ベル達3人がハンターなのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
これからも、その期待に応えられるよう頑張ります。
Q.神は神威で人間と違う気配がするけど何で気づかなかったの?
A.なんとなく違うことに気づいても、比較対象である神がいないので、何か他の人とちょっと違う気配の人、扱いになってました
他の疑問などは、作中で明かされるものもあり、ネタバレになるのであえてここには書きません
「ど、どうしてリリが…!?」
ヴェルフの工房の中に、リリがいる。いや、考えてみれば当然かもしれない。リリはファミリアに自分の居場所がないと言っていた覚えがあるし、僕みたいにバラバラになったと考えたら、頼るのは同じ仲間であり、ファミリアも判明しているヴェルフに決まっている。
「ふふふ、驚いてますね。お久しぶりです。まさか同じ場所から入ったのに、バラバラになるなんて思っていなかったものですから、随分と探しましたよ?」
「あ、そうだね。ごめん…。って、それよりも【ソーマ・ファミリア】が大変なことになってるってギルドの人に聞いたんだけど……?」
思わぬ再会に驚き、渦中の人物だと思っていたものだから、そのことについて尋ねた。
「そのことも知ってるんですね。ですがその前に、私達がこの世界に帰ってきてからのことを説明する必要があります」
そう言うと、リリは僕とヴェルフに確認をとって話し始めた。
「まず、リリ達はこちらの世界で二ヶ月ほど行方不明になっていたそうです。恐らく、この期間があちらの世界に迷い込んでいた間のことです。そして、一ヶ月前にこちらの世界に戻ってきた。その認識に間違いはありませんか?」
「おう。つっても、リリ助と俺は予めすり合わせはしてるがな」
「…二ヶ月も経ってたの?ごめん、僕の家山奥の田舎で、家を出る整理してから向こうの世界に行っちゃったから分かんなかったや」
「…まあ、予想はしていました。帰ってきた時間は同じ様ですし、あまり深く捉えてもなんですので、今は置いておきましょう」
リリははあ…とため息をついて続ける。いや、しょうがないじゃん…。僕の周りで指標になるようなものもなかったし…。
「リリが戻ってきた時、立っていた場所は隠れ家として使っていた廃屋でした。あちらに来る前に居た場所だったのですが、人の目もなくて助かりました。何より、【ソーマ・ファミリア】にバレていなかったのが良かったです。リリの扱いは言ったかと思いますが、サポーターとして搾取されてたので。……まあ、リリも同業者を騙して盗品を売っていたので、そう悪く言える立場でもないのですが…」
「リリ……」
そう言って、少し俯き気味に呟く。けれど、それは決してリリが悪いわけじゃない。そう言おうとして、その瞳に宿る悪戯っぽい光を見て口を閉じる。
「まあ、好都合でしたね。【ソーマ・ファミリア】の皆さんはサポーターのガキが迷宮かどこかで野垂れ死んだものとすっかり思い込んでしまっていたので。ソーマ様はリリが死んだ訳ではないということを理解していましたが、残念ながらそのような仲良しファミリアでもなく、まして団長が乗っ取っているような有り様。情報が共有されるはずもありません」
リリの言い方は自分を卑下したものだけれど、その隙をついて色々とやったのだという。
「まず、そうですね。ヴェルフ様を何とか見つけたリリはヴェルフ様の工房に匿ってもらい活動していました」
「【
「はい、そこでまず【ソーマ・ファミリア】の中でも上層部、特に
時に闇夜に紛れ、時にダンジョンにまで尾行し、時にネムリ草のエキスを染み込ませたハンカチで眠らせたりと、動き回っていたらしい。
「それで、様々な悪質な実態を記したものと、団長であるザニスの決定的な癒着の証拠を手中に収めたので、バレない内にソーマ様に直談判ですね」
軽々しく言っているけど、結構ハードスケジュールじゃないかなそれ。スピード感すごいんだけど。
「ソーマ様にこのままではギルドから酒造り自体が禁止される…とか色々とソーマ様にとっても良くないことを証拠付きで出したので、危機感を覚えたんでしょうね。特にザニスの件についてはソーマ様自身知らなかった様ですし」
「あれ?でも、リリの言う通りなら、ソーマ様ってそれだけで動くような神様って感じだったっけ?」
聞いた限りだと、子どもの暴走も気にしないで、静観してるようなイメージだ。
「はい。まあそれはそれは話も聞かずに酒造りに没頭してたので、イラッとして足が出ちゃいました」
「だからって脛を鎧で蹴るか普通…。滅茶苦茶悶絶してたぞ?」
