ヒロアカ世界なのにスパイダーマン世界だと勘違いしてる精神異常者 作:醤油でした
細蟹が戦闘体勢を取った同時刻、轟&障子ペアのヒーローチームはというと———
「……全く動いている音がしない。何処にいるかは分からないがどうやら、防衛か中での奇襲を考えているのだろう」
6本の腕の先を耳に変えて、索敵をする障子目蔵。
彼の個性は肩から生えた2対の触手の先端の瘤から目や耳や腕等の自身の体の器官を複製できる【複製腕】。
彼はその個性を最大限使い、対戦相手である細蟹の情報を取るために必死である。
それもそのはず、障子はスパイダーマンが現役で活動していた頃にちょうど
『俺が彼の戦闘を見たのは3年前だが、あの時からまるで無駄のない戦い方と周りに被害を出さない立ち回りはプロのヒーロー並だ』と考える障子は油断などするはずもなく、より一層警戒心を強めるのであった。
「……関係ねえよ。いくら有名な
そんな障子を外に出るように促し、轟焦凍は右で凍らせ、左で燃やすことが出来、範囲も温度も未知数な【半冷半熱】という個性を使用した。
轟の個性により、ビルがあっという間に凍る。
その光景にペアである障子、そして、モニター室でこの戦闘訓練を見ている者たちは一瞬のうちに起きたこの状況に驚きを隠しきれなかった。
「そうか!
これなら仲間や核、そして建物を傷つけずに、
「おい、なんだよそれ!無敵かよ?!」
モニター室でこの戦闘を見ていた飯田や切島は、轟の個性を分析したり、あまりの強さに驚いていた。
『流石に
そして、轟と障子はビルの屋上である核兵器のある部屋まで辿り着いた。道中で索敵を怠らなかった2人だったが、細蟹の姿は一切なかった。
つまり、細蟹はこの部屋の中にいることは確定している。
だが、轟と障子はすぐには部屋に入ろうとはしなかった。
なぜなら、その部屋の中には、凍りついた細蟹がいなかったからだ。
轟は先ほどのオールマイトからのルール説明の際、細蟹のみがハンデを負わされた時に対抗心を燃やしていた。
幾ら有名な
そのため凍りついた細蟹が部屋の中にいないことで、先程の自身の言葉を撤回し、警戒心を引き上げた。
そして、勝つために轟は瞬時にこの状況で考えられるパターンを考え出していた。
①凍りついた細蟹を轟達が見落とした。
②轟達からは見えないこの部屋の何処か場所で凍りついている。
③細蟹は凍りついておらず、この核兵器の部屋で潜伏している。
④細蟹は凍りついておらず、この部屋以外の何処かに潜んでいるor機を窺っている。
全ての部屋を見てこの核兵器のある部屋にきたため、①は否定される。
また、④の場合、この部屋以外のどこかの部屋に潜んでいたのなら、既に轟達を襲う機会はあったはずだ。つまり、④も否定された。
つまり、細蟹は凍ってるか凍ってないかは置いておいて、細蟹斗真はこの部屋にいることが確定した。
そのことに障子も気づいているようで、轟は障子に次の作戦を伝える。
「恐らく、奴は中にいる。
それなら、俺が今ここであの部屋をさらに凍らせる。
その後に、2人であの部屋に乗りこm「———もうこれ以上、寒くするのは止めてくれないかな?!」
轟が障子に作戦を伝えていると、急に目の前に全身に赤と青に包まれ、胸に黒い蜘蛛が描かれたスーツを着た細蟹———スパイダーマンが現れる。
「僕、冬よりは夏が好きだし、スキーよりはスケボーの方が好きなんだよね。あと、僕って実はあんまお腹強く無いんだよね」
「「っ?!」」
轟も障子も油断していた訳じゃ無い。
轟も障子もお互いに作戦を理解しようと目を合わせた一瞬をついて、細蟹が現れたのだ。
あまりにも一瞬の出来事であったため、轟は細蟹のいた方向を凍らせる。
「くっ、仕方ねえか。障子、こうなったら直接戦闘するし———」
咄嗟に凍らせた轟だったが細蟹の姿が見えないため、避けられたことを確信した。
相手は個性を制限されてるとはいえ、
「はい、まずは1人確保〜!
