ヒロアカ世界なのにスパイダーマン世界だと勘違いしてる精神異常者 作:醤油でした
時は少々遡り————
「私が〜投影された!!!」
「オールマイト!!?」
雄英の合格通知が緑谷へ届いた。
実技試験が0ポイントで終わってしまった緑谷は、半ば合格を諦めていた。
しかし、そんな思いは急に投影されたオールマイトによって吹き飛ばされた。
オールマイトは試験の結果を話し始める。
緑谷は筆記は合格ラインに充分届いていたが、実技が0ポイントなので不合格———とはならなかった。
なぜなら、あの実技試験は
そして、緑谷は逃げ遅れた麗日をその身をかけて救った。
それが評価されたのだ。
緑谷出久は救助活動ポイントを獲得し、めでたく合格することが決まった。
それから、簡単な入学の日にちや持ち物などの説明が終わり、『このオールマイトのホログラムももう消えてしまうのか』と思っていると———
「さて、最後に緑谷少年。君は、スパイダーマンという
ホログラムのオールマイトはグッと顔を近づけながら話した。
緑谷はスパイダーマンについて、知ってることを思い出しながら呟き始める。
「——スパイダーマン。
たしか……約6年ほど前に突然姿を現した
年齢不詳。出身地も不明。声からしておそらく男性だと思うけど、全身が赤と青に染められ、真ん中に黒い蜘蛛が描かれたスーツを身に纏っているから顔が見えないからなんとも言えないよね。
でも、迷子や道案内など困った人を助け、
あと、人助けや
でも、たしか二年前に何か大きな事件で建物や多くの負傷者を出したことを気に病んで、自分の違法行為を償いたいと警察へ出頭したんだよね。
だけど、スパイダーマンに救われた人々が刑の減刑のために署名とかの運動を沢山したから本来の刑期よりも早く出所できることになって、半年くらい前に釈放されたんだよね。
でも、それから一切彼の活動はないし、今でもスパイダーマンは警察に捕まってるみたいな都市伝説みたいなのも流れてるし。でも、警察はそのことについては完全に否定してるし—————」
緑谷は考え込むと口に出してしまう癖がある。
自分の知ってることを思い返していた緑谷は、自分では気づいていないが1人でオールマイトのホログラムを前にめっちゃ早口で話していた。
そんな緑谷の独り言もホログラムのオールマイトには関係ないため、オールマイトは話を続けた。
「なんで彼の話をしたかというとね。
実は————彼も雄英に入学するんだよね!!君と同じヒーロー科の同級生として!!!」
「自分の罪を認め、償ったんだからもうスパイダーマンは現れn————えぇっ!!!!????まって!オールマイト、今なんて言った????!!!!!!」
緑谷を思考の渦から現実に引き戻すほどの衝撃発言がオールマイトから語られた。
あまりの衝撃発言に緑谷は驚愕し、言葉を失っている。
当然である。スパイダーマンとして活動し、一度逮捕された
しかし、同時に緑谷は『彼は高校生という年齢ではないのではないか?』という疑問が浮かんだ。
そんな疑問を見越していたかのようにオールマイトは、親指をサムズアップさせながら、キラーンっといった擬音が似合うほどの笑顔で話す。
「実は、スパイダーマンとして活動していた彼は—————君たちと同い年なんだよね!
マスコミとかで報道されていないから知らなかったと思うけど」
親指をサムズアップさせながら、キラーンっといった擬音が似合うほどの笑顔でオールマイトは話す。
そんなオールマイトを見ながら緑谷は『僕と同い年ってことは小学生の頃から彼は
「世間一般で言われている通り、彼はある事件に心を痛め、自身の罪を償うために出頭したんだよね!
そして、実は彼は少年院に送られていたんだ!
