしか放てないという制約はあるものの、剣モードにおいて最高威力を誇る高圧属性斬りだ。

 

 威力に優れているのもそうだが、その真価は剣撃エネルギーを武器に纏わせることで、暫くの間剣での攻撃にもビンの追加効果が発生し、纏ったエネルギーによる影響で攻撃が弾かれなくなる『剣撃強化状態』へと移行することだ。

 

 斧状態や盾での性能を高める『属性強化』に比べるとやや用途は狭いものの、剣撃エネルギーを溜めながらビンの効果を発生させ、斧での一撃に囚われない立ち回りをすることもできる状態だ。

 

 しかし、最早その武器を向ける相手はいなかった。

 

「……はっ、はっ…!や、やったっすか…?」

 

 既に、高圧属性斬りの一撃で木竜は死していたからだ。

 

 横たわる竜躰を、傷つき、息を切らしながらも健在のラウルが見届ける。剣盾共に強化した証である燐光を伴うそれを油断なく構え、一切の動きがなくなるまで警戒は絶やさない。 

 

「やったな」

「ヴェルフ…さん」

 

 そして、その息の根が止まっていることを確認するや、周囲で待機していたヴェルフがラウルの側に歩み出る。

 

 ヴェルフはラウルと木竜が戦闘している間、戦闘音にひかれてやってきたモンスターを排除し、一対一の空間を作り上げていたのだ。

 その言葉には惜しみない称賛が感じられ、どうにもむず痒そうな表情になる。

 

「ま、とはいえまだまだ改善点は多いがな」

「それは…はい。自覚してるっす」

 

 そう会話をしながら、ラウルは討伐した木竜の肉体を切り裂き、心臓に位置する箇所から魔石を取り出した。

 

 流石はLv.4の潜在能力を持つ宝財の番人(トレジャー・キーパー)と言うべきか。その魔石は中層の物とは比べ物にならない程に大きい。

 魔石を抜かれたことで身体を灰に還した木竜の亡骸は、同じ体色の竜鱗(ドロップアイテム)を残した。

 流石に深層の強竜(カドモス)には劣るとは言え同じ宝財の番人。たどり着ける冒険者の数や質自体も考えれば希少価値は劣るだろうが、それでも中々馬鹿にできない価値を秘めている。まして、大人数での対処による山分けではなく、殆ど個人による総取りなのだから、笑みも漏れるというもの。

 

 これで本当に終わったと、ラウルは宝石樹へと身体を預ける。

 

 木竜との死闘は1時間弱にも及び、それだけの激戦故にLv.4の肉体も疲労を訴えていた。

 されど致命的な傷もないのは、ラウル自身の技量と、青く輝くアロイαの性能の程を現していた。

 

「ならいい。今は身体を休めな。この後は下層にも顔を出す予定だからよ」

「………へ?」

 

 回復薬や、途中で採取してきた薬草などを差し出したヴェルフの言葉に、 ラウルは目を白黒とさせるのであった。

 

 

―――…

 

 

 その後、少しの休息を挟んだ二人は、宝石樹の宝石を二人で独占し、そのまま下層、25階層へと進んだ。

 

 因みに理由は単純で、木竜のいる24階層から一旦安全階層である18階層へ引き返してから再び向かうよりも、こちらの方が早いからだ。

 

 道中では殆どモンスターを倒していなかったため、木竜の魔石やドロップアイテム、宝石などを回収しても余裕があったことも理由になるだろう。

 

 因みに、何故下層まで来たのかと問いかけると、ヴェルフは単純に拝んでみたかったとだけ言った。

 ラウルはこれだけ実力のあるヴェルフが下層を訪れたことがなかったと知ると不思議に思ったが、その武具や腕前を全く聞かなかったことから、オラリオ外から最近やって来たのかも知れないと一人納得した。

 

 流石に下層と明確に線引きされるだけあって、中層よりも厄介な地形、強力なモンスターなどが出てきたが、ヴェルフ達にとっては対処は難しいものではなかった。

 