僕ってこの前まで捕まってたのに、人を捕まえる才能があるのかも!!!」
自虐ネタを披露する細蟹の横には、既にテープをはられ、確保された障子がいた。
モニター室でこの状況を見ているA組の面々が驚きの声を上げる。
「ウッソだろ?!展開が速すぎて、オイラ全然状況わかんないんだけど!」
「私も細蟹さんの行動がすべて見えたわけではありませんが、恐らく轟さんが個性で迎撃をする前に、障子さんを捕縛しながらもあの核兵器がある部屋に戻ったのではないかしら?」
「マジか!轟もすげえ個性だけど、やっぱスパイダーマンってすげぇ!」
「糸を使わずにあんなスピードを出すなんて、何かカラクリがあるんじゃないかしら?」
あまりのスピードについていけない峰田。
冷静に今起きたことを理解しようとする八百万。
この展開に両者の凄さに感嘆する上鳴。
細蟹の超スピードの謎を探る蛙吹。
それ以外の面々もそれぞれが違う思いを持ちながらも、この戦いから目を離すことが出来なくなっていた。
「…くそっ」
余りにも速く、恐ろしいほど手際がいい。そんな細蟹の先程の行為により、こちらの人数有利が無くなってしまったため、悪態をつく轟。
しかし、それと同時に轟は細蟹の個性に疑問を持つ。
『スパイダーマンの個性は【蜘蛛】だと聞いたことがあったが、蜘蛛の速さや蜘蛛の力を引き出していたとしても、蜘蛛の糸も出さずにあの速さで大柄な障子を捕縛しながら移動できるのか?』と。
轟はスパイダーマンの名前や活躍は聞いたことがあったが、彼の
その為、轟は目の前に
「あれ??来ないの?
僕としては、攻めてきてくれた方が助かるんだけど————来ないなら、僕から行ってあげるよ!」
またもや細蟹が急激な速度で突進してくる。
今度は細蟹の動き出すところを見ていた為、轟は細蟹の異常な速さの理由がわかった。
細蟹は、蜘蛛のように地面に伏せることで両手両足全身を使って突進していたのだ。
「——!?」
轟は氷を生み出す時に生じる推進力を使い、どうにか体の位置をずらし、細蟹の突進を避ける。
そんな轟を見ながら、細蟹は「Foo!!君、なかなかに氷の使い方が上手いね!———」と素直に相手の戦闘能力の高さを認めながらも、余裕そうに話したまま、もう一度地面に蜘蛛のように這いつくばる。
どうやらもう一度、あの突進で突撃するつもりである。
しかし、今度は轟が仕掛けた。
「これなら、どうだっっっ!!」
突進の仕組みがわかった轟だが、あまりの速さに自分に向かってくる細蟹を狙って凍らせるのは難しいと思い、現在戦っている廊下の自分の後ろ以外を凍らせようとした。
障子は確保されたが、細蟹が何故か核兵器のある部屋に連れて行った為、轟はこの廊下ならば何も気にせず凍らせることができたのだ。
この建物に入る前に、轟は個性を使い、この建物全体を凍らせた為、窓から外に逃げることもおそらく不可能。
そして、細蟹の突進は速いがスタートする瞬間が分かっていれば、先に轟が凍らせ始めれば、スピードがいくら速くたって関係ない。
つまり、この攻撃を細蟹はマトモにくらう以外ない。
轟が廊下を一気に凍らせたことで、冷気がこの周辺にかかり、白いモヤのように視界を奪った。
しかし、轟は違和感を感じていた。
今まで何度もこのくらいを凍らせることは何度もあったが、こんなモヤ?霧?みたいなものがかかったことはない。
轟は目を凝らし、この白い煙幕のようなものの正体を探り、そして、気づいた。
これは————
「かき氷屋さんを開くには、ちょっと時期が早すぎるかな!!」
轟自身の出した氷が砕かれて、氷のかけらになっていたのだ。
そんな氷のかけらを見ながら、全く戦闘とは関係ない軽口をたたきながら歩いてくる細蟹。
轟は、今までの細蟹の行動を思い返し、これがスパイダーマン———細蟹の戦闘スタイルなのだと再認識する。
細蟹の後ろを見ると、廊下全体を覆う氷の壁の中でそこだけが大きな穴が出来ていた。
細蟹の先ほどの見せた突進、もしくは別の攻撃により空けたものだと轟は考える。
「お前の個性……本当に蜘蛛か?」
「え、うん。だって、スパイダーマンだし、僕」
しかし、今まで細蟹が見せたそんなバケモンみたいなパワーやスピードをみせた細蟹の個性に疑問を持つ轟。
そんな轟の疑問に、キョトンとした顔で答える細蟹。
細蟹の言った通りであり、嘘などついてない。
細蟹の個性は、みんな知っている通り【蜘蛛】。
手首から蜘蛛の様に糸を出したり、蜘蛛のように壁や天井に張り付いたりすることも出来る。その他にも、自身に危険が近づいた時に体がムズムズする第六感のようなものがある。最初の轟の建物全体を凍らせる攻撃を避けれたのは、この第六感のおかげである。
そして、常人よりも高い筋力を持つことが出来る——つまり、バケモンみたいなパワーやスピードは、この個性と日々の鍛錬と
「君の個性、派手で凄いけどそろそろ終わりにしない?
そうじゃ無いと、そろそろ僕のお腹が冷え冷えでピンチになりそうなんだよねっ!」
「——っ?!」
またもや一瞬のうちに距離を詰められる。
大規模な範囲を凍らせる行為は細蟹には聞かないと察した轟は、作戦を変更する。
《細蟹が自身を拘束しようとする一瞬に、逆に細蟹を凍らせる》。
もう残された手は、これしか無いと轟は考えた。
しかし———『いや、本当にそうか?……もう半分使えば———っ!何考えてんだ、俺は!決めただろうが、親父の個性なんて使わずにNo.1ヒーローになるって!』と轟は迷った。
一瞬。
一瞬だが、轟は細蟹に勝つために自分のなかにある忌み嫌っているもう半分の能力を使うか迷ってしまった。
そして、その一瞬を見逃すなんて甘いことを細蟹はしなかった。
「っ!しまっ———!!」
「ハイっ!2人目、確保〜!!