でも、彼は本当に多くの人を救っていたみたいでね………多くの人達がスパイダーマンを釈放を願い、行動し、その結果、本来は約三年の刑期が半分の一年半に縮んだんだ!!!」
「やっぱり半年前に彼は釈放されてたんだ…」
ようやく自分の知っている情報がオールマイトから話されたことにより、緑谷は先ほどよりは落ち着きながら、オールマイトの話を聞いている。
「そして、彼は釈放されてすぐ雄英に来てこう言ったんだ。
『————大いなる力には大いなる責任が伴う。だから、僕はみんなを救いたい。今度は違法行為としてなんかじゃなくて、本当のヒーローとして』ってね!!!』
オールマイトが話したスパイダーマンの言葉を聞いて、緑谷は震えていた。
有名な
他の人たちが知らない有名人のことが知れたから?
いや、おそらく違う。
なぜ、震えているかはいまだに緑谷は分からない。
しかし、『彼も本当のヒーローになろうと立ちあがろうとしている』という事実だけは理解した。
そして、そんな風に立ちあがろうとする彼を緑谷はカッコいいと思った。
「それを聞き流すヒーローは雄英には居ない!!!
だけど、だからといって無条件で彼の入学を認めた訳じゃ無いよ。
彼もしっかりと試験を受けた上で、新たな特別推薦枠として彼の合格を認めたってワケさ!!
————
きっと彼と一緒に学ぶことで、緑谷少年も彼もヒーローとしてさらに成長することができると信じているよ!!
しかし、彼の事は暫くは他言無用で頼むよ!!マスコミとかに騒がれたら、細蟹少年が可哀想だからねっ!
さて、では緑谷少年!!——今度は雄英で会おう!」
そう言って、オールマイトのホログラムは消えてしまった。
その後、緑谷は急いで母親に雄英に合格した旨を伝え、『僕ももっとがんばなくちゃ…』と筋トレを始めるのであった。
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個性把握テストの全ての科目が終わり、相澤から除籍の話はウソという驚愕の事実を告げられ、皆が様々な反応を見せている中、細蟹は相澤と一緒に職員室に連れて行かれた。
各々は『『『『『『彼がスパイダーマンなのか?』』』』』』という疑問を持ちながらもグラウンドから教室へ戻り、帰り支度をしたのちに下校して行った。
そして、職員室に連れて行かれた細蟹はというと———
「細蟹——お前、今の自分の立場、ちゃんと理解してるのか?」
職員室にて相澤に説教というより、現状の再確認をさせられていた。
実は、ヒーロー科に合格した緑谷たちに送られたあの合格通知の際、オールマイトはみんなに細蟹のことで一つ
細蟹は刑期を終えて釈放された訳
細蟹の逮捕には数多くの人々の訴えがあった。
その中にはプロのヒーローや警察、裁判官などの大人たちもいた。
そんな大人達は、彼の減刑を目指すために彼の情報を知り驚愕した。
僅か14歳の少年が逮捕されるまでの約4年間———つまり、10歳から
余りにも幼すぎる。
彼の容姿は全身スーツのせいで判別できなかったが、声変わりもしていたし、背丈も活動初期から大人と遜色なかったため、誰も彼の年齢がこんなにも幼いなどと予想していなかったのだ。
そんなまだ子供である細蟹を不憫に思った大人たちが必死に動いたおかげで、多くの条件付きではあるが出所が認められた。
しかし、だからと言って10歳というあまりにも幼い年齢から個性を使用し、
このままでは細蟹は、またすぐに
故に、保険として【保護観察処分として、雄英のヒーロー科へ通うこと】が条件に追加されたのだ。
雄英であれば、ヒーローになるための勉強もでき、彼の精神の成長を促進させてくれる。
また、雄英ヒーロー科に入学できなければ、減刑の話は無くすという条件で合意した。犯罪者である細蟹には、倍率300倍を誇る雄英への入学が達成されるはずがないと思っていたのだ。