「うわぁ…」
「ヴェルフ様は黙っていてください!…まあ、そんな訳で対等な話し合い…にはなりませんでした」
「ああ、蹴っちゃったから…」
「違います!それでもソーマ様は『神酒を飲んで正気を保つことが出来れば耳を貸す』なんて仰られたので…」
「また蹴ったんだよな?」
「だから違います!!いい加減に蹴りから離れてください!」
ヴェルフの茶化しにいい反応を返したリリは、声を荒げて否定する。その様子は面白いけど、流石にこれ以上は話が進まないし本気で怒るのでやめておこう。
「それで、どうやったの?」
「コホン。確かに昔のリリだったら、あの神酒の誘惑に負けて、その味に酔い痴れて堕落してしまっていたでしょう。……ですが、リリはあちらで学んだのです。どんな逆境にも抗う真の強さと、心から信頼できる仲間と共に、窮地を乗り越えた後に呑むお酒の味に比べれば…。あんなもの、ただ美味しいだけの孤独なお酒です」
「美味しいのは美味しいんだ」
「それはまあ…。あ、因みに言うとザニス達上層部は飲み続けたこととレベルの昇華によって耐性がついていたからこそ、ファミリアを掌握できたとも言えますね。あと、リリ的にはもう少し甘口のお酒が好みです。あれがもっと甘ければ危なかったかもですね」
「ええ…。そんな程度の話かな…?」
「まあ、その程度に茶化せるって事だろ」
なんかこう、聞いた限りではかなり危ない感じだったんだけど、意気揚々と話すリリはあっさりとしていた。
「どういう心境の変化かは知りませんが、そこからはソーマ様もリリの言葉に耳を傾けてくれました。…その際、少しだけあちらについての話も障りだけ話しましたが、まあソーマ様なら大丈夫でしょう。話す相手がいるとは思えません」
「辛辣…」
とまあ、大体そんな感じで、後は僕も知っての通り、ソーマ様が直々にギルドに申し出て、監査の後、然るべき処分を降したとのこと。
幸い、眷属の独断であるということと、責任を持って自主申告したことによって、ペナルティは避けられなくとも、趣味の酒造りだけは勘弁してもらえたらしい。
そして、今回の一件で人員を統制し、リリから見ても比較的マシな眷属が新団長に就任して、決着がついた。
残っているのは、神酒絡みで悪辣な手段を用いなかった人物であったり、後は純粋に酒好きな者であったりと、再出発の準備は着々と進んでいるとのこと。
「それと、ソーマ様に黄金芋酒を差し上げた所、大層驚いた様子で、再現を目指すと仰っていました。あの方、酒のことに関しては饒舌になるので、あちらの世界のお酒のことなどを話されたら興味深そうにしていましたし。もしかしたら、こちらの世界でもあちらの味が楽しめるようになるかもしれませんね」
「ま、そこは俺も嬉しい誤算だった。流石に再現できないものもあると思うが、もう飲めないと思ってたからな」
そう言ってカラカラと笑う二人は、やっぱり深刻さなど欠片も感じられず、そのことに喜んでいいのやら、呆れたほうがいいのやら。
「まあ、リリの話はそんな所ですね。あまり大っぴらに活動していたわけではなかったので、少し時間がかかってしまいましたが…」
「いやいやいや!結構ハイスピードだったと思うけど!?」
目を伏せて語るリリに、僕は否定する。聞いた限りだと【ソーマ・ファミリア】は等級こそ低いものの構成員はかなり多く、その上根本から腐っていたので、暴力に訴えたり、相手がぼろを出さない内に単身で事実上の壊滅をさせたのは凄いこと何じゃないだろうか。
そう言うと、ヴェルフも「だよな」と同意する。
「あ、そういえば、ヘファイストス様に案内されてここに来たんだけど、ヴェルフのことを心配してたよ。行方不明から帰ってきたと思ったら、顔も出さないし作品も出さない。顔を見たら逃げるから、何かあったんじゃないか…って」
「あー、そりゃ悪いことしたな…」
ヘファイストス様からの言葉を伝えると、ヴェルフはバツの悪そうな顔で呟く。
「いや、な。リリ助を匿ってるのもあったが、ベルもいない状態で話すのも違うと思ってな。ほら、誤魔化そうにも神に嘘はつけないだろ?だから、向こうの2年での成長がバレないように避けてたんだが……」
「僕を…って」
「当たり前だろ。俺はハンターとしても成長したが、ここで求められるのは鍛冶師としての技量だ。口で説明するのは簡単だが、そんなもの鍛冶の神であるあの人にはなんの意味もねえ。見せるなら、最高の状態で造った、俺の最高傑作を、と願うのは当然だろ?」
ようやく理解する。ヴェルフは隠したいわけでなく、最高の成果を見せたかったからだという。途中で説明して、納得して貰うにも、他の武具などを見せる必要が出てくるだろう。