ちなみに、僕はかき氷だとイチゴとブルーハワイをミックスしたスパイディーなかき氷がお気に入りだよ!」
細蟹が一瞬遅れた轟にテープを巻き、捕獲したと同時にオールマイトの「ヴィランチーム WIIIN!!!」という放送が聞こえてきた。
「クソっ!」と呟く轟や「不甲斐ない」と呟く障子のテープを外しながら、細蟹は「ところで、僕をモデルにしたイチゴとブルーハワイのスパイダーマンアイスキャンディーとか売れそうじゃない?」と訳わかんないこと言っていた。
*********************
轟、障子、細蟹がモニター室に戻ると、すぐにオールマイトによる講評が始まった。
「さて、今回のベストは———細蟹少年だ!!何故だが分かるかい?」
「はい!———それは、細蟹さん自身のこれまでの経験の差が出たからですわ」
オールマイトからの問いかけに、いの一番に手を挙げ答えた八百万。
そして、彼女はそのまま先程までの戦いを評価した。
轟は最初から細蟹と接敵するまでの行動はとても素晴らしかったが、一瞬の隙を晒したことにより、1対1の戦闘に持ち込まれ、そのまま細蟹のペースに飲まれてしまった。また、最後の細蟹との戦いでの躊躇いが致命的であった。
障子の索敵や警戒心の高さも素晴らしかったが、轟と同様に
そして、細蟹は急に凍りついたビルの状況を理解し、瞬時に核兵器のある部屋で隠れ、ヒーロー側の隙をまつという奇襲作戦が功を奏し、迅速かつ的確に1人を拘束。そして、轟との戦闘も相手が反応出来ないことを行い続けることにより勝利に繋がった。個性を制限されながらも、あの様にヒーロー側に何もさせないで勝つことが出来たのは、やはり今までの彼の
「———ですが、細蟹さんは少々相手に喋りかけすぎでしたわ。この行為さえなければ、もう少し早くこの戦闘の決着はついたはずですわ」
「はははっ!今度は、糸に続いて僕のジョークというアイデンティティまで脅かされてるや!!」
そんな八百万からの指摘に、細蟹はまたもや笑いながら冗談をかます。
八百万と細蟹の2人の会話に少々食い気味にオールマイトが割り込み、「今回の戦闘訓練の講評はそんな感じさ!さて、じゃあ、次に実習してもらうペアは——」と次の戦闘訓練を行うペアが発表された。
細蟹は次に始まる戦闘訓練に注目しながら、「さて——みんなのお手並み拝見といこうか!」と呟くのであった。
**************************
時は流れ、本日のヒーロー基礎学が終了し、下校時間になったのにも関わらず、A組の大半は帰らずに今回の戦闘訓練の反省会を行なっていた。
「でも、やっぱあの有名な
「そうだよね!あの訓練を見てたら、本当に動画で見たことあるスパイダーマンなんだなって思ったよね!」
「同じ推薦組同士でしかも、個性の制限と1人というハンデを背負ってあの活躍でしたからね。
やはりプロヒーローと実力は大差ないという噂は本当でしたわね」
反省会を行っていた面々であったが、やはり印象に強く残った細蟹vs轟&障子ペアの戦闘を話し始める切島、芦戸、八百万の三名。
八百万も細蟹や轟と同じく、倍率300倍を誇る雄英高校ヒーロー科を推薦で入学した身であるため、「私ももっとがんばらなくてはなりませんわ!」と意気込んでいた。
そんな風に話し込んでいると———保健室に緊急搬送されていた緑谷が教室に帰ってきた。
そんな緑谷を労おうと、クラスに残っていた切島や芦戸、蛙吹に砂藤や麗日たちが話しかけた。
しかし、緑谷はどうしても言いたいことがある人物がクラスにいないことに気づき、みんなに行き先を尋ねると反省会への参加を断り、出て行った。
切島は、『用事があるなら、しょうがないか』と思い、みんなとまた反省会を始めた。
そして、この反省会に1番参加しそうだったのに『今日だけはどうしても外せない用事があるんだよねっ!』と言いながら帰ってしまった細蟹の席をチラリと見た。
今回の戦闘訓練の細蟹を見た切島は『俺も負けてらんねえ!』と自分を鼓舞し、またクラスメイト達と今回の戦闘訓練での自分やみんなの改善点や良かった点を話し合ったのであった。
**************************
そして、みんなが反省会をしている時を同じくして、細蟹は何をしていたかというと———人気のない墓地に1人で来ていた。
どうやら細蟹以外の人はいないようで、とあるお墓の前で細蟹は立ち止まった。
そして、その墓に自身の右手持っていた花を添え、手を合わせた。
「ただいま———
そう呟く細蟹の表情や声音は、普段の彼からは想像できないほど暗く静かなものだった。