しかし、細蟹は少年院にて行われたテストや面接にて合格を叩き出した。
これにて、細蟹は少年院からの出所が決まったのだが———最後の条件として、【プロヒーローになること】と【
そして、もし条件を一つでも破れば、細蟹斗真は———もう一度逮捕される。
彼を危険視する人々と彼を救いたいと願う人々が争い、これらの条件を設けなければ細蟹の出所は認められなかったのだ。
そんな状況にある細蟹が緑谷を守るためとはいえ、爆豪に個性を使用したのだ。
本来ヒーロー科の先生と生徒であれば褒められることなのであるが、細蟹は例外である。
街中で見知らぬ人が今回のような状況であれば細蟹は迷いなく今回のように助けるであろう。個性を使用して。
「つまり、細蟹。
お前は人を助ける時に個性を使用することに躊躇いがない。それはヒーローとしてはいいことだ。
だが、現状、お前はそれが許される立場じゃ無い。
個性の無断使用が発覚した時点で、個性の無断使用などの犯罪を犯したとみなされれば、保護観察処分の為に動いた人々の努力を無駄にする事だ」
相澤はため息をつきながら話す。
心底面倒くさそうである。可哀想に。
「細蟹、お前は最低でもヒーローの仮免許を取得するまでは個性を極力使用するな」
「んぇ!?———なんでですか、イレイザーヘッド!!!」
「今、俺、お前の担任な。ヒーロー名じゃなくて、ちゃんと本名で呼べ」
相澤に個性の制限を強制された細蟹は、ぶーぶーと文句を言う。
そんな細蟹のせいで、ストレスが溜まる相澤先生。かわいそう。
しかし、相澤の主張にはしっかりとした理由がある。
ヒーローの仮免許を取得すれば、公でも個性の使用が認められる。
そうなれば、細蟹もスパイダーマンとしての活動できるようになるのだ。
だからこそ、彼を助けた大人達は細蟹の雄英への入学などの情報をマスコミに流させず、雄英側もヒーローの仮免許を取るまでは表舞台に立たせる気も無い。
つまり、細蟹がスパイダーマンとして活動するためには、【ヒーローの仮免許まで犯罪行為を起こさない】というのが必須条件なのだ。
相澤はそんなことを理解してるか理解してないのか分からない細蟹の話をいなしながら話を続ける。
「理由は単純だ。お前、個性の使用に躊躇いがなさすぎる。
このままそれを許せば、お前街中で困った人のために個性を使用するだろ」
「いや————そんなことしないよ!だって、色んな人たちのおかげで僕は出所できたんだから」
「口ではそう言っても、身体がそれを否定してる。
さっきの爆豪の一件がまさにそうだ。お前は人を助けるためであれば、必ず躊躇いなく個性を使用する。
今回は学園内だからいいが、これが学園外であった場合お前はもう一度逮捕されるんだぞ」
「………」
相澤の凄まじい剣幕により、口を閉ざす細蟹。
相澤はその姿を見て、『これでようやくコイツも自分の置かれてる立場を理解したか』とこの話し合いの終着点に辿り着いたと感じていた。
しかし、それは勘違いであったことをぼつぽつと喋り出した細蟹の発言によって理解する。
「……そうですね。
もし、もしも———困った人がいて、僕が個性を使えばその人を助けられるなら、僕は迷わず使います。
本当に僕のために色々してくれたみんなには申し訳ないけど————僕は
そんな細蟹の発言を聞いて、相澤から「———はぁ〜〜っ…」と今日一日デカいため息が吐かれた。*1
その後、相澤の話は振り出しに戻り、細蟹がまた同じ回答をするというのがループした。
なんとか相澤が話をまとめ、細蟹に極力個性を使わないことを約束させたことで話は終了した。
職員室から出た細蟹が雄英から出ると、外はすっかり暗くなっていた。
相澤先生、本当にお疲れ様です。
相澤「自分の立場理解しろ」
細蟹「わかった!(わかってない)」