 途中、稀少種(レアモンスター)であるブルードラゴンとも遭遇した。ブルードラゴンは蒼と白の滑らかな鱗を持つ長躰の竜で、長い鰭を翼のようにゆったりと動かして空を泳ぐ竜種だ。

 尻尾から魔力を垂れ流しており、下層の群晶から発する水晶光を反射してオーロラを発生させることから、『極光竜』とも呼ばれている。

 外見は美しく穏やかに回遊しているが、獲物を見つけると非常に獰猛になり、瞳を真っ赤な攻撃色に変えて襲いかかる性質を持つ。また、吐き出すブレスは毒や麻痺などの状態異常の塊で、さらには水晶を腐食させるほどの『光触』の性質も持つ。

 

 高度から一方的にブレスを吐くため、遠距離攻撃手段がなければ苦戦は必至。加えて、非常に執念深くどこまでも追いかけてくる上、その細い胴体ゆえに狭い道でも問題なく追ってくるという厄介さを持っている。

 

 その習性を逆に利用し、ヴェルフが細道まで誘導。ブレスは魔力によるものなのでヴェルフの魔法(ウィル・オ・ウィスプ)で完封。直接攻撃しか手のないブルードラゴンは突進するも、待ち構えていたラウルによる超高出力属性解放斬り。最高のタイミングで放たれたそれは、最初の振り下ろしで鱗を傷つけ、次いで最初の炸裂で亀裂の入った鱗ごと肉を吹き飛ばし、地面を這って続く第二、第三の榴弾ビンのエネルギーが放射状に広がりながらブルードラゴンの肉体を蹂躙する。逃げ場のない細道でその炸裂を真正面から受けたブルードラゴンは爆散し、灰粉と滑らかな蒼と白の鱗(ドロップアイテム)を残した。

 

 まさかモンスターの中でも高い潜在能力(ポテンシャル)を誇る竜種の、それもそうは見かけない稀少種との連続遭遇(エンカウント)という幸運なのか不幸なのかよく分からない事象に出くわしたものの、倒した分得たものは大きいと言えよう。

 

 その成果を経て、探索は終了した。

 

 時間も遅くなったため、一度18階層で休眠を取り地上へ戻ることに。

 

 帰路も足早に進み、既にここは地上へと伸びる螺旋階段の途中。同じく同業者の姿もちらほらと見えていた。

 

 下層域での魔石は元より、思わぬ戦利品(ドロップアイテム)や宝石樹の宝石を見て頬を緩ませるラウルだったが、ヴェルフが待ったをかけた。

 

「……換金に出すのもいいが、そのドロップアイテムで装備を作ってみないか?」

「え?」

 

 ラウルが間の抜けたような声を漏らす。冒険者が迷宮で得る素材やドロップアイテムは、基本的にはそのままでは活用方法がない。

 故に、殆どの場合は売却され、然るべき技術を持った派閥や業者に卸される。中には、それらの加工技術を持つファミリアに直接卸したり、派閥自体が採取しに来る例もある。

 

 大抵の場合冒険者は既存の武具を購入する。だがしかし、中には自ら素材を渡し、依頼することで武具を作ってもらう冒険者もいないわけではない。

 特に、より上位の冒険者を抱える派閥などはこの傾向が多い。無論、【ロキ・ファミリア】の幹部陣にも専属の契約をしている者はいる。

 

 無論、ラウルとてやろうと思えば契約を結べるかも知れないが、大抵の場合は鍛冶師次第。しかも見合う武具には相応の素材と腕前が必須。そうなると、ラウル個人で潜れる範囲では物足りず、かといって派閥単位の規模になると、その成果物はファミリアの物。ラウル個人が扱えるものではなく、そもそも何か拘りがなければ既存の武具で事足り、そこまでして幹部でもない人物に専用の武具と鍛冶師がつくなんて例はそうはない。

 

 大抵の場合は名を馳せた個人か、派閥単位での契約なのである。

 

 己の狩った魔物のドロップアイテムや採取した素材から自身の武具を作るということは、冒険者にとっての一つの憧れに近い。

 

 特に、木竜と極光竜の素材ならば不足はない。

 