当然、派閥の一員としての成長を確かめるためにも。
これまでの防具に胸を張れないわけではない。それでも、最も最新の自分が、最高の素材を使って作り上げた武具を見て欲しいのだという職人としてのプライドと、ヘファイストス様に向ける憧れが同居しているのだろう。
用途や対象によって変動するものの、僕の持つ武装の中で最強の一対を決めろと言われれば、それだと断言することが出来る。
「…もしかして、その間武具を売らなかったのって」
「ああ、同じ素材でも、鍛つ技量で出来は変わる。……言いわけになるが、ここの設備と素材じゃ、到底向こうでの最良には届かねえ。中途半端な代物を作るのも憚れてな。………ま、ベルが合流したってことは、そうまでして隠す必要性もなくなったってことだな!」
ヴェルフは解放されたように高らかに笑う。そこには、職人としての矜持と自信に満ち溢れていた。
「よし!そうと決まれば早速行くぞ!」
「…えっ、今から!?」
「ああ、今まで黙っていてあれだが、これ以上遠ざける理由もねえ。あの人なら、無闇矢鱈と広めることもないだろうしな」
言うが早いか、ヴェルフは僕を連れて工房から出る。僕の荷台を確認すると、それをひったくる様に牽き始めた。
「ちょっ、ちょっとヴェルフ!ああもう!それなら僕はヴェルフの奴を持っていくからね!」
「……はあ、こうなりましたか。まあいいです。リリの装備もあのヘファイストス様の目にどう映るか気になりますし、いくつか持っていきましょうか」
てんてこまいに、燃え上がる情熱のまま走るヴェルフを追いかけて、僕とリリはさっき来たばかりのヴァルカの紅房へと走るのであった。
■
ヘファイストスは自らの執務室で書類仕事を片手間に、ヴェルフの友人だという少年を思い返していた。
あの謎の装備や、オラリオ外から来たという話を汲み取って、行方不明だった2ヶ月と関連付けていたのだ。
何せ、神すら見たこともない田舎の少年が、厳重に出入りを管理されている冒険者である眷属と会う時間など、あるはずもない。
それに、ヴェルフ自体も気にかけていたこともあって、知らぬ内に抜け出した線は薄い。
帰ってきてからのヴェルフの態度や行動も何だかおかしい上に、何だか以前よりも体つきがよくなったような気もする。
だからこそ、ヘファイストス自体も気になっている空白の2ヶ月に何かがあったと、そう推測するのが当然といえば当然だった。
そのことも含めて、今度己の眷属に問いたださねばならないかと、そう思っていたその瞬間、ノックの音が届いた。
「入りなさい」
促すと、噂をすれば影ということか、ヴェルフが現れた。何とタイミングのいいことだろう、とヘファイストスが思っていると、その背後から新たな影が姿を現した。
「貴方はさっきの…」
それは、先程の少年だ。着いてきている
いくら友人だからといって、主神に無断で他所の人物を拠点内、それも重要機密も多々ある執務室に通すなど、と苦言を呈そうとして、ヴェルフの燃えるような気迫を前にしてつばを呑む。
(…何?今までのヴェルフとは、明らかに気迫が違う。いつの間に、こんなに……?)
思わず気圧されかけたが、それでも平静を努めて問い質す。
「…他所の人間まで引き連れて、要件は何?」
「俺が行方不明だった間の経験を話に来ました」
と、直球で返ってくる。
思わぬ方向から期待していた言葉が出されたヘファイストスは、その真っ直ぐな瞳を見て、次に背後に控える二人を見つめた。
「勝手に二人を招き入れたのはすみません。ですが、この二人とも関係があり、他言できないことだと判断しましたので、直接伺いました」
「……そう。じゃあ、その招き入れてまで話さなきゃいけない理由を、
ヘファイストスは虚言を許さぬといった様子で威圧感を強める。神に嘘が通じないのは知ってのとおりだが、それはそれとして、けじめや覚悟というものもある。
神の力を意識するまでもなく、今表出しているこれは最高峰の鍛冶師としての圧だ。
その鋭い視線と威圧感に貫かれながら、けれど欠片も気圧されることなくヴェルフは告げたのであった。
「はい、俺はあの行方不明だった2ヶ月の間、こことは異なる世界……異世界というものに行っていました」
「……はあ?」
嘘の気配は、欠片もない。
全くの予想外の言葉を大真面目に語るヴェルフに、呆気にとられたヘファイストスの圧は霧散したのであった。
じかーいじかい
ベルの持つ最強の武器とは、異世界の話を聞いたヘファイストスは、そして今まで影も形もないヘスティアは一体どうなるのか!乞うご期待!
感想くれ(貪食の狂王)