 そんな提案は渡りに船。何より今身に纏っている武具の製作者。腕前は存分に見させてもらっている。

 

「じゃ、じゃあお願いするっす。……あ、でもそうなるとこの鎧は…」

「そこは気にすんな。視界を邪魔しない額当てにしてやるよ。そうすりゃ頭部も保護できる。……と、もう地上か。」

 

 そう話していると、いつの間にか階段は終わりを見せ、バベルの壁が視界の端に覗く。地上の喧騒が届くようになった。

 

「それじゃ、一旦解散だな。防具を作る時間も欲しいし、お前も金の用意が必要だろ?…と、その前に一旦装備を預からせてくれ。ないとは思うが、そのまま持ち逃げされちゃ敵わんからな」

「持ち逃げって…、そんなことしないっすよ!?」

「もしもの話だよ。それに、金の話もあるからな。そんじゃ、明日の朝、あの路地裏にな」

 

 そう言って、二人はバベルで別れた。

 ヴェルフは早速とばかりに自身の鍛冶場へと直行し、構想を考えながら加工の準備を進め、ラウルは換金所で魔石と中層の薬草、そして宝石樹の宝石を売却し、黄昏の館(ホーム)に帰って貯金を崩したのであった。

 

 因みに、本来はその難易度と希少性から大人数で分配するような宝石を二人で総取りしたことで、その懐が潤ったことは言うまでもないだろう。

 

 そして翌日。

 

 いてもたってもいられず、朝食後すぐに本拠(ホーム)を抜け出してきたラウルは、大金を抱えながらも裏路地でヴェルフを待っていた。

 

 その金額から、やはり不安になりながらも暫く経つと、同じく蒼い鱗鎧の人物が荷台を牽いてやって来た。 

 

「お、待たせちまったか?」

「いや、自分が早く来ただけっすから」

「そうか。じゃ、早速だが、こっちがアロイαシリーズと、精鋭調査団盾斧Ⅲだ。軽く調整はしたが、大丈夫か?」

 

 そこには先日と変わらぬ輝きを放つ一式の防具と武器が揃っていた。内容を確認し、続いてヴェルフが取り出したのは、ベルトに滑らかな鱗を張り合わせ、衝撃を受け流すようにか正面に向けて弧を描く形状をしていた。

 

 それは調査団などで使われているハンターヘルムαの男用に近い。視界を阻害せず、頭部の保護も可能な形状という容貌に応えた形だ。

 

「おお…!」

 

 やはり自分で手に入れたということも相まって、 感動も強いらしい。

 

「そいつの防御力自体はアロイαより若干低いが、その分軽量で属性耐性に優れてる。スキルの方は『毒耐性』が1レベル、『体力回復量UP』が2レベル分ついてて、スロットはなしだな」

「『体力回復量UP』は……名前からして、自分がポーションを飲んだ時や回復魔法をかけてもらった時の効果を底上げするって感じっすかね?」

「おっ、勘がよくなってきたな。それであってるぜ。あくまで自分だけが対象だが、体力回復が行われたときに効果を上げる。レベル2なら、大体2割増しって程度だな」

「おお…!ポーションの量を節約できると遠征でも便利っすね…!」

「気に入ったか?」

「勿論っすよ!」

「そりゃよかった。これで気に入らなかったらどうしようかと思ったぜ。……さて、そんじゃあ肝心の代金の話だが……」

 

 先程まで浮かれていたラウルも、流石に金額の話となればかすかに緊張が滲む。下手をすれば大きな借金を背負うかもしれないともなれば尚更だ。

 

「まず、頭部を除いたアロイαシリーズに、精鋭調査団盾斧Ⅲを含めた合計金額が3500万。ここまでは事前に話した通りだな?」

 

 記憶通りの金額に神妙に頷くラウル。

 

「んで、追加の頭部防具の方が300万ヴァリスで…」

「えっ、金取るんすか!?」

 

 予想打にしていなかった言葉にラウルの目が驚愕と共に見開かれる。

 

「そりゃそうだろ。貰った素材以外にもミスリルとかもこっち持ちだしな」

「うう…。それなら最初に言ってくれれば……」

「わり。伝え忘れてた」

「300万はそれで済む金額じゃないっす!!」

 

 それはそうである。とはいえ、性能自体は折り紙つきで、一度効果を知っただけに、手放すには勿体ない。そんな葛藤を抱えたものの、話はまだ続く。

 

「次に、検証に付き合ってくれた分のお礼だな。まず、使用感や動作確認の分で500万、木竜との交戦が300万。下層まで付き合ってくれたのが200万だな。……合計で、1000万割引だ。やったな」

「お、おお…!」

 

 はっきり言って、破格。装備の使用感などを逐一伝えただけで500万。木竜は強敵であったものの、苦戦と言えばそれくらい。下層への付き添いだって、そもそもヴェルフ自身の実力が高いので、ラウルの苦労は少ない。

 

 たった二日、深層に潜った訳でもないのに1000万ヴァリスの割引というのはとんでもなく破格の条件だった。

 

 そのことに顔を緩めるも、直ぐにラウルの顔は微妙な表情へと変わる。

 

「……それでも、足りないっすね……」

 

 ラウルの所持金は1688万8000ヴァリスだった。そこに木竜の魔石やブルードラゴンの魔石、その他下層、中層域のモンスターの魔石やドロップアイテム分、そして山分けした宝石樹の宝石の換金分を含めれば、最低限の費用を残した上で払えるのは2300万ヴァリスにもなるだろう。

 

 だが、それでも3800万ヴァリスには届かない。残りの500万ヴァリス分は諦めるか借金という形になる。

 

 しかし、あの性能や特殊性を実感したラウルに諦めるという選択肢はなくなっていた。

 

「まあだろうな。それでどうする?借金か、その分諦めるか」

「………借金の方も考えるって言ってたっすけど、それならどうなるっすかね?」

 

 ならば、事前の説明通りに借金の都合を考えてもらった方がいいだろう。これでも【ロキ・ファミリア】の第二級冒険者。所謂信頼としても十分なはず。

 

「返済のアテに関しちゃ、最大派閥だからそんなに心配はしてねえが、俺は生憎いつもここに店を構えるって訳でもないからな。…そもそも、ここだって適当な場所見つけただけだからなぁ…」

「そうなんすか?」

「ああ。それに個人で露店を出す条件として、派閥の名前は出さないのが条件でな。派閥の方に届けてもらうってのも出来ねえ訳だ」

「ああ、だから言葉を濁してたんすか…」

 

 見慣れないエンブレムであったり、派閥名を聞いても濁されたことの答え合わせがそれだ。しかし、ラウルもその理由は想像がついた。

 これだけの効果を持つ装備や、チャージアックスなどの特殊な武器。それでいて性能も妥協していないとなれば、それは多くの冒険者や神々が注目するであろうことは必至。

 最初の検証と言っていたことから、まだ公にするには早い段階ということも察しており、そんな中で派閥をバラされてしまえば、余計なやっかみや大手派閥、或いは他の競合派閥なんかからも圧力を受けかねない。

 

 納得と共に、それならどうすればいいのかと声を上げる。

 

「ギルドを通して伝言ってのはどうだ?俺が【ロキ・ファミリア】に伝えるのもいいが、俺自体の信頼はねえだろ?そんなら、ギルドの受付にでも伝言や場所なんかを伝えた方が早え」

「…それもそうっすね。金銭の受け渡しならともかく、伝言くらいなら、それでいいかもっす」

「よしっ、それで決まりだな。そんじゃ、それとは少し違った提案なんだが……」

 

 借金問題は一旦解決し、解散となりかけたその時、ヴェルフが言葉を紡いだ。

 

「アンタ、俺と契約を結ばないか?」

 




何かラウル人気高いですね。わたしも好きだしちょうどよい実力と立場、人間味があってよいです。
あと設定的にもこうしてモンハンの武具に触れる人材としては貴重かもしれない。
派閥幹部のような関わりにくさもなく、それでいて無名じゃない上に派閥の関わりがあるから注目されやすい。
こんなところにも器用有能が活かされるとは…。
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